野菜士リーン

longshu

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第1章

1-49 海神エーギルとフレーセイ島 その6 乱暴な客人

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「な、何?行ってみましょう!」

祠の入り口の扉に急いで駆け寄り、窓の格子から外を眺めた女3人が目撃したのは、身長3mはあろうかという大勢の巨人達に取り囲まれ、ガラハドが滅多矢鱈に攻撃を受けているという、目を疑う光景だった。巨人達は鎧や兜を身につけ、思い思いの武器を手に取り、気味悪い笑みを浮かびながらガラハドをからかいつつ攻撃を加えている。

対するガラハドは丸腰、彼の主義として特にしっかとした防具も持っていない。持ち前のリヒテナウアー剣術の繰り成す身のこなしでなんとか躱してはいる。しかし、一撃食らえば致命傷は避けられないような腕力を巨人達は持っているようである。そして、書き加えるべき驚く点がもう一つある。巨人達はすべて水死体のように、胸や顔や眼球が膨れあがり、肌の色も鬱血して壊死したような淡青藍色に変わっている。肌は所々剥がれ、赤黒い真皮や筋肉組織がむき出しになっていた。

「ひょえ~!!きょ、巨人のゾンビ!!!?」

メルが岩の祠の中で思いがけず大声で叫ぶ。それに気がついた巨人達の約半数ほどが襲いかかってきた!

「ど、どういうこと?アンピトリテさん!?」

「ひょ、ひょっとして、水死者を裁く『フレーセイ島』って言うのは、水死したゾンビ達が寄ってくる島って事!?なのかしら~!!!?」

「ががーん!ど、どうしましょう、ガラハドを助けないと!!」

と、言っている内に水死体の巨人ゾンビ達は、祠の入り口を斧やハンマーや棍棒やありとあらゆる鈍器で殴りだした。幸いゾンビ特有の鈍重さではあったが、力は生前と変わらない。一撃ごとに岩の扉がミシミシと叫び声を上げる。

一方のガラハドは、得意の体術を活かし背の高いゾンビの顔をぐしゃっと踏みつけ跳躍して周辺に高くそびえる木に飛び移り、上の方へするすると上って難を逃れていた。

「はぁ~!えらいこっちゃえらいこっちゃ!!!(ドラえもん)」

メルが狼狽えまくる。

「ちょっと、あんた光魔法得意なんでしょ!?なんとかならないの!?」

リーンが叫ぶ。

「あ、そうだった!あまりの事に、役を忘れてたわ!!」

ガクッ。 (リーンのくずおれる音)

即刻、メルがアンデッドへの切り札とも呼ぶべき魔法を唱える。

《レクイエム!》(亡者よ死の国へ帰れ!)

「これで、ゾンビどもは一網打尽のはずよ!!」

と、メルは自信満々言ってみてはみたものの、ゾンビ達は一瞬キョトンとしていたが何も影響がない事が分かると、またこれまでにも増して攻撃を加えだした。今にも扉が破られそうな勢いである。

「ちょ、ちょっと!効かないじゃないのよ!?」

「あ、ひょっとして、まだ裁きを受ける前だから冥王との契約がされてなくて、死の国へ飛ばすことが出来ないのかも!?」

「(ガクッ。)相変わらずピントがずれてるわね!?じゃ、どうするのよ!!?」

どうも気味の悪いゾンビが苦手らしいリーンは(得意な人間は相当奇特な部類に入ると思うが)恐慌をきたしメルへ詰め寄る。

《ホーリーライト!》(聖なる光!)

メルがそう唱えると、メルの手から神聖な光が波動のように巨人ゾンビの一体を見舞う。神聖な光に体を焼かれたゾンビは、その部分が黒焦げになっている。

「あ、これなら効くみたいね!!」

《ムーヴェンジャオホアン!》(人面樹召喚!)

《シュイチァン》(ウォーターガン!)

リーンの唱えた召喚された人面樹により一体の巨人ゾンビは5m程の人面樹の太い幹枝の一撃に吹き飛ばされバラバラになり、もう一体はアンピトリテの唱えた強力な水銃で腐れ掛かっている身体をむき身にされ吹き飛んだ。

「ううう、気持ち悪い、一体一体やっつけててもキリ無いわ、、、!」

「ゾンビは朝になり日の光を浴びれば、活動を止めるはずです。明日まで粘るしかないですね、、、。」

「やれやれ、今日も徹夜なの、、、。」

昨晩、元・土の精霊王『オーグレイド』の背中の上にて竜酔い?でほとんど眠れなかったリーン達であったが、今日もまた突然のゾンビの来襲に苛まれ、とても眠れたものではなかった。

リーン達が巨人ゾンビに対応している間に、ガラハドは高くそびえる白檀の木の幹に腰掛けると、太く真っ直ぐな枝を一本折り取り手早く木刀を削り出した。そして、ジャムカの空中殺法のようにチャージ&リターンで、ゾンビの目のみを狙い攻撃を繰り返す。対ジャムカ戦での戦闘から早くも技を学び取ったのか、ジャムカがその時に見せた『蒼天の狩り』と瓜二つの動きで、まるで草原の王者がそこに存在しているかのような圧倒的な存在感であった。

「あ、すごい!!ジャムカみたいだわ!全然問題なさそうね!やっちゃえ!やっちゃえ!」

「ちぇ、いい気なもんだよ!そっちは大丈夫なのか?アンピトリテさんは!!?」

ガラハドは大声で、岩の祠の中のリーンへアンピトリテの心配をする。

「大丈夫よ、それから少しは私たちの心配もしなさいよね!明日の朝までこのゾンビさん達活動をやめないみたいだから、木の上でずっと戦っててよ!」

メルは無茶を言う。

「はぁ~!?無茶言うなよ!?」

「頼んだわよ!!」

と一方的に言うと、扉を破られないように魔法で補強するメル達。見殺しにも見えるメルの行為であったが、ゾンビ達の戦力と『英雄戦争』で十二分に分かっているガラハドの実力を冷静に計算しての、アンピトリテを守るための双方暗黙の行動であった。

「さて、だいたいあいつらの動きは分かったし、朝まで木の上でのんびりしてようかな~。しかし、今日も徹夜かよ、7年ぶりだな。。。」

こんな事態も慣れっこになっているのか、持久戦を決め込んでいるガラハドであった。

「ガ、ガラハドさん大丈夫なんですか?打って出て助けに行かなくては!?」

岩の祠の中で心配でたまらないアンピトリテがリーンを質問攻めにする。

「あぁ、大丈夫大丈夫、ああやって適応して攻撃に出だしたなら、彼にまったく問題ないわ、やばけりゃやばいって言ってくるもの、逆にあのゾンビ達、明日の朝までもつかしら?」

「本当ですか、信じますよ、、、。(ハラハラ)」

、、、翌朝、、、

「さて、これが最後のホーリーライトよ。あ、ホントだ、巨人ゾンビ共、ますます動きが鈍くなってきたわ、久しぶりの徹夜戦で疲れたわね。ガラハドは大丈夫かしら?」

「あれから防護魔法も飛ばしといたし、まぁ、木の上でのんびりしてんじゃないの?『黒夜叉』ガラハドと言えば、昔はゲリラ戦で名を馳せたものよ?」

「本当に本当ですか?ガラハドさん大丈夫かしら、、、。あ、あんな上の方に?」

相変わらず扉に襲いかかってくる鈍くなった巨人ゾンビの間から、白檀の巨木にいるはずのガラハドを確認するアンピトリテ達。ガラハドはなぜか、白檀の木のてっぺんにしがみついていた。

「おーい、どうしたのよー、ガラハド~!!?」

何事もなかったかのようにリーンはガラハドへ問いかける。

「どうしたもこうしたも!あんなデカ物なのに中にすばしっこい奴がいて上まで来るんだよ、ひどい目にあったぜ!?」

「あらー、ご苦労様ね。もう大丈夫でしょ?」

「ああ、下で転がってるのがそれだよ。」

下を見ると、目を潰されもがいているひときわ敏捷そうな細身の巨人ゾンビがいた。そしてゾンビ達は日の出と共にもぞもぞと地中へ帰っていく。夜に見せた飽くなき攻撃性とは打って変わって非常に鈍重で、土に潜っていくその姿は冬眠に向かう蛙のように滑稽ですらあった。

「毎晩こうなるのかしら、『フレーセイ島』って?」

「『水死者を裁く島』とは聞いていたけど、まさかこんなになるなんて知らなかったです、ごめんなさい。」

ガラハドは、遠耳にアンピトリテの一言を聞くと真っ先に白檀の木から飛び降りてきて、未だ残っている固まりかけのゾンビを打ち倒しながら土の祠にやってきて答えた。

「ああ、いいんですよ。こんな事、これから待つ試練に比べたらちょっとした腕試しですよ。」

「そうですか、ご無事でよかったです~。」

伏し目がちにほほを染めて、ガラハドへお礼を言うアンピトリテ。

(あぁ~、私たちのアンピーが、ガラハドの外面に騙されて、、、、。)

(ガラハド、端から見ると頼もしくて礼儀正しいもんね、慣れてる私たちにはダメダメだけど(笑)。)
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