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15話 分身スキル
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シャーロット様とジゼル様が地面に落ちている銀貨をじっくり見ている。さらに困ったような顔をしながら裏返したり、手で重さを感じたりと確認している。
「申し訳ないのだけど、サバチャイさん、これはしっかりとした犯罪になるわ」
シャーロット様の貴族としての目が光っていらっしゃる。サバチャイさんも、何もここで実験することはないのに。
「面白そうなスキルなんだけどなぁ。でもこれ見つかったら、ルークも共犯になるから気をつけた方がいいよ」
「ジ、ジゼル様、僕も罪に問われてしまうのですか?」
「当たり前じゃない。召喚獣の管理は召喚主がしっかりみないとダメよ」
「ルーク、例えば召喚獣を使って街を攻撃したら召喚主が捕まるのは理解できるわよね。召喚主の意図しないことであったとしても、召喚獣の不手際、暴走は管理責任を問われるわ」
サバチャイさん、自由過ぎるから僕には管理できなそうなんだけど……。
「そ、それは困りましたね。サバチャイさん、僕の言うことちゃんと聞いてくれるかな……」
「一応しっかり会話できるから、コミュニケーションはとりやすいとは思うし、そのまあ、頑張りなよ」
ジゼル様がとっても他人事だ。
「ルーク、安心するといいね。サバチャイ召喚主の不利になるようなこと、勿論するわけがないね」
「ほ、本当ですか!?」
「当たり前よ。でもねルーク、サバチャイも知らぬ間に召喚獣にされてとっても困ってるね。サバチャイ協力はするけど、ルークもサバチャイに協力してほしいね」
ん? 一気に雲行きが怪しくなってきた。サバチャイさんの暗く陰のある笑顔が、とても胡散臭い。
召喚獣が召喚主に害をなさないということは一般的にも言われている。契約の段階でしっかり無意識下に関係性が構築されるらしい。
しかし、僕が害を受けていないと思えることであれば抜け穴はいくらでもあるのだ。サバチャイさんの言わんとしていることは、きっとそういうことなのだろう。
「確かに白い姉ちゃんと黒い姉ちゃんが言う通り、この世界で使えるお金を増やしたら犯罪ね。ルークも共犯者で捕まってもしょうがない思うね」
や、やはりお金のことか。サバチャイさん、一体何を考えている。公爵家、侯爵家のご令嬢がいる前だ。迂闊なことは言えないはずだが……。
「でもね、サバチャイ、ピンときたね。サバチャイの世界のお金だったら、ここでいくら増やしても何の問題もないね。ルークにもこの世界にも、何の迷惑もかけないよ」
ニチャアとした笑顔がいやらしい。でも、それならばこちらの世界の人間が口を出すことでもないのも確かだ。
「そうですね。確かにそれなら問題はないわ」
「うーん。心情的にはどうかと思うんだけど、罪に問えることではないよね」
あー、シャーロット様もジゼル様も納得してしまった。
「そうね、そうね。この世界には何の迷惑もかけないね。そしてサバチャイは召喚されるたびに財布の中身が倍になるね! 今後は平均して十万は財布に入れておくことにするよ」
十万というのがどのくらいの価値なのかわからないけど一応、財布に入れておけるぐらいの金額なのだろう。話しぶりからも、そこまで無茶苦茶なことをするつもりはないのか? いや、そう思いたい。
「ところで、サバチャイさん。そのスキルなんだけど、分身している時に召喚したらポリスマンが二体召喚されるのかな?」
「ルーク、馬鹿か。ポリスマンは一人しかいないね。召喚しても二人にはならないよ」
「でも分身した方もサバチャイさんなんでしょ? どうなるのかな」
「それは気になるわね。もしもポリスマンが二体現れたら、もう誰もルークに勝てないんじゃないかしら」
「ズルいよルーク。私にポリスマン一体くれてもいいんだよ」
「まったくしょうがないね。試してみるよ、分身!」
「「あっ、間違って銀貨また倍にしちゃった」」
……わざとだな。倍になった銀貨を普通にポケットに入れてから分身しやがった。
サバチャイさんのせいで僕が捕まる日もそう遠くはないのかもしれない。
「サバチャイさん、あとで全て回収しますので増やしても無駄ですよ。それから、次やったらこちらの世界で勾留しますからね」
シャーロット様もサバチャイさんのことを大分理解してきたようだ。この人はしっかり注意しないと、知らないふりして同じことを繰り返す質の悪いタイプだ。仲間だと思って油断してはいけない。
「「冗談ね。ちょっと何回増やせるのか気になっただけよ。それじゃあ召喚するね! ポリスマンカモン!」」
二つの魔方陣が展開されると眩い光とともに片方の魔法陣からは再びポリスマンが現れた。そして、もう一つの魔法陣からは小さな召喚獣が……いや、これはネコか? もう一方の魔法陣からはなんとネコが召喚されていた。
「ちょっ、おい! なんだよ、また召喚したのかよ。一日に召喚する回数の上限とか決めとかねーか? っていうか、サバチャイさん二人になってるじゃねーかよ!? お、おいっ、ルークさん、これはどういうことだって!」
「サバチャイさんのスキルなんですが、どうやら分身できるようなのです。それで、今回の実験は分身したまま召喚したらポリスマンが二体召喚されるのかという実験でして……」
「なるほど、って、俺まで分身するわけねーだろ。まあいい、それでもう一つから召喚されたってのが、あのネコというわけか」
「なああああぁぁぁ」
その猫はゆっくりと、あくびをするように声をあげると、魔法陣の上でそのまま眠りについてしまった。
「申し訳ないのだけど、サバチャイさん、これはしっかりとした犯罪になるわ」
シャーロット様の貴族としての目が光っていらっしゃる。サバチャイさんも、何もここで実験することはないのに。
「面白そうなスキルなんだけどなぁ。でもこれ見つかったら、ルークも共犯になるから気をつけた方がいいよ」
「ジ、ジゼル様、僕も罪に問われてしまうのですか?」
「当たり前じゃない。召喚獣の管理は召喚主がしっかりみないとダメよ」
「ルーク、例えば召喚獣を使って街を攻撃したら召喚主が捕まるのは理解できるわよね。召喚主の意図しないことであったとしても、召喚獣の不手際、暴走は管理責任を問われるわ」
サバチャイさん、自由過ぎるから僕には管理できなそうなんだけど……。
「そ、それは困りましたね。サバチャイさん、僕の言うことちゃんと聞いてくれるかな……」
「一応しっかり会話できるから、コミュニケーションはとりやすいとは思うし、そのまあ、頑張りなよ」
ジゼル様がとっても他人事だ。
「ルーク、安心するといいね。サバチャイ召喚主の不利になるようなこと、勿論するわけがないね」
「ほ、本当ですか!?」
「当たり前よ。でもねルーク、サバチャイも知らぬ間に召喚獣にされてとっても困ってるね。サバチャイ協力はするけど、ルークもサバチャイに協力してほしいね」
ん? 一気に雲行きが怪しくなってきた。サバチャイさんの暗く陰のある笑顔が、とても胡散臭い。
召喚獣が召喚主に害をなさないということは一般的にも言われている。契約の段階でしっかり無意識下に関係性が構築されるらしい。
しかし、僕が害を受けていないと思えることであれば抜け穴はいくらでもあるのだ。サバチャイさんの言わんとしていることは、きっとそういうことなのだろう。
「確かに白い姉ちゃんと黒い姉ちゃんが言う通り、この世界で使えるお金を増やしたら犯罪ね。ルークも共犯者で捕まってもしょうがない思うね」
や、やはりお金のことか。サバチャイさん、一体何を考えている。公爵家、侯爵家のご令嬢がいる前だ。迂闊なことは言えないはずだが……。
「でもね、サバチャイ、ピンときたね。サバチャイの世界のお金だったら、ここでいくら増やしても何の問題もないね。ルークにもこの世界にも、何の迷惑もかけないよ」
ニチャアとした笑顔がいやらしい。でも、それならばこちらの世界の人間が口を出すことでもないのも確かだ。
「そうですね。確かにそれなら問題はないわ」
「うーん。心情的にはどうかと思うんだけど、罪に問えることではないよね」
あー、シャーロット様もジゼル様も納得してしまった。
「そうね、そうね。この世界には何の迷惑もかけないね。そしてサバチャイは召喚されるたびに財布の中身が倍になるね! 今後は平均して十万は財布に入れておくことにするよ」
十万というのがどのくらいの価値なのかわからないけど一応、財布に入れておけるぐらいの金額なのだろう。話しぶりからも、そこまで無茶苦茶なことをするつもりはないのか? いや、そう思いたい。
「ところで、サバチャイさん。そのスキルなんだけど、分身している時に召喚したらポリスマンが二体召喚されるのかな?」
「ルーク、馬鹿か。ポリスマンは一人しかいないね。召喚しても二人にはならないよ」
「でも分身した方もサバチャイさんなんでしょ? どうなるのかな」
「それは気になるわね。もしもポリスマンが二体現れたら、もう誰もルークに勝てないんじゃないかしら」
「ズルいよルーク。私にポリスマン一体くれてもいいんだよ」
「まったくしょうがないね。試してみるよ、分身!」
「「あっ、間違って銀貨また倍にしちゃった」」
……わざとだな。倍になった銀貨を普通にポケットに入れてから分身しやがった。
サバチャイさんのせいで僕が捕まる日もそう遠くはないのかもしれない。
「サバチャイさん、あとで全て回収しますので増やしても無駄ですよ。それから、次やったらこちらの世界で勾留しますからね」
シャーロット様もサバチャイさんのことを大分理解してきたようだ。この人はしっかり注意しないと、知らないふりして同じことを繰り返す質の悪いタイプだ。仲間だと思って油断してはいけない。
「「冗談ね。ちょっと何回増やせるのか気になっただけよ。それじゃあ召喚するね! ポリスマンカモン!」」
二つの魔方陣が展開されると眩い光とともに片方の魔法陣からは再びポリスマンが現れた。そして、もう一つの魔法陣からは小さな召喚獣が……いや、これはネコか? もう一方の魔法陣からはなんとネコが召喚されていた。
「ちょっ、おい! なんだよ、また召喚したのかよ。一日に召喚する回数の上限とか決めとかねーか? っていうか、サバチャイさん二人になってるじゃねーかよ!? お、おいっ、ルークさん、これはどういうことだって!」
「サバチャイさんのスキルなんですが、どうやら分身できるようなのです。それで、今回の実験は分身したまま召喚したらポリスマンが二体召喚されるのかという実験でして……」
「なるほど、って、俺まで分身するわけねーだろ。まあいい、それでもう一つから召喚されたってのが、あのネコというわけか」
「なああああぁぁぁ」
その猫はゆっくりと、あくびをするように声をあげると、魔法陣の上でそのまま眠りについてしまった。
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