幼馴染が国を救う英雄になるまで俺が人質って本当ですか!?

シン

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22. 仕事





 王立騎士団は三つの隊からなる、この国の軍事力の象徴とも言える部隊だ。
 騎士団と言っても、騎士ナイトの称号を得られるのは功績を残した士官などに限られていて、隊員のほとんどは一般的な兵士たちである。とはいえ、その実力は折り紙つきのエリート集団だ。

 第三部隊は魔力を持った兵士たちのみが集められた部隊だ。彼らは魔導騎士と呼ばれ、高い魔術の能力を駆使して戦う。

 第二部隊は魔力を持たない兵士の集まりだ。己の身体能力と戦闘技術を駆使して戦う猛者集団で、対人戦での戦闘力はピカイチだとか。

 そして、俺たちが入った第一部隊。ここは魔力の有無は関係なく、ただ"強い者が正義"という部隊だ。魔術師も兵士も、紛れもなくこの国でトップの戦闘能力を持った集団である。

 各部隊には戦闘要員の兵士が三百人余りと、俺のような後方支援人員が数十人所属している。
 田舎出身といえど、この騎士団に所属する人たちが兵士も後方支援班もみな優秀な人々であることはすぐに分かった。


 俺たちが第一部隊に入隊してから二週間が経った。
 衛生班である俺の仕事は主に怪我人の治療や医術師の補佐、薬や包帯などの在庫管理だ。実家の診療所で手伝っていた仕事とさほど変わらないし、周りの先輩たちも優秀で優しい人たちばかりだったお陰でそこまで苦労することなく慣れることができた。備品の場所や管理方法を覚えるのが少し大変だったけど、それくらいはウィルがしているであろう苦労に比べたら大したことないと思う。

 両親と兄に手紙を送ることもできて、返信も取り上げられることなく手元に届いた。実家のあたりは雨季に入って野良仕事が減ったおかげで、特に心配するほど忙しいこともないようだ。王都にいる兄は頃合いを見て面会を申し出てくれるらしい。
 仕事中も監視されている訳でもないし、家族とのやり取りも自由。制限されていることといえば隊舎の敷地外に出ることくらいで、首輪の存在がなければ俺が人質として連れてこられたことを忘れてしまいそうだ。


「はい、できました。今日はお風呂で濡らさないようにしてくださいね」

 俺は訓練中に怪我をした兵士の腕に包帯を巻き上げ、安心させるように笑いかけながら注意点を説明した。
 最近は他国と戦争もしていないし魔獣の出現も落ち着いているらしく、騎士団の仕事はもっぱら国境や魔獣の出現地域の警備と訓練のみだ。そうなると怪我の程度も軽いものが多く、よく村の子どもたちの怪我を手当していた俺はついつい子ども相手にしていたような対応をしてしまう。
 見下してるとか舐めてるとか思われて怒られるかとヒヤヒヤしたが、案外受けがいい。周りの衛生兵たちが優秀でキリッとした人たちばかりだから、逆に俺みたいなのは珍しがって貰えるのかもしれない。

「あ、あの……あなたは、新しく入った方ですよね」
「はい。ルカ・フォーゲルっていいます。俺、なにか間違えましたか?」
「いえ! 全然! むしろその……なんというか……」

 目の前の兵士は屈強な身体つきに似合わず、もじもじとしながら何かを言い淀んだ。顔を逸らした耳の先が赤い。鈍いと言われがちな俺でも分かる、これは照れている人間の反応だ。

「体調も悪いなら薬も出しますよ」
「いいえ! 大丈夫です! あ、あの、俺はこれで失礼します!」

 お大事に、という俺の言葉はがたがたと音を立てて部屋を出ていった彼の背中に届いただろうか。
 ……なんというか、とてもやりにくい。彼のような反応をされたのは初めてではなかった。能力のことがあるから魔力持ちには少し警戒をしていたけど、魔力のない兵士にも何だかウケがいい。けど、手当てをしただけでいちいち照れられては困る。

「また不用意にファン増やして。後が大変だよ?」

 声のする方に顔を向けると、換気のために開けられていた窓の外からフィリさんが顔を覗かせていた。



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