ちびドラゴンは王子様に恋をする

カム

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王族の付き人

9 かなり不安

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 朝食を一緒に食べているはずなのに、ヴィクターはさりげなくハロルドのカップにお茶を注いだり、食べ終わったお皿を下げたり、とても自然にこなしている。すごい人だ。

「カル、口の周りに食べ物がついてる」
「あっ、ホントだ」
「これはパンに付けて食べたらいい」
「これ?」
「おい、落としたスプーンは替えた方がいいぞ」
「大丈夫だよ」
「お茶のおかわりするか?」
「あっ、俺が注ぐよ……うわぁ、ごめん」

 俺は逆に何故かヒースにいろいろしてもらって、お茶はこぼすし食器は落とすしで大変だった。ハロルドとヴィクターが呆れた目で見ている気がする。

「王子様に給仕させるなんて大物すぎるな」
「カルを見ていると何故か世話をやきたくなるんだ」
「僕に教えられるか不安がつのるよ」
「ヴィクター、よろしく頼む」

 俺、もしかして付き人失格なのかな。
 朝食が終わったので素早く食器を下げる。今度はうまくいった。

「それから何するんだ?」
「食器を下げ終わったら待機。基本、付き人は主人の邪魔はしない。学生同士でお話をされている時は会話にわって入らない。聞かれた事だけ答える」
「分かった」
「君の主人は王子様だから特に礼儀作法に気をつけた方がいい。礼儀作法って誰かに習った事あるのか? とりあえず基本を教えとくよ。習得できるか君を見る限りかなり不安だけど」
「頑張る」
「まあまあ。ヴィクター、初日なんだからゆっくり教えてやれよ」
「そうはいくか。僕にだって仕事がある。早く覚えてもらわないと困る」
「仕事覚えるの得意だ」
「そう願うよ」

 食後はヒースとハロルドが学園の授業内容や生徒たちの話をしていたので、少し離れた場所でヴィクターと待っていた。ヒースたちの会話の内容は気になるけど、ヴィクターからこの後のスケジュールや一日の仕事内容を教えてもらっていたので聞く暇はなかった。

「君、武術や魔術の心得は?」
「力は強い方だと思う。魔法もできる気がする」
「誰かに師事していたのか?」
「師匠はいたけど」
「何という方だ?」
「ジークだよ」
「聞いたことがないな」
「山菜や鉱石を採って生活してるんだ」
「ご両親は何を?」
「親はいない。育ての親に拾われたんだ」
「ここに来る前は?」
「師匠の山小屋に住んでたけど」
「文字を習ったことはあるのか?」
「ない」
 
 話をしているうちにヴィクターは頭を抱えはじめた。

「どうしたの? ヴィクター」
「ヒースが何故君を付き人にしたのか、本気で分からなくなって来た」
「それは、エリオットが俺を探していて、最初はエリオットの付き人になれって言われたんだ。でも嫌だったからヒースに頼んだんだ」
「なるほど……。それなら納得だな。つまり本来の付き人として雇ったのではなく、暴君の兄から守るためか」
「でも仕事はちゃんとするよ」
「期待しないでおく」

 ヒースとハロルドが授業を受けるため教室に向かったので、途中までついていって二人を見送った。教室にいる生徒の数は少なくて、五人くらいしか見当たらない。待機している付き人の方が多いくらいだ。ヒースにくっついて歩いていると、みんなから見られているのを感じる。俺が誰なのかみんな聞きたそうにしてるけど、ヒースに直接質問してくる人はいなかった。

 




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