【本編完結、番外編更新】オークの島〜外れスキルで追放された侯爵令息と白銀の少女〜

丸井もち

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ダンジョン

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「ここよ」

 うさぎが頭でダンジョンであるという扉を指し示した。
 扉や壁は蔦がからまり、シダが、その存在を隠すように生い茂っていた。

 そして、扉にはパドロック(南京錠)が鈍く光っている。

 セリムはパドロックの本体を左手でつかんで、スキル『理解』を発動させた。

 パドロックは、鉄でできており、全体的に腐食が進んで表面が赤く錆ついている。
 この腐食は潮風に長い間さらされていたことによるものだろうとセリムは想像した。

 続いて、パドロックの構造を『理解』したセリムは、空いた右手でU字型のツル部分を掴んだ。

「え、ちょっと、あんた、そんな、無理よ!」

 セリムはうさぎが叫んだ瞬間に、本体とツル部分をそれぞれ反対側に回した。

 パキンと音がして、錠前はバラバラになった。

「え……」
 振り向くと、うさきが口を開け、目を見開いて固まっていた。

「あ、ほとんど力は入れてないよ。腐っていたから、試しに回したら開いたんだ」
 本当は、スキル『分解』で、金属の腐食を進ませて壊したのだが、嘘は言っていない。

「あたしは、あんたがスキルで鍵を開けるんだと思っていたわ」
「それは工具がないとできないよ」

 スキル『理解』で、鍵部分の構造を理解すれば、工具を使って解錠することはできると思うが、工具がない状態なら破壊が一番早い。

 スキルは万能ではないのだ。

 扉を開けると、中からフォレバットが飛び出してきたが、聖獣効果なのか、セリムを上手く避けて外へ羽ばたいていった。

「行くわよ」
「ああ」

 ふたりは、硬い表情をしたまま、ダンジョンの内部に潜入した。

「思ったより魔物が出てこないことを思うと、聖獣効果なのかな」
「そりゃそうよ!感謝しなさいよね」

 ふふん、と胸を張って先を歩くうさぎは、大型の犬くらいの大きさになっている。

 聖獣は体の大きさを変えることができるそうだ。
 普段は体力温存で一番小さい、ふつうのうさぎサイズだが、頑張れば熊ぐらいの大きさになれるという。

 しかも、暗闇を照らすように身体が発光までしている。
 どういう仕組みなのか?
 聞いてみたが、本人にもわからないそうだ。

「それにしても、もっと殺伐としてるのかと思ったら、意外ときれいだよね」
「そうね、枯れ葉ひとつ落ちてないわ」
「誰か掃除してるのかな」
「魔物が掃除なんかするわけないでしょ」

 それもそうだ。魔物は瘴気の中でも生きられるのだ。掃除の必要はない。

 魔物が全く出てこないことに、少し拍子抜けしつつも、あらゆる部屋を覗いて回った。
 部屋はほとんどが空き部屋で、きれいに掃除がされていた。

「なあ、うさぎ。ここにアダリヤに関するものが本当にあるのか」
「多分、あるはずなのよ。じゃないと説明がつかないことが沢山あるのよ」
 うさぎは、先を歩いているので表情はわからないが、声には、困惑がにじみ出ていた。

「どういうこと? 」
「リヤが食べていたっていうボアの肉、いつも、このダンジョンの裏に、血抜きして置いてあるのものなのよ」
「は……?」

 わざわざ、誰かが、血抜きしたものを、置いている……?

「あの子が着てるあのワンピースも、成長に合わせたものが、同じ場所に置いてあったの」

 貫頭衣のような簡単なものだが、確かに今のアダリヤに合わせた大きさであった。

「ボアは、うさぎが仕留めてきたものじゃなかったのか……」
「だーかーら、あたしは聖獣だから、キラーボアには逃げられるのよ。捕まえられるわけないでしょ」

 誰かが、ここで、アダリヤの成長を心配している。

「うさぎ、お前、本当は、ここになにがあるか知ってるんじゃないのか」

 そう、例えば、アダリヤの父がいるとかーー

 しかし、そうなると、祖父の手紙の『私のすべてがある第11島』という文面から、祖父はセリムにアダリヤの父を残したということになる。

 わけがわからない。

「推測でしかないわ。見たことはないんだもの」

 ふたりでああでもない、こうでもないと話しながら奥へ進むこと15分。

 何も誰もいないと思った向かい側から、ゆらゆらと火の玉がやってきたのだ。

 セリムは、素早く腰の剣を引き抜いた。

 剣を構えると、目の前から現れた人型の魔物に目を見開いた。

 ボアの頭、口からは牙がのぞいており、地肌は薄緑色。その姿は、王国の昔話に出てくる悪魔の手先……。


「オーク……!」

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