野菜士リーン

longshu

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第1章

1-73 巨人守衛所

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、、、思い出話は、途切れる事無く続いている。巨人の棲み家を初めて訪れるリーン達にとっては見る物全てが新鮮で不思議であった。たとえば、素朴な椅子は樹齢500年はくだらない楠木の幹の年輪の部分を座面としてそのまま使っている。ここへ来る道すがら遠方にある林や木々を見るとも無く見ていたリーン達であったが、地下世界にこれほどの大木があるのも改めて不思議に感じた。

しかし、過去の魔法技術の結晶、地上と変わらない苔根による照明から言って、何ら不思議は無いのかもしれない、とリーンは思った。そして、無骨に削り取られた楠木の幹の椅子に、ちょこんと腰掛けるノームと人間達、ザイラートやロックは慣れているのか堂々としたものであったが、リーン達は借りられてきた猫感は拭えない。

時折、話の合間にダンドンは何かの飲み物を飲んでいる。持っているコップはガラハドの頭ほどもあり、やはり椅子と同様丸太をくりぬいて作っているようであった。ザイラートやロックも一応もてなしているダンドンに気を遣ってか、それに倣い用意されたコップでその飲み物を飲むのだが、小さいノーム達、特にずんぐりむっくりのロックは、その都度、頭が全て隠れてコップに頭が埋まってしまってしまい飲み終わると喉につかえゲホゲホやっている。見ていて非常に可笑しい。リーン達は笑いをこらえるのに必死であった。

守衛所はその役割を果たすためだけの装備をしっかと設えてあった。うすのろのウドグドが振り回していたのと同じような大きさの粗末な棍棒がリーンの上3mの壁沿いに10本ほども川の字につり下げられている。当たれば人間の頭などひとたまりも無いだろう、身震いしてリーンは目をそらした。その横には、恐らく『炎の巨人』が大挙してここを訪れた時に押し返すためであろう、『ミズガルズ』のそこそこの領主の家の扉くらいもありそうな、大きな楕円型の鉛か鉄かで出来た盾。

金属加工技術が発達していないのか、『レボルテ』の兵士の持っていたミスリルのような強度はなく、そこら中ベコベコに変形している。恐らく何度も何十度も押し問答を繰り返しているのであろう。その傍らの兜や鎧もまったく同じように所々欠陥や変形がある有様で、何の飾りもない無機的で防具ではあるが、どこかのろまな印象をリーンに与えた。

守衛所の壁は岩とセメントで、屋根は丸太とセメントでそれぞれ出来ている。リーン達は、人間の建物の3倍にもなる大きな粗末な小屋の無骨さ素朴さに圧倒された。

守衛所で待機している他の巨人達は、ウドグド同様、言葉もたどたどしく幼稚な印象で、ダンドンのみが別格のようである。『海神エーギル』や『波の乙女』達と同じような背丈膂力を持つにも関わらず、どう贔屓目に見ても同じ種族には感じられない。知能と魔力、それが『神々』と『炎の巨人』の分水嶺なのであろうか。

「あ、あれ、見てみて『め〇たの巨人』よ(笑)、ガガッ!!」

ガラハドにしこたま鼻を打ち付けられ鼻血を流しながらメルが見ている先に、巨人の群れが守衛所の方へ向かってくるのが見えた。

「そ、壮観というか、恐ろしいというか、、、まったく異世界だな。。。襲われたら逃げられる自信ないよ。。。」

「はっはっは、お客人。案ずるには及ばぬ。我々は他民族に対してはそんなに好戦的ではないぞ。ウドグドは特別にこの外壁を勝手に乗り越える者がないよう、訓練されているだけだ。人間やノーム、他種族のお客人に手を上げるなど絶対にない。大方、また行商に困るからこの関所を通してくれ、という陳情であろう。彼らの言い分も分かるだけに困ったものだ。。。」

(さっきのあの大男の振る舞いを見るにつけ、好戦的じゃないなんて決して見えないんだけど、、、、。現に、ザイラートさんじゃなかったら潰されてたじゃないの、、、。)

と、言い出したい気持ちをぐっとこらえ、メルが見つけた巨人の群れの方を見る。メルの言うとおり、遠目からでもどうやら女だと分かりそうな大女を筆頭に、10体ほどの群れがまた地響きでも聞こえてきそうな足取りでこちらへ向かっていた。『炎の巨人』というのは皆筋肉質なのか総じて威圧感満点な猛牛のようであったが、その女だけはその中ではすらりとして背が高く、周りの巨大な猪か巨大なトドのような印象と相まり、その女だけは巨大で優美な白鳥のように見えた。

「やれやれ、またあの女か、厄介な、、、。」

ダンドンが強気な彼にしては珍しく嘆息する。

「ほぉ、そんなに頻繁に民衆が蜂起しとるのかい!?」

「巨人は力が全てだからな、我々は他種族の者には決して手は出さぬが、部族間では争いは日常茶飯事で、それで物事全て決着を付けている。喧嘩こそが我々の真理なのだ。中でもあの女は。。。」

ダンドンが『炎の巨人』のしきたりと、荒れ地をこちらへ歩いてくる大女の説明をしようとした瞬間、とてつもない大声が守衛所に響き渡った。

「おい、ダンドン!!出てきやがれ!!!一体いつになったら、ここを通すつもりだ!!!!」
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