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第2章 夢からさめても
2-8.第0の願い グンマー・ニューデン(新田 群馬)
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「ようかんおいしー。頭にブドウ糖がチャージされて冴えたけど、まだわかんなーい」
お茶請けの羊羹を食べると、蜜子の機嫌は少し良くなった。
「さて、どこから説明したものかの」
「ここからがいいでしょう。俺の”本”のことは知ってますか?」
「知っとるよ。前の3日後の君が儂の下を訪れたのもそのおかげじゃった」
「むー、また前の3日後のセンパイだなんて意味のわからないこと言う」
「ああ、すまんすまん。あの直前の聖痕は13じゃったから13番目になるかの。儂の願いは『25年前に戻って、人生をやり直したい』じゃった」
「あれ? 13番目? センパイの本には0番目ってあったけど」
蜜子は凛悟から見せてもらった本の内容を思い出して言う。
「なんじゃ、それを知っとるならわかってもよさそうなものを。まあええ、ならわかるじゃろ。儂は1回タイムリープしておるのじゃ」
「タイムリープって、あの過去に行って歴史を変えるってやつですよね。センパイが好きなSF映画で観たことがあります。あたしは恋愛ものの方が好きですけど」
「少し違うな。過去に行って歴史を変えるのはタイムトラベル。今の知識や意識を過去の自分に移すのがタイムリープだ」
「どっちも似たようなものじゃありません?」
「違う。タイムトラベルだと過去の自分と会うことが出来る。だが、タイムリープでは過去の自分が自分自身となる。そのパラドックス性は時間ものの考察にはとても重要な情報で……」
本筋から離れていきそうな流れに群馬はコホンと咳払いをする。
「続けてよいかの?」
「あっ、ごめんなさい。どうぞ」
「儂の願い『25年前に戻って、人生をやり直したい』は凛悟君が説明した通り、過去の自分に未来の自分の知識や意識を転写させるものじゃ。”人生をやり直したい”というキーワードから神様が意図を汲み取ったのじゃろう。じゃが、君たちに必要なのはどうして儂がそんな願いに至ったかということじゃろう」
「うーん、あんましよくわからない。あたし理科は苦手で……」
頭にハテナマークを浮かべ、蜜子は首を傾げる。
凛悟はそれを見て軽く溜息を吐いた。
「わかりやすく俺も説明に加わりましょう。俺の認識が間違えていたら指摘して下さい」
「ああ、彼女のことなら凛悟君の方がよく知っているじゃろうからな」
「ええ~、あたしにはセンパイの知らないとこもまだイッパイあるんですけど。イヤンイヤン」
頭に照れマークを浮かべ、蜜子は首をくねらせる。
凛悟はそれを見て深く溜息を吐いた。
「いいか、時系列的に説明するぞ。俺たちの世界のひとつ前、元々の歴史の世界でも同じように”祝福ゲーム”が行われていた。メンバーも同じ、出来事もほぼ同じ、違うのは俺が群馬さんから手紙を受け取っていないことだけの世界だ」
「ふんふん」
「同じように皆に愛されるキングが誕生し、恐竜が復活して、それは夢になった」
「今朝までは同じだったのね。うん、わかる」
「俺は”本の願い”を考えていた。迷っていたのは時期だ。また夢になったり、後出しの願いで”本”が失われるのを恐れて」
「折角の願いがパーになるのは嫌ですものね」
「だから、今より少し後、数日後に俺は願ったのだろう”本の願い”を」
「3日後じゃよ。4月4日の朝に凛悟君は”本の願い”を願った。前の周の君から聞いた」
軽く茶を飲みながら群馬は指摘する。
「そうだったのですね。そして前の俺は”本”から他の”祝福者”の情報を手に入れた。その時点ではまだ群馬さんも”祝福者”だった。俺達は協力者を求めてここに来た、いや違う……」
「違うの? あたしには合っているように思えるけど」
「前の周の俺の目的は、死んだ人間は本当に生き返らないのかを確かめることだった。そうでしょう?」
「ああ、前の周の君の目的はそれだったよ。儂が家内を癌で亡くしていたと調べ、儂に白羽の矢を立てたのじゃよ。人が生き返る可能性、儂ならそれに乗ると踏んでな」
そう言って群馬は家の奥をチラリと見る。
「乳癌でしたよね。調べました。奥様が20年前に乳癌を患っていたと」
「ああ、雑誌のインタビューでそんなことを語ったのう」
「えっ!? でも奥さん元気そうだったじゃない」
「今は寛解、つまり治っている。インタビューで貴方は言ってましたね。その時、命が失われる恐怖を肌で体感し、後の作品作りに影響を与えたと。でも本当はそうじゃない。前の世界で奥様を失ったことがそうなのでしょう」
グンマー・ニューデンの作品群にはターニングポイントがある。
自然をありありと描いていた前期。
人物をまじまじと描いた後期。
世間の評価が上がるのは後期からだ。
「その通りだ。前の世界で儂は妻を失い、その悲しみから生前の彼女を画の中で表現しようとあがいた。そして生まれたのが今の作風じゃよ。しかしな……」
「どんなに描いても生前の奥様が忘れられなかった。”祝福”の希望にすがりたかった。そうでしょう」
「そう、だから儂は君の申し出に乗った。『奥様が生き返る可能性に掛けてみてはくれませんか』という申し出に」
「その可能性がタイムリープなの?」
「ああ、”死んだ人間は生き返らない”。だが『死んでない時代に戻ることなら出来るのでは?』というのが君の提案だった。それを聞いて儂は神の座を訪れたよ。そして訊いてみた。神様に」
そう言って群馬は想い出す、あの日の神との会話を。
──『”祝福”で過去に戻った時、死んだ人間は生き返るのか? その問いに答えよう。答えは変わらない。死んだ人間は生き返らない。だが、少し事情が違う。死ぬ前の時に君が戻ることになるのだ。まだ死んでいないということだな。君が何もしなければ、死んだ人間には死の運命が待っているだろう。ん? その運命は変えられるのかだって。その問いに答えよう。もちろんYESだ。運命なんていくらでも変えられるものだ。我の答えには満足したかね』──
「神様はそうおっしゃってた。前の周の君が正しかったよ。儂は妻が死んでいない時代に戻ることが出来た。まだ元気だった妻を見た時は涙が止まらなかった」
「よかったです~。あ、ということは奥さんのの運命は乗り越えられたってことですよね。愛の力で!」
時空を超えた物語に蜜子は感動にふける。
「そう言われると照れる。だが、実の所は金の力なんじゃよ。家内には内緒じゃがな」
「医学の力でもあるでしょう」
「そうじゃな」
「センパイ、どういうことです」
「乳癌治療薬にはターニングポイントがある。90年代後半に登場したハーセプチンだ。これはHER2陽性の乳癌治療に高い効果を発揮する。HER2陽性の乳癌は昔は”悪い乳癌”とも呼ばれ、進行が早く手遅れになりやすい癌だった。奥様はそのタイプだったのでしょう」
「そうじゃ。前の世界では妻が乳癌と診断されてから命を落とすまで1年もかからなかった。前の世界で儂はそのことをインタビューで答えたよ」
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
その格言通り、凛悟は経験こそ年齢相応であったが、だからこそ多くの情報を学ぶ姿勢を持っていた。
医学、薬学の歴史は彼の興味のある分野のひとつでもある。
「25年前は日本でハーセプチンの認可が下りる前。この時点の日本では治験を除いてハーセプチンによる治療は受けられない。だが、ハーセプチンが開発されたアメリカなら話が違う」
「儂も1周目の君に教えられるまでそんなことは知らなんだ。願いが叶った後、儂は妻とすぐに渡米したよ。そして、間一髪だが間に合った。素寒貧になってしもうたがな。君には本当に感謝している」
金を失ったのに感謝されるとは、凛悟は少し複雑な気分になった。
「わかったわ。群馬さんはあたしたちに成功したことを伝えようとあんな手紙を送ったのね」
「ああ、今朝、学園前に俺たちがいることは前の周の俺から聞いていたのだろう。あのタイミングなら確実だからな」
「その通りじゃ。前の周の凛悟君との約束じゃったからの。上手くいったら、あの日付と内容で手紙を送ってくれと頼まれたのじゃよ」
茶の最後のひと口をズズッと飲み、群馬は役目を果たした安堵の息を吐く。
「蜜子もこれで理解したか?」
ここまで説明したんだ、理解しなかったはずがない。
そんな口ぶりで凛悟は蜜子を見る。
「うーん、だいたいわかりましたけど、ひとつだけ疑問があります」
「なにがだ?」
「えっと。あの手紙の中身って前の世界の3日後のセンパイが考えたんですよね」
「そうだな」
自分への修飾が長い。
凛悟はそう思いながら答える。
「今の話だと『死んだ人間を生き返らせる抜け道としてタイムリープって方法がある』って流れになりませんか。どうして、センパイが考えている願いをすぐに願えって内容になるのかしら」
蜜子の疑念には一理ある。
だが、凛悟の頭の中には既にその答えもあった。
エゴルト・エボルトの第11の願い。
”祝福者”が権利を保持したまま死んだ場合、”祝福”はランダムではなくエゴルトに移る。
その願いの対策を早く考えるため。
いや待て。
そもそも、前の周の俺はどうして4月4日に”本の願い”を願った?
まだ様子をみてもおかしくなかったのに。
「その答えになるかどうかはわからないが、儂の知っていることを伝えよう。あの日、前の周の時、君たちは訪れた理由を話してくれた」
その理由はわかっている。
死んだ人間が生き返らせる抜け道を確認するた……め……。
その考えに到り、凛悟はハッと頭を上げ、自分の頭の回転の悪さを悔やむ。
前の周の自分には、抜け道を確認しなければならない理由があった。
4月4日に訪れたということは、その事を示唆していたから。
「前の周での4月3日の夜、コンサート後に”祝福者”、逸果 実が殺されたからだと君たちは言っていた」
ふたりの茶はとうに冷めていた。
お茶請けの羊羹を食べると、蜜子の機嫌は少し良くなった。
「さて、どこから説明したものかの」
「ここからがいいでしょう。俺の”本”のことは知ってますか?」
「知っとるよ。前の3日後の君が儂の下を訪れたのもそのおかげじゃった」
「むー、また前の3日後のセンパイだなんて意味のわからないこと言う」
「ああ、すまんすまん。あの直前の聖痕は13じゃったから13番目になるかの。儂の願いは『25年前に戻って、人生をやり直したい』じゃった」
「あれ? 13番目? センパイの本には0番目ってあったけど」
蜜子は凛悟から見せてもらった本の内容を思い出して言う。
「なんじゃ、それを知っとるならわかってもよさそうなものを。まあええ、ならわかるじゃろ。儂は1回タイムリープしておるのじゃ」
「タイムリープって、あの過去に行って歴史を変えるってやつですよね。センパイが好きなSF映画で観たことがあります。あたしは恋愛ものの方が好きですけど」
「少し違うな。過去に行って歴史を変えるのはタイムトラベル。今の知識や意識を過去の自分に移すのがタイムリープだ」
「どっちも似たようなものじゃありません?」
「違う。タイムトラベルだと過去の自分と会うことが出来る。だが、タイムリープでは過去の自分が自分自身となる。そのパラドックス性は時間ものの考察にはとても重要な情報で……」
本筋から離れていきそうな流れに群馬はコホンと咳払いをする。
「続けてよいかの?」
「あっ、ごめんなさい。どうぞ」
「儂の願い『25年前に戻って、人生をやり直したい』は凛悟君が説明した通り、過去の自分に未来の自分の知識や意識を転写させるものじゃ。”人生をやり直したい”というキーワードから神様が意図を汲み取ったのじゃろう。じゃが、君たちに必要なのはどうして儂がそんな願いに至ったかということじゃろう」
「うーん、あんましよくわからない。あたし理科は苦手で……」
頭にハテナマークを浮かべ、蜜子は首を傾げる。
凛悟はそれを見て軽く溜息を吐いた。
「わかりやすく俺も説明に加わりましょう。俺の認識が間違えていたら指摘して下さい」
「ああ、彼女のことなら凛悟君の方がよく知っているじゃろうからな」
「ええ~、あたしにはセンパイの知らないとこもまだイッパイあるんですけど。イヤンイヤン」
頭に照れマークを浮かべ、蜜子は首をくねらせる。
凛悟はそれを見て深く溜息を吐いた。
「いいか、時系列的に説明するぞ。俺たちの世界のひとつ前、元々の歴史の世界でも同じように”祝福ゲーム”が行われていた。メンバーも同じ、出来事もほぼ同じ、違うのは俺が群馬さんから手紙を受け取っていないことだけの世界だ」
「ふんふん」
「同じように皆に愛されるキングが誕生し、恐竜が復活して、それは夢になった」
「今朝までは同じだったのね。うん、わかる」
「俺は”本の願い”を考えていた。迷っていたのは時期だ。また夢になったり、後出しの願いで”本”が失われるのを恐れて」
「折角の願いがパーになるのは嫌ですものね」
「だから、今より少し後、数日後に俺は願ったのだろう”本の願い”を」
「3日後じゃよ。4月4日の朝に凛悟君は”本の願い”を願った。前の周の君から聞いた」
軽く茶を飲みながら群馬は指摘する。
「そうだったのですね。そして前の俺は”本”から他の”祝福者”の情報を手に入れた。その時点ではまだ群馬さんも”祝福者”だった。俺達は協力者を求めてここに来た、いや違う……」
「違うの? あたしには合っているように思えるけど」
「前の周の俺の目的は、死んだ人間は本当に生き返らないのかを確かめることだった。そうでしょう?」
「ああ、前の周の君の目的はそれだったよ。儂が家内を癌で亡くしていたと調べ、儂に白羽の矢を立てたのじゃよ。人が生き返る可能性、儂ならそれに乗ると踏んでな」
そう言って群馬は家の奥をチラリと見る。
「乳癌でしたよね。調べました。奥様が20年前に乳癌を患っていたと」
「ああ、雑誌のインタビューでそんなことを語ったのう」
「えっ!? でも奥さん元気そうだったじゃない」
「今は寛解、つまり治っている。インタビューで貴方は言ってましたね。その時、命が失われる恐怖を肌で体感し、後の作品作りに影響を与えたと。でも本当はそうじゃない。前の世界で奥様を失ったことがそうなのでしょう」
グンマー・ニューデンの作品群にはターニングポイントがある。
自然をありありと描いていた前期。
人物をまじまじと描いた後期。
世間の評価が上がるのは後期からだ。
「その通りだ。前の世界で儂は妻を失い、その悲しみから生前の彼女を画の中で表現しようとあがいた。そして生まれたのが今の作風じゃよ。しかしな……」
「どんなに描いても生前の奥様が忘れられなかった。”祝福”の希望にすがりたかった。そうでしょう」
「そう、だから儂は君の申し出に乗った。『奥様が生き返る可能性に掛けてみてはくれませんか』という申し出に」
「その可能性がタイムリープなの?」
「ああ、”死んだ人間は生き返らない”。だが『死んでない時代に戻ることなら出来るのでは?』というのが君の提案だった。それを聞いて儂は神の座を訪れたよ。そして訊いてみた。神様に」
そう言って群馬は想い出す、あの日の神との会話を。
──『”祝福”で過去に戻った時、死んだ人間は生き返るのか? その問いに答えよう。答えは変わらない。死んだ人間は生き返らない。だが、少し事情が違う。死ぬ前の時に君が戻ることになるのだ。まだ死んでいないということだな。君が何もしなければ、死んだ人間には死の運命が待っているだろう。ん? その運命は変えられるのかだって。その問いに答えよう。もちろんYESだ。運命なんていくらでも変えられるものだ。我の答えには満足したかね』──
「神様はそうおっしゃってた。前の周の君が正しかったよ。儂は妻が死んでいない時代に戻ることが出来た。まだ元気だった妻を見た時は涙が止まらなかった」
「よかったです~。あ、ということは奥さんのの運命は乗り越えられたってことですよね。愛の力で!」
時空を超えた物語に蜜子は感動にふける。
「そう言われると照れる。だが、実の所は金の力なんじゃよ。家内には内緒じゃがな」
「医学の力でもあるでしょう」
「そうじゃな」
「センパイ、どういうことです」
「乳癌治療薬にはターニングポイントがある。90年代後半に登場したハーセプチンだ。これはHER2陽性の乳癌治療に高い効果を発揮する。HER2陽性の乳癌は昔は”悪い乳癌”とも呼ばれ、進行が早く手遅れになりやすい癌だった。奥様はそのタイプだったのでしょう」
「そうじゃ。前の世界では妻が乳癌と診断されてから命を落とすまで1年もかからなかった。前の世界で儂はそのことをインタビューで答えたよ」
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
その格言通り、凛悟は経験こそ年齢相応であったが、だからこそ多くの情報を学ぶ姿勢を持っていた。
医学、薬学の歴史は彼の興味のある分野のひとつでもある。
「25年前は日本でハーセプチンの認可が下りる前。この時点の日本では治験を除いてハーセプチンによる治療は受けられない。だが、ハーセプチンが開発されたアメリカなら話が違う」
「儂も1周目の君に教えられるまでそんなことは知らなんだ。願いが叶った後、儂は妻とすぐに渡米したよ。そして、間一髪だが間に合った。素寒貧になってしもうたがな。君には本当に感謝している」
金を失ったのに感謝されるとは、凛悟は少し複雑な気分になった。
「わかったわ。群馬さんはあたしたちに成功したことを伝えようとあんな手紙を送ったのね」
「ああ、今朝、学園前に俺たちがいることは前の周の俺から聞いていたのだろう。あのタイミングなら確実だからな」
「その通りじゃ。前の周の凛悟君との約束じゃったからの。上手くいったら、あの日付と内容で手紙を送ってくれと頼まれたのじゃよ」
茶の最後のひと口をズズッと飲み、群馬は役目を果たした安堵の息を吐く。
「蜜子もこれで理解したか?」
ここまで説明したんだ、理解しなかったはずがない。
そんな口ぶりで凛悟は蜜子を見る。
「うーん、だいたいわかりましたけど、ひとつだけ疑問があります」
「なにがだ?」
「えっと。あの手紙の中身って前の世界の3日後のセンパイが考えたんですよね」
「そうだな」
自分への修飾が長い。
凛悟はそう思いながら答える。
「今の話だと『死んだ人間を生き返らせる抜け道としてタイムリープって方法がある』って流れになりませんか。どうして、センパイが考えている願いをすぐに願えって内容になるのかしら」
蜜子の疑念には一理ある。
だが、凛悟の頭の中には既にその答えもあった。
エゴルト・エボルトの第11の願い。
”祝福者”が権利を保持したまま死んだ場合、”祝福”はランダムではなくエゴルトに移る。
その願いの対策を早く考えるため。
いや待て。
そもそも、前の周の俺はどうして4月4日に”本の願い”を願った?
まだ様子をみてもおかしくなかったのに。
「その答えになるかどうかはわからないが、儂の知っていることを伝えよう。あの日、前の周の時、君たちは訪れた理由を話してくれた」
その理由はわかっている。
死んだ人間が生き返らせる抜け道を確認するた……め……。
その考えに到り、凛悟はハッと頭を上げ、自分の頭の回転の悪さを悔やむ。
前の周の自分には、抜け道を確認しなければならない理由があった。
4月4日に訪れたということは、その事を示唆していたから。
「前の周での4月3日の夜、コンサート後に”祝福者”、逸果 実が殺されたからだと君たちは言っていた」
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