異世界で黒猫君とマッタリ行きたい

こみあ

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第11章 北の森

39 決着

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「ネロ君、お疲れ様です。そろそろいいですよ」

 そう言ってアルディが俺を呼びに来てくれたのは、空も明らんでからだった。砦の中の連中もいい加減寝静まったようで物音一つしてこない。俺だって早くあゆみの所に戻りたい。

「おっけー。じゃあお開きにするぞ。お前らももう充分気が済んだだろ」
「な、何を言っでるんですが!?」
「おびらぎ、っで何を一体!?」

 ディーンとジェームズが反論するがその声がどちらもひどく掠れてる。憔悴しきってその声にも覇気がない。そりゃ一晩中がなりあってりゃいい加減ぐったりもするだろう。まあ体力はありそうだから肉体的より精神的に疲れてんだろうな。そんな連中の顔を見回しつつ俺は口を開いた。

「俺の第一目的は完了したから俺は嫁のところに帰る。お前らも切りのいいところで家に帰れよ」

 アクビを漏らしながら俺がそう言うと、その場の全員が信じられないって顔で呆然とこちらを見る。一瞬遅れてディーンが真っ先に口を開いた。

「の、農民は? 狼人族はどうするんです? この砦は──」
「ああ、それもう済んだ」
「は?」

 立ち上がりながら返した返事にその場の全員が同じ間の抜けた声をこぼす。

「農民も狼人族も、もう誰も砦にゃ残ってねえよ」

 俺の声に、その場の連中の顎が一斉に落ちた。

「だ、騙したな!」

 俺の言葉に一番に食って掛かってきたのはジェームズだった。

「さすが秘書官殿、あゆみ様を使って既に制圧を終えてらしたんですか」

 叫ぶジェームズをディーンが取り押さえてるがコイツもまだ何か勘違いしてやがる。

「おい、ディーン。お前ら何やってんだ?」
「な、何って敵を捕縛して砦を……」
「んなもん要らねえ」
「へ?」
「俺は別にそのジェームズを敵だとは一度も言ってねえぞ」
「…………」

 黙り込んだディーンとその取り巻き、そして取り押さえられるジェームズとその取り巻きをグルっと見回しながらもう一度ちゃんと説明してやる。

「さっきも言ったけどな、俺はここにとらえられてた狼人族と農民を連れ戻しに来たんだよ。この砦とかその奥の鉱山とか、正直どっちだってかまわねえ。こんだけ孤立してりゃ当分は出荷も出来ねえだろうし、キールが国王だからあとで何とかするだろ。ついでに俺ならあの鉱山にはもう近寄らねえけどな。なんせさっきのドラゴン、結構頭に来てるみたいであの中燃やし尽くすっつってたぞ」

 俺がドラゴンがいるハズのテントの外を見ながらそう言ってやると、ジェームズとディーンがお互いに顔を見合わせて唾を飲み込む。

「ジェームズ、もう一度言ってやる。キールは一度もここに砦を作れだの鉱山を開発しろだのって命令はだしてねえ。中央で何があったかは知らねえが、あんた一度キールに会ってきた方がいいぞ。あと、中央に行くのは勧めねえ。今行っても生きて出られるとは思えねえ」

 今度はディーンを振り向く。

「あんたもな。ヨークからキールのところに使いが来てたのは知ってる。ただ俺たちが出立するすぐ直前だったから悪いがこっちを優先した。一度ヨークに戻ってもう一度ナンシーに顔出してくれ。今度はまともな話し合いができるよう祈ってる」

 そこまで言った俺は、「じゃあ後は好きなように喧嘩してくれ」と言ってテントを後にした。



 * * * * *



「アルディ、それでどうなった?」

 あそこまで強気なことは言ったものの、本当に全て上手くいったのが信じられなくてまずは確認してしまう。

「全て思ってた以上にうまくいきました。今頃農民は全て気絶して狼人族の背に揺られながらナンシーに向かってます」
「あゆみとシモンとバッカスは? ベンは?」
「彼らは君を待ってますよ。ケインとディアナ、それにヴィクが農民たちと一緒に先にナンシーに向かいました」
「ああ、ヴィクが一緒なら安心だな」
「ええ、まあ仕方ありませんでしたね」

 少し不服そうなアルディに苦笑いを返して俺も本陣にいる皆の元へと向かうことにした。

 本陣につくとアルディが俺とあゆみように用意してくれたというテントに向かった。一晩中見張ってた俺はこのまま数時間寝てていいそうだ。後はアルディたちがディーンたちの動向を見張っててくれるらしい。アルディの隊も元の人数だけはここに残ってる。あいつらがどんなに言い合っても、農民も狼人族もあいつらに手だし出来ない所まで逃げちまってる。その上ドラゴンが山の上から見張ってると思えば、よっぽど馬鹿じゃなければそろそろ諦めてそれぞれ戻っていくだろう。

「黒猫君お帰り~」

 テントに入るとあゆみがとぼけた声で出迎えながら鍋の中身をかき回してた。どうやら俺が帰ってくるのを見越して温めてくれてたらしい。
 鍋の湯気とあゆみの笑顔で一気に気が抜けて疲れがどっと襲ってきた。それを我慢してあゆみを後ろから抱きしめる。

「ただいま。これなんだ?」
「この前の干し肉で作ったお鍋。野菜もたっぷり、何とお味噌も入ってるよ」
「道理でいい匂いがするわけだ」

 思わず思いっきり匂いを嗅ぐと、一緒にあゆみの香りが俺の鼻をくすぐる。

「悪かったな、結局ギリギリまでお前に説明する時間なくて」

 今回は別にあゆみを騙すつもりも情報を出し惜しみするつもりもなかったんだが、思わぬスピードで全てが進んで結局こいつらへの説明が後回しになっちまってた。

「んー、アルディさんから説明は聞いたけど、まだよく分からないことがいっぱいあるからちゃんと説明して」

 だがあゆみは怒るわけでもなく、俺に鍋の中身をよそった皿を渡しながらテントの中に置かれた丸太に座った。その向こうには簡易ながらも藁を積んでカバーをかけた寝床が出来てる。軍行でテントだの寝床だのもらえるってのは驚きだ。

「アルディさんがね、一応秘書官様なんだからいいでしょっていってそれ用意してくれてたよ」

 ああ、そういうことか。と言うか、流石に一晩あれに付き合ってたから気を利かせてくれたのか。俺は受け取った皿を片手にベッドに腰かけ、口を付けつつあゆみに答える。

「事情の説明はとりあえず寝てからさせてくれ。もうグダグダに疲れた……」
「黒猫君、我慢するの苦手だもんね」
「うるせえ」

 文句言いつつ鍋のスープを啜る。干し肉から出た油と出汁が効いててスゲー美味え。あの会談中も一応軽食は出たが、あいつらの話聞いてるだけで食欲が減って手を付ける気にもなれなかった。

「やっぱお前と一緒に食うのが一番いいな」

 ついボロリと本音がこぼれる。途端あゆみが赤くなる。ああ、やっぱこいつがいるから我慢も出来る。鍋のスープを平らげて、皿を返してそのままゴロンと横になる。

「悪い、数時間で起こしてくれ……」

 折角あゆみもいるし、テントだし、寝床もあるし。本当ならもっと構ってやりたいんだが限界だった。
 昨日はマジよく働いた。今寝ねえと後が続かねえ。まだ、やることは結構残ってる。そんな事を考えつつ、「お疲れ様、おやすみ」と静かに呟きながら何か俺にかけてくれるあゆみの姿を目の端でとらえ、俺はそれを最後に安心して眠りについた。
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