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エピローグ 夢のつづき
エピローグ④ ふたりの未来に暗雲を!
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アイドルユニットKONK-Chu!の握手会場へと続く道をひとりの男が歩く。
男の名は湊 藤堂。
凛悟をして、この”祝福ゲーム”の勝者と言わしめた男である。
その表情は晴れやかだった。
藤堂は思い出す、夢から覚めてすぐに行った勝負のことを。
◆◆◆◆
「ほう、我と賭けがしたいと」
「せや、凛悟はんの第23の願いのもう一度や」
「死人は全てよみがえった。不幸な出来事も夢の中の記憶となった。これ以上さらに求めようというのか、欲張りだな汝は」
「折角の”最恵国待遇”やけん、使わんと損やん」
欲張りと呼ばれて逆に光栄とばかりに藤堂は胸を張る。
「よかろう。第23の願いをもう一度叶えよう。それで勝負の方法は?」
「サクッとじゃんけんで決めようや。あ、あいこもワイの勝ちちゅうルールで」
「強欲だな、それでは汝が勝つ確率は3分の2もあるぞ、我の倍だ」
「ワイは凛悟はんとは違うけんね。あ、もちろん後出しは自動的に負けやけんね」
「いいだろう。それで何を賭ける?」
神の問いかけに藤堂はグフフと笑う。
「ステータスオープン!」
その掛け声で虚空にウィンドウが開き23個の願いが表示される。
藤堂が”最恵国待遇”の願いを叶えた時、発動は脳内かこの掛け声で表示されるステータスウィンドウで選択すると願っていたからだ。
「いやー、一度やってみたかったとよ。こういうの」
そう言いながら藤堂はウィンドウのバーをいくつかタップする。
「賭けるのはこれや。あと、ワイの身に宿っとるこれも」
「了解した。では始めるとしよう」
神が光る手を軽く掲げ、勝負の体勢に入る。
「んじゃ、やろか。じゃーん、じゃーん、じゃんけん」
「ポン」
「しっ」
神は掌を出し、藤堂は拳を出した。
「あちゃー、ワイの負けや。勝ち目が多かったのに負けるなんて、ついとらんと」
「今、汝は遅れて出したように見えたが」
「後出しでもワイの負けや。どっちも同じやろ。気にせん、気にせん。じゃ、清算しよか」
笑いながら藤堂はそう言う。
まるで負けることが目的だったように。
「そうか。汝に異存がなければそれでいいが。それでは清算しよう」
神の手が動くと、ステータスウィンドウに光が灯る。
「汝が賭けたのは”最恵国待遇”で手に入れた第12と第14のダイダロスとティターニア兄妹の願い、第19の楊が願ったエゴルトに永遠の若さと無事故&無事件の願い、そして汝の身に宿った第16の実の結婚相手からの搾取の願いのもう一度だな。それを奪わせてもらおう」
「せや、でもな神さん、それじゃ足りんと思わん?」
「足りないとは?」
神の問いかけに藤堂はニヤリと笑う。
「ワイがもう一度した凛悟はんの願いは『全人類を代表して神さんと賭けをしたい』や。そして凛悟はんは命を賭けて、勝った報酬にその倍率に応じてそれを受け取ったやろ」
神はそれを聞いて「ほう」と全てを理解した声を出す。
「なるほど、足りないな。この賭けは我の方が不利、ならそれに勝ったなら不利の倍率に応じて賭けたものを奪わねば道理が通らぬというもの」
「あちゃー、やっぱそうなるかー、でもワイは賭けたものはひとつずつしか持っとらんで、どうしよか?」
「その問いに答えよう! 汝は全人類を代表して賭けに臨んだ。なら、凛悟の時と同じように賭けの代償は全人類の中から奪わせてもらおう!」
「あーれー、そんなごむたいなー」
ふたりはノリノリで言葉を交わす。
賭けの結果、”祝福”で授けられた超常の能力は神によって奪われ、消えた。
「さて、汝に与えられた残りのもう一度の権利はどうする?」
「その問いに答えると! これとこれと……、あと……、これもや、その3つを順番に叶えてな。あとはいらん」
ステータスウィンドウから3つタップし、藤堂はヨロシクと神にお願いする。
「了解した。しかし本当にいいのか?」
「よかよか、あとはワイにとっていらんやつやけん。父ちゃんと母ちゃんには目が覚めれば会えるけんね」
「そうか、確かに承ったぞ」
「あんがとな。さて、それじゃワイもそろそろ帰るわ。楽しい”ゲーム”やったで」
「我もだ。とても、とても有意義だったぞ」
藤堂は手を振り、神も手を振って返す。
そして藤堂はいつもの蒲団の上で目を覚ました。
母親の作る朝食の香りが鼻孔を揺らしていた。
◆◆◆◆
夢から覚めた藤堂は朝食をサッと取り、身なりを整えると実の握手会場に向かう。
このまま徹夜で並んでいつもの通り一番乗りの予定だ。
「タイムリーパーの兄ちゃんと姉ちゃんはこれでよしっっと。あとは……」
道すがら藤堂はタイター兄妹へとメールを出し、記憶から花畑蜜子の番号を思い出す。
ピロロロロ、ピロロロロ
少し長いコールの後、蜜子は電話に出た。
「嬢ちゃん、生きとったか。よかったな。あと、そこに凛悟はんおる?」
本来ならば彼にとってふたりに用はないはず。
だがそれでも、彼は聞きたかった。
ふたりの行く末を確認したかった。
『いますよー、目の前に』
「そっか、ならよか」
そして、確認した後、「幸せになりや」と言い残して藤堂は通話を切る。
「はぁー、やっぱ惜しかったかなー。いや、でもワイは間違えとらんはずや。凛悟はんとミッコはんにはえろうお世話になったし、ワイの友人たちも生き返った。これでワイだけ幸せになったらバチがあたる」
未練タラタラに藤堂は溜息を吐く。
彼は少し後悔していた、最後に神に願った3つのもう一度の願いのことを。
彼がもう一度したのは3つ。
──第2の願い ペロをいきかえらせて、ずっとげんきでながいきさせて──
第2の願いは完全に彼の自己満足のためだった。
幼女と犬が不幸になる結末なんてあってええはずなか、そんな気持ちを込めて願った。
──第13の願い あたしを絶対に幸せにしてくれる運命の人と出会いたい。今、すぐに──
第13の願いは、本来なら自分が運命の女と出逢うために使おうと思っていた。
だが、彼は危惧してしまった。
もし、ここで彼女が現れなかったら、と。
そして日和った。
彼のもう一度の3つめ、それは……。
──第21の願い 前の願いの対象を花畑蜜子へ──
そう、彼は己の自己満足の面を被せて、その危惧をなかったことにしたのだ。
「よかとよかと、ワイは誇ってよか。少なくともひとりの幼女とひとりの少女を幸せにしたんや。誇ってよか」
誰に聞かせるまでもなく、藤堂は胸を張る。
「運命がちょっと変わっていたら、そこから笑顔の実ちゃんが飛び出して来るはずや。いや、運命通りなら、ほら今にもあのかどから実ちゃんがかけてくるような気がするとよ! ほら! 今にも──」
ここが単行本で加筆されるとこやと思いながら、藤堂は見えもしない人影を角の先に見る。
だが、そこからは誰も現れることはなかった。
「やっぱそう上手くいかんか。まあええ、全部ワイのせいやけん」
「やっぱりアンタのせいだったのね!」
肩を落とした藤堂の肩が何者かに掴まれる。
それは、道行く人にはどこにでもいる普通の女性に見えた。
だが、彼にはわかった。
スッピンの実の顔だと。
「実ちゃん!? やっぱワイらは運命で結ばれとんのや!」
「は? 意味わかんない! それよりアンタあたしのアレを奪ったでしょ!」
夢から覚めた時、彼女は気付いた。
夢でも消えないようにしたATMから搾取する願いの効果が消えていることに。
思い当たる原因はひとつ。
そしてその原因を確かめるべく、彼女は街を奔走し、ここに到った。
「あー、それな。やっぱ実ちゃんと一緒になるのはワイだけじゃないといけんからな。ぐへへ」
「キモッ! バカ! ありえない! なんてことしてくれんのよ!」
実が心底嫌そうな顔して叫ぶ。
女性が叫んでいるのだ。
周囲の注目が嫌でも集まっていく。
「あたしの大切なものを奪った責任を取ってもらうからね!!」
数日後、この発言動画がSNSにアップされたことでふたりは芸能ニュースを騒がせることなるのだが──。
今のふたりはそんな未来など知る由もなかった。
男の名は湊 藤堂。
凛悟をして、この”祝福ゲーム”の勝者と言わしめた男である。
その表情は晴れやかだった。
藤堂は思い出す、夢から覚めてすぐに行った勝負のことを。
◆◆◆◆
「ほう、我と賭けがしたいと」
「せや、凛悟はんの第23の願いのもう一度や」
「死人は全てよみがえった。不幸な出来事も夢の中の記憶となった。これ以上さらに求めようというのか、欲張りだな汝は」
「折角の”最恵国待遇”やけん、使わんと損やん」
欲張りと呼ばれて逆に光栄とばかりに藤堂は胸を張る。
「よかろう。第23の願いをもう一度叶えよう。それで勝負の方法は?」
「サクッとじゃんけんで決めようや。あ、あいこもワイの勝ちちゅうルールで」
「強欲だな、それでは汝が勝つ確率は3分の2もあるぞ、我の倍だ」
「ワイは凛悟はんとは違うけんね。あ、もちろん後出しは自動的に負けやけんね」
「いいだろう。それで何を賭ける?」
神の問いかけに藤堂はグフフと笑う。
「ステータスオープン!」
その掛け声で虚空にウィンドウが開き23個の願いが表示される。
藤堂が”最恵国待遇”の願いを叶えた時、発動は脳内かこの掛け声で表示されるステータスウィンドウで選択すると願っていたからだ。
「いやー、一度やってみたかったとよ。こういうの」
そう言いながら藤堂はウィンドウのバーをいくつかタップする。
「賭けるのはこれや。あと、ワイの身に宿っとるこれも」
「了解した。では始めるとしよう」
神が光る手を軽く掲げ、勝負の体勢に入る。
「んじゃ、やろか。じゃーん、じゃーん、じゃんけん」
「ポン」
「しっ」
神は掌を出し、藤堂は拳を出した。
「あちゃー、ワイの負けや。勝ち目が多かったのに負けるなんて、ついとらんと」
「今、汝は遅れて出したように見えたが」
「後出しでもワイの負けや。どっちも同じやろ。気にせん、気にせん。じゃ、清算しよか」
笑いながら藤堂はそう言う。
まるで負けることが目的だったように。
「そうか。汝に異存がなければそれでいいが。それでは清算しよう」
神の手が動くと、ステータスウィンドウに光が灯る。
「汝が賭けたのは”最恵国待遇”で手に入れた第12と第14のダイダロスとティターニア兄妹の願い、第19の楊が願ったエゴルトに永遠の若さと無事故&無事件の願い、そして汝の身に宿った第16の実の結婚相手からの搾取の願いのもう一度だな。それを奪わせてもらおう」
「せや、でもな神さん、それじゃ足りんと思わん?」
「足りないとは?」
神の問いかけに藤堂はニヤリと笑う。
「ワイがもう一度した凛悟はんの願いは『全人類を代表して神さんと賭けをしたい』や。そして凛悟はんは命を賭けて、勝った報酬にその倍率に応じてそれを受け取ったやろ」
神はそれを聞いて「ほう」と全てを理解した声を出す。
「なるほど、足りないな。この賭けは我の方が不利、ならそれに勝ったなら不利の倍率に応じて賭けたものを奪わねば道理が通らぬというもの」
「あちゃー、やっぱそうなるかー、でもワイは賭けたものはひとつずつしか持っとらんで、どうしよか?」
「その問いに答えよう! 汝は全人類を代表して賭けに臨んだ。なら、凛悟の時と同じように賭けの代償は全人類の中から奪わせてもらおう!」
「あーれー、そんなごむたいなー」
ふたりはノリノリで言葉を交わす。
賭けの結果、”祝福”で授けられた超常の能力は神によって奪われ、消えた。
「さて、汝に与えられた残りのもう一度の権利はどうする?」
「その問いに答えると! これとこれと……、あと……、これもや、その3つを順番に叶えてな。あとはいらん」
ステータスウィンドウから3つタップし、藤堂はヨロシクと神にお願いする。
「了解した。しかし本当にいいのか?」
「よかよか、あとはワイにとっていらんやつやけん。父ちゃんと母ちゃんには目が覚めれば会えるけんね」
「そうか、確かに承ったぞ」
「あんがとな。さて、それじゃワイもそろそろ帰るわ。楽しい”ゲーム”やったで」
「我もだ。とても、とても有意義だったぞ」
藤堂は手を振り、神も手を振って返す。
そして藤堂はいつもの蒲団の上で目を覚ました。
母親の作る朝食の香りが鼻孔を揺らしていた。
◆◆◆◆
夢から覚めた藤堂は朝食をサッと取り、身なりを整えると実の握手会場に向かう。
このまま徹夜で並んでいつもの通り一番乗りの予定だ。
「タイムリーパーの兄ちゃんと姉ちゃんはこれでよしっっと。あとは……」
道すがら藤堂はタイター兄妹へとメールを出し、記憶から花畑蜜子の番号を思い出す。
ピロロロロ、ピロロロロ
少し長いコールの後、蜜子は電話に出た。
「嬢ちゃん、生きとったか。よかったな。あと、そこに凛悟はんおる?」
本来ならば彼にとってふたりに用はないはず。
だがそれでも、彼は聞きたかった。
ふたりの行く末を確認したかった。
『いますよー、目の前に』
「そっか、ならよか」
そして、確認した後、「幸せになりや」と言い残して藤堂は通話を切る。
「はぁー、やっぱ惜しかったかなー。いや、でもワイは間違えとらんはずや。凛悟はんとミッコはんにはえろうお世話になったし、ワイの友人たちも生き返った。これでワイだけ幸せになったらバチがあたる」
未練タラタラに藤堂は溜息を吐く。
彼は少し後悔していた、最後に神に願った3つのもう一度の願いのことを。
彼がもう一度したのは3つ。
──第2の願い ペロをいきかえらせて、ずっとげんきでながいきさせて──
第2の願いは完全に彼の自己満足のためだった。
幼女と犬が不幸になる結末なんてあってええはずなか、そんな気持ちを込めて願った。
──第13の願い あたしを絶対に幸せにしてくれる運命の人と出会いたい。今、すぐに──
第13の願いは、本来なら自分が運命の女と出逢うために使おうと思っていた。
だが、彼は危惧してしまった。
もし、ここで彼女が現れなかったら、と。
そして日和った。
彼のもう一度の3つめ、それは……。
──第21の願い 前の願いの対象を花畑蜜子へ──
そう、彼は己の自己満足の面を被せて、その危惧をなかったことにしたのだ。
「よかとよかと、ワイは誇ってよか。少なくともひとりの幼女とひとりの少女を幸せにしたんや。誇ってよか」
誰に聞かせるまでもなく、藤堂は胸を張る。
「運命がちょっと変わっていたら、そこから笑顔の実ちゃんが飛び出して来るはずや。いや、運命通りなら、ほら今にもあのかどから実ちゃんがかけてくるような気がするとよ! ほら! 今にも──」
ここが単行本で加筆されるとこやと思いながら、藤堂は見えもしない人影を角の先に見る。
だが、そこからは誰も現れることはなかった。
「やっぱそう上手くいかんか。まあええ、全部ワイのせいやけん」
「やっぱりアンタのせいだったのね!」
肩を落とした藤堂の肩が何者かに掴まれる。
それは、道行く人にはどこにでもいる普通の女性に見えた。
だが、彼にはわかった。
スッピンの実の顔だと。
「実ちゃん!? やっぱワイらは運命で結ばれとんのや!」
「は? 意味わかんない! それよりアンタあたしのアレを奪ったでしょ!」
夢から覚めた時、彼女は気付いた。
夢でも消えないようにしたATMから搾取する願いの効果が消えていることに。
思い当たる原因はひとつ。
そしてその原因を確かめるべく、彼女は街を奔走し、ここに到った。
「あー、それな。やっぱ実ちゃんと一緒になるのはワイだけじゃないといけんからな。ぐへへ」
「キモッ! バカ! ありえない! なんてことしてくれんのよ!」
実が心底嫌そうな顔して叫ぶ。
女性が叫んでいるのだ。
周囲の注目が嫌でも集まっていく。
「あたしの大切なものを奪った責任を取ってもらうからね!!」
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