【本編完結、番外編更新】オークの島〜外れスキルで追放された侯爵令息と白銀の少女〜

丸井もち

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オーク

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「オーク……!」

 セリムはオークが存在することに驚いていた。
 なぜなら、オークは物語上の架空の生物だと言われていたからだ。

 セリムが驚いているのと同時に、オークも驚いていた。

「シ……リル……さ……ま」

 オークは、背を向けて逃げ出した。

「ま、待て!」

 おかしい。
 オークは、戦闘的と言われている。相手に背中を向けて逃走するなどありえない。

 それに、あのオークは、祖父の名前を知っていた。
 片言ではあったが、ハッキリと口にしていた。

 走って追いかけ続けると、通路の先は、行き止まりになっていた。

 しかし、オークは、行き止まりにぶつかると、光とともに突然姿を消した。

「セリム!下に何か書かれているわよ」

 あまりの焦りに、セリムはうさぎに名前を呼ばれたことに気が付かなかった。

「これは……何だ」

 地面には、色んな記号や模様の描かれた円が刻まれていた。

「あのオーク?ってやつは、これに乗って消えたのよ!」
「じゃあ、これに乗ったら追いかけられるな。うさぎ、行くよ」

 セリムは、うさぎと一緒に円の中に踏み出した。

 すると、地面に描かれた円は光を放ち、あっという間に、視界いっぱいに広がった。

 その時、セリムは脳がフワッとして、まるでスキルを多用したときのような感覚に陥った。

 脳の異常が治まり、目を開けると、新しい階に到着していた。

 あれが、新しい階に移動する為の、ダンジョンの仕掛けなのだろう。
 うさぎも、何事もなかったかのように、傍らに立っていた。

「あんた大丈夫?何か苦しそうな顔をしてたけど」
「大丈夫」

 1階は真っ暗闇であったが、この階は壁に灯りが埋め込まれていた。

 向こうから、ザッザッという足音が聞こえてきて、視線を向けると、10人ほどのオークがこちらへ歩いてきていた。

 先程のオークが仲間を呼んだのだろう。
 セリムは右手に持っていた剣を前に、ノエルが持たせてくれた鍋は盾のように構えた。

「シ……リルさ……ま……じゃ……な、い」
 先頭にいたオークは、セリムを確認すると、祖父シリルではないと片言で言った。

 だいたい、セリムは祖父シリルと髪色くらいしか似ているところはないのだ。

「祖父のことを知っているのか!」
「……ま……ごか」

 先頭にいたオークはそう答えると、後ろに控えているオークから、何かノートらしきものを受け取り、めくり始めた。

 セリムは違和感を感じていた。
 魔物には知性はない。
 物語のオークも知性は低いとされている。

 だが、あのノートをパラパラとめくる姿などは、知性を感じさせた。

「そうか……」

 セリムは、この違和感の正体に気づいた。

 このオークたちは、どちらかといえば、魔物というより、人間の動きに近いのだ。

 オークは、ノートを閉じると、床に滑らせるようにして、こちらへ投げてよこした。

「シ……リル、様、の……」

 ノートは変哲のない、だだの古びたノートに見える。

 だが、何か攻撃するようなものが仕込まれていないか、セリムは目の前で止まったノートを睨んだ。

 ノエルと違って、セリムのスキルは見ただけでは発動しない。

 触って確かめようと意を決したところに、うさぎから声をかけられた。

「触っても大丈夫よ。その帳面から瘴気は感じないわ」

 ノートをめくっている間に攻撃されてもいいように、剣を構えたまま、拾い上げた。

「多分、あいつらは、あたしには近づけないわ」

 うさぎが、試しにじりじりとオークに近づくと、同じ距離の分、後ろに下がっていった。

「何だかわからないけど、今のうちに読んじゃいなさいよ」
「ああ」

 うさきが防御してくれている間に、ノートをめくる。

 そこには、懐かしい祖父の几帳面な文字が記されていた。

 だが、その懐かしさは、その文字の内容でふっとんでしまった。


『合成獣プロジェクト』
 

 全世界で禁忌とされる、合成獣開発のプロジェクトについてだったのだ。



「合成獣……だと」

 焦ってページをめくる。詳細な内容は丸飛ばしだ。

 合成獣とは、魔物と魔物を組み合わせて、新しい魔物を作り出す行為だ。

 強い魔物と強い魔物を掛け合せていけば、世界を滅ぼすことができるほどの合成獣が生まれるだろう

 そして、それは軍事転用されることが目に見えている。

 それは、いつか、世界をも滅ぼすことだろう。

 だから、世界的に、倫理的にも、合成獣を作ることは禁止されている。

 ノートをめくり、読み進めたセリムは、顔色を失くした。

「人間と……キラーボア……の合成獣」

 彼らは、オークに似せて作られた、人間とキラーボアの合成獣だったのだ。

 
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