ポメラニアン魔王

カム

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三 タケルの話

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 こんな事ならキスするのを嫌がらなければ良かった。俺がもっと協力していれば、ポメは勇者の春樹さんと対等に戦えただろうし、この先もずっと一緒にいられたかもしれない。春樹さんだって、うまく説得すればポメ達を見逃してくれたかもしれない。甘い考えかもしれないけど、なんとかみんな争わずに解決する方法が探せたかもしれないのに。
 もしポメが春樹さん達と戦って殺されてしまったら俺のせいだ。

 落ち込んでしばらくその場にうずくまっていると、どこからか声が聞こえた。

「なぁなぁ、兄ちゃん」
「……」
「なぁなぁ、兄ちゃんてば」

 誰だろう。顔を上げてまわりを見ても誰もいない。もちろんポメたちが戻ってきたわけでもなかった。

「おーい、こっちだってば」

 不思議だ。海の方から声がする。それとも砂浜?
 砂浜に歩いて行くと、いきなり砂の中から緑色の何かが現れてものすごくびっくりした。

「な、何⁉︎」

 砂の中から顔を出したのは、目が二つに口が一つ、低い鼻が真ん中についていて、一見若い男に見える……魔族だった。
 なんで魔族だと分かったかというと、その肌が緑色だったからだ。頭の上には白い円盤みたいな物が乗っていて、周りからワカメみたいな色の髪の毛が生えてる。よっ、と手を振った指と指の間にはカエルみたいな水かきがあった。
 どこからどう見ても河童だ。

「な、何か用ですか?」

 もうしゃべる河童がいても驚かないぞ。

 河童はよいしょ、と砂から這い出すと砂を払い落としてあぐらをかいた。肌は緑色だけど、一応服を着てる。夏休み中の小学生みたいな半袖のシャツに半ズボン。でも顔は大人に見える。水商売のお兄さんみたいな雰囲気だ。

「落ち込んでるとこ悪いなぁ。声かけようか迷ったんだけどな、でもこれが最後のチャンスかもって思ってな。なんか兄ちゃんの近くにいたら、俺まで魔力みなぎってきてさぁ」

 よくしゃべる魔族さんだ。

「あっ、俺はケルピ。一応、魔王様の配下の四天王の一人っていうか、もと四天王っていうか……いろいろあって気まずくて魔王様の前に顔出せないんだよ。だけど俺も四天王のはしくれ、いつ声かけようかずっとタイミングみはからっててさ」

 ケルピ? 河童じゃなくて? 元四天王?

「兄ちゃんもしかして魔王様のところに戻りたいんじゃないか? それなら俺、力になれると思う!」
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