超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

文字の大きさ
44 / 120
第四章 準々決勝

その1 挑発は露骨に

しおりを挟む

 「で、挑発の仕方がこれですか」

 部長の挑発策は単純である。
 俺はいつもの忍者装束の背中に日輪を背負っている。
 その日輪に各種の野菜が点々としている。
 蘭子は大きな鯛の張りぼてに胴体を収め、黒い網タイツを穿いている。
 うーむ、元キャラは変態なのだが、蘭子が着ると網タイツが妙にエロい。
 俺の桃闇ピンクダークも、んばばと踊りだすぞ!

 そして、部長は大型山羊の角を被り、赤茶色の衣装と中華焼き豚が刺さった杖を持っている。
 うん、様々な厄災が詰まった箱を開けてしまった魔女っぽい衣装だ。
 並び順も徹底している。
 カメラや相手から見て、蘭子が一番前、俺が二番目、部長が最後尾だ。
 つまり、姿で相手を挑発する格好だ。

 「こんなんで、うまくいくかな~?」
 「大丈夫、相手はきっと乗ってくるわ。それよりも勝てる作戦の方が重要よ」

 部長の言葉は正しい、乗ってくるのは間違いない。
 挑発に乗らない場合というのは、挑発に乗ったら不利になるケースだ。
 ここでの不利は料理バトルの有利不利ではない。
 自分の料理人のキャリアとしての有利不利だ。
 もし、タベルト・ツクルト・ミンナトの3人が挑発に乗らなかったら、学生相手にまっとうに勝負しないというそしりは免れない。
 それは料理人の判断としては悪手だ。

 「そこはボスの作戦で問題ないだろう。それよりも、おぬしたちの体調は大丈夫か? 少年はもとより、ボスと少女も昨日の激辛料理のダメージが残っておるのではないか?」

 師匠が俺たちの体調の心配をしてくれる。

 「俺は大丈夫だ。今日の料理も極力試食は少な目にする」

 昨日は重湯おもゆしか食べれなかったが、胃の痛みは消え、体力も戻った。

 「あたしは快調だよ~。今日の魚対決は、あたしの一番の得意料理で勝負するよ~」

 昨日、蘭子は俺のお見舞いに着てくれたが、見た目からも言動からも、全く陰りは見えなかった。
 まったく、けしからん健康優良児である。
 部長はちょっと中座してたが。

 「私も平気よ。昨日、トイレの神様にたっぷりお祈りしておいたからね」

 そうだよな、あの激辛料理を食べるとそうなるはずだよな。

 「私はに対抗できる肉の手配を終えているわ。試合開始までには届くでしょう。だから私は三番目ね」
 「え~と、あたしが先鋒で、りっくんが次鋒、なでちゃんが大将だよね」
 「いや、3人の場合は俺は中堅だろう。次鋒はやられ役の感じがするぞ」
 「次鋒レオパルドン行きます! グオゴゴゴ! ギャーッ!」

 ほら、部長も、ろくでもないセリフを吐いているいるじゃないか。

 「案ずるな少年。東映版なら瞬殺する側だ」
 「いや師匠、どちらも東映ですよ」
 「そういえばそうだな、これは一本取られたな。フハハハハ!」
 「「フハハハハ!」」

 うん、いつもの感じが戻ってきた。

 「ぶ~、3人が何言っているか、わかんな~い」

 そう、ぶーたれるな蘭子、普通はわからん、部長が異常なんだ。

 ◇◇◇

 「大会もいよいよ準々決勝! 第一試合はノーゲームの中から『激辛辣火ファイヤーヒート』の棄権により勝ち上がった『料理愛好倶楽部』と、特選素材とそのポテンシャルを120%引き出す調理で勝ち上がった『タベルト・ツクルト・ミンナト』だー!」

 俺たちはステージに上がる、コスプレ衣装で。
 『タベルト・ツクルト・ミンナト』の3人もステージに上がる。
 まともなコックコートだ。
 白と薄い青色と薄い桃色という違いはあるが、まともだ、よかった!

 「ふぅ」

 対戦相手が溜息をつき、かぶりを振る、やれやれと言った風に。

 「何よ! 何か文句があるの!?」

 部長が問いかける。

 「文句も言いたくなるわよ! なんなのその衣装は! 料理を舐めてるの!」
 「1回戦は迷彩ボディペイントしたミリタリーオタクだったし! 2回戦は、まわしスモーレスラーだったし!」
 「そして準々決勝はコスプレ学生!? 溜息もつかざるを得ないわ!」

 あー、この人たちも★超絶! 悶絶! 料理バトル!★っぽいチームと戦い抜いてきたのか。
 その気持ちは分かる、よく分かる。
 俺は初めてまともな料理人と対決する事になって安堵したけど、彼女たちはその逆で、3回連続でイロモノ系と当たったのか。

 「人を見た目で判断すると痛い目みるわよ!」

 部長はそう言うが、逆の立場だったら俺は相手を応援したくなるな。

 「御託ごたくやパフォーマンスはうんざりよ! 料理人なら洗練された料理の技術と、鮮烈な料理で語りなさい!」

 いやー、おっしゃる通りでございます。
 そうだよな、おっぱいやヒャッハーで語るのがおかしいんだよな。

 「いいわよ! 語ってやろうじゃない! 蘭子、先鋒はあなたよ! 陸、次鋒は任せたわ! 私は大将で最後を決めるわ!」
 「いっくよー!」
 「ふっ、世のため、家族のため、エンゲル係数の野望を打ち砕くニンジャコック! この日輪の恵みを味わいたいのなら、かかってこい!」
 「大地に眠る家畜よ、私に力を! ハッ! 与えよっ!」

 部長を中心に左を陸棲魚の蘭子が、右を忍ばないニンジャコックが構えを取り、そして俺たちは決めポーズを取る!

 「だから、そういうのを止めろと言っとんのじゃー!」

 うん、挑発は完璧だな。

 ◇◇◇

 「さあ、それでは1セット目を開始しましょう。蘭子選手とタベルト選手はステージに上がって下さい」

 蘭子の相手はタベルト選手、事前プロフィールでは魚のエキスパートとある。
 よし、俺たちの作戦通りに進んでいるぞ。

 「それでは、イニシアチブを決めて下さい」

 司会者が二人を促す。

 「コイントスでいいわね?」
 「いいよ~、あたし表」
 「では、裏で」

 二人の声を聞き、司会者がコインを投げ、手で受け止める。

 「表です」
 「やったぁ! じゃあ、あたしは先攻で『料理』を選ぶね」
 「うちは『食材』を選ぶわ」

 そして二人はお題を紙に書き、司会者に渡す。
 準々決勝にて初めて、談合を使わない方法でお題が決まったぞ。
 蘭子の腕ならば実力でも勝負になる、得意料理なら勝ち目もある。
 そして何よりも、蘭子は小細工とか奸智かんちとかに向いていない。
 正々堂々と正面から倒す!
 これが蘭子の作戦、逆を言えば、この戦法でしか蘭子は勝てない。

 「決まりましたー! お題は『料理:手作りかまぼこ』と『食材:くつぞこ』です!」

 くつぞこ? え、何? 大航海時代の飢餓状態での最後の手段に革製品を食べる逸話があるけど、それをするの? それとも靴を舐めるの!?

 「くつぞこか……、あれは美味しいわね」
 「えっ!? 部長、だれかの靴を舐めた事あるんですか!?」

 スパコーン!
 本気の蹴りが俺の顔面にヒットした。
 靴底は苦い土の味がした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。 でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。 今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。 なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。 今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。 絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。 それが、いまのレナの“最強スタイル”。 誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。 そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

処理中です...