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三 タケルの話
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「ポメ……」
「お前はあの勇者が好きなのだろう。だからあの願いは叶えてやれぬ。協力するのも嫌だろうが、あいにく私も魔族の王だ。みすみす消滅するわけにはいかぬ。これで最後だと思って我慢しろ」
ポメに強い力で抱き起こされると、そのまま唇を塞がれた。優しくて、力が抜けるような、泣きたくなるような口付けだった。
唇が離れると、ポメは俺の頬を撫でてそれからゆっくりと立ち上がった。
「ポメ!」
「じゃあね、タケル君」
「世話になったな」
「達者で暮らせよ」
トリスとゼブとドラコが手を振って、ポメはこっちを振り向きもせず三人の元に歩いて行く。
「ポメ! みんな!」
魔王様と三人はふわりと魔力で空に浮かぶ。走って追いかけ、手を伸ばしたのに見えない力ではじき返された。
ポメとみんなはそのままどこかへ飛び去ってしまい、後には呆然とする俺と、黒い渦だけが残された。
***
置いていかれた……。
いや、ポメはちゃんと帰り道を教えてくれている。あの渦を通り抜ければ、きっとこちらへ来た時のようにもとの町へと帰ることができる。だけど……。
「ポメーーー‼︎」
子犬がいなくなった事が悲しすぎる。あれは子犬じゃなくて、本当は力を無くした魔王様なのに。分かっているけどさっきまで一緒に海を見て背中を撫でていた事が嘘みたいだ。急にいなくなるなんて。
俺がキスするのを嫌がったから……。ポメにとってはキスじゃなくて、ただの魔力の供給で、戦いの結果を左右するとても重要な事だったのに、俺が照れて嫌がったから一緒にいるのをやめてしまったんだ。
「お前はあの勇者が好きなのだろう。だからあの願いは叶えてやれぬ。協力するのも嫌だろうが、あいにく私も魔族の王だ。みすみす消滅するわけにはいかぬ。これで最後だと思って我慢しろ」
ポメに強い力で抱き起こされると、そのまま唇を塞がれた。優しくて、力が抜けるような、泣きたくなるような口付けだった。
唇が離れると、ポメは俺の頬を撫でてそれからゆっくりと立ち上がった。
「ポメ!」
「じゃあね、タケル君」
「世話になったな」
「達者で暮らせよ」
トリスとゼブとドラコが手を振って、ポメはこっちを振り向きもせず三人の元に歩いて行く。
「ポメ! みんな!」
魔王様と三人はふわりと魔力で空に浮かぶ。走って追いかけ、手を伸ばしたのに見えない力ではじき返された。
ポメとみんなはそのままどこかへ飛び去ってしまい、後には呆然とする俺と、黒い渦だけが残された。
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置いていかれた……。
いや、ポメはちゃんと帰り道を教えてくれている。あの渦を通り抜ければ、きっとこちらへ来た時のようにもとの町へと帰ることができる。だけど……。
「ポメーーー‼︎」
子犬がいなくなった事が悲しすぎる。あれは子犬じゃなくて、本当は力を無くした魔王様なのに。分かっているけどさっきまで一緒に海を見て背中を撫でていた事が嘘みたいだ。急にいなくなるなんて。
俺がキスするのを嫌がったから……。ポメにとってはキスじゃなくて、ただの魔力の供給で、戦いの結果を左右するとても重要な事だったのに、俺が照れて嫌がったから一緒にいるのをやめてしまったんだ。
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