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降り立った世界はハードモード
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気が付いたら見知らぬ場所に横たわっていました。記憶はありません。なんて、他人に言われたらバカなこと言ってんな、で笑い飛ばしているところだ。不思議体験を語るにしてももう少しひねればいいのにと冷めたダメ出し付きで。だが残念ながらそれが自分の身に起きている以上、橘涼貴は笑い飛ばすわけにはいかなかった。
「え、何。どこ、ここ…」
起き上がった目の前に広がるのはヨーロッパにありそうな真白い石造りに華美な細工の施された柱と壁上部の窓、壁一面の壁画。自身が転がっていた大理石風の床にはいわゆる花曼陀羅のような円形の模様が描いてある。曼荼羅は光に照らされており、どこから届いているのかと辿って見上げたドーム状の天井は高く、中央に丸く空いた穴から光が差し込んでいる。窓から入ってくるひんやりとした風に頬を撫でられながら確かヨーロッパ旅行中に訪れた教会がこんな雰囲気だったのを思い出し、ここも教会か似たような役割の建物だろうと当たりを付ける。つまり涼貴は自分の知らないうちにどこかの教会に連れてこられたようだ。周りに人の気配はない。
だが何故?いくら思い出してみても、ここで気が付く直前まで自分は恋人の部屋にいたはずである。繁忙期が重なったために数週間ほとんど連絡も取れず、お互いの仕事が落ち着いた金曜日、やっと一緒の時間が過ごせるのだと張り切って腕によりをかけた夕食を2人で楽しみ、ソファに移ってワイン片手に映画を観た後は、今まで我慢した分心行くまでベッドでイチャイチャした。なんたってほぼ1か月振りだったのだ。ひたすらに満足するまで求め合い、甘い雰囲気のまま恋人が飲み物を取りに行く後姿を眺めて幸せに浸っていた、のに。
恋人か友達のドッキリ?と考えてみても自分の年上の恋人はこんな意味の分からないドッキリをするような性格をしていない。自分の友人達も羽目を外していた学生時代ならいざ知らず、社会人になった今こんな悪ふざけはしないだろう。万が一彼らが犯人なら一発殴るだけでは満足できない。
何かの事件に巻き込まれて連れ去られたのだろうか?といっても自分も恋人も事件に巻き込まれるような危ない人生を歩んできたつもりはこれっぽちもなければ、わざわざ自分を連れ出す価値も目的も想像がつかない。仕事関係でも何のトラブルもなかった。そもそも縛られず監視もいないようだし、拉致監禁としてはかなりお粗末だ。
結局涼貴はこれといって納得できるような理由を考え付くことは出来なかった。
グダグダ考えていても埒が明かない、涼貴は走り出してから考えるタイプの人間だ。取り合えず恋人に連絡を取らなければ、彼が無事か気になるし向こうも心配してるだろうから、と思ってふと自分の服装に気付き、一瞬気が遠くなる。着の身着のままだ。つまり、上裸にスウェットだけのなんともラフなスタイルである。ダメもとでポケットに手を突っ込んでみたが、糸くずしか出てこなかった。それもそうだ、ベッドの上でイチャイチャしていたのでもちろんスマホなんて持っているはずもない。2人でいる時はスマホを見ないという自分のこだわりがこんな時だけは恨めしく思う。
残された手段は外に出て心優しい人に助けを求めるのみだが、下スウェットのみの男がいきなり近づいたら話を聞いてもらう前に通報されてしまうだろう。流石に涼貴もそんな気まずい思いをする勇気は無く、もっと他の方法があるのではと少し考え込んでしまった。
「え、何。どこ、ここ…」
起き上がった目の前に広がるのはヨーロッパにありそうな真白い石造りに華美な細工の施された柱と壁上部の窓、壁一面の壁画。自身が転がっていた大理石風の床にはいわゆる花曼陀羅のような円形の模様が描いてある。曼荼羅は光に照らされており、どこから届いているのかと辿って見上げたドーム状の天井は高く、中央に丸く空いた穴から光が差し込んでいる。窓から入ってくるひんやりとした風に頬を撫でられながら確かヨーロッパ旅行中に訪れた教会がこんな雰囲気だったのを思い出し、ここも教会か似たような役割の建物だろうと当たりを付ける。つまり涼貴は自分の知らないうちにどこかの教会に連れてこられたようだ。周りに人の気配はない。
だが何故?いくら思い出してみても、ここで気が付く直前まで自分は恋人の部屋にいたはずである。繁忙期が重なったために数週間ほとんど連絡も取れず、お互いの仕事が落ち着いた金曜日、やっと一緒の時間が過ごせるのだと張り切って腕によりをかけた夕食を2人で楽しみ、ソファに移ってワイン片手に映画を観た後は、今まで我慢した分心行くまでベッドでイチャイチャした。なんたってほぼ1か月振りだったのだ。ひたすらに満足するまで求め合い、甘い雰囲気のまま恋人が飲み物を取りに行く後姿を眺めて幸せに浸っていた、のに。
恋人か友達のドッキリ?と考えてみても自分の年上の恋人はこんな意味の分からないドッキリをするような性格をしていない。自分の友人達も羽目を外していた学生時代ならいざ知らず、社会人になった今こんな悪ふざけはしないだろう。万が一彼らが犯人なら一発殴るだけでは満足できない。
何かの事件に巻き込まれて連れ去られたのだろうか?といっても自分も恋人も事件に巻き込まれるような危ない人生を歩んできたつもりはこれっぽちもなければ、わざわざ自分を連れ出す価値も目的も想像がつかない。仕事関係でも何のトラブルもなかった。そもそも縛られず監視もいないようだし、拉致監禁としてはかなりお粗末だ。
結局涼貴はこれといって納得できるような理由を考え付くことは出来なかった。
グダグダ考えていても埒が明かない、涼貴は走り出してから考えるタイプの人間だ。取り合えず恋人に連絡を取らなければ、彼が無事か気になるし向こうも心配してるだろうから、と思ってふと自分の服装に気付き、一瞬気が遠くなる。着の身着のままだ。つまり、上裸にスウェットだけのなんともラフなスタイルである。ダメもとでポケットに手を突っ込んでみたが、糸くずしか出てこなかった。それもそうだ、ベッドの上でイチャイチャしていたのでもちろんスマホなんて持っているはずもない。2人でいる時はスマホを見ないという自分のこだわりがこんな時だけは恨めしく思う。
残された手段は外に出て心優しい人に助けを求めるのみだが、下スウェットのみの男がいきなり近づいたら話を聞いてもらう前に通報されてしまうだろう。流石に涼貴もそんな気まずい思いをする勇気は無く、もっと他の方法があるのではと少し考え込んでしまった。
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