超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第三章 二回戦

その2 炎の試練

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 「ねぇ、なんで最初の作戦のままじゃだめだったの」

 お題が決まり、メニューの打ち合わせに入った俺たちに蘭子が問いかけてくる。

 「理由は簡単だ。審査員が想定と変わってしまうからさ」
 「あら、陸、わかってるじゃない」
 「部長こそナイス判断です」

 俺と部長が視線を合わせ、ぐふふと小さな笑い声を上げる。
 うーん、どんどん悪の組織っぽくなってきたぞ。

 「むー、あたしわかんなーい、もっとくわしく」

 蘭子が頬を膨らませ抗議する。

 「じゃあ、ちょっと詳しく説明すると『激辛料理』がお題になった場合、審査員は激辛料理が好きな人が選ばれるだろ」
 「うんうん」
 「それだと、激辛料理をハフハフ言いながら早く食べれてしまうんだ。激辛耐性があるからな」
 「ほえ~、それで?」
 「俺たちの作戦のキモは激辛辣火ファイヤーヒートの激辛麻婆をの審査員が時間を掛けて食べる時に、冷めてしまって油が固まり味が落ちる事を突く事だ。でもの審査員だと早く食べれてしまって、そうならない。だから作戦変更の必要があったのさ」
 「へぇ~、さっすがぁ!」

 それより問題は……

 「で、部長、メニューの原案はあるんでしょうね」
 「ないわ! 陸、考えて!」

 だと思った……
 部長は才能がある。
 勉強やスポーツに限らず、芸術や話術にも。
 だが、その高い才能が故に直感で判断する事が多い、特に一瞬の判断力を求められる時には。
 ズバーとやって、バーンと動いて、ドドドーンってすればいいのよ! というのが出来る人なのだ。
 そして、それは、大抵正しい。
 あの時『唐辛子』を口にしたのは、それならば勝てる策を考えられると踏んでの発言だろう。

 「はぁ、わかりました。こういうのはどうでしょう?」

 俺は、この10分で考えてたメニューと策を語る。

 「いいじゃないそれ! 流石ね、頼りになるわ! コンセプトはそれで、あたしたちで肉付けしましょ!」
 「りっくんすごーい、うん、じゃあちょっと工夫して、こうするのはどう?」
 「あとは、こうしましょう。いけるわ! これで!」

 俺の基本コンセプトに部長と蘭子のアイディアを付け足す形でメニューが完成した。

 「あたしたしは無敵よ! 無敵のコンビよ!」

 部長が俺の肩に手をまわし、肩を組み、顔を近づけてくる。
 近くで見るとやっぱり美人だ。しかも今日はいつもには見ないメイクまでしている。

 「ぶー、コンビじゃない、トリオよトリオ!」

 負けじと蘭子も逆側の肩を組んでくる。

 「そうね、頼りにしているわ、ふたりとも!」

 部長は才能に恵まれている。
 褒められると嬉しい、頼られると力になりたくなる、そしてスキンシップは俺の桃闇ピンクダークに効く。
 部長は男を落とす事にも才能があるのだ。
 天然でやってんだよなぁ、これ。

 ◇◇◇

 「さあ、調理がはじまりました! 『激辛料理』と『唐辛子』の二つのお題で双方はどんな料理を作るのかー!」

 俺たちの作る料理はシンプルだ。
 部長は卵と酢とオリーブオイルでマヨネーズを作る。
 俺は多種多様の唐辛子を、あるものはオーブンに入れ、あるものは油で揚げ、またあるものは糸状に切る。
 蘭子はトルティーヤとライスペーパーとガレットの皮、薄餅バオビンの準備だ。
 ここが、一番手間が掛かるが蘭子の腕ならば間に合うだろう。

 「料理愛好倶楽部! 手際が良い、見事な分業で進んでいるー! さらに目を引くのは、大量の唐辛子! 会場にある全ての種類の唐辛子が山のように積まれているー!」
 「それだけじゃないわ!」

 部長の声に合わせスタッフが追加の唐辛子を持ってくる。
 会場にはない流通が少ない品種だ。

 「これはオレンジ色の姿が美しい『弥平唐辛子』と青とうがらしの『ほどからなんばん』と『福耳とうがらし』だ! 辛い唐辛子の代名詞と言えば『ハバネロ』や『ジョロキア』ですが、日本の辛い唐辛子でトップを争うのが『弥平唐辛子』です!」

 へぇ、あの司会者の人、結構物知りじゃないか。
 そう、俺の骨子への部長の肉付けがこれ、会場にはない唐辛子の追加だ。
 俺の知らない品種で、数時間で手配出来るとうがらしを部長が取り寄せたのだ。

 「では、一方の激辛辣火ファイヤーヒートの調理を見てみましょう」

 俺の注意力が司会者の声に向けられる。

 「おおーっと、ここでも自己調達の特選素材が使われている。あそこに見えるのはトリニダート・スコーピオンのレッドとイエローだ! これはギネスに載っている最辛種です。この暴力的という辛さを持つとうがらしをどう料理するのかー!?」

 司会者の声を聞く所、俺も知識でしか知らないトリニダート・スコーピオンを使うらしい。
 部長はそれを知っていた、相手がそれを使うであろうとも予想していた。
 部長の話では、あれはそのまま食べる物ではなく、ほんの少しソースなどに入れると聞いたが、それをどう料理するのだろうか!?

 「そして用意されたのはー、陰陽火鍋だー! この激辛辣火ファイヤーヒートの看板料理! その火鍋で勝負に出たー!」

 火鍋という言葉に、俺と部長の視線が合う。
 アイコンタクトで、よし! というメッセージをわす。
 全て俺の想定通り。
 相手は激辛の火鍋で来るという俺の予想は的中した。
 俺たちの作る料理は唐辛子を美味しく食べる料理だ。
 対し、相手の火鍋は具材を唐辛子でおいしく食べる料理だ。
 どちらも激辛要素はある。
 ”激辛”という点ではトリニダート・スコーピオンを使う相手に分があるかもしれない。
 だが、これは”唐辛子”の勝負でもあるのだ。
 唐辛子そのものの美味しさを味わうという点では、俺たちの方に分があるはずだ。
 相手の料理としての完成度が俺たちの遥か上を行かない限りは、ここを強調すれば俺たちに有利になる。
 辛さでは劣るが、一定以上の辛さを超えれば、それは人が認識出来る領域ではなくなる。
 特にトリニダート・スコーピオンは日本では馴染みが薄く、会場に来ている激辛好きの人でも食べた経験のある人は少ないだろう。
 部長いわく、あれは伊達や酔狂で食べる物で、料理としてスパイス的以上に食べる物ではないわと言っていた。
 部長、またいわく、『便所の中でガタガタ震えて、神様にお祈りするレベル』らしい。
 スパイス以上に食べたんだね部長。

 俺は作業を続け、オーブンで焼かれた唐辛子と油でサクサクに揚げられた唐辛子をパットに並べる。
 生のままの唐辛子もそれに加わり、別のパットには蘭子が作った皮が並べられている。
 蘭子は仕事が早いな。
 部長も作業が終わり、俺たちは唐辛子を皮で包み始める。
 全部包む必要はない、唐辛子各種ごとに審査員の数だけ包めば良いのだ。
 その他にはキュウリの細切りを少々、これで完成!
 俺たちの『伏魔殿パンデモニウム万魔殿パンデモニウム・パンデツツーム』の完成だ!
 ネーミングは部長である。
 神様は部長にネーミングセンスの才能は与えなかったようである。
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