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第一章 遥か遠き理想郷
その5 人類は文化する
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サバンナでラクダを見つけた。
紐の応用である網を使って、それを捕まえてみせた。
首に縄を掛け集落に引っ張っていく。
運の良い事にメスだった。
実は俺が親子連れを狙っていたんだけどね。
メスのラクダは乳を出す。
その乳を木の器に入れて飲むのだ。
「つかまえて、飼う。ミルク飲む。これが酪農」
「らくのうー、らくのー」
この一連の手順を粘土板に絵で書いた。
左手の数字は80を切った。
次に教えたのは家の作り方である。
木で三角の骨組みを作って、干し草で覆うという簡単なものであるが、洞窟のないサバンナで肉食獣の襲撃から身を守る方法になるだろう。
「いえー、いえー」
家が出来た事で、新しくできるようになったことがある。
燻製だ。
家の中で火を焚き、その煙を浴びせることで肉から水分が抜け燻製肉となる。
また、皮を燻製にすることで、革製品が作れるようになる。
まあカチカチなので、丸木で叩いて柔らかくするという工程が必要だが。
「くんせー、ふくー」
こうして人類は初めて服というものを身につけた。
とりあえず腰蓑の作り方も教えておこう。
この作り方も石板にレリーフとして刻んだ。
左手の数字は40を切った。
農業は教えられなかった。
育つのに十分な時間を確保することができなかったのだ。
だがヒントだけは与えておこう。
草を植えて刈り取るという絵をレリーフに刻んだ。
左手の数字は20を切った。
次に教えたのは土器だ。
サバンナを縄張りにしたことで、沢ではなく川の土が手に入った。
これを使って泥で土器の壺や鉢を作った。
窯がないので、土器を家に入れ、家ごと火をつけた。
うーん、豪快!
まさに芸術的だな!
その土器と、川の貝と肉と野菜を使って、スープを作った。
川ではタニシっぽい巻貝が採れ、また、ドデカいカタツムリも採れた、握りこぶしよりデカい。
このカタツムリって、あのニュースで小笠原で問題になっていたアフリカマイマイだよなー。
代用エスカルゴの缶詰に入っているやつだ。
温かい液体を生まれて初めて飲むルーは、 目を輝かせながら「まいまい、うまいーうまいー!」と言った。
左手の数字は10を切った。
最後に俺が行ったのは彫刻である。
これはルーたち人類の為ではない、自分のために、自分の心の根底を忘れないために行ったことだ。
女神の像、すなわち理想のおっぱいを、再び造り出すのである。
コーン、コーンと石を刻む俺の横で、 ルーもそれを真似する。
だが石器では石を刻むのは難しい、いや無理だろそれ。
「ルー、木でつくりなさい」
俺は石器を使って木を削り、簡単な目と鼻と口を刻んだ。
「るーやる! きでつくる!」
俺の真似をするのが嬉しいのだろう、ルーは俺の横でいくつもの木造を作った。
そして俺は、俺の理想とするおっぱいの石像を完成させた。
左手の数字は1になった。
明日、この数字は0になるだろう。
そうなった時、何が起きるかはわからない、だが直感的にルーと別れることになる事はわかった。
俺は最後の一日を集落を見て回って過ごした。
チャーは ラクダの乳を動物の胃袋に入れていた。
動物の胃袋を革袋にする方法は俺は教えていない。
こいつは自分でそれに気づいたのだ。
ドーは ナツメヤシの実を燻製にしていた。
これも俺が教えていないことだ。
天日干しにすれば良いだけのことは黙っておこう。
ムーは捕らえた獣人に懐かれていた。
顔をベロベロと舐めあっている。
ルーは、踊っていた、そして歌っていた。
「かみーさまー、すごー、おいー、すきー、いっしょー、たべるー、るるるー、ちゃちゃちゃー、どどどー、むむむー」
その夜、俺が来た時と全く変わらない星が降る様な光あふれる空での下で、サバンナを縄張りにしたことで、星空を見ることができるようになった人類の元で、宴会が行われた。
「まつりー、まつりー、かみさま、まつりー」
この世界で俺の口に最もあったものは、ナツメヤシの実、すなわちデーツと、サバンナで見つけたイチジクの実だ。
それが木の皿に山盛りになって俺の前に出される。
そして、人類は歌う、ルーが創った歌を。
こいつらは俺に比べれば知恵も知識も全然足りない。
だがそれでも、懐かれたり、尊敬されるのは悪い気がしない。
「これー、かみさまー」
ルーが俺に木彫りの人形を渡してきた。
俺をかたどっているのだろうが似ても似つかない。
だがなぜだか、俺にはそれが、俺の姿のように見えた。
だが俺は言わねばならない、別れの言葉を。
「さよならだルー、そしてみんな! 俺のことは忘れても、あのレリーフは忘れるな。そして女神のおっぱいのこともなっ!」
そして星が消えた。
視界が暗転し、松明の光も、ルーの姿も消える。
ああ、やはりこうなったか。
これを予想していた俺は、土と砂で汚れたバッグの中に彼女の像、俺が元の世界から持ってきた芽ヶ野 瞳の胸像を入れておいた。
俺はバッグを抱える。
衝撃と轟音が鳴り響いた。
パァフー!
聞き慣れた音が聞こえる。
いや、聞いた記憶のある音が聞こえる。
車のクラクション音だ。
俺の後ろでガードレールにぶつかって止まったトラックがクラクションを鳴らし続けていた。
紐の応用である網を使って、それを捕まえてみせた。
首に縄を掛け集落に引っ張っていく。
運の良い事にメスだった。
実は俺が親子連れを狙っていたんだけどね。
メスのラクダは乳を出す。
その乳を木の器に入れて飲むのだ。
「つかまえて、飼う。ミルク飲む。これが酪農」
「らくのうー、らくのー」
この一連の手順を粘土板に絵で書いた。
左手の数字は80を切った。
次に教えたのは家の作り方である。
木で三角の骨組みを作って、干し草で覆うという簡単なものであるが、洞窟のないサバンナで肉食獣の襲撃から身を守る方法になるだろう。
「いえー、いえー」
家が出来た事で、新しくできるようになったことがある。
燻製だ。
家の中で火を焚き、その煙を浴びせることで肉から水分が抜け燻製肉となる。
また、皮を燻製にすることで、革製品が作れるようになる。
まあカチカチなので、丸木で叩いて柔らかくするという工程が必要だが。
「くんせー、ふくー」
こうして人類は初めて服というものを身につけた。
とりあえず腰蓑の作り方も教えておこう。
この作り方も石板にレリーフとして刻んだ。
左手の数字は40を切った。
農業は教えられなかった。
育つのに十分な時間を確保することができなかったのだ。
だがヒントだけは与えておこう。
草を植えて刈り取るという絵をレリーフに刻んだ。
左手の数字は20を切った。
次に教えたのは土器だ。
サバンナを縄張りにしたことで、沢ではなく川の土が手に入った。
これを使って泥で土器の壺や鉢を作った。
窯がないので、土器を家に入れ、家ごと火をつけた。
うーん、豪快!
まさに芸術的だな!
その土器と、川の貝と肉と野菜を使って、スープを作った。
川ではタニシっぽい巻貝が採れ、また、ドデカいカタツムリも採れた、握りこぶしよりデカい。
このカタツムリって、あのニュースで小笠原で問題になっていたアフリカマイマイだよなー。
代用エスカルゴの缶詰に入っているやつだ。
温かい液体を生まれて初めて飲むルーは、 目を輝かせながら「まいまい、うまいーうまいー!」と言った。
左手の数字は10を切った。
最後に俺が行ったのは彫刻である。
これはルーたち人類の為ではない、自分のために、自分の心の根底を忘れないために行ったことだ。
女神の像、すなわち理想のおっぱいを、再び造り出すのである。
コーン、コーンと石を刻む俺の横で、 ルーもそれを真似する。
だが石器では石を刻むのは難しい、いや無理だろそれ。
「ルー、木でつくりなさい」
俺は石器を使って木を削り、簡単な目と鼻と口を刻んだ。
「るーやる! きでつくる!」
俺の真似をするのが嬉しいのだろう、ルーは俺の横でいくつもの木造を作った。
そして俺は、俺の理想とするおっぱいの石像を完成させた。
左手の数字は1になった。
明日、この数字は0になるだろう。
そうなった時、何が起きるかはわからない、だが直感的にルーと別れることになる事はわかった。
俺は最後の一日を集落を見て回って過ごした。
チャーは ラクダの乳を動物の胃袋に入れていた。
動物の胃袋を革袋にする方法は俺は教えていない。
こいつは自分でそれに気づいたのだ。
ドーは ナツメヤシの実を燻製にしていた。
これも俺が教えていないことだ。
天日干しにすれば良いだけのことは黙っておこう。
ムーは捕らえた獣人に懐かれていた。
顔をベロベロと舐めあっている。
ルーは、踊っていた、そして歌っていた。
「かみーさまー、すごー、おいー、すきー、いっしょー、たべるー、るるるー、ちゃちゃちゃー、どどどー、むむむー」
その夜、俺が来た時と全く変わらない星が降る様な光あふれる空での下で、サバンナを縄張りにしたことで、星空を見ることができるようになった人類の元で、宴会が行われた。
「まつりー、まつりー、かみさま、まつりー」
この世界で俺の口に最もあったものは、ナツメヤシの実、すなわちデーツと、サバンナで見つけたイチジクの実だ。
それが木の皿に山盛りになって俺の前に出される。
そして、人類は歌う、ルーが創った歌を。
こいつらは俺に比べれば知恵も知識も全然足りない。
だがそれでも、懐かれたり、尊敬されるのは悪い気がしない。
「これー、かみさまー」
ルーが俺に木彫りの人形を渡してきた。
俺をかたどっているのだろうが似ても似つかない。
だがなぜだか、俺にはそれが、俺の姿のように見えた。
だが俺は言わねばならない、別れの言葉を。
「さよならだルー、そしてみんな! 俺のことは忘れても、あのレリーフは忘れるな。そして女神のおっぱいのこともなっ!」
そして星が消えた。
視界が暗転し、松明の光も、ルーの姿も消える。
ああ、やはりこうなったか。
これを予想していた俺は、土と砂で汚れたバッグの中に彼女の像、俺が元の世界から持ってきた芽ヶ野 瞳の胸像を入れておいた。
俺はバッグを抱える。
衝撃と轟音が鳴り響いた。
パァフー!
聞き慣れた音が聞こえる。
いや、聞いた記憶のある音が聞こえる。
車のクラクション音だ。
俺の後ろでガードレールにぶつかって止まったトラックがクラクションを鳴らし続けていた。
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