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第1章
1-112 スキールニルの旅 その3 神官バアル
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まさしく亀のような足取りに合わせ、スキールニルとブローズグホーヴィは住人達の向かう先についていく。やがて、都市の中央に位置するのだろうか、巨大な台形状の建物に辿り着く。
その建物は、四方に500段ほどの石造りの大きな階段を持ち、その先に神殿のような建築物が建っている。周辺の荒削りの花崗岩の石細工とは違い、その建物だけは白の御影石が鏡面仕上げされている。遠目から見ても小山のようだったが、近づいてみてみるとその巨大さに圧倒された。
住人達はまるで囚人のような足取りで、今にも息を引き取りそうな男を抱え階段を上っていく。スキールニル達もそれに従った。
「お、この巨大な建物はお前の言うとおり、ホントに『ヴァナヘイム』の建物に似ているな。そこと役割が同じだとすれば、恐らく神殿かな?それにしても、フレイはゲルズと仲良くやってるかな?」
「ははは、フレイ様の仲を取り持ったのが、遠い過去のことのように思い起こされますな。お優しいフレイ様のこと、馬の私には分かりませんが神々や巨人の中でも一番美しいと評判のゲルズを愛でていることでしょう。しかし、ゲルズのあの箱入り娘振りからすると、尻に敷かれているやもしれませんがな、ハッハッハ。」
ブローズグホーヴィがカッポカッポと階段を上りながら、珍しく快活にヒヒーンと笑う。親友のスキールニル同様、元主人のフレイのことは知り尽くしている風だった。
「ハッ、違いない(笑)。」
スキールニルも楽しそうに笑う。二人きりの求道生活の中で気を病まず探索を続けるのには、楽観と明朗が秘訣であった。
「しかし、ここの住民は本当に辛気くさいな、必要な事しかしゃべらないし、オレ達のことなどまったく意識していないかのようだ。どうなってんだろうな?」
「うむ、神殿の中に何やら時空のルーンの動きがあります。恐らく魔法に長けた知的な住民がいるのでしょう。そこで何か分かりますかな?」
「また時空のルーンかよ。おれあの『アース神族』の技は何かいけ好かねーんだよな。重厚味がないよ。」
スキールニルは『ヴァン神族』の世界の『豊穣神』フレイの元従者だ。『アース神族』とは以前は巨大な『ヴァン戦争』とう名の世界を二分する戦争をし、ルーンを扱う系統も全く違うのであった。今では互いにそこそこ交流もあり友好的ではあるものの、好みや流派は残っているのであった。
「スキールニル殿から見るとそうなりますか、風の精霊界の住人としては、『アース神族』のあのルーンを精錬し強化するあの魔法は、使う物にとってはさぞ便利なのだろうな、とは思いますがな。」
「人間、自然が一番、とオレは思うんだよ。」
「まぁ、とらえ方は人それぞれでしょうな。私は馬なのであまりこだわりはありませんが。」
「また、それか(笑)?聞いてると馬は気楽で良いよと思うよ。あぁ、いよいよ頂上につくようだぜ。長かったな。『ヴァナヘイム』でもこんな大きな建物なかなかないよ。」
仲良しのスキールニルとブローズグホーヴィが問答をしながら巨大な神殿の階段を上りきると、頂上には500m2はあろうか、大きな平地の中央にイスが一つ、そこに一人のせむしの男が立っている。また、神殿の端には100人からなる住民が静かに床に座っている。
「あ、あいつは確か!」
太平楽のスキールニルが珍しく驚きの声を上げる。スキールニルと同じく『ヴァナヘイム』の住人、神官のバアルであった。
「おぉ、これは『輝く者』スキールニル殿ではありませんか、こんな所でどうしたのですか、くっくっく、、、。」
卑屈な、人を小馬鹿にしたような嫌らしい笑い方だった。『ヴァナヘイム』の住人達は、たいてい白い装束が好みなのだが、現在の彼は赤黒い見た目にも気味の悪いぼろぼろのローブを身に纏っている。それが神官としての威厳を演出させようとしているのであれば明らかに期待外れである。そして、片足をヒョコヒョコさせ、ニマニマと薄笑いを浮かべている。
好男子スキールニルにとってみれば、苦虫をかみつぶすような相手だった。バアルは『ヴァナヘイム』において神官の職に就いていた。勤務内容自体は真面目ながら、当時から一本気なスキールニルにしてみればなにか裏を感じさせる挙動があったのだが、今現在『ミズガルズ』の草原の古都市にまで降りてきて一体何をしているのか、不気味なことこの上ない。
「おい、お前どうしたんだよ、こんな所で何してんだ?」
「『英雄』スキールニル殿こそ、『ヴァナヘイム』でチヤホヤされていれば良いものを、くっくっく。なに、私はここの人間達に教示を与えているのです。」
そう言うと、4人の男達に抱えられた死にかけの男が彼の前へ降ろされ、彼は何やら怪しげな呪文を唱えだした。
《ジャオフンビェンホァン》(招魂変換)
神官バアルがそう唱えると、神殿の端の床に座っている住民達の先頭の一人の女の子から青色の蒸気が立ち上り、スキールニル達の手前で倒れている男の額に埋まっている青い水晶へ流れ込む。
しばらくして、住みに座っている一人の女の子は生気なく倒れ、青い水晶を埋め込まれた老人に見える40絡みの男は息を吹き返した。
その建物は、四方に500段ほどの石造りの大きな階段を持ち、その先に神殿のような建築物が建っている。周辺の荒削りの花崗岩の石細工とは違い、その建物だけは白の御影石が鏡面仕上げされている。遠目から見ても小山のようだったが、近づいてみてみるとその巨大さに圧倒された。
住人達はまるで囚人のような足取りで、今にも息を引き取りそうな男を抱え階段を上っていく。スキールニル達もそれに従った。
「お、この巨大な建物はお前の言うとおり、ホントに『ヴァナヘイム』の建物に似ているな。そこと役割が同じだとすれば、恐らく神殿かな?それにしても、フレイはゲルズと仲良くやってるかな?」
「ははは、フレイ様の仲を取り持ったのが、遠い過去のことのように思い起こされますな。お優しいフレイ様のこと、馬の私には分かりませんが神々や巨人の中でも一番美しいと評判のゲルズを愛でていることでしょう。しかし、ゲルズのあの箱入り娘振りからすると、尻に敷かれているやもしれませんがな、ハッハッハ。」
ブローズグホーヴィがカッポカッポと階段を上りながら、珍しく快活にヒヒーンと笑う。親友のスキールニル同様、元主人のフレイのことは知り尽くしている風だった。
「ハッ、違いない(笑)。」
スキールニルも楽しそうに笑う。二人きりの求道生活の中で気を病まず探索を続けるのには、楽観と明朗が秘訣であった。
「しかし、ここの住民は本当に辛気くさいな、必要な事しかしゃべらないし、オレ達のことなどまったく意識していないかのようだ。どうなってんだろうな?」
「うむ、神殿の中に何やら時空のルーンの動きがあります。恐らく魔法に長けた知的な住民がいるのでしょう。そこで何か分かりますかな?」
「また時空のルーンかよ。おれあの『アース神族』の技は何かいけ好かねーんだよな。重厚味がないよ。」
スキールニルは『ヴァン神族』の世界の『豊穣神』フレイの元従者だ。『アース神族』とは以前は巨大な『ヴァン戦争』とう名の世界を二分する戦争をし、ルーンを扱う系統も全く違うのであった。今では互いにそこそこ交流もあり友好的ではあるものの、好みや流派は残っているのであった。
「スキールニル殿から見るとそうなりますか、風の精霊界の住人としては、『アース神族』のあのルーンを精錬し強化するあの魔法は、使う物にとってはさぞ便利なのだろうな、とは思いますがな。」
「人間、自然が一番、とオレは思うんだよ。」
「まぁ、とらえ方は人それぞれでしょうな。私は馬なのであまりこだわりはありませんが。」
「また、それか(笑)?聞いてると馬は気楽で良いよと思うよ。あぁ、いよいよ頂上につくようだぜ。長かったな。『ヴァナヘイム』でもこんな大きな建物なかなかないよ。」
仲良しのスキールニルとブローズグホーヴィが問答をしながら巨大な神殿の階段を上りきると、頂上には500m2はあろうか、大きな平地の中央にイスが一つ、そこに一人のせむしの男が立っている。また、神殿の端には100人からなる住民が静かに床に座っている。
「あ、あいつは確か!」
太平楽のスキールニルが珍しく驚きの声を上げる。スキールニルと同じく『ヴァナヘイム』の住人、神官のバアルであった。
「おぉ、これは『輝く者』スキールニル殿ではありませんか、こんな所でどうしたのですか、くっくっく、、、。」
卑屈な、人を小馬鹿にしたような嫌らしい笑い方だった。『ヴァナヘイム』の住人達は、たいてい白い装束が好みなのだが、現在の彼は赤黒い見た目にも気味の悪いぼろぼろのローブを身に纏っている。それが神官としての威厳を演出させようとしているのであれば明らかに期待外れである。そして、片足をヒョコヒョコさせ、ニマニマと薄笑いを浮かべている。
好男子スキールニルにとってみれば、苦虫をかみつぶすような相手だった。バアルは『ヴァナヘイム』において神官の職に就いていた。勤務内容自体は真面目ながら、当時から一本気なスキールニルにしてみればなにか裏を感じさせる挙動があったのだが、今現在『ミズガルズ』の草原の古都市にまで降りてきて一体何をしているのか、不気味なことこの上ない。
「おい、お前どうしたんだよ、こんな所で何してんだ?」
「『英雄』スキールニル殿こそ、『ヴァナヘイム』でチヤホヤされていれば良いものを、くっくっく。なに、私はここの人間達に教示を与えているのです。」
そう言うと、4人の男達に抱えられた死にかけの男が彼の前へ降ろされ、彼は何やら怪しげな呪文を唱えだした。
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神官バアルがそう唱えると、神殿の端の床に座っている住民達の先頭の一人の女の子から青色の蒸気が立ち上り、スキールニル達の手前で倒れている男の額に埋まっている青い水晶へ流れ込む。
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