異世界人類を現代知識チートで導け!

相田 彩太

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最終章 ここから始まる理想郷

その17 俺と虚像の最終決戦

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 五日後の朝、俺たちは再び火山島に降り立つ。
 俺に腕にはいつものバッグが掛けられている。
 俺の左手の文字は1になっていた。
 だから、ここにいるのは、ここに来れる者、全てだ。
 総勢200人くらいだろうか、バス―とメルーは言わずもがな、パトー12世とドトー、巫女の女官、先のドラゴンとの戦いで活躍した者たち、そして、俺を見送りたいと志願した者たちだ。

 ごちそうとお酒もいっぱいあるよ!
 竜人女王ドラゴニュート・クイーンとの第二ランドに勝利したら、そのまま勝利のおまつりだ!

 そして、俺は何となく気づいていた。
 きっと、これが最後になる。
 もう、次にこの世界を俺が訪れる事はない。
 俺が伝えるべきことは伝え終えた。
 今日、ここで人類と他種族が争わず、共に歩める未来の道をひらけば、俺の役割は終わる。

 「よし、では行くとするか」
 「はい! 宝物の準備はばっちりです!」

 バス―と巫女たちが装飾で飾られた布に包まれた宝を持つ。
 この宝の製造の最大の功労者はバス―だ。
 俺では、あの装飾がおっぱいになりかねんからな。

 「神様、あの宝の正体は何ですか?」

 メルーが尋ねてくる。
 無理もない、あの宝の正体はバス―と一部の巫女しかしらない。
 本来は、俺がこの世界を去る時にみなに授けるつもりだったものだ。
 実はみなの分もちゃんとある。
 それは、別のつづらに入っているのだ。
 そして俺たちは竜人女王ドラゴニュート・クイーンの間に向かう。

 そこは相変わらず光の間だった。
 あの時と変わらない輝き、いや光の加減で変化するそれは、先日とは違った美しさがあった。

 「よく来たな、待ちわびていたぞ」
 「我らの母の宝に勝るものなど無いと分からぬとは、愚かな下等人類よ」

 ドラゴンの王子は相変わらず口が悪い。
 
 「まあ、たとえ我らの女王が下等人類の宝を認めたとしても、我らが認めぬがな」

 その他のドラゴンも口を揃えて言う。
 こいつらが居るせいで宝の間が狭くてかなわない。
 入りきれない奴は天頂の穴から覗き込んでいた。

 「かまわぬよ。もし、女王が認めても、お前たちが認めなければ、俺たちの負けでよいぞ」

 俺は余裕の表情で言う。

 「聞いたか! 同胞よ! 母よ! こやつは自ら負けるつもりだぞ!」
 「勘違いするな、負けるつもりはない。負けるとも思っておらぬよ。そして、それは俺たちの総意だ」

 俺の後ろにいる人類ヒューマン魚人マーマン爬虫人類レプティリアン鳥人バードマン、その全てが俺の声に同意する。

 「そうだ! 神様の叡智が世界に光をもたらした!」
 「神様の創意で、おいしいごはんとお酒がいっぱい!」
 「神様の慈愛はわれらが救い!」
 「神様の力は何よりも強い! でも、それは優しい強さ!」
 「愛と、おっぱいを胸に! 俺は、俺たちは世界に幸せを広める!」

 そうだ、おっぱいの素晴らしさを知れば、竜人女王ドラゴニュート・クイーンも認めざるを得ないだろう。
 
 「では、ここに示そう! 女王が一度も見た事がない、どの宝より素晴らしい物を!」

 そして、バス―と巫女の一団が包みをほどく。
 
 「こ、これは……鏡か!?」

 そう、鏡。
 全身がはっきりと映る三面鏡と、一枚の大鏡だ。

◇◇◇◇

 ドラゴンとの戦闘の準備中、俺はバス―に新たな科学を授けていた。

 「神様、バス―にしか出来ない事って何でしょうか?」
 「それは、芸術だな。本体は俺が科学の叡智で作り方を教えるが、周辺の装飾はお前たちの方が得意だ」
 「そんな! 芸術ではわたくしたちは神様の足元にも及びません」
 「そうでもないぞ、芸術とは己の心を形にして表現する物だ。共感する者の数は指標になるにこそすれ、優劣を決める物ではないのだ」

 そう、心に溢れる情熱を表現するのが芸術。
 それは、表に顕現せずにはいられない衝動。
 俺は『おっぱい! すばらしい!』と言わずにはいられないのだ。
 たとえ、その結果、後ろ指をさされる事になろうとも!

 「さて、それでは作り方を教えよう。材料はこれだ」

 俺はガラスの原料である『神様砂』、エタノールこと『超すごいお酒』、銅、硝酸、アンモニア、そして銀を並べる。

 「まずは一枚のガラス板を作るぞ」

 俺は溶けたガラスを付けた鉄パイプに向かって大きく息を吸い込む。
 そして、息を吹き込みながら腰を左右に振る。

 ふー! ふうっー!

 「これはガラスの吹き込み……えっ!? まだ続くのですか!? ああ! スゴイ! あんなに大きく! そんな、そんなに大きいと壊れちゃいますぅー!」

 だから『恋のハウツービギナーズ』で仕入れたセリフを吐くんじゃない!
 そう思いながらも俺は鉄パイプを回しながら、ガラスが筒状に長く、長く、長くぅー! なるように腰を振り続ける。
 ガラスは超巨大なソーセージのような形に膨らんだ。

 「ぜー、はー、ぜーはー」

 俺は息を荒くする。
 あー苦しい、酸欠になるかと思ったよ。

 「よ、よし、それが冷えたら上下を切り取って、縦に切り込みを入れて、窯に入れるぞ」
 「はいっ、暖めてあります!」

 俺はガラスの筒を窯に入れ、そして先っぽがT字になった棒を取り出す。

 「そして、この棒で平面にならしていくのだ」

 窯の中で熱されて再び柔らかくなっていくガラスが、その形を円筒から平面に変えていく。
 その様子は、ペットボトルの上と底面を切って、縦に切り込みを入れて展開していくようだと想像すれば分かりやすいだろうか。
 この方法の名は『円筒法』。
 19世紀のロンドン万博の目玉展示物『クリスタルパレス』。
 その大きな板ガラスを作った方法だ。

 「すごい! こんな大きな板ガラスは初めて見ました!」

 等身大の板ガラスを作るのは簡単に思えて難しい。
 実際、俺の世界の歴史でも、この円筒法が広まるまでは、ステンドグラス程度のサイズが精いっぱいだった。

 「よし、それでは、これから次の準備に入ろう」

 俺は銅を火で炙り、そして黒ずんだそれを超すごいお酒に入れる。
 酸化銅の黒ずんだ色が、銅のピカピカした輝きを取り戻していく。

 「これは、炎の呪いを解いたのですか!?」

 あー、メルーなら酸化された銅が還元されたと言う所だが、バス―にはそう思えるのか。

 「うむ、その方がファンタジーでよいぞ! 呪いを解いたのだ!」

 化学変化の内容は、あとでメルーに教えておこう。

 「さて、最後にこの板ガラスを側面にした容器に、硝酸に溶かした銀を入れて、アンモニアをたーっぷり入れる」
 
 銀は硝酸に溶け、そして大量のアンモニアが容器に投入される。

 「そして、これがクライマックスだ!」

 俺は銅の呪いを解いた液体、エタノールが酸化して出来たアセトアルデヒドを、銀が溶けた容器に入れる。

 「こ……これは!? わ、わたし!?」

 銀がガラス面に析出せきしゅつした。
 そこには、バス―や俺、巫女たちの姿が映っていた。
 これは『銀鏡反応』、その名の通り鏡を作る方法だ!

 「すごい! この鏡は今までのとは違います。まるで真実を映すみたい!」
 「バス―、あたしたちにも見せて!」

 鏡の前に群がる女の子たち。
 うーん、やっぱり女の子は美しい物が好きなのだな。
 実際、カワイイばっかだしね。
 この銀鏡反応で作る鏡は青銅を使った金属鏡とはレベルが違う。
 まさに、真実の鏡とも言えよう。

 「よーし、じゃあこれを量産するぞー!」
 「はい!」

 銀鏡反応は化学の領域だが、鏡の制作はどちらかと言えば、芸術の領域だ。
 職人の領域と言ってもいい。
 鏡の重要な要素である板ガラスを作るには体力と器用さが必要だ。
 これはバス―の方が得意な領域だ。

 「神様! バス―の乙女の息吹の成果はどうですかー!?」 

 ……見かけによらずダイナミックですね。
 俺が作ったよりも遥かに大きい円筒のガラスを膨らませながら、バス―は楽しそうに激しく腰をを振っていた。
 乙女の胸には夢と、おっぱいと、肺活量が詰まっていた。

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