孤独な冒険者B

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

文字の大きさ
6 / 10

第6話 相棒

しおりを挟む
フォルカ「んで、どうする?痺れ草の効果が切れるまでの時間稼ぎを与えるつもりはないからな、10秒以内に答えてもらおう」

野盗の弓使いはガトリーの頭に狙いを定めて弓を引き絞る。

ガトリー「旦那ぁ、オレの生きる意味を覚えているか?」

ボッチ「ヒーローになるんだったな」

ガトリー「ああ、そうだ。この世の悪を打ち滅ぼし、オレはヒーローになる。オレはな、旦那。出会って間もないあんたを相棒だと思っている。あんたにオレがヒーローになる瞬間を見ていて欲しいんだ」

ファルカ「時間切れだ、あばよ、王国騎士」

雨のような矢が四方八方からガトリー目掛けて放たれる。

キンキンキンキン!!

しかし、矢は金属音を鳴らしながら地面にパラパラと跳ね返った。

ガトリーは大盾で正面をガードした。
その背中には、巨剣でガトリーを守るボッチの姿があった。

ガトリー「へへ、相棒。討伐任務、始めようぜ!」

ボッチ「了解した」

ボッチはその体格からは想像も出来ない身のこなしで、野盗の集団を薙ぎ払っていく。
その表情は、どこか楽しそうに笑っているようにも見える。

ガトリー「うぉおおおおりゃぁあ!!!」

ガトリーはまだ痺れている身体にムチを打ち、大槍を振り回しながらフォルカへと突撃する。

フォルカ「ふぅ、なんだ。寝返ってくれることを期待したのに、結局は王国の犬かよ。巨剣のボッチ」

フォルカは残像を残す独特なムーブでガトリーの突撃をひらりとかわした。

ガトリー「いや、旦那は王国の犬じゃねぇ。ただのオレの相棒だ」

ガトリーはその後もフォルカを突き刺すべく大槍を振るうが、その攻撃は一撃もフォルカに届かない。

フォルカ「後ろがガラ空きだが、大丈夫か?」

ガトリーの背後に弓を構える野盗が1人。

ガトリー「背中は相棒が何とかしてくれる」

ガトリーの言葉通り、弓を持った野盗はボッチの巨剣に粉砕された。

フォルカ「チっ、、使えねぇな」

フォルカはガトリーの重鎧の隙間と頭にナイフを通そうと隙を狙っているようだが、大胆かつ隙のない動きをするガトリーはフォルカの狙いを阻止している。

フォルカ「何だお前、ただの一般兵じゃないな?何者だ?」

ガトリー「恥ずかしいが、、ただの一般兵だよ!!」

ガトリーの大槍を避けたフォルカがニヤリと笑った。

フォルカ「少しの動揺が、命取りになるんだよなぁ」

フォルカのナイフがガトリーの顔へと伸びる。

その時。

横からボッチの巨剣がフォルカの頭にクリーンヒットし、フォルカは地面に伸び、動かなくなった。

ガトリー「はぁ、、助かったぜ旦那!」

周りを見渡すと、30人ほどいた野盗は全て無惨な姿で残骸となっていた。

ボッチ「こいつは賞金首なのだろう?斬らずにおいたが、斬った方が良いか?」

倒れるフォルカに巨剣を突き立てたが、ガトリーがそれを止める。

ガトリー「待て待て、こいつは王国に引き渡す。この大悪党が各地の野盗と組んでいるのであれば、状況は思ったよりもずっと悪い。詳細を聞き出す必要があるからな」

ガトリーは痺れ草を塗ったナイフでフォルカの左頬を傷つけた。

ガトリー「お返しだ!お前を一歩も動かさずに連行する。痺れ草って便利だな、がっはっはっは!!!」

ボッチはフォルカのポケットからはみ出る一枚の手紙を抜き取った。

そこには野盗のアジトの場所、組織図が詳細に書かれていた。

ガトリーはそれを見て、絶句している。

ガトリー「フラペチーノ様は魔王を倒すだろう、そしてこの世から魔物がいなくなるだろう。こいつらは魔物がいなくなった後、この世界を乗っ取ろうとしているんだ。ここを見ろ!」

ガトリーは二重丸のついた場所を指差す。

ガトリー「この地域は魔物が多く、王国でも立ち入りが禁止されているエリアだ。ここに物資を集めているらしい。魔王を倒しても、世界は平和にならないってことか!」

ボッチ「ヒーローの出番だな」

ボッチの言葉に、ガトリーはガッツポーズをした。

ガトリー「旦那!!あんた良いこと言うなぁ!フラペチーノ様は魔王を倒す!そしてオレが悪党の組織を壊滅させる!この2つがあって、世界は平和になるんだ!」

ボッチ「ふっ、そうかもな」

ボッチの笑顔を見て、ガトリーも笑った。

ガトリーはフォルカを背中にくくりつけ、野盗のアジトを後にした。












しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~

紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。 「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。 だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。 誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。 愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...