ちびドラゴンは王子様に恋をする

カム

文字の大きさ
124 / 129
王族と竜

6 故郷の城へ

 中庭に出ようとして大勢の兵士に行手を阻まれた。たしかヒースがまだ何万人もいるって言ってたけど、みんな戦意喪失して逃げまどっている。

「逃げろ!」
「殺される!」
「どけ!」
「なんで竜が……!」

「何があったんだ」

 ヒースがつぶやくと同時に地面が揺れた。叫び声が大きくなる。

「竜だ! 竜が来るぞ!」

 逃げている兵士が口々に叫ぶ。中庭から大きな咆哮が響いて思わず駆け出した。

「カル!」

 中庭にいたのは岩山ほどもある一頭の大きな竜。皮膚はゴツゴツしていて硬く、弓矢も全く刺さらない。吼えては地面を足で踏み荒らしているだけなのに、驚きすぎた人間たちは必死になって逃げてる。

「ジークさん……」

 懐かしいジークおじさんだ。ずっと山から降りてこなかったのに、王城に来てくれたんだ。

(おじさん……!)
(カルか。人間の住む建物は、竜の姿には小さすぎるな)
(おじさん、ありがとう。俺のために来てくれたんだね)
(子供同然のお前を傷つけた人間がいると聞いてな。少し暴れたら帰るから気にするな)
(うん。ジークさんやっぱりかっこいいよ)

 念話でそういうと、ジークさんは張り切って咆哮をあげた。音波で壁にヒビが入りそうな勢いだ。

「あ、あれもお前の知り合いか」
「そう。育ての親なんだ」
「カルが味方でいてくれて良かった。寿命が縮むな」

「ヒース、お城に行こう。俺が連れて行くから」

 頭の中で解けろと念じると、すとんと竜の姿に戻った。小さな竜になって服から這い出ると、そこから人が乗れるサイズまで大きくなる。それでもジークさんやクラウスよりずっと小さいけど。翼を広げてヒースが乗りやすいようにお座りする。

「カル、もしかして、乗っていいのか?」
「キュイ!」
「ありがとう。領地まで頼む」

 ヒースが俺の背中にまたがる。夢が叶ってドキドキする。生まれた時からいつか二人で飛行したいと思ってたんだ。

 尻尾を振っているとジェイソンも乗ろうとしたので素早く移動して振り落とす。まだ小さいから二人乗りは無理だし、俺はヒースだけを乗せるんだ。

「ジェイソンは後から来てくれ」
「分かりました。カル、ヒース様を落とすなよ!」
「キュー!」

 翼を広げて魔法の息を吐く。風を作って低空から滑るように空へと向かう。飛び立つ最中に、近づいてくる魔獣の気配をとらえた。黒い馬のような姿で障害物を飛び越え中庭に向かってくる。

(ゲイル!)
(ドラゴンが暴れているときいてケンブツにきた)
(ちょうど良かった。そこにいるジェイソンを乗せてお城に来てよ!)
(なんだと? 俺は強いニンゲンしか乗せん)
(ジェイソンは強いよ)

 王城を離れる直前に、ジェイソンが中庭の方に突進して来た黒い暴れ馬に飛び乗るのが見えた。
 ゲイル、俺は全然乗せてくれなかったのに、ジェイソンさんは乗せるんだな。

***

 二頭の竜と大勢の兵士と魔法の戦いに別れを告げ、気流に乗って王城をあとにする。城も王都も小さくなって後方に遠ざかり、だんだん見えなくなった。

 ヒースはぎゅっと俺の背にしがみついてる。落とさないようにゆっくりと高度を変え、できるだけ揺れないように飛行した。ヒースの身体が冷たい。魔法の使いすぎだ。

「カルは暖かいな」

 首にしがみついたヒースがそう呟くのが聞こえた。
感想 23

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

​転生したら最強辺境伯に拾われました

マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。 ​死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。