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ep.5 地下の街
3 地下の街でお買い物
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地下の街は暗いけど、石の道には左右に石柱が建てられていて、中で炎が燃えていた。洞窟の中だけど、空気はこもっていなくて風も少しだけど感じる。天井がすごく高いから閉塞感はない。
「天井にあるあの光って何かな? あっ、あの建物すごく大きい。この辺りは建物が密集してるね。提灯みたいなものもぶら下がってるな。けっこう綺麗だ。うわ、見た? 今大きな動物がいたよ!」
ずっと話していたらアルバートが急に足を止め振り返った。眉間にシワがよってる。
「かなめ様、お静かに。周りにどんな人間がいるかわかりません」
アルバートは怒ってる時はわりと丁寧な口調になるんだよな。
「アルバートこそ名前呼んでる。偽名を使うんじゃなかった? なんて名前にする? 佐伯でもいいよ。小学校の時さっくんって呼んでくる人がいたから……」
「カナ。カナでいいだろ」
幼なじみのアルを思い出してドキリとした。アルはいつも俺のことをカナって呼んでた。
「うん。じゃあ俺は」
「アルでいい」
「それならいつもと同じだけど」
「お前は鳥にもわけのわからない名前を付けるからな」
「おもちって可愛くない?」
俺が聞くとポケットの中でおもちが「ピィ」と鳴いた。
歩いていくうちに人が増えてきた。道も広くなって、両側にお店みたいな建物が並ぶ。今にも壊れそうな建物もあるけど、最初の場所より人がたくさんいて賑やかだ。
みんなフード付きのマントを着てるし暗いから顔がよく分からない。明らかに武器を背負っているいかつい人もいるし、ボロボロの服を着て座り込んでいる人も、大きな荷車を引いている人もいた。怖くてアルバートにぎゅっとしがみつくと、アルバートも腕をまわしてくれた。
「エルトリアの土はいらないかい? 王都の土だよ」
「地底湖でとれた珍しい魚の肝はどうだい」
「カイゼキヤのアクセサリーを見ていっておくれ」
「このお店では、なんと神子さまの髪の毛を手に入れることができるんだ。どうだい、見ていかないかい?」
店の前で客引きしてる人たちがいるけど、売られているものが想像もつかないものばかりだ。エルトリアの土なんてどうするんだろう。
「アル、見てみる?」
「……」
「お兄さん、どうぞ入っておくれ! 今なら神子さまの髪の毛があるよ。お金があれば聖水だって手に入れられる。興味はないかい?」
「アル、神子さまの髪の毛見てみようよ」
どうしても地下の店の品揃えに興味が湧いて、面倒くさそうなアルバートを引っ張ってお店に入ってみることにした。
店内は板と石を組み合わせて作られた場所に、商品がところ狭しと並べられていた。天井や壁にもぶら下げられてる。ほとんどガラクタに見えるけど楽しい。
目の前には素人が初めて作った人形みたいなものが置かれてる。顔も適当だけどなんとなく味がある。俺は人形遊びなんてしなかったけど、子供の頃、ベッドには一匹だけぬいぐるみを置いていたな。
その隣にあるのは薄くて丸っこい茶色いもの。穴を開けて紐に通してあるからアクセサリーかな。他にも美しい黒い剣や、大きなサイコロみたいな形の黒いミニチュアハウス。干からびた人参のような植物には手足が生えているように見える。
「お兄さんお目が高いね。こいつは身代わり人形だ。腹の中に髪の毛を入れておくと本人の災いを受けてくれる。こいつは火竜のウロコ。解毒作用があるんだ。隣にあるのは伝説の竜殺しの剣、黒い家は魔法使いを食うという伝説のモンスターだ。この植物はマンドラゴラ。呪いの歌を歌う。どうだい? どれか買っていかないか。他では絶対に手に入らないよ」
どれも面白そう。でもお金を持ってないや。
「アル、お金持ってる?」
「やめとけ。どう見ても怪しい」
「いやいや、どれも本物だよ!」
「それより神子さまの髪の毛は?」
聞くと店主は店の奥から何かを抱えてきた。白い細長い木箱だ。開けると白くて長い髪が数本、紐でまとめて入れられていた。
「触っちゃいけないよ。何といってもエルトリアの神子さまの髪だからね」
「エルトリア?」
「そうだよ。八百年眠ってる神子さまだ」
アルバートと顔を見合わせる。
「エルトリアの神子さまは目覚められたと聞いたけど」
「馬鹿いっちゃいけない。八百年も眠っておられたんだ。そう簡単に目覚めるわけないだろう」
「パレードがあったはずだよ」
「それは偽物だな」
店主がもっともらしく頷くので、笑ってしまった。
「ではこの髪が本物の証拠はどこにある?」
「この神々しさが分からないのか? とにかくこれは本物だ。私の親戚の知り合いの婿がエルトリアから持ち帰ったんだからね」
「分かったよ。でも髪はいらない。持ってるから」
ぶつぶつ言う店主を残して店を出た。買い物って見るだけでもけっこう楽しいな。
「天井にあるあの光って何かな? あっ、あの建物すごく大きい。この辺りは建物が密集してるね。提灯みたいなものもぶら下がってるな。けっこう綺麗だ。うわ、見た? 今大きな動物がいたよ!」
ずっと話していたらアルバートが急に足を止め振り返った。眉間にシワがよってる。
「かなめ様、お静かに。周りにどんな人間がいるかわかりません」
アルバートは怒ってる時はわりと丁寧な口調になるんだよな。
「アルバートこそ名前呼んでる。偽名を使うんじゃなかった? なんて名前にする? 佐伯でもいいよ。小学校の時さっくんって呼んでくる人がいたから……」
「カナ。カナでいいだろ」
幼なじみのアルを思い出してドキリとした。アルはいつも俺のことをカナって呼んでた。
「うん。じゃあ俺は」
「アルでいい」
「それならいつもと同じだけど」
「お前は鳥にもわけのわからない名前を付けるからな」
「おもちって可愛くない?」
俺が聞くとポケットの中でおもちが「ピィ」と鳴いた。
歩いていくうちに人が増えてきた。道も広くなって、両側にお店みたいな建物が並ぶ。今にも壊れそうな建物もあるけど、最初の場所より人がたくさんいて賑やかだ。
みんなフード付きのマントを着てるし暗いから顔がよく分からない。明らかに武器を背負っているいかつい人もいるし、ボロボロの服を着て座り込んでいる人も、大きな荷車を引いている人もいた。怖くてアルバートにぎゅっとしがみつくと、アルバートも腕をまわしてくれた。
「エルトリアの土はいらないかい? 王都の土だよ」
「地底湖でとれた珍しい魚の肝はどうだい」
「カイゼキヤのアクセサリーを見ていっておくれ」
「このお店では、なんと神子さまの髪の毛を手に入れることができるんだ。どうだい、見ていかないかい?」
店の前で客引きしてる人たちがいるけど、売られているものが想像もつかないものばかりだ。エルトリアの土なんてどうするんだろう。
「アル、見てみる?」
「……」
「お兄さん、どうぞ入っておくれ! 今なら神子さまの髪の毛があるよ。お金があれば聖水だって手に入れられる。興味はないかい?」
「アル、神子さまの髪の毛見てみようよ」
どうしても地下の店の品揃えに興味が湧いて、面倒くさそうなアルバートを引っ張ってお店に入ってみることにした。
店内は板と石を組み合わせて作られた場所に、商品がところ狭しと並べられていた。天井や壁にもぶら下げられてる。ほとんどガラクタに見えるけど楽しい。
目の前には素人が初めて作った人形みたいなものが置かれてる。顔も適当だけどなんとなく味がある。俺は人形遊びなんてしなかったけど、子供の頃、ベッドには一匹だけぬいぐるみを置いていたな。
その隣にあるのは薄くて丸っこい茶色いもの。穴を開けて紐に通してあるからアクセサリーかな。他にも美しい黒い剣や、大きなサイコロみたいな形の黒いミニチュアハウス。干からびた人参のような植物には手足が生えているように見える。
「お兄さんお目が高いね。こいつは身代わり人形だ。腹の中に髪の毛を入れておくと本人の災いを受けてくれる。こいつは火竜のウロコ。解毒作用があるんだ。隣にあるのは伝説の竜殺しの剣、黒い家は魔法使いを食うという伝説のモンスターだ。この植物はマンドラゴラ。呪いの歌を歌う。どうだい? どれか買っていかないか。他では絶対に手に入らないよ」
どれも面白そう。でもお金を持ってないや。
「アル、お金持ってる?」
「やめとけ。どう見ても怪しい」
「いやいや、どれも本物だよ!」
「それより神子さまの髪の毛は?」
聞くと店主は店の奥から何かを抱えてきた。白い細長い木箱だ。開けると白くて長い髪が数本、紐でまとめて入れられていた。
「触っちゃいけないよ。何といってもエルトリアの神子さまの髪だからね」
「エルトリア?」
「そうだよ。八百年眠ってる神子さまだ」
アルバートと顔を見合わせる。
「エルトリアの神子さまは目覚められたと聞いたけど」
「馬鹿いっちゃいけない。八百年も眠っておられたんだ。そう簡単に目覚めるわけないだろう」
「パレードがあったはずだよ」
「それは偽物だな」
店主がもっともらしく頷くので、笑ってしまった。
「ではこの髪が本物の証拠はどこにある?」
「この神々しさが分からないのか? とにかくこれは本物だ。私の親戚の知り合いの婿がエルトリアから持ち帰ったんだからね」
「分かったよ。でも髪はいらない。持ってるから」
ぶつぶつ言う店主を残して店を出た。買い物って見るだけでもけっこう楽しいな。
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