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8話 模擬戦3
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「サバチャイさんは元々のレベルっていくつだったんですか?」
「そんなことは知らないね。でも今はレベル2よ」
どうやらサバチャイさん、レベル1の料理人だったらしい。
「そ、そうですか。それにしても、あのナイフの切れ味は凄かったですね。さぞかし、名のある名工が打った業物なのでしょう」
「あー、あれね。サバチャイもびっくりしたね。まさかあのデカイ熊を真っ二つとは驚きよ! この菜切り包丁、合羽橋で七百八十円のお買得品だったね」
「えーっと、カッパ・バシという方が打ったのでしょうか。値段はわかりませんが、相当人気の職人さんなのでしょうね」
「合羽橋はいいとこね。料理人いっぱい集まるね。食材から調理器具までいっぱいあるよ」
肩をチョンチョンとつつかれて、振り返るとシャーロット様が周りの雰囲気を感じなさい、と言わんばかりに観戦していた生徒の方を見る。
生徒たちは何かを期待しているような顔。
えーっと、こういう時はどうすればいいんだっけ?
「手でも上げたらいいんじゃない?」
言われた通りに右手を上げると、一気に歓声が上がった。
「な、なんか、知らねーけど、めっちゃ凄かった!」
「何だよあのナイフ」
「サバチャイ何者?」
「シャーロット様の精霊魔法も素敵でしたわ」
思いの外、僕とシャーロット様に対する応援が多かったようでびっくりしている。こうなると、テオ様が少し可哀想に思えてくるのだけど。
「認めん……。俺はあんな結果、認めんぞ! ルーク、次は一対一で勝負だ。シャルがいなければ俺のファイアベアーが圧勝していたはず。こんな勝負、絶対に認めんからな!」
そう言うと、テオ様は一人出ていってしまった。実際、シャーロット様がいなかったら間違いなく負けていたわけで、これからも勝負を挑まれるのかと思うと若干憂鬱になる。
「授業中に出ていく生徒不良ね。腐ったミカンは伝染していく言うよ。先生とても大変。そうだ、あいつの成績一番悪くするといいね」
すっかりこの場に馴染んでしまったサバチャイさんが、ジアス先生にテオ様の悪口を懇々と伝えている。敵に回したくないタイプの召喚獣である。
この模擬戦の結果は確かにテオ様の言う通り、偶然が重なった結果なので素直には喜べない。結果的に勝ったとはいえ、奇跡的な出来事が重なり尚且つ、怖ろしい程の切れ味のナイフが無防備なファイアベアーに突き刺さっただけなのだ。
「様々な偶然が重なったことも勝利の一因ですが、あのナイフだってサバチャイさんの持ち物ですよ。それよりも、私はレベルアップしたサバチャイさんがとても気になりますわ」
僕の複雑そうな顔を見てシャーロット様がフォローしてくれたようだ。公爵令嬢に気を使わせるとか商人の息子としてはいただけない。
「そ、そうですね。でも、勝てたのは間違いなく、シャルのおかげなのは間違いないです。あんな凄い火の玉をあっさり相殺しちゃうんですからとても驚きました」
「ふふ、ありがとう。このあと、時間はあるかしら? ウンディーネの精霊魔法を試してみたいし、ルークもサバチャイさんのレベルアップの状況を確認してみませんか?」
「そうですね。レベルアップって何か新しい魔法とか覚えていたらいいんですけどね」
「じゃあ決まりね。私の屋敷に訓練場があるから、そこでいろいろ調べてみましょう」
「へっ? シャーロット様のお屋敷に!?」
「また、シャーロット様になっているわよ、ルーク」
「あ、ごめんなさい」
「サバチャイさんもそれでいいですか?」
「サバチャイ、ルークが約束守ってくれるなら待つね。男と男の約束ね」
「あっ、そっか。お金が欲しいって言ってたんだっけ。すぐに寮に戻ってお金をとってくるよ」
「さすが、男の中の男ね。サバチャイ、ルークといい関係を築けそうな気がするね」
今日のメインは召喚獣を呼び出すことだったので、学園もひとまず解散となる。僕はサバチャイさんと一緒に、いったん寮へ戻ってからシャーロット様のお屋敷へと向かうことになってしまった。
※※※
ジアスは、今日の報告をするため学園長のいる部屋にいた。
「ダブナイル学園長、本日のご報告です」
「あー、ジアス先生。本日はお疲れさまでした。噂は私の耳にも届いていますよ」
「ええ、ちょっと驚きましたね。上級召喚獣が召還されたのも久し振りのことですし、更に二体も召還されたというのは学園の歴史でも初めてのことでしょう」
「そうですね。シャーロットさんとルーク君のことは、しっかりと見守ってください。特に貴族階級ではないルーク君は心配ですからね」
商人の出であるルークには様々なやっかみ、または、高位貴族から声を掛けられることも多くなるだろう。少なくとも、レイクルイーズ家は早速ルークを囲おうと動いているようにも見えた。
「かしこまりました」
本日の結果としては、上級召還獣二体、中級召喚獣三体、下級召喚獣百七十五体だった。例年と比べてもかなり収穫の多い召還の儀であったと思われる。通常なら中級召喚獣が一体呼ばれるかどうかといったところだろう。それだけに今年の生徒は注目度が高い。
特に上級召還獣が二体も呼ばれるというのは歴史的に見ても類をみないことだ。未来の国の宝であると同時に、しっかりと召喚獣を従えて成長していけるよう、学園としても手助けしていかねばなるまい。
「そんなことは知らないね。でも今はレベル2よ」
どうやらサバチャイさん、レベル1の料理人だったらしい。
「そ、そうですか。それにしても、あのナイフの切れ味は凄かったですね。さぞかし、名のある名工が打った業物なのでしょう」
「あー、あれね。サバチャイもびっくりしたね。まさかあのデカイ熊を真っ二つとは驚きよ! この菜切り包丁、合羽橋で七百八十円のお買得品だったね」
「えーっと、カッパ・バシという方が打ったのでしょうか。値段はわかりませんが、相当人気の職人さんなのでしょうね」
「合羽橋はいいとこね。料理人いっぱい集まるね。食材から調理器具までいっぱいあるよ」
肩をチョンチョンとつつかれて、振り返るとシャーロット様が周りの雰囲気を感じなさい、と言わんばかりに観戦していた生徒の方を見る。
生徒たちは何かを期待しているような顔。
えーっと、こういう時はどうすればいいんだっけ?
「手でも上げたらいいんじゃない?」
言われた通りに右手を上げると、一気に歓声が上がった。
「な、なんか、知らねーけど、めっちゃ凄かった!」
「何だよあのナイフ」
「サバチャイ何者?」
「シャーロット様の精霊魔法も素敵でしたわ」
思いの外、僕とシャーロット様に対する応援が多かったようでびっくりしている。こうなると、テオ様が少し可哀想に思えてくるのだけど。
「認めん……。俺はあんな結果、認めんぞ! ルーク、次は一対一で勝負だ。シャルがいなければ俺のファイアベアーが圧勝していたはず。こんな勝負、絶対に認めんからな!」
そう言うと、テオ様は一人出ていってしまった。実際、シャーロット様がいなかったら間違いなく負けていたわけで、これからも勝負を挑まれるのかと思うと若干憂鬱になる。
「授業中に出ていく生徒不良ね。腐ったミカンは伝染していく言うよ。先生とても大変。そうだ、あいつの成績一番悪くするといいね」
すっかりこの場に馴染んでしまったサバチャイさんが、ジアス先生にテオ様の悪口を懇々と伝えている。敵に回したくないタイプの召喚獣である。
この模擬戦の結果は確かにテオ様の言う通り、偶然が重なった結果なので素直には喜べない。結果的に勝ったとはいえ、奇跡的な出来事が重なり尚且つ、怖ろしい程の切れ味のナイフが無防備なファイアベアーに突き刺さっただけなのだ。
「様々な偶然が重なったことも勝利の一因ですが、あのナイフだってサバチャイさんの持ち物ですよ。それよりも、私はレベルアップしたサバチャイさんがとても気になりますわ」
僕の複雑そうな顔を見てシャーロット様がフォローしてくれたようだ。公爵令嬢に気を使わせるとか商人の息子としてはいただけない。
「そ、そうですね。でも、勝てたのは間違いなく、シャルのおかげなのは間違いないです。あんな凄い火の玉をあっさり相殺しちゃうんですからとても驚きました」
「ふふ、ありがとう。このあと、時間はあるかしら? ウンディーネの精霊魔法を試してみたいし、ルークもサバチャイさんのレベルアップの状況を確認してみませんか?」
「そうですね。レベルアップって何か新しい魔法とか覚えていたらいいんですけどね」
「じゃあ決まりね。私の屋敷に訓練場があるから、そこでいろいろ調べてみましょう」
「へっ? シャーロット様のお屋敷に!?」
「また、シャーロット様になっているわよ、ルーク」
「あ、ごめんなさい」
「サバチャイさんもそれでいいですか?」
「サバチャイ、ルークが約束守ってくれるなら待つね。男と男の約束ね」
「あっ、そっか。お金が欲しいって言ってたんだっけ。すぐに寮に戻ってお金をとってくるよ」
「さすが、男の中の男ね。サバチャイ、ルークといい関係を築けそうな気がするね」
今日のメインは召喚獣を呼び出すことだったので、学園もひとまず解散となる。僕はサバチャイさんと一緒に、いったん寮へ戻ってからシャーロット様のお屋敷へと向かうことになってしまった。
※※※
ジアスは、今日の報告をするため学園長のいる部屋にいた。
「ダブナイル学園長、本日のご報告です」
「あー、ジアス先生。本日はお疲れさまでした。噂は私の耳にも届いていますよ」
「ええ、ちょっと驚きましたね。上級召喚獣が召還されたのも久し振りのことですし、更に二体も召還されたというのは学園の歴史でも初めてのことでしょう」
「そうですね。シャーロットさんとルーク君のことは、しっかりと見守ってください。特に貴族階級ではないルーク君は心配ですからね」
商人の出であるルークには様々なやっかみ、または、高位貴族から声を掛けられることも多くなるだろう。少なくとも、レイクルイーズ家は早速ルークを囲おうと動いているようにも見えた。
「かしこまりました」
本日の結果としては、上級召還獣二体、中級召喚獣三体、下級召喚獣百七十五体だった。例年と比べてもかなり収穫の多い召還の儀であったと思われる。通常なら中級召喚獣が一体呼ばれるかどうかといったところだろう。それだけに今年の生徒は注目度が高い。
特に上級召還獣が二体も呼ばれるというのは歴史的に見ても類をみないことだ。未来の国の宝であると同時に、しっかりと召喚獣を従えて成長していけるよう、学園としても手助けしていかねばなるまい。
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