野菜士リーン

longshu

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第1章

1-55 海神エーギルとフレーセイ島 その12 メルの泣き上戸

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--- 晩餐会 ---

ガラハド 「ええ、『古代迷宮戦』も佳境に入り、『ウェールズ』の魔道研究拠点に進撃を開始するところで、入り口にあるイオニア式の大きくて壮麗な白い石造りの門に獅子の騎士『ユーウェイン』卿が立ちはだかっていたのです。」

エーギル 「ほぉ~、それでそれで?神々の飲み会じゃと細かいところまで分からんからの~。」

ガラハド 「劣勢の『ウェールズ』のために、一人、厳として門に立ちはだかる古老の名騎士、慄然としました。その方面にはカーンさんやシグルスも出向いておらず私が攻撃隊長でしたので、一騎打ちに応じさせてもらいました。『ユーウェイン』卿の剣戟はそれは恐ろしく強く、何の虚飾もないただ国を思うその一心を一撃一撃に乗せてくるのです。」

ブローズグハッダ 「へぇ~、お前『円卓の騎士』と戦ったことあんの!?すげー!!神とも互角に戦うことが出来たって噂があるんだぜ!?」

エーギル 「ほほぉ~!どんな感じの技倆だったのじゃ?お主のリヒテナウアー剣術とはひと味もふた味も違うじゃろう?仮にも『円卓の騎士』じゃからな!!」

ガラハド 「それは    」、、、

『麦酒醸造鍋』から湧き出る、美味以外の何物でもない深紅の上面発酵ビールで喉を潤しながら、剣術話に花を咲かせているガラハドと『海神』エーギルとその娘の中で唯一の剣術使いの『ブローズグハッダ』である。アンピトリテは頬を紅潮させながら尊敬プラス憧れのまなざしでガラハドの話を熱心に聞いている。

リーン 「は~、相変わらずガラハドはお酒が入ると堂々としてるわね~。『海神』相手に全然臆さないわ(笑)。」

メル 「本当ね、アンピー、ますますのめり込みそうね、大丈夫かしら、、、(笑)。」

メルの膝の上にはマーガレットが姿勢良くまーるく寝そべりゴロゴロ言っている。メルは時折頭や喉をなでてやっていた。ずっと警戒していたメルも水銀のネコのアプローチに諦め、彼女の小さな膝を明け渡すことにしたのだった。

ビュルギャ 「マーガレットはあなたの事気に入ったみたいね。普段はそんなに人でも神でも懐かないんだけど、、、、。」

ヘテクロミアのシャム猫に強烈な変体攻撃魔法を施した、理知的で清楚な『波の乙女』が評価する。

リーン 「良かったじゃないの、最強のネコに懐かれて(笑)。」

メル 「う、そ、そうねぇ~、、、。」

剣術に興味の無い残り8人の『波の乙女』達とリーンとメルは、美味しい晩餐にあずかっている。

リーン 「ねぇ、なんでネコちゃんは『麦酒醸造鍋』に触れると、魔法が発動するように出来ているの?」

ビュルギャ 「あぁ、ああ見えてあれは『真理の顕現』だから護衛魔法を張ってあるの、まぁ、あんなどでかくちゃドラゴンでもこない限りもってかれそうもないけどね?それでも何度か、さっきの巨人よりもっと大きくて凶悪な霜の巨人とか、悪巧みしている魔道師範に召喚されたゴーレムとかにもってかれそうになったことあるのよ?その都度マーガレットが撃退してたけど。」

頭をなでる動きをやめ、再び凍り付くメル。

リーン 「う~ん、ビールが無尽蔵に出るだけじゃ、悪さも何もしようがないと思うんだけど、、、レーネの持ってる『時空水晶』とかならともかく、、、。」

ヒミングレーヴァ 「あぁ、それは父上がビール好きだからだよ。あれをビール醸造に使うと本当に美味しいビールが出来るんだ。でも、あれの本当の能力は、どんな液体でも物理法則を超えて無尽蔵に出すことが出来る事にあるんだ。世界創世の海を造る時にまさしく使われているよ。『水のルーン』の『真理の顕現』だからな。あれ、人間達はこの事知らなかったっけ?」

指導者然とした美人で有能な水死者裁判の司会進行役が、さも当然のように世界の成り立ちを説明する。黒いケープはこのときは外しており、非常にシンプルな暗い赤のワンピースを着ていた。色気といったものは微塵もなかった。

リーン 「えぇぇ~、そ、それ衝撃の事実!!!そんな世界を造るのに使った『神器』が目の前に!?おまけにビールを飲むためだけに使われている???」

改めて、驚愕の目で傍らに無造作に置かれている巨大な銅製のコーヒーカップを見つめるリーンであった。

---二時間後---

メル 「わ、わだしだってね、、、す、好きでろんな役やってんじゃないのよ。ホ、ホンロはナイーウで繊細なの。ら、誰にでもラメ口なんて役柄じゃら、らいのよ。て、天然のリーンに主役奪われらったからしょうが無いじゃないのよ~、うぇぇぇ~ん、えんえんえん。」

メルが『波の乙女』達とリーンにとぐろを巻いている。呂律も明らかに回っていない。

ビュルギャ 「まぁまぁ。私だって、ほんのちょいみたいな役柄やってるだけだし。」

ヒミングレーヴァ 「そうそう、おそらく『波の乙女』なんて、次の章に移ったが最後、金輪際この小説から出てこないと思うぞ。」

『波の乙女』達は、メルの痴態に付き合って話を合わせてやっている。さすが神というか?融通が利く。

ドゥーヴァ 「あら、メルさん泣き上戸なんですの?」

リーン 「私も何年かぶりだから、飲んでこんなになるなんて知らなかったわ?なんか、売れない女優の楽屋裏みたいな話ね?」

メル 「売れ”だいって何”よ、売れ”だいって!!!私だっで、私だっでで~!!!!」

リーン (げげっ、こっちにも絡んできた(笑)。)

メル 「じょっと、私に”もぎ、ぎろんな隠じ設定を用意じでるんでじょうね!!!!!」

メルはどこかに向かってわめいている。マーガレットはメルが口を開くたび、口ひげを引っ張ったり、身体を揺するものだから、うるさくなって端にある四角柱の定位置へ逃げ去るように戻ってしまうのだった。

マーガレット 「にゃ~ん。(騒々しい人だなぁ、、、)」

ガラハド 「おぉ、この白銀の剣は!?」

『エーギル』は食卓の間の棚の最上段に交差して飾ってあった金と銀の剣の内、銀の剣を取り出してガラハドに差し出した。

エーギル 「うむ、はるか昔、ワシが『フレーセイ島』で水死者の裁判を担うためにここに居を構える際に、備えとしてドワーフの名工『アンドヴァリ』に造ってもらった物じゃ。金の方は完全に装飾品じゃが、銀の方は実用性も考えて造ってある。知っておると思うが、銀はアンデッドに強いからの、新たな任務には最適と思ったのじゃ。まぁ、ワシが使うとナイフみたいにちっぽけで物の役にたたんかったがな。せっかくの名工の作、役に立つ時が来て剣も喜ぶじゃろ。」

ガラハド 「そんな名剣を私がいただいて良いのでしょうか?」

エーギル 「だいたい、うちの猫のマーガレットがお前の分身とも言うべき名剣、黒のバスタードソードを折ってしまったんじゃろ、あの『円卓の騎士』ユーウェインにも引けをとらんかった名剣を。。。今は、木刀しかもっておらぬようじゃし、これはせめてもの償いじゃ。それにしても惜しいことをしたもんじゃ、、、。」

ガラハド 「そういう事でしたか、では喜んで。わがヴァスティーン家の家訓に、”一度手に取った剣は壊れるまで使いこなせ”というものがあります。即席の白檀の木刀ですが、昨日巨人ゾンビと戦ってくれた、すでに私には無二の友、リヒテナウアー剣術には二刀流もございます故、今後は、いただいた白銀の剣と白檀の木刀でより戦闘を有利に進めたいと思います。」

神でも崇めるかのように見とれるアンピトリテの尊敬のまなざし。

エーギル 「ほぉ~、そんな家訓があるのか、見上げた物じゃ!さすがに『獅子の騎士』とタイマン張れるだけはあるの~!!!」

ブローズグハッダ 「せっかく剣を手にしたんだ、ちょっとオレと手合わせしてくれよ。」

リーン 「あ、お酒の入ったガラハドには関わらない方がいいわよ~。」

遠くでメルの管巻きを躱し躱ししていたリーンが聞きつけて忠告をする。『波の乙女』きっての武闘派ブローズグハッダはそんなアドバイスは当然聞く耳を持たない。

ブローズグハッダ 「なんだよ、それ、いいだろガラハド?そのリヒテナウアー剣術とやら見てみたいんだよ。」

ガラハド 「よろしいでしょう、明日もありますから、かるく一本行きますか?」

エーギル 「うむ、我が娘ながらなかなかの剣術使いブローズグハッダと、『英雄戦争』の覇者ガラハドか?娘は仮にも『神』、上背はあるし力も強い、一方のガラハドは『ミズガルズ』に轟くリヒテナウアー剣術の師範代じゃ。どんな試し合いになるのかたのしみじゃの~!」

剣術好きの『海神』は、また深紅のビールを手に手に観戦を決め込んでいる。食卓の間では少し手狭なため、剣術好きな『エーギル』と『ブローズグハッダ』のために作られた修練場へ足を運ぶ4人であった。
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