超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第四章 準々決勝

その7 甘い世界

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 「調理時間が終了しました! それでは審査に移りましょう!」

 俺が冷凍室から出て来たのと、司会者の声が放たれたのは、ほぼ同時だった。

 「待たせたな、愛しのガキども! これが俺の『サクサクサラダアイスキャンディ』だ!」

 冷気の白い煙をたなびかせ、グラスに盛られたスティックサラダが一般審査員と特別審査員の前に並べられる。

 「それでは、試食して頂きましょう!」

 審査員の声に合わせて、愛しのガキどもは、スティックサラダを手に……、取らなかった。

 「ぼく、おやさいきらいー」
 「あたしも、やさいいやー」

 会場から愛しのガキどもの声が上がる。
 
 「これは、厳しい! やはり野菜嫌いの子供たちにスティックサラダは難易度が高かったのか!?」

 部長は再び頭を抱え、蘭子は相変わらず「ふぁいと~」と気の抜けた応援をしている。
 だが、これも俺の想定内よ!

 「ねえ、ニンジャさんが一生懸命に作ってくれたんだから、ちょっとでも食べましょ。ほら、おかあさんも食べるから」

 そう言って、とある女性が人参スティックを口に運ぶ。 

 「あたしアスパラたべれるよ」

 野菜嫌いといっても全部が嫌いというわけではない、人参とセロリはダメだが、アスパラならという愛しのガキどもも居る。
 とある少女がアスパラをかじった。

 「あまっ!」
 「あまーい!」

 その口から叫びがあがる。

 「なにこれ!? くっそ甘いんだけど!」
 「砂糖漬けじゃねーか!」
 「こっちは蜂蜜で、こっちは黒糖味や、野菜の味なんて殆どせんで!」

 特別審査員の席からも声が上がった。

 「あまか! あまかとよ! こりゃサラダじゃなかけん! 菓子や!」
 「甘いですね。でもサクサク感はいい感じです」

 会場から出る甘い甘いの声、その声にかれて、その他の子供たちも恐る恐る野菜スティックを手に取る。

 サクッ

 ポキンではなく、サクという音を立て、野菜がその口に吸い込まれていく。

 「あまーい! おいしー!」
 「これならたべれる! おやさいたべれるよ!」
 「そう、よくできたねー、おやさいたべれてえらいね」

 おそらく幼稚園児だろう、頭を撫でる母親と愛しのガキどもの姿が一般審査員席に見て取れた。

 「冷凍してアイスというかシャーベットみたいにしているのね。子供たちが好きそうだわ」
 
 あの特別審査員の人、見覚えがあるぞ。
 確か、選手としても参加した食育を得意としているエレメンタリーの神様、キッズランド・オイシイデスの人だ。
 既に敗退したと聞いたが、特別審査員も兼ねていたのか。

 「最初はどうなるかと思いましたが、蓋を開けてみれば大好評です。子供たちが我先にと『サクサクサラダアイスキャンディ』に群がっている!」

 司会の人の言う通り、愛しのガキどもは野菜スティックに群がっている。
 両手で棒のように持って左右交互にかぶりついている愛しのガキどもも居る。
 結果、嫌いな野菜の上位にランキングされる人参やセロリも瞬く間になくなっていった。

 「これ、サクサクなのは一度凍らせているからね」
 
 キッズランドの人が俺に目線を向け問いかけてくる。

 「その通り! 一度凍らせて、細胞内の水分を膨張させて細胞を破壊! それを糖分がたーっぷり入った調味液の中で溶かす事で野菜の中の水分と甘い調味液が浸透圧の関係で入れ替わる! これが中まで甘い秘密よ!」
 「それで中まで砂糖の味がしみていたのね。そして再び凍らせる事でさらにもろくしたのね」
 「見事な推察だ! 褒めておこう! 左様、愛しのガキどもの未発達の顎でも噛み切れるよう手を加えたのよ! 堅さも野菜が忌避される要因であるからな!」

 野菜が嫌いな要因は味だけではない、その食感というか堅さもだ。
 上手く咀嚼そしゃくできず、飲み込む時にウェッとなってしまうのだ。

 「へぇ、やるやないか。次はあたいやで」

 ツクルトさんが料理を持ってくる。
 それは、ドラマで見るような高級パーティで供されるような上品な姿だった。

 ◇◇◇
 
 「さあ、続いてはツクルト選手の審査です」

 再び料理が審査員たちの所に配膳される。

 「これが、あたいの『特選野菜のカナッペ』や!」

 うーん、この大会で初めてまともなネーミングを聞いた気がするぞ。
 その姿は薄くスライスされた大根、人参、セロリ、キュウリの上にマッシュされたジャガイモが載っている。
 クラッカーの代わりに野菜を使ったカナッペ風だ。
 その頂点はドレッシングで可愛い動物の絵が描かれている。

 「これは可愛らしくも美しい! その味やいかに!?」

 司会の人の声に促され、審査員たちがカナッペを口に運ぶ。

 「美味しい! 甘い! 野菜本来の甘さが生きているわ!」
 「本当! さっきの甘さとは次元が違うわ!」
 
 特別審査員席から好評の声が上がる。

 「ポテトおいしー、これならたべれるー」
 「うん、今までたべたおやさいとぜんぜんちがう」

 愛しのガキどもからも好評の声が上がった。
 部長も蘭子も美味しそうに食べている。
 あれ、部長が頭を抱えていない。
 そうか、部長も気づいているのか、では後は仕上げるだけだな。

 「こっちも好評だー! 先ほどの1セット目と同じく、高得点の好対決になるのかー!?」

 司会者さん、残念だがそうはならない、これはレベルの低い戦いになる!
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