超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太

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第七章 決勝

その1 師匠と師匠

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 「みなさん! こんにちわぁ! ただいまより、★超絶! 悶絶! 料理バトル!★第二回大会の決勝戦を開始します!」

 司会のラウンダが叫ぶ。
 今まではBブロックの審判を務めていたのだ。
 決勝の観客は約1万人、パパーンと花火の音が聞こえ、会場は熱気に包まれている。
 そして俺たちは決勝戦の相手、魚鱗鮨と相対する。

 「まさか貴様らがここに来るとはな。この寿師翁の目も曇ったものだ」
 「今日も愛情のたっぷりの、いい勝負をしましょうね」
 「まあ、魚鱗鮨の二連覇は決まったようなものだがな」

 初老の男がリーダーの寿師翁じゅしおう、紅一点で寿師翁の娘が安寿あんじゅさん、最後の若い男が土御門つちみかどだ。

 「数多の強敵ともを打ち倒し、来るも来たり決勝戦! クルクル廻る日輪と、つむぐは絆糸きずないと騎士ナイトの誇りとナイトが潜む影法師かげほうし! 奉仕の心でニンジャコックはナイスクック!」
 「こんどはまけないんだから~」
 「ふふふっ、今日も意地悪なお題にするわよー、あー楽しい! ケッケケーのケッ!」

 今日の部長はフランス革命劇と同名の魔女のスタイルだ。
 超人大全集を持っている悪魔ではない。

 「ここで! 大ニュースだぁ! 『料理愛好倶楽部』の謎の覆面忍者! 食影! 彼がその秘密のベールを脱ぐという話だぞぉ!」

 これは師匠と話し合って決めた事だ。
 試合が始まる前に正体を明かすと。

 「ふっ、拙者の出番だな」

 師匠が俺の前に躍り出る。
 
 「『料理愛好倶楽部』のコーチとして、時に解説し、時に助け、準決勝ではアシスタントとして素晴らしいワザマエを見せてくれた、彼! その正体とはぁ!?」
 「へっ、どんな奴がコーチに付こうとも、俺たちの勝利は揺るがないぜ!」
 「それはどうかな!」

 土御門の自信ある声に、俺は異を唱える。

 「土御門よ、お前は才能があり、優れた寿司職人だが、調子に乗りやすく、慢心しやすいのがたまに傷だ」
 「つ、土御門さんの弱点を一瞬で見抜いた!?」

 安寿さんが驚きの声を上げる。

 「今こそ見せよう! 拙者の正体を!」

 そして師匠は覆面を取る。
 俺は師匠を知っていた。
 いや、正確には見た事があったのだ。

 「や……山田の兄貴!」
 「ゆ……ゆう兄さん!」
 「よもやとは思っていたが、やはり、そうだったか。この馬鹿弟子がぁ!」

 魚鱗鮨の3人が驚きの声を上げる。

 「こっ、これはぁー! その正体は昨年の★超絶! 悶絶! 料理バトル!★第一回大会のMVPにして魚鱗鮨の切り込み隊長!」
 「拙者の名は山田 勇やまだ ゆう! かつての魚鱗鮨のメンバーにて、暖簾のれん分けでネオ魚鱗鮨の店長となった男よ!」
 
 そう、これが師匠の正体。
 『元敵側の人間』それが昨晩のクイズの正解。

 「どうして!? なんで兄貴が裏切ったのですか!?」
 「あ……あたしへ愛を語ったその口で、今度は誰に愛をささやいたの!?」

 ちなみに、こいつらと師匠には血縁関係は無い。
 兄弟子という意味で言っている。

 「まあ、よい」
 「で、ですが、師匠」
 「所詮、わしらは寿司を握る事でしか己を表現出来ない不器用な存在……」

 不器用ってレベルじゃねーぞ!

 「その通り! お前たちも寿司職人なら、寿司で語ってみせよ!」
 「ならば! ゆくぞ!」
 「寿司ファイトォー!」
 「レディィィィー!」
 「「「「ゴォー!!」」」」

 いや、ちゃんと言葉で語りましょうよ。

◇◇◇◇◇

 「まずは食影師匠の一番弟子である、ニンジャコックがお相手しよう!」

 クルリと横回転しながら、俺はみんなの先頭に躍り出る。

 「フフフ、こやつは拙者が手塩に掛けて育て上げた逸傑いっけつよ! そちらも最強の寿師翁を出した方がよいぞ」

 ハッタリだ。
 そして、相手がそれに乗らない事も、俺たちは知っている。

 「ぐわーはっはっはっ! 挑戦者チャレンジャーの立場から大きく出た物よのう! だが、その程度の雑魚、わし自らが相手してやるまでもないわ!」
 「師匠! ここは、この土御門にお任せを!」
 「よかろう! あやつの弟子と、わしの弟子、どちらが優れているか、勝利をもって示して見せよ!」
 「はい! 師匠!」

 俺の相手は土御門。
 昨年の★超絶! 悶絶! 料理バトル!★の優勝メンバーのひとり。
 大将:寿師翁、中堅:土御門、先鋒:山田、この不動の布陣で優勝したのだった。
 決勝で1敗した以外は全て勝利している。
 ちなみに寿師翁と師匠は共に全勝だったが、師匠がMVPを取れたのは、寿師翁が譲ったからだ。
 そして、不動の布陣は今年も変わっていない。
 大将:寿師翁、中堅:安寿、先鋒:土御門、準決勝までこの布陣が変わった事はない。
 きっと、決勝でも変わらないだろう。
 そして、戦法もきっと変わらない。
 俺は、そこに付けこむ!

 「さあ、先攻か後攻か、好きな方を選べ。譲ってやるぞ雑煮」
 
 雑煮ってなんだよ……せめて、雑魚とか雑種とか言うべきだろ。
 
 「後悔するなよ。ならば! 後攻で、貴様が選ばなければ『食材』を選ぼう!」
 「なっ!」

 土御門に動揺が走る。
 当然だ、土御門の今までの対戦相手は、先攻で『料理』を選んでいたのだから。
 
 「おい、雑煮、それが何を意味するか分かっているのか!?」
 「わかっているさ……『寿司』で来いと言っているのさ」
 「こっ、これはー!? ニンジャコック選手が、あの魚鱗鮨を前に寿司で来いと挑発しているぅー!」
 「さらに! 俺が選ぶ食材は、決して寿司が作れないような食材じゃないと宣言しておこう!」

 そして俺は一枚の紙を取り出す。

 「これを見てくれ、ラウンダ。この『食材』で寿司が作れないなんて事は無いだろ? むしろ、寿司に向いた食材ではないか?」

 俺は土御門に見えないように、その紙をラウンダに見せる。

 「ははぁ、これはこれは、これはお寿司にしたくなる食材ですねぇ」
 「だろう!? この食材で『こんなんで寿司が作れるかぁ!』なんて言うやつは、おらんと思うぞ」
 
 少しいやらしい笑みでラウンダが言い、俺も覆面の下からグフフと笑う。
 彼はわかっている、彼の目的を俺は知っている。
 それは、この大会を面白くする事だ。

 「いいだろう! 雑煮の挑発に乗ってやろう! 俺は先攻で『料理:寿司』で戦ってやろう!」
 「よくぞ受けた! ならば、俺は友との絆の力で戦おう!」

 そして、俺は合図を送り、そして江戸川を始めとする俺の友人たちが、その『食材』をテーブルに並べ始めた。
 
 「決まったー! お題は『料理:寿司』と『食材:スーパー見切り品半額刺身パック』だー!」

 ずらりと”半額”のシールが貼られた刺身がテーブルを埋める。

 「はっはっはっ! この会場には半額刺身パックは無く、貴様も持ち合わせていないだろうからな! 両チーム分、調達しておいてやったぞ! さあ! 好きな刺身を半分選ぶがいい!」

 「こんなんで! 寿司がつくれるかぁ!!!」
 
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