野菜士リーン

longshu

文字の大きさ
44 / 160
第1章

1-30 シフとの再会

しおりを挟む
リーンが、はたと気が付く。二人は周辺の木々が切り倒された陽だまりの草地に眠っていたようだった。眼を向けるとそこには広大な農地が広がり、ほとんど見えるか見えないかほどの遠方にせっせと開墾作業をしている人の群れがいた。『創生の森』に入ったのか入ってないのか?リーン達をそれを確認するために歩を進める。すると、開墾作業をしている人々の代表と思しき女性が声をかけてきた。

「あれ、リーンとガラハドじゃないか?どうしたんだ里帰りか?」

「え、あれ?シ、シフ?な、なんで、こんな所に?何、その格好?」

シフは、『英雄戦争』のおり、カーンに付き従って常に最前線で大剣を振るう大柄な女剣士であった。グラマーな身体を他に魅せつけるような薄い装甲で、それがために常に生傷は絶えなかったが、薄い装甲も手伝っての天性の俊敏さと、危険を察知する野生の勘で、剣闘では常に危うい勝利を納めていた。舞台男優にでも出来そうな男勝りのなかなか整った顔立ちをしており、いつも、ヘアバンドで軽くカールの掛かった赤い髪をうるさそうにはねのけていた。それがどういう訳か、今は農衣に身を包み日焼け予防のホッカムリをしてクワを片手に大地と格闘している。リーン達にはそれがシフとはまったく見分けられなかった。

「え、あれ知らなかったっけ?『英雄戦争』が終わってから、しばらく傭兵稼業とか用心棒をやってたんだが、知っての通りの平和でおまんま食い上げなんで、尊敬しているラルフさんの元で、剣の修行をしてんだよ。畑の作物がその指導代さ。」

「私達、さっき変な声に導かれてここに来たんだけど、あれは何なの?」

「あぁ、あの変なおじいちゃんな。どうもラルフさんの友達らしいんだけど。」

どうもシフには小真理がおじいちゃんに見えるらしい。

「ま、まぁ、この際細かいことは気にしないわ。それはそうと、なんか、シフと同じような格好をしたお友達?がたくさんいるけど、どうしたの?」

「ああ、傭兵家業時代に知り合った仲間たちさ、同じように飯が食えなくなって、こうやって農園を作ったりして自給自足してるんだよ。みんなして、ラルフさんから剣術も習ってるけどね。」

シフの言うとおり、太ったり痩せたり大きかったり小さかったりいろんな容貌だが、一見して一癖ある事が分かる女傭兵が、面白おかしくもクワやスコップを持って、アグレッシブに大地を舞っているのであった。

「おじいちゃん、女たらしだから、喜んでるんでしょうね(笑)。」

「で、どうしたんだ?レーネのカバン持ちまで連れ立って。駆け落ちか(笑)?」

「カ、カバン持ちってどんなだよ!?」

「ははは、ガラハド、冗談だ。ひょっとしてうわさに聞く、『レボルテ』が仕掛けたという火の雨の絡みかい?」

「さすがに察しが良いわね。そう、実は、、、、、」

「え、マジか!戦争の予感がプンプン!ようやく稼げる時代再来だな!!あの高慢ちきな『ウェールズ』の奴ら、また血祭りにあげてやるぜ!!!」

「違うのよ、あなたには今の『レボルテ』に加担してほしくないの。私たちはレーネをこの手に取り戻したいのよ。実はね、、、」

リーンはこれまでの事の顛末を簡単にシフへ説明するのだが、、、

「え、違うの?何だか分かん無いけど、リーンが言うなら、まぁ良いや、『レボルテ』には志願しない事にするよ。」

彼女の単純な頭には、世の中には敵か味方か、金になるかならないかしか無いらしい。そして、読者諸君も知っての通り世界はそんなに簡単ではない。いろいろなエゴと思惑と利害と欲望を巻き込みとても複雑だ。

「私、ちょっと準備が整うまでしばらくおじいちゃん所にいるから、またお茶でもしましょうね。真理さんに『創生の森』に入れてもらったんだけど、ここからおじいちゃん所へはどういったらよいのかしら?」

「あぁ、あっちに続いている遊歩道をずっとまっすぐ行くと着くよ。」

と、森のまた奥深くへ続く遊歩道を指差すシフ。この森は奥へ行けば行くほど神厳さを増していくように思える。

「ありがとう、じゃ、おじいちゃんの所に行ってくるから、また遊びに来るわね。」

「あぁ。ガラハドもまた一戦交えようぜ。強い相手がいなくて退屈なんだよ。」

「むやみに戦わなくていいよ、まぁ、稽古くらいならつけてやるけど。」

「よろしく頼む。」

威勢のいい攻撃型戦士のシフも、剣の腕ではガラハドの一目置いている。意外と似合う?農婦姿のシフと別れ『土の賢者』ラルフの待つ所へ『創生の森』を先へ進むリーン達であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私が……王太子……のはずだったのに??

#Daki-Makura
ファンタジー
最愛と朝を迎えたら……城下が騒がしい……?? 一体……何が起きているのか……??

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...