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9話 レベルアップの恩恵
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学園の寮に戻って財布を取ってくると、サバチャイさんに一体いくら渡せば良いのかと悩んでいた。中級召喚獣を撃破した報酬としては金貨一枚ぐらい渡してもいいのではないかと思ってしまうが、毎回お金を請求されてしまうと召喚するたびに金貨一枚が飛んでいくことになる。それはちょっと困る。
ちなみに金貨一枚というのは、僕が一週間をゆとりをもって生活していけるぐらいの価値がある。つまり、四回呼び出してしまうと一か月分の生活費が飛んでいってしまう。それは大変困る。これから授業でも召喚獣を呼び出す機会は多くなるだろう。日に一度とは言わなくても二日に一度は呼ぶことになるだろう。いくらお金には多少ゆとりがあるとはいえ、父から無駄遣いを怒られそうだ。いや無駄ではないと思うんだけどさ。
「よし、金貨はやめておこう。銀貨を数枚渡しておこう。しかも今回は特別ですよとか言っておけば、次回からはもう少し枚数を減らせるかもしれないもんね」
「何を減らせるよ? お金とってきたね?」
「!?」
危ない。僕の部屋に入らんとする勢いでサバチャイさんが扉に近づいていた。金貨を見られなくてよかった。
「び、びっくりした。サバチャイさん、寮の玄関で待っててって話したじゃないですか」
「うん、サバチャイなんか嫌な予感したね。決してルークのこと疑ってるわけじゃないよ。ただ、虫の声が聞こえたね。バングラディッシュでは虫が鳴くと誰かが悪口を言ってるというね」
「そ、そうなんですか……」
「ルークのことは信頼しているけど、お金が絡むと人はわからないね。いや、これはさっきサバチャイにボロ負けした、テオとかいう奴が悪口言っているのかもしれないね」
す、するどい。さすが契約条件にお金を要求してくるだけはある。あと、テオ様は確かに悪口というか不満は持っていそうだけど、決してボロ負けではなかった思うんだ。むしろ薄氷の上の奇跡的な勝利だったと思うんだけども。
「ちゃんとお金持ってきましたよ。今回は特別ですからね、はいどうぞ」
銀貨三枚をサバチャイさんの手のひらに渡した。緊張の瞬間だ。こんなもんじゃ少ない、命を懸けた結果が銀貨三枚とかふざけているのか、と言われてしまうと僕としても何も言えなくなってしまう。
召喚獣にこれからもお金をせびられ続けるかもしれない恐怖に、僕の手は震えていた。
「おー、これは銀ね! この大きさは五百円硬貨と同じくらいよ。つまりは、千五百円ね。ルークなんて太っ腹ね。トムヤムクン定食は七百円よ。サバチャイ、ルークにお釣り八百円あげないよ。そうね、今回は特別ね。さすがルーク、男の中の男ね」
五百円硬貨というのがどのぐらいの価値なのかわからないけど、どうやら喜んでもらえたようで何よりだ。三枚あげたことが功を奏したっぽい。逆に金貨一枚だと、ごねられた可能性があったかもしれない。……危なかった。
「そ、それじゃあ、シャーロット様のお屋敷に行こうか」
「あの白い姉ちゃんの家か。サバチャイ、レベルアップしたからかなり強くなった気がするね。ちょっと楽しみよ」
どうやら、レベルアップの恩恵はそれなりに自覚しているようだ。
「そういえば、レベルアップで何か覚えたんですか?」
「よくぞ聞いてくれたねルーク。サバチャイとっても驚いたね。実は……」
「実は……?」
「サバチャイ、ステータスが二倍になったよ。これで神の左が完全に火を吹くね」
華麗にステップを踏みながら、左ストレートを僕に寸止めしてみせる、サバチャイさんはとてもウザい。
元々のステータスが大したこと無さそうなだけに、これはそこまで凄いことではない。ステータスでは中級召喚獣にまだまだ届かないだろう。
「他に何か新しく覚えたこととかありますか?」
「さすが、ルーク。わかってたか」
「あ、あるんですね!?」
「驚きのスキルね。夢とはいえ、自分の能力が恐ろしくなるね」
スキル。それは召喚獣が固有に覚える独自のもので、召喚獣によって覚えるスキルは様々だ。魔法の補助するようなスキルや、属性に特化したものを覚えると聞いている。そういえば、サバチャイさんの属性ってなんだろうか。
「それでそのスキルとは……?」
不敵な笑いをしているサバチャイさん。これは想像以上に期待できるスキルなのかもしれない。
「召喚魔法と分身ね」
「えっ? 召喚魔法!?」
「そうね。サバチャイ、召喚獣を呼び出せるようになったよ」
……衝撃だ。召喚獣が更に召喚獣を呼び出すというミラクル。呼び出した召喚獣によっては、そのアドバンテージは大きい。そもそも呼び出せる召喚獣は一人一体なのだから。
ここで、召喚獣についても軽く説明をしようと思う。呼び出した召喚獣にもレベルによって個体差が存在し、レベルが上限値に達すると階級が上がる場合がある。
つまり、中級の召喚獣であっても上級に進化する可能性が残されているのだ。しかしながら、召喚獣に経験を積ませることは、なかなかに大変なことである。それは強敵との対戦が必要不可欠になるためであり、召喚獣の強い心、召喚者との深い信頼関係の構築が何よりも重要になってくると言われている。
ちなみに金貨一枚というのは、僕が一週間をゆとりをもって生活していけるぐらいの価値がある。つまり、四回呼び出してしまうと一か月分の生活費が飛んでいってしまう。それは大変困る。これから授業でも召喚獣を呼び出す機会は多くなるだろう。日に一度とは言わなくても二日に一度は呼ぶことになるだろう。いくらお金には多少ゆとりがあるとはいえ、父から無駄遣いを怒られそうだ。いや無駄ではないと思うんだけどさ。
「よし、金貨はやめておこう。銀貨を数枚渡しておこう。しかも今回は特別ですよとか言っておけば、次回からはもう少し枚数を減らせるかもしれないもんね」
「何を減らせるよ? お金とってきたね?」
「!?」
危ない。僕の部屋に入らんとする勢いでサバチャイさんが扉に近づいていた。金貨を見られなくてよかった。
「び、びっくりした。サバチャイさん、寮の玄関で待っててって話したじゃないですか」
「うん、サバチャイなんか嫌な予感したね。決してルークのこと疑ってるわけじゃないよ。ただ、虫の声が聞こえたね。バングラディッシュでは虫が鳴くと誰かが悪口を言ってるというね」
「そ、そうなんですか……」
「ルークのことは信頼しているけど、お金が絡むと人はわからないね。いや、これはさっきサバチャイにボロ負けした、テオとかいう奴が悪口言っているのかもしれないね」
す、するどい。さすが契約条件にお金を要求してくるだけはある。あと、テオ様は確かに悪口というか不満は持っていそうだけど、決してボロ負けではなかった思うんだ。むしろ薄氷の上の奇跡的な勝利だったと思うんだけども。
「ちゃんとお金持ってきましたよ。今回は特別ですからね、はいどうぞ」
銀貨三枚をサバチャイさんの手のひらに渡した。緊張の瞬間だ。こんなもんじゃ少ない、命を懸けた結果が銀貨三枚とかふざけているのか、と言われてしまうと僕としても何も言えなくなってしまう。
召喚獣にこれからもお金をせびられ続けるかもしれない恐怖に、僕の手は震えていた。
「おー、これは銀ね! この大きさは五百円硬貨と同じくらいよ。つまりは、千五百円ね。ルークなんて太っ腹ね。トムヤムクン定食は七百円よ。サバチャイ、ルークにお釣り八百円あげないよ。そうね、今回は特別ね。さすがルーク、男の中の男ね」
五百円硬貨というのがどのぐらいの価値なのかわからないけど、どうやら喜んでもらえたようで何よりだ。三枚あげたことが功を奏したっぽい。逆に金貨一枚だと、ごねられた可能性があったかもしれない。……危なかった。
「そ、それじゃあ、シャーロット様のお屋敷に行こうか」
「あの白い姉ちゃんの家か。サバチャイ、レベルアップしたからかなり強くなった気がするね。ちょっと楽しみよ」
どうやら、レベルアップの恩恵はそれなりに自覚しているようだ。
「そういえば、レベルアップで何か覚えたんですか?」
「よくぞ聞いてくれたねルーク。サバチャイとっても驚いたね。実は……」
「実は……?」
「サバチャイ、ステータスが二倍になったよ。これで神の左が完全に火を吹くね」
華麗にステップを踏みながら、左ストレートを僕に寸止めしてみせる、サバチャイさんはとてもウザい。
元々のステータスが大したこと無さそうなだけに、これはそこまで凄いことではない。ステータスでは中級召喚獣にまだまだ届かないだろう。
「他に何か新しく覚えたこととかありますか?」
「さすが、ルーク。わかってたか」
「あ、あるんですね!?」
「驚きのスキルね。夢とはいえ、自分の能力が恐ろしくなるね」
スキル。それは召喚獣が固有に覚える独自のもので、召喚獣によって覚えるスキルは様々だ。魔法の補助するようなスキルや、属性に特化したものを覚えると聞いている。そういえば、サバチャイさんの属性ってなんだろうか。
「それでそのスキルとは……?」
不敵な笑いをしているサバチャイさん。これは想像以上に期待できるスキルなのかもしれない。
「召喚魔法と分身ね」
「えっ? 召喚魔法!?」
「そうね。サバチャイ、召喚獣を呼び出せるようになったよ」
……衝撃だ。召喚獣が更に召喚獣を呼び出すというミラクル。呼び出した召喚獣によっては、そのアドバンテージは大きい。そもそも呼び出せる召喚獣は一人一体なのだから。
ここで、召喚獣についても軽く説明をしようと思う。呼び出した召喚獣にもレベルによって個体差が存在し、レベルが上限値に達すると階級が上がる場合がある。
つまり、中級の召喚獣であっても上級に進化する可能性が残されているのだ。しかしながら、召喚獣に経験を積ませることは、なかなかに大変なことである。それは強敵との対戦が必要不可欠になるためであり、召喚獣の強い心、召喚者との深い信頼関係の構築が何よりも重要になってくると言われている。
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