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第二章 一回戦
その5 日常あるいは平穏な愛情の日々
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「で、では続いて料理愛好倶楽部の審査に入りましょう」
俺たちの審査の番だ。
「待たせたわね! これが私たちの『愛情日常可変弁当』よ!」
審査員の前に俺たちの弁当が並べられ、その蓋が取られた。
「見た目は可愛いクマの弁当ですな」
「ええ、かわいいシロクマのキャラ弁ね」
「えっ?」
「えっ?」
審査員が顔を見合わせる。
各々の弁当が違っていたからだ。
「そうです! これは同じ工程ですが、クマであり、シロクマのキャラ弁でもあります! では、その秘密をお見せしましょう!」
部長の合図で俺と蘭子は立ち上がり、台の上に並べていた布を取り外す。
そこには弁当箱に詰められる前の食材が2つ分並べられていた。
「秘密はクッキー型です。これを抜いた片方を焼いて、もう一方はそのままにしておきます」
台には焦げ目に付いた熊と白いままのクマが居た。
「それを入れ替えれば~、出来上がり~」
「とっても簡単です」
白地に茶色のクマ、茶色地に白色のシロクマが弁当箱に描かれる。
「これは面白い! 同じ物を使って、二種類の弁当を作ったのですね。さて! そのお味は!?」
司会が特別審査員にマイクを向ける。
「うーん、普通!」
「見た通りの味って感じ」
よし、俺の予想通り微妙な感じだぞ。
「そうです。これは普通の弁当です。手抜きと言ってもいい」
「手抜きは得意デース!」
いやらしい手つきでフリージア様が言う。
「しゃべる公然猥褻物はだまっとれ!」
うーん、部長の声が厳しい。
「ここに居る方々で、経験のある方はお分かりでしょう、朝に弁当を作ることがどんなに大変か!」
会場にうんうんという頷きが見える。
俺も頷く。
愛しのガキどものためとは言え、かなり大変だ。
「愛は無限だわ! 愛の力は偉大だわ! でも、金と時間と体力は無限にあるわけじゃないのよ!」
いいぞ部長、よく言った!
「だから、私たちは無理なく作れる、ちょっとした工夫で日常にスパイスを加える。そういった弁当を目指したの。これは、私じゃない、毎日家族に弁当を作っている彼のアイディアよ!」
部長が俺を指差す。
「おおっと、この弁当は意外や意外、料理愛好倶楽部の白一点! ニンジャコックのアイディアからだ!」
「そう、これは俺の弁当。愛情と言えば男女の愛を連想する人も多いが、俺はそれだけはなく、家族もあれば親子にもにあると思っている」
「ここで、ニンジャコックのプロフィールが入って来ました! 彼は幼い頃に父と死に別れ、母は看護師として多忙な日々、4人兄弟の最年長として3人の弟妹の面倒を見ているのです。もちろん弟妹のお弁当も毎日手作りだー!」
げっ、家族構成が公開された、部長の仕業か。
「愛情は手に入れるのは難しい、だがそれを維持するのはもっと難しく、それを紡いでいくのはさらに難しい。そして、人はいつも全力で走れる訳ではない」
そして俺はジャラジャラとクッキー型を両手に並べる。
「だから工夫する。クッキー型は100円ショップで買え、種類も豊富にある。実はアルファベットだってあるので、メッセージだって入れれる。そのバリエーションは無限だ」
俺はトランプ型と女の子の型を掌の中から選び取る。
「このふたつを使えば『不思議の国のアリス』が作れる。猫もある」
3つ目に猫も加えた。
「ストーリーも作れるし、白黒のマス目にすれば『鏡の国』にだって行ける。クマの型の凹みにハチミツを入れれば最強のクマの完成だ!」
最強のクマのくだりで少し笑いが起きた。
「これは、手抜きではない。かつて、フカヒレは乾物から手間を掛けて戻していたが、今は真空パックにより簡便になった。こういった人の叡智やアイディアが、小さい工夫と努力の積み重ねが暮らしを、愛情を重ねていくのだと俺は思う。この弁当は数多ある日々の弁当のひとつでしかないが、それが日常の1ページであっても、愛に満ちた人生の1ページに、生活の足しになればいいなと思っている」
うん、こっぱずかしい。
「イロモノかと思いきや! ニンジャコックは真面目だったー!」
うるさい! 覆面を被ってなきゃ言えねぇよ、こんな事!
蘭子も潤んだ目でこっち見るな!
あたし媚薬でおかしくなっちゃたのぉ~、という演技をするな!
あの弁当はそこまで強烈な効果はない!
「そう、彼はあんな恰好をしているが、好青年なのよ! そして、あの悪辣淫売女たちの料理には重大な欠点があるわ!」
「悪辣とは聞き捨てなりませんね。こう見えて、わたしたちは正義を旨にしているのですよ」
「はぁ!? 性技を胸にしているですって!?」
淫売女は否定しないんだ。
「あなたたちの料理の欠点は、冷めると味が落ちる事よ! 弁当としては致命的だわ!」
部長の声で、一般審査員の何人かが残っていた肉団子を口に運ぶ。
「ほんと! 肉の脂が固まってまずいわ!」
その声に同調する声が上がった。
さすが部長、これで俺たちの勝利だ。
だが、少し卑怯な気がするな。
◇◇◇
「さあ、では採点です! 採点方法を確認しましょう!
まず、ここに並んだ特別審査員10名が5点満点ずつ、合計50点満点で両チームを評価します!
一方で50名の一般審査員が4パターンで審査します。
青チームの料理愛好倶楽部の方が良いと思ったら青のボタンを押して下さい。
すると青チームに1点、赤チームに0点が入ります。
赤のB・B・Bが良いと思ったら赤のボタンを押して下さい、この場合は逆になります。
両方良いなら白のボタンを押して下さい、この場合は両チームに1点ずつ入ります。両方ダメなら黒のボタンを押します、これは両チーム0点です。
合計50点満点になります。そして、総計100点満点で点数の多い方が勝利になります」
司会の人の説明の通り、この競技は100点満点だが、半分の50点は一般審査員である。
そして、一般審査員は事前の各個人の登録情報と2つのお題を基準にコンピューターで選抜される。
今回のケースだと『愛情弁当』と『水着エプロン』に関係ある人が選ばれるって寸法だ。
だが、当然だが『水着エプロン』というキーワードで選抜される人は少ない。
個人登録情報は年齢や性別の他は、好きな食べ物とか、よく作る料理、家族構成とかだからだ。
『水着エプロンをおかずにすれば、ご飯何杯でも行けます!』という情報を登録している人はいないだろう。
だから必然と一般審査員は『愛情弁当』のキーワードで選出される。
結果、一般審査員は主婦や既婚男性、既婚女性、子供で構成された。
特別審査員も同様だ。
家庭料理研究家や料理界のカリスマ主婦と呼ばれる人が選ばれている。
海の家経営者も店で弁当売る以上、正統派な判断を下すはずだ。
この審査員たちなら、俺たちが有利。
そして、最後の冷めた弁当のくだりが致命傷になる!
B・B・Bには悪いが、戦う前に勝負は決まっていたのだ。
さすが部長! 奸智にかけては右に出る者はいないと言わしめる女よ!
「結果がでました! 料理愛好倶楽部83点! B・B・B75点! 青の料理愛好倶楽部の勝利ですー!」
「やったぁ!」
「当然よ!」
「ふっ! 俺は影! 影で後片付けを済ませた男よ!」
蘭子は快活に、部長は尊大に、俺は中二的に勝利の喜びを表現した。
「よくやったな、みんな! 見事な試合運びだったぞ!」
隣の師匠も賞賛の声を送る。
「それでは審査員の声を聴いてみましょう」
「料理はともかくあの下品さは食欲が失せるわ」(女性:お弁当研究家)
「あの女に票を入れるくらいなら、死んだ方がましだわ!」(女性:主婦)
「すみません、今日は家族連れで来ていますので……」(男性:会社員)
「冷めたらまずくなる弁当は売れないやわ」(男性:お弁当店主)
「『料理:女体盛り』をお題にすれば勝てたかもしれないね」(男性:アイドル大好物さん)
うん、審査員の声は俺たちの狙い通りの結果だったぞ。
一方のB・B・Bは意気消沈しているようだ。
「こんなヤツに負けるなんて、くやしい! でも……完食しちゃう!」ぱくぱく。
彼女たちは、悔しそうに俺たちの弁当を食べていた。
あー、あいつら平常運転だな。
そのぶれないスタイルには感服するぜ。
ともあれ、俺たちの勝利だ!
俺たちの審査の番だ。
「待たせたわね! これが私たちの『愛情日常可変弁当』よ!」
審査員の前に俺たちの弁当が並べられ、その蓋が取られた。
「見た目は可愛いクマの弁当ですな」
「ええ、かわいいシロクマのキャラ弁ね」
「えっ?」
「えっ?」
審査員が顔を見合わせる。
各々の弁当が違っていたからだ。
「そうです! これは同じ工程ですが、クマであり、シロクマのキャラ弁でもあります! では、その秘密をお見せしましょう!」
部長の合図で俺と蘭子は立ち上がり、台の上に並べていた布を取り外す。
そこには弁当箱に詰められる前の食材が2つ分並べられていた。
「秘密はクッキー型です。これを抜いた片方を焼いて、もう一方はそのままにしておきます」
台には焦げ目に付いた熊と白いままのクマが居た。
「それを入れ替えれば~、出来上がり~」
「とっても簡単です」
白地に茶色のクマ、茶色地に白色のシロクマが弁当箱に描かれる。
「これは面白い! 同じ物を使って、二種類の弁当を作ったのですね。さて! そのお味は!?」
司会が特別審査員にマイクを向ける。
「うーん、普通!」
「見た通りの味って感じ」
よし、俺の予想通り微妙な感じだぞ。
「そうです。これは普通の弁当です。手抜きと言ってもいい」
「手抜きは得意デース!」
いやらしい手つきでフリージア様が言う。
「しゃべる公然猥褻物はだまっとれ!」
うーん、部長の声が厳しい。
「ここに居る方々で、経験のある方はお分かりでしょう、朝に弁当を作ることがどんなに大変か!」
会場にうんうんという頷きが見える。
俺も頷く。
愛しのガキどものためとは言え、かなり大変だ。
「愛は無限だわ! 愛の力は偉大だわ! でも、金と時間と体力は無限にあるわけじゃないのよ!」
いいぞ部長、よく言った!
「だから、私たちは無理なく作れる、ちょっとした工夫で日常にスパイスを加える。そういった弁当を目指したの。これは、私じゃない、毎日家族に弁当を作っている彼のアイディアよ!」
部長が俺を指差す。
「おおっと、この弁当は意外や意外、料理愛好倶楽部の白一点! ニンジャコックのアイディアからだ!」
「そう、これは俺の弁当。愛情と言えば男女の愛を連想する人も多いが、俺はそれだけはなく、家族もあれば親子にもにあると思っている」
「ここで、ニンジャコックのプロフィールが入って来ました! 彼は幼い頃に父と死に別れ、母は看護師として多忙な日々、4人兄弟の最年長として3人の弟妹の面倒を見ているのです。もちろん弟妹のお弁当も毎日手作りだー!」
げっ、家族構成が公開された、部長の仕業か。
「愛情は手に入れるのは難しい、だがそれを維持するのはもっと難しく、それを紡いでいくのはさらに難しい。そして、人はいつも全力で走れる訳ではない」
そして俺はジャラジャラとクッキー型を両手に並べる。
「だから工夫する。クッキー型は100円ショップで買え、種類も豊富にある。実はアルファベットだってあるので、メッセージだって入れれる。そのバリエーションは無限だ」
俺はトランプ型と女の子の型を掌の中から選び取る。
「このふたつを使えば『不思議の国のアリス』が作れる。猫もある」
3つ目に猫も加えた。
「ストーリーも作れるし、白黒のマス目にすれば『鏡の国』にだって行ける。クマの型の凹みにハチミツを入れれば最強のクマの完成だ!」
最強のクマのくだりで少し笑いが起きた。
「これは、手抜きではない。かつて、フカヒレは乾物から手間を掛けて戻していたが、今は真空パックにより簡便になった。こういった人の叡智やアイディアが、小さい工夫と努力の積み重ねが暮らしを、愛情を重ねていくのだと俺は思う。この弁当は数多ある日々の弁当のひとつでしかないが、それが日常の1ページであっても、愛に満ちた人生の1ページに、生活の足しになればいいなと思っている」
うん、こっぱずかしい。
「イロモノかと思いきや! ニンジャコックは真面目だったー!」
うるさい! 覆面を被ってなきゃ言えねぇよ、こんな事!
蘭子も潤んだ目でこっち見るな!
あたし媚薬でおかしくなっちゃたのぉ~、という演技をするな!
あの弁当はそこまで強烈な効果はない!
「そう、彼はあんな恰好をしているが、好青年なのよ! そして、あの悪辣淫売女たちの料理には重大な欠点があるわ!」
「悪辣とは聞き捨てなりませんね。こう見えて、わたしたちは正義を旨にしているのですよ」
「はぁ!? 性技を胸にしているですって!?」
淫売女は否定しないんだ。
「あなたたちの料理の欠点は、冷めると味が落ちる事よ! 弁当としては致命的だわ!」
部長の声で、一般審査員の何人かが残っていた肉団子を口に運ぶ。
「ほんと! 肉の脂が固まってまずいわ!」
その声に同調する声が上がった。
さすが部長、これで俺たちの勝利だ。
だが、少し卑怯な気がするな。
◇◇◇
「さあ、では採点です! 採点方法を確認しましょう!
まず、ここに並んだ特別審査員10名が5点満点ずつ、合計50点満点で両チームを評価します!
一方で50名の一般審査員が4パターンで審査します。
青チームの料理愛好倶楽部の方が良いと思ったら青のボタンを押して下さい。
すると青チームに1点、赤チームに0点が入ります。
赤のB・B・Bが良いと思ったら赤のボタンを押して下さい、この場合は逆になります。
両方良いなら白のボタンを押して下さい、この場合は両チームに1点ずつ入ります。両方ダメなら黒のボタンを押します、これは両チーム0点です。
合計50点満点になります。そして、総計100点満点で点数の多い方が勝利になります」
司会の人の説明の通り、この競技は100点満点だが、半分の50点は一般審査員である。
そして、一般審査員は事前の各個人の登録情報と2つのお題を基準にコンピューターで選抜される。
今回のケースだと『愛情弁当』と『水着エプロン』に関係ある人が選ばれるって寸法だ。
だが、当然だが『水着エプロン』というキーワードで選抜される人は少ない。
個人登録情報は年齢や性別の他は、好きな食べ物とか、よく作る料理、家族構成とかだからだ。
『水着エプロンをおかずにすれば、ご飯何杯でも行けます!』という情報を登録している人はいないだろう。
だから必然と一般審査員は『愛情弁当』のキーワードで選出される。
結果、一般審査員は主婦や既婚男性、既婚女性、子供で構成された。
特別審査員も同様だ。
家庭料理研究家や料理界のカリスマ主婦と呼ばれる人が選ばれている。
海の家経営者も店で弁当売る以上、正統派な判断を下すはずだ。
この審査員たちなら、俺たちが有利。
そして、最後の冷めた弁当のくだりが致命傷になる!
B・B・Bには悪いが、戦う前に勝負は決まっていたのだ。
さすが部長! 奸智にかけては右に出る者はいないと言わしめる女よ!
「結果がでました! 料理愛好倶楽部83点! B・B・B75点! 青の料理愛好倶楽部の勝利ですー!」
「やったぁ!」
「当然よ!」
「ふっ! 俺は影! 影で後片付けを済ませた男よ!」
蘭子は快活に、部長は尊大に、俺は中二的に勝利の喜びを表現した。
「よくやったな、みんな! 見事な試合運びだったぞ!」
隣の師匠も賞賛の声を送る。
「それでは審査員の声を聴いてみましょう」
「料理はともかくあの下品さは食欲が失せるわ」(女性:お弁当研究家)
「あの女に票を入れるくらいなら、死んだ方がましだわ!」(女性:主婦)
「すみません、今日は家族連れで来ていますので……」(男性:会社員)
「冷めたらまずくなる弁当は売れないやわ」(男性:お弁当店主)
「『料理:女体盛り』をお題にすれば勝てたかもしれないね」(男性:アイドル大好物さん)
うん、審査員の声は俺たちの狙い通りの結果だったぞ。
一方のB・B・Bは意気消沈しているようだ。
「こんなヤツに負けるなんて、くやしい! でも……完食しちゃう!」ぱくぱく。
彼女たちは、悔しそうに俺たちの弁当を食べていた。
あー、あいつら平常運転だな。
そのぶれないスタイルには感服するぜ。
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