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第五章 準決勝
その9 タッグマッチだ!
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「さあ! 第三セットが始まります! 前回準優勝チームのリーダーである三好真紅選手と、ニンジャコック選手の戦いだー! 前評判では真紅選手が圧倒的有利ですが、前評判を覆す事には定評がある料理愛好倶楽部のニンジャコック選手! 勝利の女神はどちらに輝くのか!?」
俺と真紅さんはステージで向き合う。
「俺の名はニンジャコック! ただいま推参! ちなみに推参とは"およびじゃなくとも参上"って意味だ! 無頼がって事さ! 俺のコックを知ってるかい!?」
「道化としては、それなりですが、それでは勝てませんよ。わたしにはわかります」
うーん、真面目系だな。
だが、そこが長所でもあり、また弱点でもあるのだ。
「それでは、イニシアチブを決めて頂きましょう!」
「コイントスでいいわね」
「うむ」
陽光を受けてキラリと光るコインが宙に舞い、そして真紅さんの手の甲に落ちた。
「表だ」
「ではわたしは裏ですね」
コインは裏だった。
「それでは、先攻で『料理』を頂きましょう」
俺は見逃さなかった、ほんの少し真紅さんの口元が上がるのを。
俺の見立てでは、彼女は元々感情豊かのだろう。
だが、昨年の決勝以来、氷の厨房戦士と言われるくらいに表情が冷たくなってしまったのだ。
「では、俺は後攻で『テーマ』にさせて頂こう。忠告しておく、全力でこい」
「もとよりそのつもりです。わたしにはわかっています」
俺と真紅さんの視線が火花を散らす。
「では、お題を書いて下さい!」
「はい、ここに」
真紅さんは美しい万年筆でサラサラとお題を書いた。
「俺の名前はニンジャコック! 一筆奏上! 天下御免の向こう傷よ!」
俺は筆を剣に見立て、シュパパと紙に空中でお題を書きこむ。
「おおーと、ここまでの2セットで暇だったのでしょうか!? 旗本退屈侍ニンジャ―マンが見事な筆使いでお題を書きこんだ―」
良かった、上手く書けた!
「さて、そのお題はどうなったのでしょうー!?」
俺はちらりと控え席に目をやる。
うざ子が、俺からのラブレターを読んで顔を真っ赤にしている。
気の利いた愛の詩が綴られているのではない。
うざ子の顔をみれば、俺たちの作戦が成功していたのが分かる。
あれはラブレターではない。
ラブレターを渡した時に、蘭子が何も反応しなかったのも、あらかじめ決めた作戦だったからだ。
もし、本物のラブレターだったら、その頃には、俺は八つ裂きになっているだろうけどな!
蘭子の手によって!
「ちょー、ちょーっと待って! 作戦変更ですわ真紅さん! 真紅さん!」
「ふふふ、無駄じゃよ。もはや手遅れじゃ。律儀に5分待つとはのぉ」
布団の中から、くぐもった笑いで部長が言う。
そのラブレターには、こう書かれている。
『フランス料理フルコース、高級ワイン付きでお待ちしています』と。
「お題が決まりました! 『料理:フランス料理フルコース、高級ワイン付き』と『テーマ:B級』です!」
「なっ!?」
真紅さんの顔色に動揺が走る。
「さあ、ここからが、勝負の始まりだ! 拙者の料理にときめいてもらうでござる!」
俺は覆面の下からキメ顔でそう言った。
◇◇◇◇
『お題ヲ受領シマシタ。調理時間ハ3時間デス。フルコース対決デスノデ、勝負ハ1品毎ニ交互ニ給仕スルコトニシマス』
料理コンピューターが詳細なルールを告げた。
「おおーっと、これは1品毎に出すスタイルでの審査となったぞ! 当然、先攻は真紅選手だー!」
狙い通り!
番組進行の時間を考えると、先攻がフルコースを出し切った後に、後攻のフルコースを出すとなると、食事と審査の時間が掛かり過ぎると踏んで、これを予想していたが、バッチリだ!
これで、お腹が膨れて評価が下がるという後攻の不利は格段に減ったぞ。
「ふむ、交互に出すとしたら、フルコースのメニューの組み立ては揃えねばならぬな」
「そうですね、フルコースには『前菜』『肉料理』『デザート』といったコースの流れのセオリーはありますが、サラダ、フレッシュフルーツの扱いなどには少々の違いがあります。わたしにはわかります」
「では、前もって流れだけでも決めよう。先攻のそちらが決めて良いぞ」
俺の言葉に真紅さんは少々考え込む。
おそらく、自らがお題に加えた『高級ワイン』と俺の『B級』をどのように組み込むかを考えているのだろう。
「それでは、『前菜』『スープ』『魚料理』『肉料理』『パン & チーズ』『デザート』『コーヒー or 紅茶』にしましょう。ワインを出すタイミングは任意としましょう。これはオーソドックスなメニューです。わたしにはわかります」
「異論などない。ちと確認だが、フルコースともなれば、出すタイミングも重要となる。アイスソースを掛けるタイミングやフランベといった作業はどうなる? 調理時間終了後であっても、そういった作業をしても良いのか?」
「わたしはかまいません。むしろ許可された方が良いですね。わたしは同意します」
俺と真紅さんの視線がビューモニターに注がれる。
『双方ノ申請ヲ許可シマス』
「ならば! 調理に取り掛かろうと言いたい所だが、コンピューターさんよ。3時間という調理時間は60人分のフルコースを作るには少なすぎないか?」
俺はさらにピコピコと電子音を奏でるビューモニターに向かって語り掛ける。
きっと3時間という制限も番組の進行上で出て来たのだ。
ならば、俺の提言に対するコンピューターの答えも予想できる。
いや、俺は、俺たちは予想していた!
『ワカリマシタ、時間ハ3時間デスガ、選手ガ所属スル、メンバーカラ、1名ノ、アシスタントヲ加エル事ヲ可能トシマス』
「にゃは! しんくーちゃんは、これを予想してたにゃね!」
酒瓶を置き、茶華さんが立ち上がる。
「そうです。進行を考えると、こうなる事は予想できます。わたしにはわかってました」
ほほう、あちらもやるようだが、俺たちはその先を行くぜ!
「な、なでちゃんは、こんなだから、あたしが出るね~! ふたりの初めての共同作業なんだから!」
ふんす! と息を荒くして蘭子が立ち上がる。
だが、すまない蘭子、俺のパートナーはお前じゃないんだ。
「少女よ、それは来るべき大切な時に取っておくのだ」
はやる蘭子を制止すると、一陣の黒い影が宙に舞い、そしてステージに降り立った。
「シュタ! 想いははるか! 宇宙を駆け抜けて! 走る、奔る、忍者疾風! さすらいの忍者料理人、食影! 少年、安心しろ! 拙者が来た!」
「あんたはメンバーじゃないでしょー!」
うざ子が叫ぶ。
「いや、コーチは立派なメンバーじゃぞ」
「そんなはずはないわ! このメンバー表を見れば、ぐうの音も出なくなりますわ!」
バサッ
うざ子が俺たちのメンバー表を広げる。
「う……」
「どうしたのじゃ、うざ子」
「し……試合前のメンバー表になかった『リザーバー:食影』の名が登録されてますわー!」
「あぶり出しというやつじゃ! 強い熱に反応する特殊インクで書いた食影の名が、太陽の強い熱で浮かびあがったのさ!」
「は、はかりましたわね! 撫子さん!」
あっちは仲良しだなー。
だが、俺と師匠のコンビなら負ける気はしない!
「にゃは! ともあれ、この『ヘイ! ミッション系ネーサンズ』と『忍者師弟コンビ』とのタッグマッチにゃね!」
うわぁ……、なんか負けそう。
俺と真紅さんはステージで向き合う。
「俺の名はニンジャコック! ただいま推参! ちなみに推参とは"およびじゃなくとも参上"って意味だ! 無頼がって事さ! 俺のコックを知ってるかい!?」
「道化としては、それなりですが、それでは勝てませんよ。わたしにはわかります」
うーん、真面目系だな。
だが、そこが長所でもあり、また弱点でもあるのだ。
「それでは、イニシアチブを決めて頂きましょう!」
「コイントスでいいわね」
「うむ」
陽光を受けてキラリと光るコインが宙に舞い、そして真紅さんの手の甲に落ちた。
「表だ」
「ではわたしは裏ですね」
コインは裏だった。
「それでは、先攻で『料理』を頂きましょう」
俺は見逃さなかった、ほんの少し真紅さんの口元が上がるのを。
俺の見立てでは、彼女は元々感情豊かのだろう。
だが、昨年の決勝以来、氷の厨房戦士と言われるくらいに表情が冷たくなってしまったのだ。
「では、俺は後攻で『テーマ』にさせて頂こう。忠告しておく、全力でこい」
「もとよりそのつもりです。わたしにはわかっています」
俺と真紅さんの視線が火花を散らす。
「では、お題を書いて下さい!」
「はい、ここに」
真紅さんは美しい万年筆でサラサラとお題を書いた。
「俺の名前はニンジャコック! 一筆奏上! 天下御免の向こう傷よ!」
俺は筆を剣に見立て、シュパパと紙に空中でお題を書きこむ。
「おおーと、ここまでの2セットで暇だったのでしょうか!? 旗本退屈侍ニンジャ―マンが見事な筆使いでお題を書きこんだ―」
良かった、上手く書けた!
「さて、そのお題はどうなったのでしょうー!?」
俺はちらりと控え席に目をやる。
うざ子が、俺からのラブレターを読んで顔を真っ赤にしている。
気の利いた愛の詩が綴られているのではない。
うざ子の顔をみれば、俺たちの作戦が成功していたのが分かる。
あれはラブレターではない。
ラブレターを渡した時に、蘭子が何も反応しなかったのも、あらかじめ決めた作戦だったからだ。
もし、本物のラブレターだったら、その頃には、俺は八つ裂きになっているだろうけどな!
蘭子の手によって!
「ちょー、ちょーっと待って! 作戦変更ですわ真紅さん! 真紅さん!」
「ふふふ、無駄じゃよ。もはや手遅れじゃ。律儀に5分待つとはのぉ」
布団の中から、くぐもった笑いで部長が言う。
そのラブレターには、こう書かれている。
『フランス料理フルコース、高級ワイン付きでお待ちしています』と。
「お題が決まりました! 『料理:フランス料理フルコース、高級ワイン付き』と『テーマ:B級』です!」
「なっ!?」
真紅さんの顔色に動揺が走る。
「さあ、ここからが、勝負の始まりだ! 拙者の料理にときめいてもらうでござる!」
俺は覆面の下からキメ顔でそう言った。
◇◇◇◇
『お題ヲ受領シマシタ。調理時間ハ3時間デス。フルコース対決デスノデ、勝負ハ1品毎ニ交互ニ給仕スルコトニシマス』
料理コンピューターが詳細なルールを告げた。
「おおーっと、これは1品毎に出すスタイルでの審査となったぞ! 当然、先攻は真紅選手だー!」
狙い通り!
番組進行の時間を考えると、先攻がフルコースを出し切った後に、後攻のフルコースを出すとなると、食事と審査の時間が掛かり過ぎると踏んで、これを予想していたが、バッチリだ!
これで、お腹が膨れて評価が下がるという後攻の不利は格段に減ったぞ。
「ふむ、交互に出すとしたら、フルコースのメニューの組み立ては揃えねばならぬな」
「そうですね、フルコースには『前菜』『肉料理』『デザート』といったコースの流れのセオリーはありますが、サラダ、フレッシュフルーツの扱いなどには少々の違いがあります。わたしにはわかります」
「では、前もって流れだけでも決めよう。先攻のそちらが決めて良いぞ」
俺の言葉に真紅さんは少々考え込む。
おそらく、自らがお題に加えた『高級ワイン』と俺の『B級』をどのように組み込むかを考えているのだろう。
「それでは、『前菜』『スープ』『魚料理』『肉料理』『パン & チーズ』『デザート』『コーヒー or 紅茶』にしましょう。ワインを出すタイミングは任意としましょう。これはオーソドックスなメニューです。わたしにはわかります」
「異論などない。ちと確認だが、フルコースともなれば、出すタイミングも重要となる。アイスソースを掛けるタイミングやフランベといった作業はどうなる? 調理時間終了後であっても、そういった作業をしても良いのか?」
「わたしはかまいません。むしろ許可された方が良いですね。わたしは同意します」
俺と真紅さんの視線がビューモニターに注がれる。
『双方ノ申請ヲ許可シマス』
「ならば! 調理に取り掛かろうと言いたい所だが、コンピューターさんよ。3時間という調理時間は60人分のフルコースを作るには少なすぎないか?」
俺はさらにピコピコと電子音を奏でるビューモニターに向かって語り掛ける。
きっと3時間という制限も番組の進行上で出て来たのだ。
ならば、俺の提言に対するコンピューターの答えも予想できる。
いや、俺は、俺たちは予想していた!
『ワカリマシタ、時間ハ3時間デスガ、選手ガ所属スル、メンバーカラ、1名ノ、アシスタントヲ加エル事ヲ可能トシマス』
「にゃは! しんくーちゃんは、これを予想してたにゃね!」
酒瓶を置き、茶華さんが立ち上がる。
「そうです。進行を考えると、こうなる事は予想できます。わたしにはわかってました」
ほほう、あちらもやるようだが、俺たちはその先を行くぜ!
「な、なでちゃんは、こんなだから、あたしが出るね~! ふたりの初めての共同作業なんだから!」
ふんす! と息を荒くして蘭子が立ち上がる。
だが、すまない蘭子、俺のパートナーはお前じゃないんだ。
「少女よ、それは来るべき大切な時に取っておくのだ」
はやる蘭子を制止すると、一陣の黒い影が宙に舞い、そしてステージに降り立った。
「シュタ! 想いははるか! 宇宙を駆け抜けて! 走る、奔る、忍者疾風! さすらいの忍者料理人、食影! 少年、安心しろ! 拙者が来た!」
「あんたはメンバーじゃないでしょー!」
うざ子が叫ぶ。
「いや、コーチは立派なメンバーじゃぞ」
「そんなはずはないわ! このメンバー表を見れば、ぐうの音も出なくなりますわ!」
バサッ
うざ子が俺たちのメンバー表を広げる。
「う……」
「どうしたのじゃ、うざ子」
「し……試合前のメンバー表になかった『リザーバー:食影』の名が登録されてますわー!」
「あぶり出しというやつじゃ! 強い熱に反応する特殊インクで書いた食影の名が、太陽の強い熱で浮かびあがったのさ!」
「は、はかりましたわね! 撫子さん!」
あっちは仲良しだなー。
だが、俺と師匠のコンビなら負ける気はしない!
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