盗賊とペット(レヴィン編)

カム

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旅行編 お墓参り〜赤砂の街

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「ミサキ、食べないのか?」
『このお肉のお金、どうしたんですか? ルイーズさんに借りたんですか……?』
「お前は気にするな」
『気になります。アニキの釈放の時もルイーズさんにお金借りました。働いて返そうと思ったのに……』
「金なら返した」
『えっ?』

 返した? どういう事だ。
 いくらかは知らないけど、多分高額だったよな。アニキも俺も貧乏なんだけど、どこからそんな金が出せたんだ?

「スグリには生まれつき魔力がある。魔法は使えないが、狩りには最適な能力だ。珍獣と鉱石をいくつか売れば十分金になる」
「俺、そういうの得意」
『で、でも……』
「この服と菓子と本はお前にと、あの女がよこした」
『えっ……』
「もう会うこともないだろうから、餞別にもらってやれ」
『だってアニキは……』

 ルイーズさんが好きじゃないんですか? と続けようとしたけど、言葉が出なかった。

 たしかに服も靴も言われてみればアニキの趣味じゃない。デザインがかわいくて、色も女性が好きそうな明るい色だ。

 紙の束はよくみれば低年齢向けの本で、文字が読めるか分からない俺のためにルイーズさんが選んだのだろう。この世界では本や紙は貴重だし、図書館や本屋なんて王都くらいにしかないから高いんじゃないかと思う。本と一緒にメモのような手紙が入っていた。何度か見たことのある丁寧なルイーズさんの字だ。

〝ミサキ君、急にいなくなるから心配したわ。レヴィンに聞いたけど、知り合いを見つけたんですってね。良かったわ。本当は少し残念だけど……。
 少しの間だけど、あなたと働けて楽しかったの。私には家族がいないから、もしあなたが良ければ養子として一緒に暮らせないかと妄想していたのよ。もちろんレヴィンも一緒に。それは断られちゃったけど。
 また旅を続けるんですってね。旅の終わりに思い出したら、またルイーズの宿屋に寄ってちょうだい。あなた達のこと愛してるわ”

 読みながら涙が出てきた。
 こんなに優しい人を少しでも恨んでいた自分にうんざりする。アニキを取られたみたいで、顔を見るのも辛かったから、お別れもお礼すら言わずに勝手に出てきてしまった。働く約束してたのに。

 メソメソ泣いていたけど、スグリさんが焼いた肉を俺の皿にたくさん乗せてくれたので、涙を拭いて食べることにした。

「ミサキ、なんで泣いてる? アニキのせい?」
「さあな」

 スグリさんとアニキは、上下関係はあるけど昔ながらの仲間特有の慣れ親しんだ雰囲気があった。悪魔の契約の直後はアニキ以外誰一人として知り合いがいなくなったのに、またこうして俺を気にかけてくれる人が出来た事が嬉しい。ルイーズさんもスグリさんも、なんだか家族みたいだと思えてまた涙が出た。

 お菓子は大事に取っておいて俺一人で食べる事にした。アニキは甘いものをほとんど食べないし、スグリさんもそんなに興味を示さなかったから。

「スグリ、お前外で寝ろ」

 夕食の後、アニキは寝袋を投げてスグリさんを追い出した。どう考えてもスグリさんのテントなのに理不尽だ。でもスグリさんは不満も言わずに外に出て行った。

『三人でも雑魚寝すればテントに眠れると思うんですけど』というと、アニキに睨まれる。
「俺は他人と寝るのは虫唾が走るほど嫌いなんだよ」
『え? でも私は?』

 アニキの手が首と足の間にまわされて、がっちり抱き寄せられる。膝の上に乗せられると足枷の鎖ががちゃりと音を立てた。べろりと首筋を舐められて背筋がぞわぞわする。

「お前は特別だ」
『ルイーズさんより?』

 聞かなければいいのに、つい口から出てしまった。

「ミサキ、お前は女を誤解している」
『え?』
「女っていうのは、お前が思うよりしたたかで計算高い」
『んんっ……』

 アニキが首筋を舐めるのをやめて、軽く噛み付いてくる。痛くて気持ちいい。

「お前を騙すのは簡単だろうな」
『……そんな事ありません。ルイーズさんはいい人です』
「そうだな。あの女も、騙すのは簡単だった」

 アニキはそう言って俺が着ていた服を脱がし、現れた悪魔の契約印にゆっくりと舌を這わせた。言葉とは裏腹に悲しそうな表情のアニキが気になったけど、契約印への愛撫が強烈すぎてそのうち喘ぎ声しか出せなくなった。
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