野菜士リーン

longshu

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第1章

1-53 海神エーギルとフレーセイ島 その10 エーギルの裁定

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エーギル 「さて、規定のソール三刻(10:00)になりそうじゃし、パパッと決めるかのパパッと。では、生前これといった悪事もなく、信仰心厚く冒険心に富んでおるペール=オーラは『アースガルズ』行きとする。『虹の橋掛』ビフレストへの切符を手配してやる故、自分で『アースガルズ』入り口まで行くと良かろう。そこに行けば、ワシの不肖の息子『ヘイムダル』が車掌をしておる故それに従って『アースガルズ』へ渡り、引き続き世を導く道理の探求に励むが良かろう。」

ペール=オーラ 「は、『海神』殿の仰せのままに。」

エーギル 「そこで床を舐めておるヴァルタルはコールガの提起通り『ニヴルヘル』行きとする。そこのシュートから地底5,000mにある『ニヴルヘル』への接続口へ落ちると良かろう。」

ヴァルタル 「提起って、突然怒りだしただけじゃね~、ぐ、ぐがっ。」

大海蛇に胃腸をねじ上げられ言葉も出ないヴァルタル。

エーギル 「最近、『海神帳』にも載っておらぬ突発の事故が多いからの、『オーディーン』は素直な光の軍勢が増えて喜ぶじゃろうが、『ヘル』は大変じゃて、『ニヴルヘル』へ行くのは跳ねっ返り者が多からの。さ、もう三刻(10:00)じゃ、往け往け。」

バーラ(漂流者を弄ぶ大波) 《チューライ ”チャク・ムムル・アイン”》(呪われし深海の者どもよ出でよ)

海蛇がどこかへ消え去り、今度はヴァルタルを地獄へ見送るべく海の門番チャク・ムムル・アインが出現した。全身に暗い灰蒼色の鱗が生えヘドロにまみれている。吐く息は腐った魚のそれだ、深海魚が世を憎んでいるような顔をして、くぐもったうなり声を上げている。どこからみても身の毛もよだつほど醜悪だ。

ヴァルタル 「げげげっ、こんな奴とこれから過ごすのか!?こうなりゃ死なば諸共だ!『エーギル』死ね~!!」

ヴァルタルはやけくそで、2mはあろうかという全周に渡ってトゲの着いた戦槌で『エーギル』へ襲いかかる。

エーギル 「かっ!!」

エーギルが一喝すると、衝撃波のような物が当たったか、ヴァルタルは一瞬で灰となってしまった。その変わり様に驚く他の海賊達、エーギルには決して手出しはせず採決を待つ、と誓うのであった。

メル (ひぇ~~~、エーちゃんは、お、怒らせない方が良さそうね、、、。)

ガラハド (なら、そのため口やめないとな、お前も消し炭になるかもよ、ハハハハハ。)

エーギル 「はぁ~、また、海死者を来世へ送る役目を逸してしまった。お茶会でまた数が合わないとなじられるんじゃ、仕方ないのぉ~、、、。」

ヨーン 「あの~。」

エーギル 「何じゃ?まだ何かあったか?」

ヨーン 「わ、私はどこへ行くので?」

「おお、そうじゃったそうじゃった、ワシとしたことが、すっかり忘れてしまっておったわい。お主はなかなかに冒険心盛んで、海賊とはいえただの強盗の集団というわけではなく、私掠船(国家や都市と結び、敵対する勢力に対する略奪行為のみ行う海賊)のような運営をしておったようだし、ワシはお前が好きじゃ。ペール=オーラと同じく『アースガルズ』へ向かい、『オーディーン』の黄金の宮殿『ヴァルハラ』で『エインヘリヤル』の登録をするがよかろう、フォッフォッフォ。」

ヨーン (何だかわかんないけど、ほっ。)

リーン (『エーギル』さん、「おお、そうじゃったそうじゃった」が口癖みたいね(笑)。)

エーギル 「さて、他の者どもは小悪党やただの戦闘員でこれといった功績も瑕疵もないようじゃから、然るべき時に輪廻転生してまた巨人として『ヨトゥンハイム』に生まれると良かろう。以上じゃ。」

他の巨人達 (ほっ)

エーギル 「突発で入った急な裁きはこれで済んだし、今日のルーティーンワークに入るかの、水死者が門に列をなして待っておるようじゃ。」

開け放たれた法廷から外を見渡すと、様々な種族の水死者達が、しっかりと順番を待ってこちらをじっと伺っていた。どうやら『波の乙女』の誰かの催眠魔法のようである。水死者達は、死んで間もない完全に人間の姿をしている者もあれば、巨人ゾンビのように明らかに土左衛門の様な者もいた。

ガラハド 「げげげっ、また水死者か。。。」

リーン 「『エーギル』さん、徹夜戦でもういい加減限界なので、ビャルギャさんの申し出通り法廷が終わるまで寝室をお借りしてよいかしら?」

エーギル 「おお、そうじゃったそうじゃった、ワシとしたことが、すっかり忘れてしまっておったわい。よかろう、ビャルギャ、彼女たちを案内してやりなさい。」

ビャルギャ 「ええ、お父様。さ、皆さん『地下世界』へ渡れるのはお父様の手が空いてからになりますから、それまでごゆっくりお休みなさい。こちらから案内差し上げるわ。」

と、水銀のネコに襲われた食卓の間の方を手で指し示した。水銀のネコはシャム猫の姿のまま、またメルをじっと見ている。

メル 「ぎくっ!!」

ビャルギャ 「マーガレット、あの人達は泥棒じゃないのよ、警戒するのはおよしなさい。」

マーガレット 「にゃ~ん」

水銀のネコは、リーン達が見ている前で初めて鳴くと、ゴロゴロ言いながらビャルギャの足首をスリスリ、元いた食卓の間へスタスタと音もなく歩いて行くのであった。

メル 「ねぇ、ホントに大丈夫なの?あんな怖い目に遭ったのは後にも先にもあれが初めてだわ!!」

ビャルギャ 「大丈夫よ、彼女は一見さんお断りなだけで、ホントはやさしくて良い子なの(笑)。」

メル 「、、、。」

ビャルギャ 「そこの二人の巨人さん達も、『アースガルズ』へ行く前にお休みなさっても良いのよ?」

ペール=オーラ 「いえ、神の国『アースガルズ』へ行けるとなれば休んでいる暇もございません。私は早く道を見つけ出したいのです。」

ヨーン 「お、おおよ。早いとこ、切符とやらをくんな。(ペール=オーラのやつ、あんなに饒舌だったっけ?船の上では戦闘後の手当以外ほとんど口聞かなかった奴なのに、、、。)」

ヘヴリング 「あら、残念、せっかく一緒に一時の晩餐でもと思ったのに、、、。」

ブローズグハッダ 「ほらよ、『ビフレスト』行きの切符だ、『ビフレスト』の入り口は兄貴が待ってるからよろしくな。さ、海岸へ出てその切符を太陽にかざせば、海上列車が迎えに来てくれるぜ。」

ヨーン 「兄貴って、お前達まだ兄弟がいるのか?」

ブローズグハッダ 「ああ、『ヘイムダル』っていうんだ。『ビフレスト』の番人やりながら、すごく大事な役目も背負ってるんだぜ!」

ヨーン 「ほぅ、そんな一角の人物なら、一度酒でも酌み交わしてみてぇな。」

ブローズグハッダ 「番人なんだから、そんな暇ねーだろ。それにしてもお前、神と酒を酌み交わしたいなんて、面白いな。」

ヨーン 「ふん、神だか何だか知らんが、海へ出りゃ一対一よ、身分なんて関係あるかよ!」

ブローズグハッダ 「身分か、、、。お前、気に入ったぞ!今夜オレのベッドへ来い!!」

ヨーン 「ば、馬鹿言え!オレはもう初老に差し掛かるというのに、、、。ペール=オーラ!さっさとずらかぞうぜ!!」

見た目若くて情熱的で男勝りな女神と、どっからみてもずんぐりむっくりな男の中の男、巨人海賊の親分が妙な会話をしている。彼らの世界では、神や巨人と言った種族の違いは曖昧なものらしい。それから数刻、ヨーンとペール=オーラは示し合わせると『神界』行きの切符を手に『ヴァンドロメオン』を足早に去って行くのであった。

メル 「あ~あ、ガラハドもこれくらい積極的ならアンピーを落とせるのにね~。」

ガラハド 「ば、馬鹿言え!!オレはレーネ一筋だよ!!」

メル 「シシシ(笑)。」
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