野菜士リーン

longshu

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第1章

1-74 女巨人の柔らかな陳情

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守衛所中に雷でも落ちたかような稲妻のような大音声が木霊する。慣れているダンドン達巨人を除いては皆必死に耳を塞ぐより他無かった。

「う、うるさいのぅ。なんじゃ、あの女は!?」

雄叫びがトレードマークのようなロックではあったが、それでも彼女の大地を切り裂くような大声にはあきれ果てたようだ。その声と同時に闊歩してくる巨人達数人、そこそこ洒落た身なりをした焦げ茶色の髪を後ろ手に束ねた大女が先頭で、武防具に身を包んだ、一癖ありそうな筋肉質の巨魁が二人脇を固めている、それから(リーン達にはそれが老齢なのかどうかはなはだ分からなかったが)ローブに身を包んだ老齢の者が数人、ダンドンと同じように分別のありそうな壮年の者数名、といった構成だった。

「う~む、今度はいろんなの連れてきたな、やれやれ。」

「どういった方々なのですか?」

「うむ、先ほど少し申したとおり、この辺りの集落に住んでいる民なのだが、この外壁が出来るまでは国境沿いのノームの村から高度な調度品や衣料や魔法具を仕入れて、『炎の巨人領』の遠方へ売る交易をして暮らしていたようなのだが、移動を制限されてしまって困っておるのよ。あの女はその村の仕立屋の娘だな。気丈で気立ても良いものだから、皆から代表の一人に祭り上げあげられているようなのだ。これまでは2、3人で来ていたのだが、今度はいったいどんな強硬手段に出るのやら。。。」

と、ザイラート達へはしっかりとした守衛長の立場で接していたダンドンも少し困惑している様子である。やがて村の代表者達は守衛所の扉の前までやってくる。

ドガンッ!!ドガンッ!!!巨人達の上背に合わせて作られた10mはあろうかという丸太で出来た頑丈な扉が、ものすごい音を立てて軋む。扉はまるで断末魔の悲鳴をあげる猛獣か何かのように踊り出し、天井の材木をつなぎ止めているコンクリートの破片が屋根からスコールのように降り注ぎ、守衛所の中を土埃でもうもうとさせた。

「おい!ダンドン!!出てこい!!!」

「ひぃっ!」
「ひぃっ!!」

守衛所の中で番をしている巨人達の悲鳴が聞こえる。合わせてガラハドも悲鳴を上げる。どうやら、巨人達はダンドンやウドグドのように勇敢な者ばかりではないらしく、これまでも何度も陳情者達にひどい目に遭っているのであろう。今回は、どうやら大女が扉に思い切り蹴りを入れているようだった。ダンドンは渋々大扉を開けようとする。ちょっと怯えているようだ。ザイラートやウドグドへ取った態度からは想像もつかない。ガチャッ、丸太で出来た大扉を開けると、大女がまるで飛びかからんとでもする剣幕でまた大声で怒鳴り立てた。

「やい!!!この唐変木!!!今すぐ門扉を開けやがれ!!!!」

「う、うむ、わが主グーボルグの命により、この地の領民は、『ライラックガーデン』へ渡航する事まかり成らぬ、と、何度も言っておろうが。。。スネア、いい加減言う事を聞かんか!」

「うるせぇ!!!グーボルグだか、グーチョキパーだか知らねぇが、今度という今度は、容赦しねぇからな!!!」

どうやら、『炎の巨人領』、とりわけこの周辺においては、領主や王制と言ったものは用をなさないらしい。ザイラーンやダンドンの言ったとおり、本当に力だけが正義のようだ。あまりの政治観念の違いと、スネアという女巨人の凄まじい態度にリーン達は度肝を抜かれていた。

(ね、ねぇ、ロックさん、『炎の巨人』って、みんなこんななの?)

(う、うむ、ちょっとあやつは特別じゃな。。。しかし、大抵粗暴な奴らよ。ダンドンはノーム達には手を出さぬとは言っておるが、要注意じゃ!)

(こ、ここはおとなしくしていましょうかね。。。)

(そうしましょう、触らぬ巨人に祟りなし、ですね(笑)。)

ザイラートは珍しく場違いな冗談を言う。近衛兵長という仕事柄、よほど場数を踏んでいるのか、いつものように穏やかで沈着冷静だ。

「ガーラー様、お願いします!」

珍しく丁寧に?スネアは後ろに控えているローブを纏った老人へ語りかける。すると、ガーラーと呼ばれている老人は古文書を読むような厳めしい口調で詠唱を唱えだした。

《太古より地底深くの炎の川に眠る『ヴィーヴィル』よ、我、ガーラーの問いかけによりこの世界へ顕現し、我々の富と生活を隔てるあの憎き障害を取り除き給え!》

(あ、あら、あれはまずいわ!)
メルが珍しく警鐘を鳴らす。

(え、何々?)

(私達みたいにルーン語の複雑な韻を介して引き出す魔力と違って、直接炎の精霊の力を行使する命令みたいよ!私達の世界みたいに精霊達をルーン韻で縛れるような系統立てられた魔術と違い、精霊任せで細かい制御は出来ないけれど、取り出される力が桁違いなのよ!!)

(あ、そういえば、『草原の王国で、そんなの見たわね、詠唱なしで精霊と仲良くしているの。。。で、いったい何やり出す気なのかしら!?)

(う~ん、あの呼びかけからして、それはおそらく、、、。)
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