【本編完結、番外編更新】オークの島〜外れスキルで追放された侯爵令息と白銀の少女〜

丸井もち

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王国戦争

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 うさぎは、アダリヤについて喋り終わると、近くの木の下に座り込んた。

「喋り疲れちゃったわ。ちょっと、休憩させなさいよ」
 確かに、あれだけ喋れば疲れるかもしれない。

 セリムもそんなに急いでいるわけではないので、うさぎの傍らに座り、ひととき休息をとろうとした。

 そのとき、今度は、うさぎが問いかけてきたのだ。

「ねえ、あんたぐらいの年齢の男が、ふらふらと島に現れるんだから、戦争は終わったのよね」

「終わったよ」
「そう」
「うさぎ、戦争してたの知ってたの?」
「ええ……人づてに聞いたわ」

 少しの間があいた。
 この島には、アダリヤ以外いないのに、人づてに聞いたなんて、伏せる必要があるのか。

 本土のことも知らないアダリヤが、戦争をしていたことを、知っていたのか。

「どういうふうに終戦したのか、暇つぶしに教えなさいよ」
 セリムの思考は、うさぎの問いかけでぶち切られた。
 それが、人にものを頼む態度なのか。聖獣様はいつ何時も高圧的である。

「うさぎの耳には入ってこなかったの? 有名な話だよ」
 なんせ、その話は小説になり、ベストセラー。戯曲にもなっているのだ。

「あんた、この島には長く人間は来なかったのよ。知るわけないでしょ」

 うさぎは、戦争していたことは知っていても、終戦したことは知らなかった。

 ますます情報源がどこなのか気になるところだが、きっと普通に聞いても教えてはくれないだろう。
 下手したら、機嫌を損ねて、ダンジョンまで連れて行ってもらえないかもしれない。

「あるところに、お姫様がいました」
「何で昔話風なのよ」
 
 セリムは、うさぎのツッコミを聞き流した。

「あるとき、お姫様は、自分も国の役に立ちたいと志願して、衛生兵として戦争に参加しました」
「すごく行動力のある女ね」
「しかし、敵国に捕虜として捕まってしまいます」
「捕まるなんて、とろいわね」

 両極端な感想を言ううさぎに、確かに、とセリムも頷いた。

「ある日、捕虜収容所の視察に、敵国の王太子が来ました。そこで、この美しい衛生兵に一目惚れしてしまいます」
「王子様、ヤバいわね」
「ふたりはお互い惹かれ合うも、敵国同士。だけれど、葛藤の末、両思いになります」

 ひとことツッコミを入れながら聞いていたうさぎだが、とうとう不満げに立ち上がり、ブーと鳴いた。

「ちょっと、あたしは、どういうふうに終戦したのか聞いてんのよ」
「いや、だから、今話してるじゃない」
「ふざけてんの?!」
「本当、ふざけてるよね」

 セリムは真顔でそう答えた。
 本当にふざけていると思っているからだ。

「……遮って、悪かったわね」
 セリムの真顔に、うさぎは珍しく謝った。

 この物語のような展開が、事実であると悟ったのだ。
 うさぎが座ったのを確認して、セリムは続けた。

「ふたりは様々な試練を乗り越えて、停戦協議にこぎつけます。そして、子孫に戦争を持ち越したくないと、終戦を宣言します」

 セリムは当時、まだ小さかったので、この停戦協議の詳細は知らないが、この戦争の原因で、戦場となったレンホルム地域の割譲さえ、双方の話し合いで解決したと聞いた。

「愛は世界を変えるのです、と結婚パレードで王女様は宣いました」
「ふーん、それで」

 これだけで終わるとおもわなかったのだろう。うさぎは続きを要求した。

「おしまい」
「おしまい?」
「その王女がアイキオの姫で、王太子は王国の王太子だよ。今年で結婚して8年になるよ」

 つまり、終戦して8年である。

「じゃあ、この200年はなんだったのか、ってなるよね。たくさんの血が流れた戦争は、こんな簡単に終結できるものだったのか、って」

 愛なんて不確かなもので、本当に世界は変えられるのか。
 じゃあ、何のために力は存在しているのか。

「人間は愚かね」
「そうだね」
「蹂躙されるのは、いつだって弱いものよ」
「そうだね」

 力を持たなかったセリムは、侯爵家で虐げられてきた。

「あんたは、蹂躙する側の人間でしょ。軍閥侯爵家コルマールの坊っちゃん」

 それを知らないうさぎは、セリムを鼻で笑った。

「僕は……」

ーー僕は、その力を与えられなかった出来損ないなんだよ、うさぎ。

「行くわよ、セリム・コルマール」

 うさぎは立ち上がり、座っているセリムを振り返った。
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