お隣のお兄ちゃんが実は野獣だった件

こみあ

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<シン君視点> 僕が見た真実(おまけのおまけ)

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 僕には3歳年上の兄貴がいる。
 かなりのイケメン。
 しかも背が高くて誠実。
 大手メーカーに勤め年収も悪くない。
 僕程じゃないが出世もしてる。
 声も低くて柔道も有段者。
 ここまで聞いただけならかなりの優良物件。
 こんな兄貴がモテないはずがない。
 兄貴は素知らぬふりを通してたけど僕は知ってる。
 僕の知る限り兄貴は入れ食い状態で学生時代を過ごしてた。
 だけどそんな兄貴の真実を僕は知ってる。
 兄貴は変態だ。
 兄貴の正体は重度のシスコン・ブラコン・ロリコンだ。


 ブラコンはもう諦めた。
 僕自身自分もブラコンなのを感じてる。
 兄貴とは相思相愛。
 なんせ僕の兄貴は素晴らしい。
 物心ついた時には両親より兄貴が僕の後ろを追いかけまわしてた。
 庭で転ぶ寸前に必ず兄貴アリ。
 擦り傷なんて付けようものなら救急箱の中身全部使いきるんじゃないかって勢いで手当てしてくれる。
 僕が壊したお袋のネックレスは5分とかからずに兄貴が秘密裏に処分してた。
 勉強も付きっ切りで見てくれる。
 宿題は家に着いたとたんに兄貴がランドセルから出して一緒にやってくれた。

 だけど。
 あのシスコンは行き過ぎだ。
 どうしてみんな気づかない、あれは変態だ。
 メイは可愛いよ。
 僕にとっても妹みたいなもんだ。
 いっつも僕らの後付け回す子犬のようなやつだ。
 でも兄貴のあの目は。
 あれは本当に妹を見る目?
 メイがよそ見してる時の兄貴は怖い。
 メイをジッと見てるかと思うと口元がにんまりと緩む。
 メイの服は兄貴からの貢物が半数以上だ。
 メイの家に上がり込んではメイの面倒見てたけど、あれ、メイの部屋を漁る口実じゃないのか?
 別に嫉妬してるわけじゃない。そうじゃない。
 あんな変態に思い込まれてるメイがちょっとかわいそうなだけだ。

 それなのに。
 メイはずっと兄貴一筋。
 僕になんてチロリともよそ見しない。
 正直僕だってモテる。
 田口真也しんや、25歳。
 高校主席、某国立大学英文科を卒業後、某外資系金融会社に勤めてる。
 高校時代から付き合っていた彼女に先月プロポーズし快い返事を頂いて浮かれあがってる最中だ。

 嬉しくてその日のうちに結婚するとは兄貴に伝えた。
 この歳まで本当によく面倒を見てくれた兄だ。
 隠すことなんて何もない、そう単純に考えてた。
 だけどそれを聞いた兄は凄く複雑な顔になった。
 僕はそれを見ただけですぐ理解してしまった。
 何が兄貴の頭の中を駆け巡ったのか。
 メイか。
 メイの事か。
 あれは崩れる相好を無理やり押さえつけてるんだ。
 
 多分兄貴は僕より頭がいい。
 僕が秀才なら兄貴は天才だ。
 やりたい事しかしない天才。
 僕が国立に入ったのは単に学校の勉強ができたからだ。
 兄貴のように本当に頭が良いわけじゃない。
 兄貴は自分のやりたい学科を選んだから国立は最初っから受けなかった。
 代わりに塾にも通わずに私立有名大学に入っちまった。
 本人は自分を凡庸だの平凡だのまるっきり見当違いな言葉で表してるが、どこに高校の勉強と参考書を読んだだけで簡単に一流大学の人気学科に現役で入れる凡人がいるって言うんだ?
 まあメイはメイで同じようなことやって退けたがあれは多分火事場の馬鹿力、ライオンの目の前に肉塊だ。
 とにかく兄貴はその類まれなる頭脳を本当に自分の興味の向いた事ににしか使わない。
 つまり主にメイだ。
 多分、今の兄貴の頭の中には詰め将棋のようにメイをポロリと落とすシナリオが数十種類浮かんだんだはずだ。
 そして、それを自分の理性のオブラートで包み込んで飲み込んで綺麗に消化する。
 まるでそんな事は考えもしなかったかのように。
 一瞬で自分まで騙して非常にありきたりな言い訳を吐いて浅はかに見える行動に移る。
 そんな兄貴を今までにも何度も見てきたが、今日の幻想思考タイムは中々長かった。
 かなり先まで人生シミュレーションをしたらしい。
 結果兄貴は突然自分の部屋に籠って荷造りを始めた。
 僕と離れたくないが彼女が一緒に住めるようにここを出る、それが今回の兄貴のチープな言い訳だった。
 無論そんなもんを信じるわけもない。
 その取り澄ました瞳の奥には間違いないドロドロの欲望が隠れてる。
 ああ、メイ。
 とうとう兄貴が行動に出る。
 逃げ切れるのかメイ?
 それとも本望か?

 最後に一言だけ。
 呪詛のようにつぶやいた。
「兄貴を信じてもいいんだよな」
 兄貴が一瞬鬼の様な形相で僕を睨んだ。
 ああ。
 この一言でどのくらいメイの時間が稼げるのか。
 来年の卒業まで持つか?
 いや、持たないだろう。
 一か月?
 その前に。
 兄貴の素行を知りたいと持ち掛けてメイにも一つ呪詛を掛けておく。
「メイ、代わりに教えてやるよ。夜兄貴が風呂場に入ったら静かにのぞいてみな」
 メイ。
 お前……喜ぶなよ。
 もう知らない。
 僕は僕にできるだけのことはしてやった。
 そのロリコン兄貴から逃げ出すチャンスは十分与えたぞ。
 これでお前がそれでも兄貴を選ぶなら。
 僕はもう知らない。
 何も知らない。
 可愛いメイ。
 可哀想なメイ。
 愚かなメイ。
 覚悟しろメイ。
 お前が今ハマろうとしてるその罠はブラックホールなみに底なしだ。



 シン君視点・完
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