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・オークの島
セリム・コルマール
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あれから1ヶ月が経ち、ヤオ族の10名全員、脳の黒い部分を除去することに成功していた。
あとは、皆の身体の浄化作用で、少しずつ体外に排出されるはずだ。
セリムは毎日、皆の脳を、スキル『理解』で経過観察しているが、黒い部分が戻ってきている人は一人もいない。
逆に、黒い部分で圧迫されて凹んでいた脳が、元に戻ろうとしているのか、大きくなっている人もでてきている。
「ここにいたんだね」
砂浜で、波打ち際を眺めていたセリムは、声に振り返った。
「ああ……アルトゥロさん……」
ヤオ族、族長 アルトゥロ・マータ=ヤオ、アダリヤの父である。
合成獣化されていたときは、そこそこ筋肉のついた体格だったが、本来の彼は、スラッとした体型のようだ。
少しブカっとした貫頭衣の、腰部を飾り紐で縛っている。
彼は、ヤオ族の中でも、回復が早かった。
緑がかっていた肌の色は、元々の褐色の肌に近づいている。
牙は残っているものの、口の中に収まる程度になったらしい。
そう、見た目はほとんど、人間と変わらなくなっていた。
そして、一番回復がめざましいのは、言語能力だった。
カタコトだったのが嘘のようにスラスラと喋っている。
他のヤオ族の青年たちも、アルトゥロの回復を見て、悲観している者はいないそうだ。
「リヤがセリ君が元気がないと言っていてね」
セリムの肩をポンと叩くと、隣に座り込んで、顔を覗き込んできた。
目の前には、褐色の肌に黒い短髪、緑の目の男。
アルトゥロは本来、こういう色なんだなと、セリムは、ぼんやりと思って見ていた。
「コルマール家のものとして、この地に留まるべきか」
ここ最近、考えていた悩み事が耳に入ってきて、セリムは目を丸くした。
「セリ君の悩んでいること。違うかい?」
セリムは、家庭環境が特殊だった自覚がある。
そのため、ほとんど悩みを見抜かれたことがなかった。
なので、まさか、出会ってまだ1ヶ月程度の人間に、悩みを見抜かれるとは思っていなかった。
だが、アルトゥロの、被害者であるヤオ族の、本音が聞ける良い機会だ。
彼らはセリムを慮って、何も言ってこない。それが余計に辛かった。
「恨んで……ないんですか。祖父のこと」
「そうだね、全く恨んでないと言ったら嘘になる」
即答だった。
まるで、質問されることまで見抜かれていた感じだ。
セリムは抱いていた膝に、顔を埋めた。
やはり、祖父は恨みを買っていた。しかも、それは、正当な恨みだ。
本音が聞きたい、と言っておきながら、セリムは自分のことのように落ち込んだ。
「それでも、あれは僕らが望んだことでもあったから、その全てがシリル様のせいとは言い切れない」
アルトゥロも、セリムと同じように膝を抱いて、おでこをつけた。
「シリル様は、プロジェクトの開始まで、僕らに『本当にいいのか?今なら引き返せる』と何度も聞いていたんだよ」
セリムも、この島に来るまで、何度もノエルに同じことを言っていた。
無意識に、祖父との共通点を見つけて、嬉しいと思ってしまった、そんな自分を叱咤した。
彼は、もうセリムの憧れていた男ではない。そんな人間は幻想だったのだ。
「それでも、僕らは自分の暮らしを、自分たちの生きる場所を守れる力が欲しかった」
まぁ、今はもう、ないんだけどね、と、アルトゥロは力なく笑った。
焼き討ちにあったヤオ族の村は、住民のいなくなった放棄された土地として、停戦協定時に王国側に割譲されている。
「自分の能力以上のものを欲した、そのせいだとも言える」
アルトゥロは、自業自得だよね~と、軽い感じで自嘲すると、セリムの肩に手を置いた。
「そんな……」
セリムは、そんなことない、と言おうとして、遮られた。
「そして、私はね、セリ君。君がシリル様の孫だとしても、その責任を負うべきとは、僕らはみんな、思っていないんだよ。だって、別の人間なんだから」
いつだってセリムは、『シリル・コルマールの孫』で『コルマール侯爵の息子』として扱われてきた。
だからなのか、シリルのことを、自分のことのように思っていたようだ。
「私達にとって、セリム・コルマールは恩人なんだ。それは忘れないで欲しい」
アルトゥロは、セリムをきちんと『セリム・コルマール』として見てくれている。
それは、アダリヤも同じだった。
やはりふたりは親子だな、と感じた。
セリムは恩人と言われて、気恥ずかしくなってしまい、話題を変えようと別の話を振った。
「そ、そういえば、アダリヤとアルトゥロさんは、あんまり似てないんですね」
アダリヤは、褐色の肌に銀髪、赤い目をしている。
アルトゥロは褐色の肌は同じとしても、黒髪で緑の目をしている。
そう言われて、アルトゥロは、きょとんとしたあと、アッハッハと爽快に笑った。
「そりゃあ、そうだよ。リヤと私は血がつながってないからね」
あとは、皆の身体の浄化作用で、少しずつ体外に排出されるはずだ。
セリムは毎日、皆の脳を、スキル『理解』で経過観察しているが、黒い部分が戻ってきている人は一人もいない。
逆に、黒い部分で圧迫されて凹んでいた脳が、元に戻ろうとしているのか、大きくなっている人もでてきている。
「ここにいたんだね」
砂浜で、波打ち際を眺めていたセリムは、声に振り返った。
「ああ……アルトゥロさん……」
ヤオ族、族長 アルトゥロ・マータ=ヤオ、アダリヤの父である。
合成獣化されていたときは、そこそこ筋肉のついた体格だったが、本来の彼は、スラッとした体型のようだ。
少しブカっとした貫頭衣の、腰部を飾り紐で縛っている。
彼は、ヤオ族の中でも、回復が早かった。
緑がかっていた肌の色は、元々の褐色の肌に近づいている。
牙は残っているものの、口の中に収まる程度になったらしい。
そう、見た目はほとんど、人間と変わらなくなっていた。
そして、一番回復がめざましいのは、言語能力だった。
カタコトだったのが嘘のようにスラスラと喋っている。
他のヤオ族の青年たちも、アルトゥロの回復を見て、悲観している者はいないそうだ。
「リヤがセリ君が元気がないと言っていてね」
セリムの肩をポンと叩くと、隣に座り込んで、顔を覗き込んできた。
目の前には、褐色の肌に黒い短髪、緑の目の男。
アルトゥロは本来、こういう色なんだなと、セリムは、ぼんやりと思って見ていた。
「コルマール家のものとして、この地に留まるべきか」
ここ最近、考えていた悩み事が耳に入ってきて、セリムは目を丸くした。
「セリ君の悩んでいること。違うかい?」
セリムは、家庭環境が特殊だった自覚がある。
そのため、ほとんど悩みを見抜かれたことがなかった。
なので、まさか、出会ってまだ1ヶ月程度の人間に、悩みを見抜かれるとは思っていなかった。
だが、アルトゥロの、被害者であるヤオ族の、本音が聞ける良い機会だ。
彼らはセリムを慮って、何も言ってこない。それが余計に辛かった。
「恨んで……ないんですか。祖父のこと」
「そうだね、全く恨んでないと言ったら嘘になる」
即答だった。
まるで、質問されることまで見抜かれていた感じだ。
セリムは抱いていた膝に、顔を埋めた。
やはり、祖父は恨みを買っていた。しかも、それは、正当な恨みだ。
本音が聞きたい、と言っておきながら、セリムは自分のことのように落ち込んだ。
「それでも、あれは僕らが望んだことでもあったから、その全てがシリル様のせいとは言い切れない」
アルトゥロも、セリムと同じように膝を抱いて、おでこをつけた。
「シリル様は、プロジェクトの開始まで、僕らに『本当にいいのか?今なら引き返せる』と何度も聞いていたんだよ」
セリムも、この島に来るまで、何度もノエルに同じことを言っていた。
無意識に、祖父との共通点を見つけて、嬉しいと思ってしまった、そんな自分を叱咤した。
彼は、もうセリムの憧れていた男ではない。そんな人間は幻想だったのだ。
「それでも、僕らは自分の暮らしを、自分たちの生きる場所を守れる力が欲しかった」
まぁ、今はもう、ないんだけどね、と、アルトゥロは力なく笑った。
焼き討ちにあったヤオ族の村は、住民のいなくなった放棄された土地として、停戦協定時に王国側に割譲されている。
「自分の能力以上のものを欲した、そのせいだとも言える」
アルトゥロは、自業自得だよね~と、軽い感じで自嘲すると、セリムの肩に手を置いた。
「そんな……」
セリムは、そんなことない、と言おうとして、遮られた。
「そして、私はね、セリ君。君がシリル様の孫だとしても、その責任を負うべきとは、僕らはみんな、思っていないんだよ。だって、別の人間なんだから」
いつだってセリムは、『シリル・コルマールの孫』で『コルマール侯爵の息子』として扱われてきた。
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それは、アダリヤも同じだった。
やはりふたりは親子だな、と感じた。
セリムは恩人と言われて、気恥ずかしくなってしまい、話題を変えようと別の話を振った。
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