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4話 サバチャイ
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目の前にいるのは多分だけど、至って普通の人間だと思われる。ひょっとして、人型に変身して現れているということなのだろうか……。
「あ、あの、あなたのお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「サバチャイね。お前の名前は何?」
「サ、サバチャイさんですか。あっ、僕はルークと言います。ルーク・エルフェンです。失礼ですが、あなたは何の召喚獣なのでしょうか?」
「は? サバチャイ、お前が何言ってるかよくわからないね。サバチャイ、ニホンに出稼ぎで来てタイ料理屋やってるよ。出身はバングラディッシュね」
どうやら、料理人だというサバチャイさんだが、バングラディッシュの出身だという。ちなみに、この世界でそんな地名は聞いたことがない。かなり田舎の村なのかもしれない。
それにしてもニホンとか、タイ料理屋とか聞いたことがない名前がいっぱい出てくる。タイ料理って、一体どんな料理なのだろうか。
「うーん、サバチャイさん、あきらかに人間ですよね……。なんで召喚されちゃったのかな」
絶対みんな上級召喚獣から逆召喚されたと思っているだろう。何か間違いだったようですとか言うのめっちゃ恥ずかしい。これなら、一角ウサギをサクッと召喚した方が絶対よかった。みんなから期待のハードルが上がりまくっている。
「サバチャイ、早くトムヤムクン定食作らないといけない。早くここから帰してくれないとお客さん困るね。それともルークがお金払ってくれるね?」
「お、お金ですか? 今はちょっと手持ちがないのですが、あとでなら少しはお渡しできると思います」
「おー、ルーク、お前話が分かる漢ね。漢と書いて男ね。話の分かる人間、サバチャイ嫌いじゃない。じゃあ契約完了ね。お金貰いにいくよ。お金、とっても大事よ」
「えっ、ちょっと、行くってどこに? あ、あれ、魔法陣が光り出してるんだけど!?」
※※※
その頃、多くの生徒が注目するなか、ルークが逆召喚された魔方陣が再び光始めていた。それは、やはりシャーロット様の時と同じように虹色の光を帯びていた。
「うおー、戻ってきたぞ!」
「ちょっと待て、あれって人じゃないか? 痩せた中年のおっさんが出てきやがった!」
「上級召喚獣じゃ……ないだと!?」
「ビ、ビビらせやがって」
「い、いや、そうだろう。奴は商人の息子だ。そもそも上級召喚獣なんか呼べるはずがない。魔方陣に何か問題でもあったのだろう」
どうしよう。やはり、変な注目を浴びている。多くの生徒、先生達がこちらをジーッと見つめている。召喚獣、もう一度呼ばないとならないのだろうな……初日からなんて恥ずかしい。
「ルーク・エルフェン、それがお前の召喚獣なのか?」
「ジアス先生、それが何かの間違いみたいなんです。こちらの方はサバチャイさんと言いまして、バングラディッシュ出身の料理人さんなんですよ」
「いや、ルーク。それは間違いなく召喚獣だ。魔方陣から出てきたことで、魔力のパスがお前と完全に繋がっている。そもそも契約が完了しているじゃないか」
「へっ?」
あわててサバチャイさんをみるも、どこか不機嫌そうな顔が否めない。そ、そりゃ、急に召喚獣にされてしまったら怒りもするか。
「サバチャイさん、何だか面倒なことに巻き込んでしまって申し訳ありません。元に戻せるように先生にも相談しますね」
「そんなことより、早く例のぶつをよこすね。サバチャイのトムヤムクン冷めちゃうよ」
「ジ、ジアス先生、どうすれば元に戻せますか?」
「先ほども言っただろう。そのサバチャイというのは人ではない。召喚獣だ。しかも契約しているのだから無かったことには出来ない」
契約? そんな契約した覚えは……あった!
『サバチャイ嫌いじゃない。じゃあ契約完了ね。お金貰いにいくよ。お金とっても大事よ』
じゃあ契約完了ね。
た、確かにサバチャイさんはそう言った。でも、あれはお金もらいについていくという意味であって、僕の召喚獣になるという意味ではなかったはず。
「そ、そんなー。召喚獣なのに特技がタイ料理作るしかないなんて!?」
「落ち着けルーク、過去に異世界の英霊を召喚したケースがあると聞いたことがある。おそらくだが、あれは英霊の類いで間違いないだろう」
サバチャイさんは、面倒くさそうに鼻くそをほじりながら、器用に丸めては飛ばしている。あんな人が英霊なはずないのは僕でもわかる。
「ジアス先生、英霊って。サバチャイさん普通に触れますよ。絶対、バングラディッシュ村の料理人ですってー!」
「いいか、ルークよく聞け。そもそも、バングラディッシュ村なんてない。これは上級どころではない、超上級の召喚獣だ。その異世界の英霊とは、しっかりコミュニケーションをとるんだぞ」
周囲のざわつきが収まらない。専門の先生方が魔方陣を調べ始めていて、何も問題はないとか言っちゃってる。よくわからないけど、シャーロット様も手を上げて喜んでいらっしゃる。
「すごいわルーク!」
「超上級召喚獣……」
「ルークの奴、とんでもないものを召喚しやがった」
「いや、でも全然強そうには見えないんだけど」
「見た目で判断をするな。シャーロット様の精霊様だってあんなに小さくてかわいらしいじゃないか」
「た、確かに。それよりも、何か変な臭いがしないか?」
「こ、この臭い……。あいつだ、あの召喚獣から臭ってくるぞ!」
イライラの募ったサバチャイさんが、手に持ったパクチーでルークをバシバシ叩き始めていた。どうやら、その爽やかな香りが一気に広がっているようだった。
「ちょっ、サバチャイさん、やめてってば」
「あ、あの、あなたのお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「サバチャイね。お前の名前は何?」
「サ、サバチャイさんですか。あっ、僕はルークと言います。ルーク・エルフェンです。失礼ですが、あなたは何の召喚獣なのでしょうか?」
「は? サバチャイ、お前が何言ってるかよくわからないね。サバチャイ、ニホンに出稼ぎで来てタイ料理屋やってるよ。出身はバングラディッシュね」
どうやら、料理人だというサバチャイさんだが、バングラディッシュの出身だという。ちなみに、この世界でそんな地名は聞いたことがない。かなり田舎の村なのかもしれない。
それにしてもニホンとか、タイ料理屋とか聞いたことがない名前がいっぱい出てくる。タイ料理って、一体どんな料理なのだろうか。
「うーん、サバチャイさん、あきらかに人間ですよね……。なんで召喚されちゃったのかな」
絶対みんな上級召喚獣から逆召喚されたと思っているだろう。何か間違いだったようですとか言うのめっちゃ恥ずかしい。これなら、一角ウサギをサクッと召喚した方が絶対よかった。みんなから期待のハードルが上がりまくっている。
「サバチャイ、早くトムヤムクン定食作らないといけない。早くここから帰してくれないとお客さん困るね。それともルークがお金払ってくれるね?」
「お、お金ですか? 今はちょっと手持ちがないのですが、あとでなら少しはお渡しできると思います」
「おー、ルーク、お前話が分かる漢ね。漢と書いて男ね。話の分かる人間、サバチャイ嫌いじゃない。じゃあ契約完了ね。お金貰いにいくよ。お金、とっても大事よ」
「えっ、ちょっと、行くってどこに? あ、あれ、魔法陣が光り出してるんだけど!?」
※※※
その頃、多くの生徒が注目するなか、ルークが逆召喚された魔方陣が再び光始めていた。それは、やはりシャーロット様の時と同じように虹色の光を帯びていた。
「うおー、戻ってきたぞ!」
「ちょっと待て、あれって人じゃないか? 痩せた中年のおっさんが出てきやがった!」
「上級召喚獣じゃ……ないだと!?」
「ビ、ビビらせやがって」
「い、いや、そうだろう。奴は商人の息子だ。そもそも上級召喚獣なんか呼べるはずがない。魔方陣に何か問題でもあったのだろう」
どうしよう。やはり、変な注目を浴びている。多くの生徒、先生達がこちらをジーッと見つめている。召喚獣、もう一度呼ばないとならないのだろうな……初日からなんて恥ずかしい。
「ルーク・エルフェン、それがお前の召喚獣なのか?」
「ジアス先生、それが何かの間違いみたいなんです。こちらの方はサバチャイさんと言いまして、バングラディッシュ出身の料理人さんなんですよ」
「いや、ルーク。それは間違いなく召喚獣だ。魔方陣から出てきたことで、魔力のパスがお前と完全に繋がっている。そもそも契約が完了しているじゃないか」
「へっ?」
あわててサバチャイさんをみるも、どこか不機嫌そうな顔が否めない。そ、そりゃ、急に召喚獣にされてしまったら怒りもするか。
「サバチャイさん、何だか面倒なことに巻き込んでしまって申し訳ありません。元に戻せるように先生にも相談しますね」
「そんなことより、早く例のぶつをよこすね。サバチャイのトムヤムクン冷めちゃうよ」
「ジ、ジアス先生、どうすれば元に戻せますか?」
「先ほども言っただろう。そのサバチャイというのは人ではない。召喚獣だ。しかも契約しているのだから無かったことには出来ない」
契約? そんな契約した覚えは……あった!
『サバチャイ嫌いじゃない。じゃあ契約完了ね。お金貰いにいくよ。お金とっても大事よ』
じゃあ契約完了ね。
た、確かにサバチャイさんはそう言った。でも、あれはお金もらいについていくという意味であって、僕の召喚獣になるという意味ではなかったはず。
「そ、そんなー。召喚獣なのに特技がタイ料理作るしかないなんて!?」
「落ち着けルーク、過去に異世界の英霊を召喚したケースがあると聞いたことがある。おそらくだが、あれは英霊の類いで間違いないだろう」
サバチャイさんは、面倒くさそうに鼻くそをほじりながら、器用に丸めては飛ばしている。あんな人が英霊なはずないのは僕でもわかる。
「ジアス先生、英霊って。サバチャイさん普通に触れますよ。絶対、バングラディッシュ村の料理人ですってー!」
「いいか、ルークよく聞け。そもそも、バングラディッシュ村なんてない。これは上級どころではない、超上級の召喚獣だ。その異世界の英霊とは、しっかりコミュニケーションをとるんだぞ」
周囲のざわつきが収まらない。専門の先生方が魔方陣を調べ始めていて、何も問題はないとか言っちゃってる。よくわからないけど、シャーロット様も手を上げて喜んでいらっしゃる。
「すごいわルーク!」
「超上級召喚獣……」
「ルークの奴、とんでもないものを召喚しやがった」
「いや、でも全然強そうには見えないんだけど」
「見た目で判断をするな。シャーロット様の精霊様だってあんなに小さくてかわいらしいじゃないか」
「た、確かに。それよりも、何か変な臭いがしないか?」
「こ、この臭い……。あいつだ、あの召喚獣から臭ってくるぞ!」
イライラの募ったサバチャイさんが、手に持ったパクチーでルークをバシバシ叩き始めていた。どうやら、その爽やかな香りが一気に広がっているようだった。
「ちょっ、サバチャイさん、やめてってば」
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