僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ

文字の大きさ
10 / 61

9話 レベルアップの恩恵

しおりを挟む
 学園の寮に戻って財布を取ってくると、サバチャイさんに一体いくら渡せば良いのかと悩んでいた。中級召喚獣を撃破した報酬としては金貨一枚ぐらい渡してもいいのではないかと思ってしまうが、毎回お金を請求されてしまうと召喚するたびに金貨一枚が飛んでいくことになる。それはちょっと困る。

 ちなみに金貨一枚というのは、僕が一週間をゆとりをもって生活していけるぐらいの価値がある。つまり、四回呼び出してしまうと一か月分の生活費が飛んでいってしまう。それは大変困る。これから授業でも召喚獣を呼び出す機会は多くなるだろう。日に一度とは言わなくても二日に一度は呼ぶことになるだろう。いくらお金には多少ゆとりがあるとはいえ、父から無駄遣いを怒られそうだ。いや無駄ではないと思うんだけどさ。

「よし、金貨はやめておこう。銀貨を数枚渡しておこう。しかも今回は特別ですよとか言っておけば、次回からはもう少し枚数を減らせるかもしれないもんね」

「何を減らせるよ? お金とってきたね?」

「!?」

 危ない。僕の部屋に入らんとする勢いでサバチャイさんが扉に近づいていた。金貨を見られなくてよかった。

「び、びっくりした。サバチャイさん、寮の玄関で待っててって話したじゃないですか」

「うん、サバチャイなんか嫌な予感したね。決してルークのこと疑ってるわけじゃないよ。ただ、虫の声が聞こえたね。バングラディッシュでは虫が鳴くと誰かが悪口を言ってるというね」

「そ、そうなんですか……」

「ルークのことは信頼しているけど、お金が絡むと人はわからないね。いや、これはさっきサバチャイにボロ負けした、テオとかいう奴が悪口言っているのかもしれないね」

 す、するどい。さすが契約条件にお金を要求してくるだけはある。あと、テオ様は確かに悪口というか不満は持っていそうだけど、決してボロ負けではなかった思うんだ。むしろ薄氷の上の奇跡的な勝利だったと思うんだけども。

「ちゃんとお金持ってきましたよ。今回は特別ですからね、はいどうぞ」

 銀貨三枚をサバチャイさんの手のひらに渡した。緊張の瞬間だ。こんなもんじゃ少ない、命を懸けた結果が銀貨三枚とかふざけているのか、と言われてしまうと僕としても何も言えなくなってしまう。

 召喚獣にこれからもお金をせびられ続けるかもしれない恐怖に、僕の手は震えていた。

「おー、これは銀ね! この大きさは五百円硬貨と同じくらいよ。つまりは、千五百円ね。ルークなんて太っ腹ね。トムヤムクン定食は七百円よ。サバチャイ、ルークにお釣り八百円あげないよ。そうね、今回は特別ね。さすがルーク、男の中の男ね」

 五百円硬貨というのがどのぐらいの価値なのかわからないけど、どうやら喜んでもらえたようで何よりだ。三枚あげたことが功を奏したっぽい。逆に金貨一枚だと、ごねられた可能性があったかもしれない。……危なかった。

「そ、それじゃあ、シャーロット様のお屋敷に行こうか」

「あの白い姉ちゃんの家か。サバチャイ、レベルアップしたからかなり強くなった気がするね。ちょっと楽しみよ」

 どうやら、レベルアップの恩恵はそれなりに自覚しているようだ。

「そういえば、レベルアップで何か覚えたんですか?」

「よくぞ聞いてくれたねルーク。サバチャイとっても驚いたね。実は……」

「実は……?」

「サバチャイ、ステータスが二倍になったよ。これで神の左が完全に火を吹くね」

 華麗にステップを踏みながら、左ストレートを僕に寸止めしてみせる、サバチャイさんはとてもウザい。

 元々のステータスが大したこと無さそうなだけに、これはそこまで凄いことではない。ステータスでは中級召喚獣にまだまだ届かないだろう。

「他に何か新しく覚えたこととかありますか?」

「さすが、ルーク。わかってたか」

「あ、あるんですね!?」

「驚きのスキルね。夢とはいえ、自分の能力が恐ろしくなるね」

 スキル。それは召喚獣が固有に覚える独自のもので、召喚獣によって覚えるスキルは様々だ。魔法の補助するようなスキルや、属性に特化したものを覚えると聞いている。そういえば、サバチャイさんの属性ってなんだろうか。

「それでそのスキルとは……?」

 不敵な笑いをしているサバチャイさん。これは想像以上に期待できるスキルなのかもしれない。

「召喚魔法と分身ね」

「えっ? 召喚魔法!?」

「そうね。サバチャイ、召喚獣を呼び出せるようになったよ」

 ……衝撃だ。召喚獣が更に召喚獣を呼び出すというミラクル。呼び出した召喚獣によっては、そのアドバンテージは大きい。そもそも呼び出せる召喚獣は一人一体なのだから。



 ここで、召喚獣についても軽く説明をしようと思う。呼び出した召喚獣にもレベルによって個体差が存在し、レベルが上限値に達すると階級が上がる場合がある。

 つまり、中級の召喚獣であっても上級に進化する可能性が残されているのだ。しかしながら、召喚獣に経験を積ませることは、なかなかに大変なことである。それは強敵との対戦が必要不可欠になるためであり、召喚獣の強い心、召喚者との深い信頼関係の構築が何よりも重要になってくると言われている。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

悪役令嬢、休職致します

碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。 しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。 作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。 作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。

処理中です...