野菜士リーン

longshu

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第1章

1-33 『土の賢者』 ラルフ

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「おじいちゃーん、ただいま~!」

「おお、リーンよ、帰ったか!!」

と、コテージの5階からドタバタと階段を転げ落ちる声が聞こえたかと思うと、玄関からカビた干し柿のような老人が、先程もんどり打って痛めたのか、腰をスリスリ姿を見せた。

腰まで伸びる長い白髪を後ろで束ね、頭にはヨレヨレの浅黄色のつば広帽子をかぶっている。魔法使いの象徴たるマントも同じようにヨレヨレでおまけにひどく薄汚れている。どうやら格好を気にするタイプではないようだ。

右手には頭ほどの大きさもあるコブの付いた古びた大きな樫の杖を携えている、ヨボヨボで足腰が萎えているだけに転倒予防のようでもあり、至る所に思い出したかのようにルーン封印が刻まれ、時には2、3の呪文式を走り書きで埋め込んだからか途中で交差しているような箇所もある。ひょっとすると本人にも及びもつかないような強力な魔法が組み上がっているのかもしれない。

長年癌を患っているからか頬はこけ顔色は悪く、そのため眼光のみが抜け目なく鋭く見える。格好とは対照的に抜け目ないその眼光はいくら歳を取っても変わらない頭の回転と意思の強さを示していた。

この風体をして本当に元気満々のシフの剣術指導が務まるのか?世界中を舐めてかかっているかのような多属性魔道士メルに幻術を教えることなど出来るのか?疑問は付きないのだが、兎にも角にもこうして『創生の森』で弟子を多数抱えながらやっているようである。

彼が『土の賢者』ラルフである。

「おじいちゃん、【緑法伝書鳩】での伝言届いたわ。」

「おお、そうか無事届いたか。鳩を飛ばしてから時を待たずにここへ来たとなると、ワシの助言では対処できない何かがあったと見えるな?ここまでは、メルが迎えに行ってくれたのか。」

「うん、レーネが暴走してしまったの!私達だけじゃどうにもならないから、おじいちゃんに助けを請いに来たの!!」

「ラルっち、リーン達困ってるみたいだから助けてあげて。」

「そうか、世間を騒がせておる『火の雨』はやはりレーネの仕業じゃな?おまえ達も知っての通り『七賢』はこの世界に直接関与しないのが掟じゃから、レーネに直接ゲンコツかます訳にもいかん。が、明らかに『ミズガルズ』の安寧を揺るがす不埒な行い。ワシの名代としてお仕置きしてきてくれるな?リーンよ。」

「ええ、何で彼女がああなってしまったのかさっぱり分からないけど、何とかして彼女を取り戻したいのよ!!」

リーンは必死に訴える。自身の力ではどうしようもない無力感をひしひしと感じているようだ。

「もう一人のお客人は、確かガラハドじゃな?7年ぶりかの?逞しゅうなったな。」

「はっ、ガラハド・ヴァスティーンです。ご記憶にあずかり光栄です。『土の賢者』ラルフ様、レーネの乱心を止めるためぜひお力をお貸しください。」

レーネが自身の最愛の恋人である事を尾首にも出さずガラハドはあくまで礼儀正しい。リーンやメルはその融通のなさがおかしいのか、ニマニマ笑っていた。

「伝書鳩を飛ばしたのはレーネを暴走させぬようお前たちに注意を促すためじゃったが、お前たちに伝書鳩を飛ばしてからも、『ヴァルヴァンティア』の大きな魔力の変動は消えるどころかどんどん大きなっていたのじゃ。レーネを元に戻すのは並大抵のことじゃあるまいて、さ、玄関で立ち話も何じゃから、豪華ウッドテラスでゆっくりお茶でもしながらのんびり作戦を建てようかの~。」

「ウッドテラス、、、おじいちゃん、今度もちょっとやり過ぎじゃないの?第二の世界樹でも育てる気なの?」

「ははは、まぁ、そう言うな。さぁさぁ、皆、中へ。」
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