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56話 レッドドラゴンの巣
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ルーク達がパクチー酒を水袋に移し変えている頃、私とキングはコルモ火山の火口付近までたどり着いていた。実は、あの強烈な臭いが苦手なので、偵察に来たというのは奴らには内緒にしておこう。
「キング、ここから先は俺が様子を見てくる。お前はここで待機していてくれ。この縄で降りられる所まで行く、しっかり離さずに頼むぞ」
ヒヒーン、ブルルルっ!
レッドドラゴンの巣が、火口の中にあったらお手上げだ。戦闘する場所が限られてしまう。そうなると、奴が街へと向かい飛び立つまで待機せざるをえない。出来れば、戦える広いスペースがあるといいのだが……。
コルモ火山の頂上からゆっくりと火口に向かって降りていく。目視ではまだドラコンの巣のようなものは見受けられない。こんな環境の悪い場所によく長く住んでいられるものだ。熱と、火山灰が降り注ぐ環境は人にとってはあまり良い場所とはいえない。おそらくだが、人に害となる空気も含まれているはずだ。戦闘をするにしても、長時間の戦いは避けるべきなのだろう。そうは言っても、相手がレッドドラゴンだけに、いかんともしがたい。
「あれかっ!」
見つけた場所は火口へ向かって、ちょうど真ん中辺り。かなり深いところに巣を作っていやがる。ゆっくりと音を立てないように、注意しながらその場所へと近づいていく。入口付近にはレッドドラゴンの姿は無いようで様子を窺うことが出来そうだった。
「これは、それなりに怒り狂ってそうだな……」
巣の入口には血の痕が残っており、壁には無数の抉れたような後も残っている。戻ってからも、かなり暴れていたことが想像できる。餌だと思っていた人間に攻撃され、しかもダメージを受けてしまったことに、相当の苛立ちがあったのだろう。サバチャイとシャーロットの顔を見たら暴れ出しそうだな……。
耳を澄ますと、奥の方からレッドドラゴンと思われる深い寝息の音が響いている。まだ完全には回復をしてないということであれば、ありがたいのだが……。寝ているのであれば、もう少し探りを入れてみるか。入口から奥までどのくらいのスペースがあるのか、そしてレッドドラゴンが寝ている場所の広さがどのくらいかわかれば有利に戦闘を進められる。
レッドドラゴンの獣臭さが充満している通路を、ゆっくりと慎重に歩を進めていくと、それなりの広さがある広間が見えてきた。あそこだな……。
そして、レッドドラゴンは広間の中央にいやがった!
地響きのような寝息を立てながら、その中心で尻尾を巻きつけるようにしながら眠っている。報告では尻尾はサバチャイが斬ったと聞いていたが、すでに綺麗に元通り戻っているようだ。
レッドドラゴンとの距離、約百メートルぐらいか。これ以上は近づけない……な。俺の感覚が警鐘を鳴らしている。
広間をゆっくり眺めていく。何か使えそうなものがないか……。ただ、これだけの広さがあれば十分戦える。しかも天井もそこまで高くないとなれば、ここで戦えば奴の翼を封じることができる。
その時、レッドドラゴンが一瞬頭を上げて体を横にずらしていく。
!!!?
目を覚ましたかとゾワッと背中から冷や汗が吹き出たが、どうやら寝返りをうつように重心を左から右へと変えただけのようだった。眼は開いていない。また暫くすると、再びまた振動のような寝息をかきはじめた。
偵察はこれで十分だろう。レッドドラゴンが寝ているなら先制攻撃を喰らわすことが出来る。さすがに広間に足を踏み入れたら、起きるだろうがな。
問題があるとしたら、シャーロットのウンディーネとの一体化の使いどころになるか。精霊と一体化したシャーロットのサイズは空を飛ぶレッドドラゴンを手で掴まえたという。この広間程度では使用できない可能性がある。
「このあたりは、もう一度打ち合わせをしておくべきか……」
気配を最大限消して来た道をすばやく戻っていく。ところが、入口の縄に手を掛けたところで妙な違和感を感じた。
「そこにいるのは誰だ……。出てこないなら殺すぞ」
巣の入口で戦闘になんてなったら、全てが台無しになるので極力避けたい。私の勘違いであるならよいのだが……。しかしながら、この気配は人か!?
「おい、聞こえなかったとは言わせんぞ……。何度も言わせるな。出てこないのなら、問答無用で殺す」
最小限に殺気を飛ばすと、諦めたかのように一人の幼女が壁の隙間から出てきた。
幼女だと!?
「何故、こんなところにいる。どうやって、ここまでやってきた?」
俺の殺気にまったく反応もなく、無表情で真っ直ぐにこちらを見つめてくる。褐色の肌、尖った耳から想像するに初めて見るが、これがダークエルフという種族なのだろう……。
「……私を殺すのか?」
とても幼女とは思えない、しっかりとした口調で、ダークエルフの幼女は話してきた。
「ところでお前、酷く臭うな……」
ここで生き残っていく上で必要なことだったのかもしれないが、レッドドラゴンの糞尿にまみれ、風呂にも入らずに何日も生きてきたのだろう。もはやレッドドラゴンの巣で生きているというだけでも奇跡的である。この幼女は、一体何者なのだ……。
「キング、ここから先は俺が様子を見てくる。お前はここで待機していてくれ。この縄で降りられる所まで行く、しっかり離さずに頼むぞ」
ヒヒーン、ブルルルっ!
レッドドラゴンの巣が、火口の中にあったらお手上げだ。戦闘する場所が限られてしまう。そうなると、奴が街へと向かい飛び立つまで待機せざるをえない。出来れば、戦える広いスペースがあるといいのだが……。
コルモ火山の頂上からゆっくりと火口に向かって降りていく。目視ではまだドラコンの巣のようなものは見受けられない。こんな環境の悪い場所によく長く住んでいられるものだ。熱と、火山灰が降り注ぐ環境は人にとってはあまり良い場所とはいえない。おそらくだが、人に害となる空気も含まれているはずだ。戦闘をするにしても、長時間の戦いは避けるべきなのだろう。そうは言っても、相手がレッドドラゴンだけに、いかんともしがたい。
「あれかっ!」
見つけた場所は火口へ向かって、ちょうど真ん中辺り。かなり深いところに巣を作っていやがる。ゆっくりと音を立てないように、注意しながらその場所へと近づいていく。入口付近にはレッドドラゴンの姿は無いようで様子を窺うことが出来そうだった。
「これは、それなりに怒り狂ってそうだな……」
巣の入口には血の痕が残っており、壁には無数の抉れたような後も残っている。戻ってからも、かなり暴れていたことが想像できる。餌だと思っていた人間に攻撃され、しかもダメージを受けてしまったことに、相当の苛立ちがあったのだろう。サバチャイとシャーロットの顔を見たら暴れ出しそうだな……。
耳を澄ますと、奥の方からレッドドラゴンと思われる深い寝息の音が響いている。まだ完全には回復をしてないということであれば、ありがたいのだが……。寝ているのであれば、もう少し探りを入れてみるか。入口から奥までどのくらいのスペースがあるのか、そしてレッドドラゴンが寝ている場所の広さがどのくらいかわかれば有利に戦闘を進められる。
レッドドラゴンの獣臭さが充満している通路を、ゆっくりと慎重に歩を進めていくと、それなりの広さがある広間が見えてきた。あそこだな……。
そして、レッドドラゴンは広間の中央にいやがった!
地響きのような寝息を立てながら、その中心で尻尾を巻きつけるようにしながら眠っている。報告では尻尾はサバチャイが斬ったと聞いていたが、すでに綺麗に元通り戻っているようだ。
レッドドラゴンとの距離、約百メートルぐらいか。これ以上は近づけない……な。俺の感覚が警鐘を鳴らしている。
広間をゆっくり眺めていく。何か使えそうなものがないか……。ただ、これだけの広さがあれば十分戦える。しかも天井もそこまで高くないとなれば、ここで戦えば奴の翼を封じることができる。
その時、レッドドラゴンが一瞬頭を上げて体を横にずらしていく。
!!!?
目を覚ましたかとゾワッと背中から冷や汗が吹き出たが、どうやら寝返りをうつように重心を左から右へと変えただけのようだった。眼は開いていない。また暫くすると、再びまた振動のような寝息をかきはじめた。
偵察はこれで十分だろう。レッドドラゴンが寝ているなら先制攻撃を喰らわすことが出来る。さすがに広間に足を踏み入れたら、起きるだろうがな。
問題があるとしたら、シャーロットのウンディーネとの一体化の使いどころになるか。精霊と一体化したシャーロットのサイズは空を飛ぶレッドドラゴンを手で掴まえたという。この広間程度では使用できない可能性がある。
「このあたりは、もう一度打ち合わせをしておくべきか……」
気配を最大限消して来た道をすばやく戻っていく。ところが、入口の縄に手を掛けたところで妙な違和感を感じた。
「そこにいるのは誰だ……。出てこないなら殺すぞ」
巣の入口で戦闘になんてなったら、全てが台無しになるので極力避けたい。私の勘違いであるならよいのだが……。しかしながら、この気配は人か!?
「おい、聞こえなかったとは言わせんぞ……。何度も言わせるな。出てこないのなら、問答無用で殺す」
最小限に殺気を飛ばすと、諦めたかのように一人の幼女が壁の隙間から出てきた。
幼女だと!?
「何故、こんなところにいる。どうやって、ここまでやってきた?」
俺の殺気にまったく反応もなく、無表情で真っ直ぐにこちらを見つめてくる。褐色の肌、尖った耳から想像するに初めて見るが、これがダークエルフという種族なのだろう……。
「……私を殺すのか?」
とても幼女とは思えない、しっかりとした口調で、ダークエルフの幼女は話してきた。
「ところでお前、酷く臭うな……」
ここで生き残っていく上で必要なことだったのかもしれないが、レッドドラゴンの糞尿にまみれ、風呂にも入らずに何日も生きてきたのだろう。もはやレッドドラゴンの巣で生きているというだけでも奇跡的である。この幼女は、一体何者なのだ……。
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