悪役神子は徹底抗戦の構え

MiiKo

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渡る世間に鬼はなし

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明け方に急にやってきた俺に面食らっていたエルヴィスだけど、俺の必死の形相を見てすぐにコンラッドさんを呼びにやってくれた。

「父上もすぐに来られるはずだ。涼貴は少し温まっていなさい。」

夢から覚めてそのまま来たせいで薄い寝巻と裸足の俺に毛布を渡してくれる。いつの間にかポーターさんも温かい飲み物を作って持たせてくれた。

「1人で出歩いてはいけないと言いたいところだが、それどころではなかったのだろう?何があった?襲われたか?」
「いや、襲われてはいないよ…詳しくはコンラッドさんが来てから話すけど困ったことになりそうで。」
「困ったことか。涼貴1人では収まらないことなんだな?」
「うん、エルヴィス達や周りを巻き込むようなこと。」
「そうか、では一応兄上にも聞いてもらった方がいいかもしれんな。」

エリオットさんは自領だしすぐには来れないだろうと思ったがどうやらテレビ電話のような魔道具を使うらしい。使用する魔力が多いので普及はほとんどしていないそれを繋いでいる間にコンラッドさんもやって来た。寝巻にガウンを羽織っている。

「コンラッドさん、すいませんこんな時間に起こしてしまって。」
「いや、構わんよ。君がここまで慌てる大変なことがあったのだろう?」
「そのようです。今、兄上も呼んでいます。」

それから少しして、こちらも寝起きのエリオットさんが魔道具から浮かび上がる。一時も無駄にしたくない俺は挨拶もそこそこに夢の内容を3人に話して聞かせた。死の神と名乗る何かと話したこと、俺はそいつの加護がついていること、俺は死者を管理しないといけないこと、そのために俺のところへ瘴気が押し寄せるであろうこと。一息に話し終わると重い空気が立ち込める。

「…邪神ではなく死の神か。」
「それの話したことのどこまで信じられますか。何者かが涼貴に害をなそうとしたとも考えられます。」
「だが、人の夢に侵入する術など聞いたことがないぞ。」
「これが王族や神殿の妨害かそうでないかはまだ判断がつかん。だが涼貴は真実だと感じたからこそ急ぎ我々に報告したのだろう?」
「はい。俺の恋人のフルネームも知っていました。この世界でそれを知る人はいないので信憑性が高いのではないかと。」
「そうか…邪神がいいように君を使おうとしていると考えることも出来るが…どうするか。」

そりゃいきなりこんなこと言われても困るよね。俺だってまだただの夢かもしれないってちょっと疑っているし。

「お、俺も実際まだ完全に信じたわけではないですが、もしすべて本当で瘴気がここに来るようなれば皆さんに被害が行くと思って。それを防げればと皆さんに話しておこうと。」
「うむ。実は涼貴が本当にその、死の神だったか、の加護を受けているのなら先の刑場での魔力暴走も説明がつく。あれは加護によって涼貴の身が守られた証拠だろう。神子が襲われた時など似たような現象が起きると聞いたことがある。」
「父上…」
「瘴気については今働く者たちの数を最低限にしておこう。信じがたいことではあるが対策はとるに越したとこがない。」
「瘴気が涼貴に集まれば王族と神殿がこれ幸いと糾弾を始めるでしょう。迎え撃つ準備も進めておかねば。」
「あぁ。夢で邪神に会ったことは隠し通すべきだな。瘴気は何とかごまかせてもこればかりは言い訳出来ん。」
「それに、その神が話した内容。我々の知っている世界の常識と異なりますね。一度この国に伝わる歴史についても調べなおした方が良いのかもしれません。」
「うむ、そうだな。一部にしか伝わらぬ伝承があるかもしれん。エリオット、気取られぬように調査を進めろ。」

分かりました、と頷いてエリオットさんとの通信は切れた。俺は3人に話を聞かせられた安堵で一気に緊張が切れてへたり込む。

「涼貴、教えてくれてありがとう。君の夢が全て真実なら、君はこれから瘴気に相対さないといけないのだろう。どれほど役に立つかは分からんが、君の出せる魔力の最大値を上げる練習を進めよう。」
「ありがとう、エルヴィス…」

少し冷静になって俺はまた自己嫌悪に陥っていた。今でも十分な負担となっているのに更に面倒ごとを引き込んでしまった。瘴気自体は距離を取ってもらえれば何とかなるかもしれないが、瘴気を惹きつけると大々的に知られてしまったら…。王や神殿はやはり危険だとして俺を殺そうとしてくるだろうし、きっとそれを阻止しようとするアマデウス家の皆さんは邪神の肩を持つという大義名分のもと国賊とされてしまう。ここに数か月いる間にポーターさん達から色々と学んだ。アマデウス家は正義感が強く常に正しくあろうとするので国中から信頼されているが、同時に後ろ暗いところのある貴族連中からは疎ましがられている。なのに盤石な立場を保っていられるのはひとえに付け入る隙のない言動と強力な軍事力のためだ。それが、今、俺という爆弾を抱えている。俺が彼らの家の汚点となってしまう。

「涼貴、その顔はまたくだらないことを考えているだろう。」

エルヴィスが俺の目をのぞき込む。

「また自分のせいでとか、1人で何とかするとか言うんじゃないぞ。何度も言っているだろう。私たちは私たちの信念に基づいて行動している。何が起ころうとも我々の責任だ。」
「そうだ、涼貴よ。我らを信じなさい。もしこれでこの国と袂を分かつことになっても我らが後悔することはない。むしろ我らを失って困るのは国だ。君は自分のことを第一に考えていればよい。」

覚悟を決められていないのは俺だけだったのか。どうして悪い方にしか転がらないのを分かっていながらそこまで潔くいれるんだと叫びたくなるが、でもこれこそ仕方がないのだろう。瘴気が迫ってくるのはどうしても避けられない。エルヴィス達はこれから起こりうること全てを先に見越して納得した上で、それでも俺の側にいると言ってくれたんだ。

「ありがとうございます。俺も覚悟を決めました。」

瘴気だろうが何だろうがどんとこい。俺は死の神の加護持ちだぞ。
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