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16話 召喚獣タマ1
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「サバチャイさん、そのネコは? というか、ネコが召喚獣なの!?」
あれは紛れもなくネコだ。
ネコ以外の何者でもない。サバチャイさんやポリスマンのように武器を持っているわけでもない。それはもう普通の猫だ。
魔法陣の上で、とてもリラックスして眠りについている。少しは驚いてもらいたいものだが、おそらくここが異世界であることすら理解していないのだろう。
「あ、あの三毛ネコはタマね。間違いなく、うちのタイ料理屋の残飯を漁る野良ネコのタマね。まさか、タマが召喚されるとはサバチャイも予想外だったよ」
「サバチャイさんのお知り合いでしたか」
「知り合いというか、近所の野良ネコね。おいっタマ、起きるね」
魔法陣から一歩も出ずにぐっすり眠りについている。ネコらしいというか、一応耳がピクッと動きはするものの、まるっきり、やる気が感じられない。
ポリスマンを呼ぼうとしてタマが召喚されたら戦闘どころではない。場は和むかもしれないけども、あれでは秒でやられてしまうだろう。
「ちょっとルーク、あのネコちゃんさわっても大丈夫かな? 変わった模様なのね」
どうやらジゼル様がタマに夢中なご様子。
「サバチャイさんどうなの?」
「タマは野良だから、なかなか人に体をさわらせないね。エサでもあれば可能性もありそうだけど、今はそんなものないね。無理だと思うけど寝てるし、黒い姉ちゃんゆっくり近づいてみればいいよ」
「そ、そう。それじゃあ、近寄ってみるね」
「ジゼル、大丈夫なの? 一応は召喚獣なのよ」
「大丈夫じゃない。あれだけ気持ちよさそうに眠っているんだし、あんなに可愛いのだもの。少しさわるだけだってば」
ジゼル様がタマのかわいさにメロメロにやられてしまっている。ポリスマンの例があるだけに、タマが普通のネコだとは思えないのだけど、見た目には愛らしいネコであって危険な感じは全くない。
そうこうしているうちに、ジゼル様はゆっくりとタマに近づいていく。そして、あと少しで魔方陣の場所に、たどり着けると思った瞬間にトラップが発動した。
トラップ 泥の落とし穴
「えっ!? ちょっ、キャー!!」
眠そうな顔をしたタマが、ジゼル様の叫び声に驚いて毛を逆立てている。あの落とし穴を造ったのは間違いなくタマだ。しかしながら本能に近い感じなのだろう。自分で落とし穴を出したとは認識してないのかもしれない。
「これは、落とし穴だよね」
「そうね、落とし穴ですわ。ジゼル大丈夫かしら」
ジゼル様の手が見えているので、そこまで深い落とし穴ではないようだが、その手にはベッタリと泥が付いている。
「なるほど、これがタマのスキルね!」
「サバチャイさん、何かわかったんですか?」
「タマのスキルはトラップね。触られたくないし、眠りを邪魔されたくない思いが、スキルとなってカウンター発動するね! おそらく本人の意思とは関係なく発動するよ」
つまり、近づいてくるもの全対象でトラップを発動させらしい。サバチャイさん曰く、仲良くなったり、エサでつれればトラップ発動しないかもとのこと。
「近寄るのはちょっと勇気がいりますわね」
「ちょーっと、早く助けてよー。泥ではまって身動きとれないのー!」
予想以上に効果のあるトラップだったみたいだ。下半身までズッポリ泥沼にはまってしまったら一人で脱出することは難しい。
シャーロット様と二人で引っ張りあげて何とか引き上げることができた。そして、落とし穴はジゼル様が脱出したタイミングでキレイさっぱりと消滅してしまった。
「私が脱出した後に消滅するなんて。まったくひどい目にあったよ。シャル、お風呂を借りるわね」
「その方がいいわね。私はルークと、もう少しここで検証をしてみるわ」
「タマちゃんには気をつけるのよ」
「……そうね」
愛らしさとは裏腹に問答無用のカウンタートラップ。多数を相手にした時にものすごい効果を発揮しそうだ。あとは……。
「ルーク、タマちゃんのスキルは守りに向いているスキルだと思うわ。これは様々な貴族が欲しがる気がするわね」
「やはり、そうですよね。問題があるとしたら、本人のやる気と味方もトラップを受けかねないということでしょうか。餌付けしていくしかありませんね」
「タマの好物は白身魚ね。タイ料理で『プラー・ヌン・マナオ』という料理があるね。身の柔らかい蒸したスズキにタマは目がないね。頭からガブガブいくよ」
魚を頭からガブガブいくのは可愛いタマの見た目からは想像できない。しかし、野良ネコということなので、それなりに苦労をしているのかもしれない。
「サバチャイさん、食べ物以外には何か好きな物とかありますか?」
「サバチャイ、そこまでタマに興味ないね。今度エサあげてる店員にでも話を聞いておくよ」
「ルーク、少しタマを試してみましょう。ウンディーネに魔法で軽く攻撃させてみますね」
「魔法攻撃を防げるかということですか。よろしくお願いします」
「ウンディーネ、勢いを落として攻撃するわよ。ウォーターランス!」
ウンディーネを媒介にシャーロット様の精霊魔法がタマを目掛けて飛んでいく。
さて、どうなるのだろう。タマの運命や如何に!?
あれは紛れもなくネコだ。
ネコ以外の何者でもない。サバチャイさんやポリスマンのように武器を持っているわけでもない。それはもう普通の猫だ。
魔法陣の上で、とてもリラックスして眠りについている。少しは驚いてもらいたいものだが、おそらくここが異世界であることすら理解していないのだろう。
「あ、あの三毛ネコはタマね。間違いなく、うちのタイ料理屋の残飯を漁る野良ネコのタマね。まさか、タマが召喚されるとはサバチャイも予想外だったよ」
「サバチャイさんのお知り合いでしたか」
「知り合いというか、近所の野良ネコね。おいっタマ、起きるね」
魔法陣から一歩も出ずにぐっすり眠りについている。ネコらしいというか、一応耳がピクッと動きはするものの、まるっきり、やる気が感じられない。
ポリスマンを呼ぼうとしてタマが召喚されたら戦闘どころではない。場は和むかもしれないけども、あれでは秒でやられてしまうだろう。
「ちょっとルーク、あのネコちゃんさわっても大丈夫かな? 変わった模様なのね」
どうやらジゼル様がタマに夢中なご様子。
「サバチャイさんどうなの?」
「タマは野良だから、なかなか人に体をさわらせないね。エサでもあれば可能性もありそうだけど、今はそんなものないね。無理だと思うけど寝てるし、黒い姉ちゃんゆっくり近づいてみればいいよ」
「そ、そう。それじゃあ、近寄ってみるね」
「ジゼル、大丈夫なの? 一応は召喚獣なのよ」
「大丈夫じゃない。あれだけ気持ちよさそうに眠っているんだし、あんなに可愛いのだもの。少しさわるだけだってば」
ジゼル様がタマのかわいさにメロメロにやられてしまっている。ポリスマンの例があるだけに、タマが普通のネコだとは思えないのだけど、見た目には愛らしいネコであって危険な感じは全くない。
そうこうしているうちに、ジゼル様はゆっくりとタマに近づいていく。そして、あと少しで魔方陣の場所に、たどり着けると思った瞬間にトラップが発動した。
トラップ 泥の落とし穴
「えっ!? ちょっ、キャー!!」
眠そうな顔をしたタマが、ジゼル様の叫び声に驚いて毛を逆立てている。あの落とし穴を造ったのは間違いなくタマだ。しかしながら本能に近い感じなのだろう。自分で落とし穴を出したとは認識してないのかもしれない。
「これは、落とし穴だよね」
「そうね、落とし穴ですわ。ジゼル大丈夫かしら」
ジゼル様の手が見えているので、そこまで深い落とし穴ではないようだが、その手にはベッタリと泥が付いている。
「なるほど、これがタマのスキルね!」
「サバチャイさん、何かわかったんですか?」
「タマのスキルはトラップね。触られたくないし、眠りを邪魔されたくない思いが、スキルとなってカウンター発動するね! おそらく本人の意思とは関係なく発動するよ」
つまり、近づいてくるもの全対象でトラップを発動させらしい。サバチャイさん曰く、仲良くなったり、エサでつれればトラップ発動しないかもとのこと。
「近寄るのはちょっと勇気がいりますわね」
「ちょーっと、早く助けてよー。泥ではまって身動きとれないのー!」
予想以上に効果のあるトラップだったみたいだ。下半身までズッポリ泥沼にはまってしまったら一人で脱出することは難しい。
シャーロット様と二人で引っ張りあげて何とか引き上げることができた。そして、落とし穴はジゼル様が脱出したタイミングでキレイさっぱりと消滅してしまった。
「私が脱出した後に消滅するなんて。まったくひどい目にあったよ。シャル、お風呂を借りるわね」
「その方がいいわね。私はルークと、もう少しここで検証をしてみるわ」
「タマちゃんには気をつけるのよ」
「……そうね」
愛らしさとは裏腹に問答無用のカウンタートラップ。多数を相手にした時にものすごい効果を発揮しそうだ。あとは……。
「ルーク、タマちゃんのスキルは守りに向いているスキルだと思うわ。これは様々な貴族が欲しがる気がするわね」
「やはり、そうですよね。問題があるとしたら、本人のやる気と味方もトラップを受けかねないということでしょうか。餌付けしていくしかありませんね」
「タマの好物は白身魚ね。タイ料理で『プラー・ヌン・マナオ』という料理があるね。身の柔らかい蒸したスズキにタマは目がないね。頭からガブガブいくよ」
魚を頭からガブガブいくのは可愛いタマの見た目からは想像できない。しかし、野良ネコということなので、それなりに苦労をしているのかもしれない。
「サバチャイさん、食べ物以外には何か好きな物とかありますか?」
「サバチャイ、そこまでタマに興味ないね。今度エサあげてる店員にでも話を聞いておくよ」
「ルーク、少しタマを試してみましょう。ウンディーネに魔法で軽く攻撃させてみますね」
「魔法攻撃を防げるかということですか。よろしくお願いします」
「ウンディーネ、勢いを落として攻撃するわよ。ウォーターランス!」
ウンディーネを媒介にシャーロット様の精霊魔法がタマを目掛けて飛んでいく。
さて、どうなるのだろう。タマの運命や如何に!?
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