27 / 45
・ダンジョンへ
嵐
しおりを挟む
今日は、朝から大雨である。
昨日の強風が雨雲を連れてきたのかもしれない。
遠くで、雷の音が響いている。
この大雨のせいか、アダリヤもうさぎも、朝食にあらわれなかった。
ーーアダリヤ、ちゃんと食べてるかな……。
セリムも気分が落ち込み、何かを作る気力がなかった。
残っていたパンチェッタと昨日の残りのポポンタでスーブだけ作って飲んだ。足りなかったのか、ノエルはモリンゴをかじっていた。
「あーあ、天気がよかったらダンジョンに行けたのにー」
ノエルはつまらなそうにつぶやいた。
この雨は、ちょうど良かった。
セリムは、落ち着いて今までのことを考えたかった。
目を閉じて、今までのことを振り返ろうとした。
だが、その時、白い毛玉が視界に入った。
嵐の音に紛れてやってきたようだが、セリムも、さすがに同じ轍を踏むことはない。
うさぎが飛び上がった瞬間に、頭を低くして、うさぎの襲撃を避けた。
そのせいで、セリムの奥にいたノエルに、うさぎのキックが命中した。
「ぐぇぇ」
腹に命中したのか、ノエルはくの字に折れて悶絶した。
「あんた! 何で避けるのよ!」
「むしろ、何で避けないと思うの……」
うさぎのことは、少し理解できると思っていたが、やはり、理解できないセリムだった。
「セリム……」
「あ、ノエル、大丈夫?」
腹を抑えたまま、見上げてきたノエルを気遣うも、彼はぐったりと横たわった。
「俺、寝るわ……」
ノエルは、気まずい雰囲気が本当に苦手である。
これは、彼なりの配慮で、セリムとうさぎで徹底的にやりあえということである。
セリムはうさぎと真正面から対峙した。
「あんた、昨日、リヤに何したの」
アダリヤは、昨日のことをうさぎに話したのか?
セリムはうさぎに詰め寄られるようなことを、アダリヤにしただろうか。
もしかして、ぼんやりしているうちに、何かしてしまったのだろうか。
「え、何、セリム、リヤちゃんに手を出しちゃったの? だから心ここにあらずなわけ?」
「うるさいわよ、三編み! あんたは黙ってなさい」
ガバッと起きてきたノエルは、一瞬でうさぎに沈められた。
「あの子、昔のことを、夢で見たって、泣いてんのよ!」
「……」
あれは、アダリヤから言い出したことで、セリムが言い出したわけではない。
だが、セリムと話をすることで、いろいろなことを思い出してしまったのだろうか。
「うさぎ、泣いているアダリヤを置いてきたのか」
「そんなわけないじゃないの。強制的に寝かせてきたわ。眷属たちが様子を見てるわよ」
セリムはホッとした。
今、この瞬間にも、アダリヤがひとりで泣いているかと思うと、胸が潰れそうだった。
「もう一度聞くけど、あんた、あの子に何したの」
「何って……」
アダリヤは、うさきが悲しむから島の外の話、父の話はしたくないといった。
その話を、彼女がいない前で、してもいいものだろうか。
そこに、セリムの葛藤を見抜いたように、苛立ったうさぎが脅してきた。
「隠し事したら、あんたのためにも、リヤのためにもならないわよ」
聖獣の凄みというのだろうか、有無を言わさない雰囲気をまとったうさぎに、セリムは重い口を開いた。
「……本土へ父を探しに行きたい、という話だよ」
うさぎは、ため息を吐いた。
「あんたにその話をするなんて、運命って残酷ね」
嵐は過ぎ去ったようで、風は止み、雨は上がっていた。
しかし、いつでも雨を降らせるような雲がどんよりとしている。
セリムとうさぎの間にはピリピリした空気が漂っていたが、その空気を破ったのは、当のうさぎだった。
「三編み!あんた、あたしの洞穴で、リヤをみてなさい」
突然、声をかけられたノエルは、ビクッと肩を震わせた。
「コルマールの坊っちゃんは、アダリヤのためを思うなら、あたしについてきなさい」
うさぎはくるりと後ろを向くと、刺々しい言い方で、セリムについてくるよう言い放った。
「どこへ行くんだ」
このうさぎのことだ。
アダリヤに害になると思えば、もしかしたら、人間のひとりふたりは、どうにかしてしまうかもしれない。
何も聞かずについていくには危険すぎる。
教えてくれないだろうとは思ったが、聞いてみると、うさぎは、あっさり教えてくれた。
「ダンジョンよ」
昨日の強風が雨雲を連れてきたのかもしれない。
遠くで、雷の音が響いている。
この大雨のせいか、アダリヤもうさぎも、朝食にあらわれなかった。
ーーアダリヤ、ちゃんと食べてるかな……。
セリムも気分が落ち込み、何かを作る気力がなかった。
残っていたパンチェッタと昨日の残りのポポンタでスーブだけ作って飲んだ。足りなかったのか、ノエルはモリンゴをかじっていた。
「あーあ、天気がよかったらダンジョンに行けたのにー」
ノエルはつまらなそうにつぶやいた。
この雨は、ちょうど良かった。
セリムは、落ち着いて今までのことを考えたかった。
目を閉じて、今までのことを振り返ろうとした。
だが、その時、白い毛玉が視界に入った。
嵐の音に紛れてやってきたようだが、セリムも、さすがに同じ轍を踏むことはない。
うさぎが飛び上がった瞬間に、頭を低くして、うさぎの襲撃を避けた。
そのせいで、セリムの奥にいたノエルに、うさぎのキックが命中した。
「ぐぇぇ」
腹に命中したのか、ノエルはくの字に折れて悶絶した。
「あんた! 何で避けるのよ!」
「むしろ、何で避けないと思うの……」
うさぎのことは、少し理解できると思っていたが、やはり、理解できないセリムだった。
「セリム……」
「あ、ノエル、大丈夫?」
腹を抑えたまま、見上げてきたノエルを気遣うも、彼はぐったりと横たわった。
「俺、寝るわ……」
ノエルは、気まずい雰囲気が本当に苦手である。
これは、彼なりの配慮で、セリムとうさぎで徹底的にやりあえということである。
セリムはうさぎと真正面から対峙した。
「あんた、昨日、リヤに何したの」
アダリヤは、昨日のことをうさぎに話したのか?
セリムはうさぎに詰め寄られるようなことを、アダリヤにしただろうか。
もしかして、ぼんやりしているうちに、何かしてしまったのだろうか。
「え、何、セリム、リヤちゃんに手を出しちゃったの? だから心ここにあらずなわけ?」
「うるさいわよ、三編み! あんたは黙ってなさい」
ガバッと起きてきたノエルは、一瞬でうさぎに沈められた。
「あの子、昔のことを、夢で見たって、泣いてんのよ!」
「……」
あれは、アダリヤから言い出したことで、セリムが言い出したわけではない。
だが、セリムと話をすることで、いろいろなことを思い出してしまったのだろうか。
「うさぎ、泣いているアダリヤを置いてきたのか」
「そんなわけないじゃないの。強制的に寝かせてきたわ。眷属たちが様子を見てるわよ」
セリムはホッとした。
今、この瞬間にも、アダリヤがひとりで泣いているかと思うと、胸が潰れそうだった。
「もう一度聞くけど、あんた、あの子に何したの」
「何って……」
アダリヤは、うさきが悲しむから島の外の話、父の話はしたくないといった。
その話を、彼女がいない前で、してもいいものだろうか。
そこに、セリムの葛藤を見抜いたように、苛立ったうさぎが脅してきた。
「隠し事したら、あんたのためにも、リヤのためにもならないわよ」
聖獣の凄みというのだろうか、有無を言わさない雰囲気をまとったうさぎに、セリムは重い口を開いた。
「……本土へ父を探しに行きたい、という話だよ」
うさぎは、ため息を吐いた。
「あんたにその話をするなんて、運命って残酷ね」
嵐は過ぎ去ったようで、風は止み、雨は上がっていた。
しかし、いつでも雨を降らせるような雲がどんよりとしている。
セリムとうさぎの間にはピリピリした空気が漂っていたが、その空気を破ったのは、当のうさぎだった。
「三編み!あんた、あたしの洞穴で、リヤをみてなさい」
突然、声をかけられたノエルは、ビクッと肩を震わせた。
「コルマールの坊っちゃんは、アダリヤのためを思うなら、あたしについてきなさい」
うさぎはくるりと後ろを向くと、刺々しい言い方で、セリムについてくるよう言い放った。
「どこへ行くんだ」
このうさぎのことだ。
アダリヤに害になると思えば、もしかしたら、人間のひとりふたりは、どうにかしてしまうかもしれない。
何も聞かずについていくには危険すぎる。
教えてくれないだろうとは思ったが、聞いてみると、うさぎは、あっさり教えてくれた。
「ダンジョンよ」
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。
森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。
一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。
これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる