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寝て起きて、なお気持ちが変わらない。という事は、俺の本能とか根っこの部分がやれと言っているのだろう。
しかも朝起きて一番に頭に浮かんだのがイリナへの返事の仕方だ。気持ちが変わらないどころか、ノリノリまである。
(……まったく)
自分の変わり身の良さに呆れてしまうが、これでいいのかもしれない。なんでもかんでも適当に理由を付けて諦めるより、よっぽど。
そう思うと同時に、俺にここまで思わせるまで回復させた海の偉大さと、船に乗ろうと決めた自分の判断を一人で讃えた。今すぐイリナに返事をしたいが、事が事だけに面と向かって言いたい。
だが、イリナが自由に動けるようになるのは夜からなので、ぞれまでは自由にさせてもらう。
俺は身支度をした後、朝食を食べに昨日の昼と同じレストランに向かう。その時、たまにすれ違うウェイターを観察したが変な所がない一般ウェイターだった。
(……そう簡単には出てこないか)
びっくりするくらい豪勢な和食メニューを食べ、また昼まで船内をぶらついた。映画を観たり、柄にもなくスロットをやってみたり。
そして少しだけ懐を温めてから、例のフロアにまた行ってみた。偵察とまではいかなくとももう一度、見て見たかったのだ。
(……夢とか、出来の良い妄想ではなさそうだ)
やはり、そこのフロアだけウェイターの雰囲気が違う。昨晩は感じなかった、威圧感の様なモノを微かに感じ取る。それが俺の気のせいなのか、本当に彼等が発しているモノなのかは分からない。
でも、彼等が少なくともカタギの人間ではない事は分かる。
それで満足した俺は部屋に戻り、夜に備えて仮眠を取った。
目覚めはここ最近で一番スッキリしたものだった。顔を洗い、完全に目を覚ます。
矢でも鉄砲でも撃ってこい。そんな気分だ。
既にイリナが待ち合わせ場所を携帯の方に送っており、スムーズに合流が出来た。ロビーのエレベーターホールで再び顔を合わせる。
「よう」
「……どう? 腹は決まった?」
「決まった。やろうや、徹底的に」
「そうこなくちゃ」
その言葉を待っていた。というより、俺がそう言うのを予測していたかの様な返事だった。言うが早いか、彼女はボタンを押しエレベーターを呼び出す。
空のエレベーターがすぐ来て、俺達はそれに乗り込んだ。
ウインチがワイヤーを巻き上げる音を聞きながら、右側の壁に寄りかかる。
「で、どうする気だ?」
「昨日見た感じ、乗客用エリアと従業員専用フロアを繋ぐ扉に鍵は掛かってなかった。専用フロアに入るのは簡単よ」
「問題は、そこからどうするかだよな……」
「出たとこ勝負でいいんじゃない?」
「馬鹿。相手がどういう奴等か分かんないのに、下手に動くわけにはいかんだろ」
「……な~んか真面目」
「相手がどのぐらいの警戒心持ってるのかも分からんのに、迂闊に動いて土左衛門になりたくないだけだ」
船は日本の陸は勿論、他の島々からも遠く離れた太平洋の真っ只中を走っている。逃げ場も無く、人の一人や二人、沈めた所で証拠は残らないだろう。
だからこその警戒だ。
「……やる気満々じゃん」
「そうか?」
「そうだよ」
適当にはぐらかしてみたが、イリナはハナっから信じる気なんてなさそうだ。
確かに彼女に言われた通り、俺はやる気に満ちていた。それも興奮を伴うような派手な奴じゃない。静かに、でも確実に熱く滾っていくような感じだ。
金持ちフロアに止まったエレベーターを降り、ザッとフロア内を見回す。
イリナ曰くこの時間はホールの方でダンスショーをやっているらしく、そこに人が集中しているせいか人気が少ない。
従業員専用エリアと繋がっている扉の前に立ち、もう一度周囲を見回す。というか、ここはフロアの奥まった死角に設置されており、上手い事客の視線を切れるようにしている。
俺にはこれが、裏側を見せずバカンスを心行くままに楽しんでほしいという粋な気遣いにも、見せたくない物を見せないようにする後ろ暗さにも思えた。
「行くぞ」
「ええ」
ノブに力を掛け一気に回すと、必要な隙間だけ開けると素早くそこに身体をねじ込ませる。
イリナも同じ様にして、専用エリアに侵入した。
そこに広がっていたのは、きらびやかな客室エリアとは明らかに違う、飾り気の無い空間だった。それでもクリーム色の壁とLEDの灯りで客室とは違う、温かみのある素朴な明るさが保たれている。
「中は思ったよりも綺麗だな」
声を潜めながら、イリナに話しかける。
「薬莢の一つでも転がってると思ったんだけどなぁ……」
彼女も声を潜めつつ、キョロキョロと周囲を確認している。
「……そんなヘマするような連中じゃないって事か」
相手がマヌケなら大変喜ばしい事ではあるが、戦う相手を選べないのは傭兵時代からの承知の事実だ。だから、死なない様に頑張るのだ。
「とりあえず、適当に見て回るか」
「賛成」
行動目標を共有し、ツーマンセルで行動する。一人がミスをしても、もう一人がカバー出来る。
こうしてイリナと二人で行動していると、昔に戻ったみたいな感覚がした。
しかも朝起きて一番に頭に浮かんだのがイリナへの返事の仕方だ。気持ちが変わらないどころか、ノリノリまである。
(……まったく)
自分の変わり身の良さに呆れてしまうが、これでいいのかもしれない。なんでもかんでも適当に理由を付けて諦めるより、よっぽど。
そう思うと同時に、俺にここまで思わせるまで回復させた海の偉大さと、船に乗ろうと決めた自分の判断を一人で讃えた。今すぐイリナに返事をしたいが、事が事だけに面と向かって言いたい。
だが、イリナが自由に動けるようになるのは夜からなので、ぞれまでは自由にさせてもらう。
俺は身支度をした後、朝食を食べに昨日の昼と同じレストランに向かう。その時、たまにすれ違うウェイターを観察したが変な所がない一般ウェイターだった。
(……そう簡単には出てこないか)
びっくりするくらい豪勢な和食メニューを食べ、また昼まで船内をぶらついた。映画を観たり、柄にもなくスロットをやってみたり。
そして少しだけ懐を温めてから、例のフロアにまた行ってみた。偵察とまではいかなくとももう一度、見て見たかったのだ。
(……夢とか、出来の良い妄想ではなさそうだ)
やはり、そこのフロアだけウェイターの雰囲気が違う。昨晩は感じなかった、威圧感の様なモノを微かに感じ取る。それが俺の気のせいなのか、本当に彼等が発しているモノなのかは分からない。
でも、彼等が少なくともカタギの人間ではない事は分かる。
それで満足した俺は部屋に戻り、夜に備えて仮眠を取った。
目覚めはここ最近で一番スッキリしたものだった。顔を洗い、完全に目を覚ます。
矢でも鉄砲でも撃ってこい。そんな気分だ。
既にイリナが待ち合わせ場所を携帯の方に送っており、スムーズに合流が出来た。ロビーのエレベーターホールで再び顔を合わせる。
「よう」
「……どう? 腹は決まった?」
「決まった。やろうや、徹底的に」
「そうこなくちゃ」
その言葉を待っていた。というより、俺がそう言うのを予測していたかの様な返事だった。言うが早いか、彼女はボタンを押しエレベーターを呼び出す。
空のエレベーターがすぐ来て、俺達はそれに乗り込んだ。
ウインチがワイヤーを巻き上げる音を聞きながら、右側の壁に寄りかかる。
「で、どうする気だ?」
「昨日見た感じ、乗客用エリアと従業員専用フロアを繋ぐ扉に鍵は掛かってなかった。専用フロアに入るのは簡単よ」
「問題は、そこからどうするかだよな……」
「出たとこ勝負でいいんじゃない?」
「馬鹿。相手がどういう奴等か分かんないのに、下手に動くわけにはいかんだろ」
「……な~んか真面目」
「相手がどのぐらいの警戒心持ってるのかも分からんのに、迂闊に動いて土左衛門になりたくないだけだ」
船は日本の陸は勿論、他の島々からも遠く離れた太平洋の真っ只中を走っている。逃げ場も無く、人の一人や二人、沈めた所で証拠は残らないだろう。
だからこその警戒だ。
「……やる気満々じゃん」
「そうか?」
「そうだよ」
適当にはぐらかしてみたが、イリナはハナっから信じる気なんてなさそうだ。
確かに彼女に言われた通り、俺はやる気に満ちていた。それも興奮を伴うような派手な奴じゃない。静かに、でも確実に熱く滾っていくような感じだ。
金持ちフロアに止まったエレベーターを降り、ザッとフロア内を見回す。
イリナ曰くこの時間はホールの方でダンスショーをやっているらしく、そこに人が集中しているせいか人気が少ない。
従業員専用エリアと繋がっている扉の前に立ち、もう一度周囲を見回す。というか、ここはフロアの奥まった死角に設置されており、上手い事客の視線を切れるようにしている。
俺にはこれが、裏側を見せずバカンスを心行くままに楽しんでほしいという粋な気遣いにも、見せたくない物を見せないようにする後ろ暗さにも思えた。
「行くぞ」
「ええ」
ノブに力を掛け一気に回すと、必要な隙間だけ開けると素早くそこに身体をねじ込ませる。
イリナも同じ様にして、専用エリアに侵入した。
そこに広がっていたのは、きらびやかな客室エリアとは明らかに違う、飾り気の無い空間だった。それでもクリーム色の壁とLEDの灯りで客室とは違う、温かみのある素朴な明るさが保たれている。
「中は思ったよりも綺麗だな」
声を潜めながら、イリナに話しかける。
「薬莢の一つでも転がってると思ったんだけどなぁ……」
彼女も声を潜めつつ、キョロキョロと周囲を確認している。
「……そんなヘマするような連中じゃないって事か」
相手がマヌケなら大変喜ばしい事ではあるが、戦う相手を選べないのは傭兵時代からの承知の事実だ。だから、死なない様に頑張るのだ。
「とりあえず、適当に見て回るか」
「賛成」
行動目標を共有し、ツーマンセルで行動する。一人がミスをしても、もう一人がカバー出来る。
こうしてイリナと二人で行動していると、昔に戻ったみたいな感覚がした。
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