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3話 上級召喚獣
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「お待たせいたしました先生」
「どうやら他の生徒も気になるようだな。緊張は……してないか」
「ええ、期待してもらっても構いませんわ」
強気なシャーロット様にチャチャを入れる生徒や驚く先生もいない。おそらく、誰もが彼女が中級以上の召喚獣を呼び出すことは間違いないと思っているからだ。
いや、ひょっとしたら上級を呼び出す瞬間に立ち会いたいとすら思っているかもしれない。
魔法陣の前に立つとゆっくりと召喚の魔法を詠唱しはじめる。それはとても透き通った声で彼女の強い意志を感じさせる。
「魔方陣の光より呼ばれし者、封印されし場所より目覚めたまえ。わが魔力に反応せし召喚獣よ、今ここに姿を現し契約を結びたまえ」
シャーロット様が詠唱と共に魔力を注ぎ込むと、魔力に反応した魔方陣がくるくると回りだし激しい光に包まれる。通常ならここで魔法陣に召喚獣が現れて契約となる。しかし、魔法陣からは何も現れず代わりにシャーロット様の姿が消えてしまった。
「やはり逆召喚か。つまり、上級召喚獣ということだな。さすがはレイクルイーズ公爵家の神童シャーロット」
ジアス先生がそう言葉をもらすのも納得だ。何故ならこれまで学園で上級召喚獣を呼び出した生徒は、長い歴史の中でも僅か数名。十年に一人現れるかどうかの逸材なのだという。
※※※
シャーロットは突然目の前の景色が変わったことに少し驚いたようにも見えたが、それが上級召喚による逆召喚だとわかると、喜びに似た表情で目の前にいる召喚獣に話し掛けた。
「あなたが、私を呼んでくれた召喚獣?」
「そう、水のエレメンタル。ありがとう。それであなたの名前は?」
「ウンディーネ……。まあ! では、あなたは水の精霊様ですのね」
「条件? 何かしら」
「ええ、しょうがないわね。それが条件なんでしょう。私はあなたの力がどうしても必要なの。代償が必要ならしょうがないわ」
しばらく静かだった魔法陣から再び光り始めると、その光はあらゆる光が混ざったような虹色となり周囲が真っ白に思えるほどの光量で一気にあたり一帯を包み込んだ。
そして、魔法陣にはシャーロット様の姿とその肩にちょこんと座るようにして小さな青い生き物がいた。シャーロット様はその生き物を優しく撫でるようにして微笑みを浮かべている。
「シャーロット、その召喚獣は?」
「ウンディーネ。水の精霊様ですわ」
紛れもない上級召喚獣。小さな見た目に反して凶暴な魔力を内包している精霊。この世界で召喚が確認された精霊は全部で四体。火のサラマンダー、風のシルフ、地のノーム、そして水のウンディーネ。精霊は魔法の力をその属性に特化して強力にサポートする。
「精霊……」
過去には賢者と呼ばれるような高位の者が精霊を召喚していたと言われていた。しかしながら現在、精霊を召喚獣として呼び出せる者は誰もいない。つまり、久し振りに召喚に応じた精霊ということになる。
名門レイクルイーズ家の令嬢とはいえ、これは歴史的快挙といってもいい。それ程に、ウンディーネは上級召喚獣の中でも突出した召喚獣といえる。
「次はルークの番ね。あなたがどのような召喚獣を呼ぶのか、とても気になるわ」
上級召喚獣、しかも精霊様を呼び出された後となっては、商人の息子にはとても荷が重い。
この後で僕が下級召喚獣の一角ウサギを召喚したら、シャーロット様はがっかりするのだろうか……。
いや、きっとシャーロット様は優しいから一緒にモフモフしてくれるに違いない。うん、なるべくかわいいウサギさんを召喚できるように最善を尽くそう。
シャーロット様と肩に座っているウンディーネを遠目から見ようと周囲はまだざわざわしている。逆に今ならそんなに目立たずに召喚できるかもしれないね。
「ルーク・エルフェン。ルーク・エルフェン前へ」
「は、はいっ」
かわいいウサギ、かわいいウサギ。もっふもふのウサギ。
「それでは、魔法陣の前に立ち詠唱と共に魔力を注ぎ込みなさい」
「か、かしこまりました」
「魔方陣の光より呼ばれし者、封印されし場所より目覚めたまえ。わが魔力に反応せし召喚獣よ、今ここに姿を現し契約を結びたまえ」
僕が詠唱と共に魔力を注ぎ込むと、魔力に反応した魔方陣がくるくると回りだし、あっという間に激しい光に包まれた。魔法陣ってこんなに光ったっけ? あまりの眩しさに目を閉じてしまうと次の瞬間知らない場所にいて、目の前には知らない人が立っていた。
えっ、誰ですか?
※※※
「なっ、連続で逆召喚だと! ルーク・エルフェン、彼は一体何者なのだ」
「商人の息子が何で逆召喚されるんだ!?」
ジアス先生の驚きも、テオ様の嘆きの叫びも納得である。長い学園の歴史においても上級召喚獣を連続で呼び出すことになるとか初めてのことだろう。十年に一度どころか、数百年に一度の快挙といえる出来事が目の前で起きてしまったのだから。
「ほらっ、ルークの魔力は美しいと言ったでしょ」
結果的に、シャーロット様の勘は見事的中したのだけども、僕の目の前にいる人は召喚獣とはちょっと違うような気がするというか、これならかわいいウサギさんの方がよかったというか何というか……。
見た目を言うなら、日に焼けた痩せ型の中年男性。小首をかしげながら、何故か包丁と香りの強い野菜のようなものを持っている。
彼もよく事情をのみこめていないようで、君、誰? ここはどこ? 的な表情は、見た目からもよく理解できた。いや、まぁ僕が聞きたいんだけどね……。
「どうやら他の生徒も気になるようだな。緊張は……してないか」
「ええ、期待してもらっても構いませんわ」
強気なシャーロット様にチャチャを入れる生徒や驚く先生もいない。おそらく、誰もが彼女が中級以上の召喚獣を呼び出すことは間違いないと思っているからだ。
いや、ひょっとしたら上級を呼び出す瞬間に立ち会いたいとすら思っているかもしれない。
魔法陣の前に立つとゆっくりと召喚の魔法を詠唱しはじめる。それはとても透き通った声で彼女の強い意志を感じさせる。
「魔方陣の光より呼ばれし者、封印されし場所より目覚めたまえ。わが魔力に反応せし召喚獣よ、今ここに姿を現し契約を結びたまえ」
シャーロット様が詠唱と共に魔力を注ぎ込むと、魔力に反応した魔方陣がくるくると回りだし激しい光に包まれる。通常ならここで魔法陣に召喚獣が現れて契約となる。しかし、魔法陣からは何も現れず代わりにシャーロット様の姿が消えてしまった。
「やはり逆召喚か。つまり、上級召喚獣ということだな。さすがはレイクルイーズ公爵家の神童シャーロット」
ジアス先生がそう言葉をもらすのも納得だ。何故ならこれまで学園で上級召喚獣を呼び出した生徒は、長い歴史の中でも僅か数名。十年に一人現れるかどうかの逸材なのだという。
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シャーロットは突然目の前の景色が変わったことに少し驚いたようにも見えたが、それが上級召喚による逆召喚だとわかると、喜びに似た表情で目の前にいる召喚獣に話し掛けた。
「あなたが、私を呼んでくれた召喚獣?」
「そう、水のエレメンタル。ありがとう。それであなたの名前は?」
「ウンディーネ……。まあ! では、あなたは水の精霊様ですのね」
「条件? 何かしら」
「ええ、しょうがないわね。それが条件なんでしょう。私はあなたの力がどうしても必要なの。代償が必要ならしょうがないわ」
しばらく静かだった魔法陣から再び光り始めると、その光はあらゆる光が混ざったような虹色となり周囲が真っ白に思えるほどの光量で一気にあたり一帯を包み込んだ。
そして、魔法陣にはシャーロット様の姿とその肩にちょこんと座るようにして小さな青い生き物がいた。シャーロット様はその生き物を優しく撫でるようにして微笑みを浮かべている。
「シャーロット、その召喚獣は?」
「ウンディーネ。水の精霊様ですわ」
紛れもない上級召喚獣。小さな見た目に反して凶暴な魔力を内包している精霊。この世界で召喚が確認された精霊は全部で四体。火のサラマンダー、風のシルフ、地のノーム、そして水のウンディーネ。精霊は魔法の力をその属性に特化して強力にサポートする。
「精霊……」
過去には賢者と呼ばれるような高位の者が精霊を召喚していたと言われていた。しかしながら現在、精霊を召喚獣として呼び出せる者は誰もいない。つまり、久し振りに召喚に応じた精霊ということになる。
名門レイクルイーズ家の令嬢とはいえ、これは歴史的快挙といってもいい。それ程に、ウンディーネは上級召喚獣の中でも突出した召喚獣といえる。
「次はルークの番ね。あなたがどのような召喚獣を呼ぶのか、とても気になるわ」
上級召喚獣、しかも精霊様を呼び出された後となっては、商人の息子にはとても荷が重い。
この後で僕が下級召喚獣の一角ウサギを召喚したら、シャーロット様はがっかりするのだろうか……。
いや、きっとシャーロット様は優しいから一緒にモフモフしてくれるに違いない。うん、なるべくかわいいウサギさんを召喚できるように最善を尽くそう。
シャーロット様と肩に座っているウンディーネを遠目から見ようと周囲はまだざわざわしている。逆に今ならそんなに目立たずに召喚できるかもしれないね。
「ルーク・エルフェン。ルーク・エルフェン前へ」
「は、はいっ」
かわいいウサギ、かわいいウサギ。もっふもふのウサギ。
「それでは、魔法陣の前に立ち詠唱と共に魔力を注ぎ込みなさい」
「か、かしこまりました」
「魔方陣の光より呼ばれし者、封印されし場所より目覚めたまえ。わが魔力に反応せし召喚獣よ、今ここに姿を現し契約を結びたまえ」
僕が詠唱と共に魔力を注ぎ込むと、魔力に反応した魔方陣がくるくると回りだし、あっという間に激しい光に包まれた。魔法陣ってこんなに光ったっけ? あまりの眩しさに目を閉じてしまうと次の瞬間知らない場所にいて、目の前には知らない人が立っていた。
えっ、誰ですか?
※※※
「なっ、連続で逆召喚だと! ルーク・エルフェン、彼は一体何者なのだ」
「商人の息子が何で逆召喚されるんだ!?」
ジアス先生の驚きも、テオ様の嘆きの叫びも納得である。長い学園の歴史においても上級召喚獣を連続で呼び出すことになるとか初めてのことだろう。十年に一度どころか、数百年に一度の快挙といえる出来事が目の前で起きてしまったのだから。
「ほらっ、ルークの魔力は美しいと言ったでしょ」
結果的に、シャーロット様の勘は見事的中したのだけども、僕の目の前にいる人は召喚獣とはちょっと違うような気がするというか、これならかわいいウサギさんの方がよかったというか何というか……。
見た目を言うなら、日に焼けた痩せ型の中年男性。小首をかしげながら、何故か包丁と香りの強い野菜のようなものを持っている。
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