地球よいとこ たまにはおいで

相田 彩太

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第十三話 アブノーマリアン(Abnormalien)

アブノーマリアン(Abnormalien)

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 『あー今日も順調に暇を持て余していますので、地球観光致します』
 僕の共感を呼ぶタイトルで送られてきたメールは、機密情報Cに該当した。
 機密情報Cは銀河警察等の公的機関の要請や、銀河法務官の許可が無い限りはコテラの必要最低限のスタッフしか閲覧を許されない内容だ。
 具体的には僕とメイしか閲覧できない。
 つまり、この仕事を飛鳥に押し付ける事が出来ないのだ。
 面倒くさい。それが僕の正直な感想だった。
 「メイ、内容をかいつまんて説明してくれ」
 「了解致しました、マスター」
 メイがメールの内容を確認する。
 「マ、マスター、ご説明いたします」
 メイの声に驚きの色が混じる。嫌な予感しかしない。
 「先方の要望は、地球の観光と……」
 「観光と?」
 「地球生物の群れにメチャクチャに犯されたい、です」
 僕の思考が一瞬停止する。
 「あの、メイさんや、それは性的な意味で、ですか?」
 落ち着くんだ僕、希望の灯は消さない!
 「は、はい……、”もろちん性的な意味で”という注釈付きです」
 僕の名はビクター、地球は変態に狙われている。
 
 
 内容について僕も詳しく確認する。
 異星人エイリアンは三人、三種。
 地球の生物に例えるならば、直立歩行する毛むくじゃらの羊に近い外見を持つ、メリー星人。
 環形動物、ミミズやヒルのような紐状の太い胴体に、腕に相当する細い触手と、指に相当する細かい作業が可能な数十本の繊毛を持つ、ラグ星人。
 ケイ素系生命体であり、地球の生物網からは一線をかくし、地球で言う所の女性型メタルヒーローに似た容貌の、クリス星人。
 三人は暇を持て余す、多種族の女性の集まり『有閑マダムの会』のメンバーである。
 銀河星系人全体の生態系を見ると、地球の種がそうであるように、雄と雌の関係で子孫を残す種族は多い。
 彼女らもそうである。
 生殖方法も生殖管の挿入という一般的なものだ。
 そして、地球の生態系が多種多様であるという情報を聞き、この星ならば、まとめて倒錯したプレイが出来ると踏んで、このようなリクエストになったのだろう。
 超面倒くさい。
 なぜなら、この変態達に欲情する地球生物を多数準備しなくてはならないのだ。
 地球生物にとっては、似ていると言えども、異種族である。
 欲情させるには、薬物フェロモンや心理干渉が必要になるだろう。
 心理干渉は犬や牛馬程度の知能がある種族に可能な処置で、ある程度は、こちらの思い通りの行動を取らせる事ができる。
 だが、それらの強度によっては、哀れな地球生物は身体と精神に異常をきたす。
 「メイ、マニュアルS5Xに従って、地球生物を選定して、準備の上、彼女達をもてなしてくれ」
 「はい、了解しました。でも、これは大変ですね」
 「ああ、非常に手間が掛かる。場合によっては僕も手伝う」
 きっと手伝うはめになるだろうな。
 さようなら、僕の暇な日々。
 
 
 だが、僕の懸念は良い形で裏切られた。
 メイが十分な数の地球生物を調達してきたのだ。
 今、変態達と、その哀れな地球生物はプレイルームで行為の真っ最中だ。
 「そんなぁ、こんな、こんなにいっぱいだなんてぇ」
 「おっお願い、少し休ませてぇ」
 「くっ、こんな下等生物達に犯されるなんて、悔しいっ! でも……」
 うん、機密のため、緊急事態を除き、音声しか聞こえないが、お楽しみのようだ。
 そのプレイは十時間にもおよんだ。
 銀河連盟所属星人からすると、体力の限界に近い時間だ。
 まあ、メチャクチャにされたいというリクエストだから良しとしよう。
 
 
 「ゆうべはおたのしみでしたね」
 僕はにこやかな笑顔で言う。
 「ええ、久しぶりですわ。こんなに満足したのは」
 「悪いと思っていてもハマってしまいそうですわ」
 「今度は、別の方も誘ってみましょう」
 物騒な事を言っているが、メイで対応できるのなら、まあいいか、金払いも良いし。
 そして、三人はツヤツヤした顔で地球を去っていった。
 
 
 「メイ、今回は大変だったろう。でも、よくやってくれたな」
 僕はメイにねぎらいの言葉を掛ける。
 「いえ、マスター。今回の件は非常に簡単でしたよ」
 メイが謙遜する。
 「メイ、今回調達した地球生物は、何種類かな? そしてどんな処置をしたのかな? 薬物フェロモンかな? 心理干渉かな?」
 「マスター、調達したのは一種三十体で、処置は心理干渉Dです」
 心理干渉Dは軽度で、障害の残る恐れがほぼ無い処置だ。
 「いや、それはおかしいだろう。あの異星人エイリアンは姿形が全く違う。一種でその全てに欲情するなんてありえない」
 そう、生殖活動は有限だ。
 だから生殖出来ない対象に欲情してしまえば、貴重な機会を失ってしまう。
 生物として、それはおかしい。
 地球生物の中には他種の薬物フェロモンを発して罠を掛ける種もいる。
 だが、そういった化学的な干渉無しでは、欲情はしないはずだ。
 「メイもそう思います。ですが、事実です。そして、その種は簡単に調達できるのです。できてしまったのです」
 僕は、恐る恐る、心に浮かんだ地球生物を口にする。
 「メイ、ひょっとして、それは人類ですか?」
 「はい、ヒトの男性種です。汁男優募集と人類のネットワーク上で募集したら、簡単に集まりました」
 「しかしメイ、集めるのは簡単でも、ヒトを彼女たちに欲情させるなんて、出来るとは思えない」
 心理干渉は何でも出来る訳ではない。
 ある程度の知性体に対し、その選択肢にある・・・・・・行動へ導く事ができるだけだ。
 簡単に言うと、昼のメニューにカレーとラーメンのどっちを食べようかと迷っている相手に、カレーの選択肢を選ばせる事だ。
 選択肢の優先順が低い行動を取らせるにつれ、干渉度は上がる。
 例えば、さっきの例で、ハンバーガーを選ばせる干渉ならば、低レベルの干渉で可能だ。
 これが、昼食をらないなら、中レベル、生ごみを食べさせるならは高レベルの干渉だ。
 低レベルであれば本人の嗜好しこうを少し変える程度で済む。
 さっきの例で、カレーを選ばせ続ければ、カレー好きになるといった具合に。
 高レベル以上の干渉を行うと、当然だが精神に異常をきたす。
 そして何よりも、選択肢にない行動を取らせる事はできない。
 昼食に石を食べさせる事は、ヒトの選択肢に無いので、できないのだ。
 「メイ、つまり今回の件では、ヒトはあの三種三様の異星人全てに欲情する可能性ポテンシャルを持っていた、という事だな」
 それはありえない、種としてありえない。
 僕は再び同じ思考に行き着く。
 「はい」
 メイが答えた。
 「いや、おかしい、おかしいよ、それ絶対! メイ、僕に嘘を言っていないか!? 本当は強力な薬物フェロモンや心理干渉を施しただろ!」
 「メイだって、嘘だと思いたかったですよ!」
 メイが語気を荒げる。
 「本当なのか?」
 「はいマスター、この報告映像レポートをご覧下さい」
 メイが端末を操作すると、ブリッジの中央に映像が現れた。
 そこには、ヘッドセットを付けられた、ヒトの男性が椅子に座っていた。
 「彼はAV出演という形で調査に協力して頂いた男性です。あのヘッドセットから疑似立体映像が脳に送り込まれます。同じ映像が横の画面で確認できます」
 「椅子の横のゲージは?」
 「あれは性的興奮を示すゲージです。一定以上でランプが付きます」
 「つまり、あのランプが付けば、その時の映像に対し、彼は性的興奮を覚えるという事だな」
 「その通りですマスター、では始めます」
 
 最初に映されたのは若いヒトの女性の裸だ。
 ランプが点灯する。
 うん、正常だ。
 次はヒトの幼女の裸だ。
 ランプが点灯する。
 「おいおい、生殖可能な成長を終えてない幼体に反応するなんて、こいつはかなりの変態だな」
 僕は笑って言った。
 次はヒトの老婆の裸だ。
 ランプが点灯する。
 「おい、生殖が不可能な年齢の対象に欲情したぞ!」
 「はい、生物としてはおかしいです。でもこれは序の口です」
 次に映し出されたのは男の裸だ。
 ランプが点灯する。
 「なんで! 生殖の希望すらないのに!」
 僕は疑問に思ったが、先輩から引継ぎを受けた時に、そういう・・・・文化があると説明を受けた事を思い出した。
 「うん、文化的活動ならしょうがないな」
 しょうがなくない。
 だが、そう言って自分を納得させないと、おかしくなりそうだった。
 「では、続けます」
 次は羊とその生殖器だ。
 ランプが点灯する。
 「おかしいよ! ヒトですらなくなったよ!」
 「き、きっとマスターのおっしゃった文化的行動ですよ。ほら、大航海時代とかにあったという文献が……」
 うん、僕も知っている。
 「そうだな、緊急回避的な時代の、うっすらとした記憶が影響しているかもな」
 メリー星人に欲情した理由はこれか。
 「はい、ここからが本番です」
 えっ、まだ本番じゃなかったの!?
 次に映し出されたのは木のうろだ。
 ランプが点灯する。
 「動物ですら! 肉穴ですらなくなったぞ!」
 おかしい、おかしすぎる、恐怖すら覚える。
 メイが取り乱したのも理解できる。
 「まだ続きます」
 終わってくれ頼む。
 次に映し出されたのはピンク色の、穴の開いた、円筒だ。
 「メイ、あれは何だ?」
 「地球人の工業製品です。オナホールと呼ばれる物です。自慰道具ですね」
 「ついに生物ですらなくなったぞ!」
 僕は意を決して男の反応を見る。
 ランプは点灯した。
 「もうやだ……」
 そりゃラグ星人も満足する訳だよ。
 「次が最後です」
 「まだあるの!」
 あのオナホールはシリコンで出来ているらしい。
 ケイ素系有機化合物だ。
 クリス星人に欲情する理由も分かったから、これ以上、僕の常識を崩さないでくれ。
 「では、映します」
 映されたのは、地球上で自動車と呼ばれている工業製品とマフラーと呼ばれる排気口だ。
 ははぁわかったぞ。
 これが最後なので、ここでヒトの限界を示すって事だな。
 ランプは点灯してしまった。
 「ふざけんな! コラァ!!」
 「マスター落ち着いて、落ち着いて」
 「落ち着いていられるか! 無機物だぞ! 無機物! しかも移動手段を目的として製造された!」
 オナホールまでは、何とか理解できるかもしれない。
 僕の常識とは違えども、地球人のみに理解できる欲情ポイントがあるのだろう。
 それをオナホールに活かしていると考えれば、何とか説明がつくかもしれん。
 だが、最後のはダメだ。
 それ・・目的に製造された物でもない、金属無機物に欲情する生体反応メカニズムはどうなっているんだ。
 「結論を申しますと、地球人の男性は”穴ならば何でも欲情する!”です」
 わけがわからないよ。
 うん、地球人スゴイよ、お前がNo.1だよ。
 
 
 「あー、メイ、今日は疲れたな」
 「はい、マスター。地球人の前では、たとえメイが偽装外装を外しても、性欲の対象になってしまうでしょう」
 僕とメイは二人で溜息をつく。
 惰性で地球のニュースを流しているが、まともに見る気もおきない。
 「あら、どうしたの二人とも、やけに焦燥して」
 飛鳥が遊びに来た。だが、今日は相手をする気にならない。
 「飛鳥さん聞いて下さい!」
 「何があったの!?」
 「あ、ありのまま今日、起こった事を話します。
 地球に変態がやってきたかと思ったら……
 地球人の方が変態だった!
 な……何を言っているのか、わからないと思います。
 メイもどうなっているのかわかりませんでした。
 頭がどうにかなりそうでした……
 催淫剤だとか超スケベだとか、そんなチャチなものじゃあ断じてありません。
 もっと恐ろしい変態の片鱗を味わってしまいました……」
 「メイちゃん、痴漢にでも遭ってしまったわけ!? ダメよ勇気を持って警察に突き出さないと!」
 飛鳥が的外れな返答をする。
 こいつは、あんなケダモノの性欲の対象として見られているのか、少しかわいそうだな。
 いや、それが正常だと思っているのか。
 「不憫な……」
 「なんか、哀れみを受けている!」
 飛鳥は叫んだ。
 
 地球のニュース番組は明日も続く。
 『次はカルチャーのニュースです。今月の漫画部門、注目の作品は”モンスター娘の劣情”……』
 
 
 有閑マダムの会は、地球観光の希望者を募集している、
 『地球では、あなたの嬌声は誰にも聞こえない……』
 というキャッチコピーで。
 
 
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 へ、変態だー! AA(ry
 はい、地球人頭がおかしい(褒め言葉)というお話です。
 文中にある通り、生殖対象でないものに欲情するのは、生物的におかしいですよね。
 でも、家畜や車のマフラーといった、エクストリームオナニーのニュースはよく聞きますよね。
 それを想像してハァハァするのは、作者だけではないですよね、ね!
 本作がR15の理由は、このエピソードがあるからです。
 この話は、作者の趣味丸出しのため、パロディネタを多く仕込みました。
 出展は、
 希望の灯は消さない:ガンダムX、35話タイトル。
 ”もろちん”性的な意味で:名探偵コナンの誤植から。
 僕の名はビクター、地球は変態に狙われている:レイズナーの第一話、エイジの台詞「僕の名はエイジ、地球は狙われている」から。
 悔しいっ! でも……:有名エロ同人の名台詞。
 ゆうべはおたのしみでしたね:DQ1で姫と勇者が宿に泊まった時に言われる台詞。
 わけがわからないよ:魔法少女まどかマギカのキュウべえの台詞
 お前がNo.1だよ:DBのブウ編のベジータの台詞から。
 あ、ありのままに(ry:ジョジョ3部のポルナレフの台詞から。
 モンスター娘の劣情:モン娘ブームの火付け役、モンスター娘の日常から。
 です。
 サブタイトルはAlien(エイリアン)をもじって変態を意味するAbnormalからAbnormalien(アブノーマリアン)としました。
 最後の「地球では、あなたの嬌声は誰にも聞こえない……」はそれにちなんで、はエイリアン第一作のキャッチコピー
 「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」
 からです。
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