another5

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

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第三章 もう一つの、5人

第16話 もう一つの5人

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墓山「おたくらの光を、見せつけてやれ」

墓山はステージの影から、ステージ上でスタンバイしている4人を見つめていた。

眼前に広がるのは沢山のカメラや音響機材、そしてそれらを扱うスタッフ。

その奥では歓声をあげるオーディエンスが敷き詰められている。
その中の一人、蝶ネクタイをつけた見覚えのあるおじさんが全力で手を振っているのが見える。

直斗はその光景を鼻で笑い、巧に目配せした。
巧はマスターを見つけると腹を抱えて笑い出す。

巧「やば!!なんで来てんの!!はっはっはは、、腹痛ぇ~、、、う、、く、、、せめて私服に着替えて来いやぁ~」

隆之「おい、お前ら、切り替えろよ。テレビ出演だぞ」

梨々香「まぁ、いいじゃん隆之。笑ってミスったとしたら、私が後で笑えなくしてやるから」

隆之「よし、それでいこう」

巧「分かった、分かったから!はい集中、、、マスターは見ない、マスターは見ない」

直斗「楽しいだけじゃプロにはなれねぇ。だが、楽しまなきゃプロになんてなれるわけねぇだろ。一度きりの人生だ!やりたいことのために生きなきゃ、生きているって言えねぇだろ」

直斗はマイクを手に、カメラに向かって叫ぶ。

直斗「another5です!楽しんでいこうや!!」

直斗の声を合図に、隆之がドラムスティックを叩き、曲が始まる。

この瞬間を待っていた。
この瞬間のためにやってきた。

another5は諦めなかったから、今ここにいる。

無理だと諦めるのは簡単で、諦めるのはいつだって早過ぎる。

やり切った、なんてセリフは諦めることを納得させるための言い訳でしかない。

ようやくこのステージまで辿り着いたんだ。
another5で!!

直斗はふと梨々香を見た。
梨々香も直斗を見ていた。

目が合った2人はニヤリと笑い、この瞬間を全力で楽しんでいる。

そう、俺たちはこれがやりたかったんだ。

もう、1人じゃない。
4人なら、なんだって楽しい。

これが正解だ、そうだろう?梨々香。

another5の最高のパフォーマンスを眺めていたのは、その場にいた墓山やマスターだけではなかった。

~~~~~

真希はとある楽屋でテレビを見ていた。

もちろんお目当てはanother5である。

あれから直斗とはあまり会わなくなってしまった。
特に理由はないが、自然とそうなってしまったのだ。

「another5です!楽しんでいこうや!!」

テレビを見つめて、MAMIが呟く。

MAMI「なんか、梨々香楽しそうだね」

真希「うん、そうね」

そうは言ったものの、真希の目には直斗しか映っていなかった。

そこには、かつて小さなライブハウスで全力で歌っていたあの頃の直斗がいた。

真希の目から一筋の涙がこぼれ落ちる。

MAMIはそれに気付き、ハンカチを差し出した。

MAMI「何の涙か分からないけど、私はここにいるから大丈夫」

真希「うん、ありがとう」

真希は直斗をスターミュージックに引きずり込んだ。
善意だったとはいえ、結果的に直斗から歌う楽しさを奪いかけてしまった。

真希「はぁ、、、私もまだまだだなぁ」

MAMI「結果で見せつけるのが私たちのやり方でしょ?」

真希「ええ、そうね。もう、なんか悔しい!そうしよう!」

真希とMAMIが固い握手を交わすその後ろで、天田は号泣していた。

真希「何泣いてるのよ、天田」

天田「だ、だってぇ、、、梨々香さんがぁ、、、楽しそうでぇ、、うぇ、うう、うぇぇえん」

MAMIは先ほど真希に差し出したハンカチを回収し、天田に差し出す。

MAMI「なんか悔しいよね。梨々香はチェリプラのベーシストなのに」

天田はおもむろに真希の涙がどこに染み込んであるのか確認し、クンカクンカと幸せそうに匂いを嗅いでいる。

天田「悔しい?違いますよ~、私は嬉しくて嬉しくて、たまらないんです!梨々香さぁーーーーん!!見てますからねぇ~!!!」

MAMIは首を傾げ、真希の様子を窺った。
しかし真希も静かに頷いている。

真希「嬉しい?、、、あぁ、そっか。私も嬉しかったのかも。あんなに楽しそうな直斗、久しぶりに見たから」

MAMI「直斗って、誰?」

天田「あれ、直斗って、梨々香さんのバンドの~」

真希は天田の口を全力で塞ぎ、顔を真っ赤にして首を振った。

真希「り、梨々香が楽しそうでなによりってこと!!チェリプラの梨々香とはギャップがあって、それはそれでファンの心には刺さるでしょ?だから良いの、はいおしまい!私、ちょっと声出ししてくるから!」

真希は足早に楽屋を出た。

MAMI「、、、変なの~。んで、直斗って誰?」

MAMIは長い金髪をクルクルと指で巻きながら、天田に聞いた。

天田はニヤニヤとしながら、MAMIに耳打ちする。

天田「直斗っていうのは、真希さんの、、、うへ、、うへうへうへ」

MAMI「うわ!きも!なんなのあんた」

天田「これ以上は、プライベートっス!」

MAMI「あっそ、まぁ別にいいけど」

そして天田は静かに微笑んだ。
梨々香は天田が出来なかったことをやり遂げたのだ。

心に積もっていた闇が、どうしてか少しだけ晴れたような気がして、天田は切なく笑った。

~~~~~

「ママ~!!なんで、ちゃんねる、かえるの?ぼく、みてたのに」

ママ「ごめんね、ママどうしても見たいテレビがあって、、、あ!始まってる!」

大きなテレビに憧れの人がドアップで映し出される。

「another5です!楽しんでいこうや!!」

ママ「巧くんここぞとばかりに目立とうとしてるなぁ~、隆之くん、また腕太くなった?梨々香ちゃん楽しそう~チェリプラの時と全然違う!やっぱり梨々香ちゃんはこうじゃなくっちゃ」

「ママ、だれと、おはなし、してるの?」

ママ「ごめんごめん、この人たちはね、ママが大好きなバンドなの」

「ばんど?それ、なに?」

ママ「こうやってね、楽器を持って、演奏する人たちのことだよ」

「ママ、このひとたち、すきなの?」

ママ「うん、大好きだよ」

「ぼくのことは?」

ママ「大大大好きだよ!」

ママは幼い息子をギュッと抱きしめた。

もしかしたら、私もあの場に立っていたかもしれない。

霧崎くんと過ごしたあの夜。
私も東京に行くと言っていたら、未来は違っていたのかもしれない。

「ぼくも、ママのこと、だいすき!」

ママ「ありがとう!」

でも、テレビの中にいたとしたら、今腕の中にいる宝物に出会うことはなかっただろう。

これで良いんだ。

花は心の中で呟いた。

花「それにしても、霧崎くん、やっぱりカッコいいなぁ」

もしあの時、手を握っていれば。
もしあの時、絆を手放さなければ。
隣には、今とは違う誰かがいたのかもしれない。

各々が、それぞれの道を歩む。

それぞれの道を、正解にしていくために生きていく。

どこかの分岐点で分かれてしまった、もう一つの人生を想像しながら。。。




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