【本編完結、番外編更新】オークの島〜外れスキルで追放された侯爵令息と白銀の少女〜

丸井もち

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【閑話】アルフォンスの仕事

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 第11島と、本土の渡し船をしているアルフォンスの1日は朝早い。

 日が昇る前には、港町の長屋にある自宅を出て、倉庫街の小屋に向かう。

 小屋に到着し、当直の警備のものに挨拶したり、掃除やら雑用をしていると、倉庫を利用している問屋や、材料を取りに来る見習い職人に、鍵を出したり、運搬の手伝いをしてやったりする。

 そうこうしていると、日は高く登ってくる。

 正午の鐘が鳴る頃には、小屋に札をかけて、鍵を閉める。


『御用の方はディーベ第15教会までお越しください』

 アルフォンスは、この第15教会に併設されている孤児院の『理事長先生』をやっている。

「わぁ!トロル先生」
「こら、理事長先生でしょ!」

 アルフォンスは、小柄で目がギョロッとしているので、物語にでてくるトロルに似ている。

「構いませんよ。呼びやすいんでしょう」

 本人もよくわかっており、歳を重ねたことで、余計似てきたと感じていた。

「ギュナナ。今日も元気でしたか?」
「うん」
 褐色の肌に黒髪の、10歳くらいの少女はニコニコと返事をした。
「そうですか。みんな元気ですか」
「セナは、朝からお熱が出てるよ」
「薬師の方に見ていただいたら、風邪だろうということでした」
 ギュナナの横にいたシスターが答えた。

 大方の孤児院が予算不足で病気になっても、自力で治さねばならないところが多い。
 この第15教会の孤児たちは、病気になれば薬師にみてもらえるくらいには恵まれていた。

 それは、シリル・コルマールが資金援助しているからである。

「重病じゃなくてよかったですね」
「うん」
「では、ギュナナ。このお菓子を持って行って、みんなと食べてきなさい」
 孤児院に来るまでに、近くのパン屋で買ったお菓子を手渡すと、ギュナナの表情はパアッと明るくなった。

「一度、アイラに渡すんですよ」
 アイラは、この孤児院で一番年長の少女である。

「わかってるよ!」
 ギュナナが手を振り、走っていくと、アルフォンスは、小さな手帳に子供たちの様子を書き留めた。

 中庭では、元気な子供たちが、追いかけっこをして遊んでいる。
 それを見守る年長の子、本を読む子、思い思いに過ごしていた。

「シリル様が、先日亡くなったと聞きました。この孤児院はどうなるのですか」
 シスターが中庭を見ながら、アルフォンスに問いかけた。その表情は暗い。

 それも、この施設はコルマール家ではなく、シリル個人の資金提供であったからだ。
 バックアップしていた貴族が亡くなって、支援がなくなった、あるいは減らされたという話はよくあることだ。

 不安そうなシスターに、アルフォンスは、ギョロリとした目を向けて、ゆっくりと語った。

「大丈夫ですよ。シリル様からは、この先20年は大丈夫なほどの資金をもらっていますし、商業ギルドで運用もしています」
 資金が尽きぬよう運用する。
 それは、末永く支援していくということである。

「それに、優秀な後継の方がいますので」
「あの侯爵様ですか?」
 シスターは眉をひそめた。

「いえ、それは、侯爵家の後継です。シリル様の後継は現候爵のご子息、セリム様です。シリル様はすべてをセリム様に託されましたので」
「そうですか。シリル様が託されたのならば大丈夫ですね」

 シスターは生前のシリルを知っている。
 強面で怖そうな風貌だが、子供達にはとても優しく、敬遠されがちな移民の孤児たちも沢山受け入れている。

 さっきのギュナナも、熱が出たセナも、中庭で遊んでいる子供たちのほとんどが移民の孤児である。

「アルフォンスさーん、倉庫開けてほしいんだけど」

 札を見て、倉庫の利用者がやってきたようだ。

「では、また明日参りますね」
「はい、お待ちしております」
 アルフォンスはシスターに会釈して、踵を返した。

ーーシリル様。あなたは、ご自分を責めておられたが、約束は守れていますよ。

 今日もあの子達は元気に暮らしていますーー

 アルフォンスは、今はなき上司に、心のなかで報告をした。
 
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