職業が魔王なので勇者の村を追放されたけど、幼馴染が女勇者になったので陰ながら手助けしようと思う

つちねこ

文字の大きさ
34 / 71

三十三話目 復活した魔王

しおりを挟む
 ここは、魔王城。

 仲間を集めに行かせた竜王が戻ってきたのだけど、瀕死の状態だったという……。

「と、いうわけでございまして……。レムリアも獣王も四天王に戻る意思はなく、それどころか、その暗黒魔法を操る人族の少年が持っていたカリスマ性のスキルで配下になっている始末でございます」

 リュカスがとんでもないことを告げてきた。いや、四天王に戻るつもりがないことは何となく察してはいた。城まで連れて来さえすれば、いずれ、わしがカリスマ性のスキルを取り戻した時に戦力になると思っていたのだ。

 ところが、リュカスは何と言った。人族の少年がカリスマ性のスキルを持っていたと。しかも、既にレムリアも獣王も配下にしているだと……。

「一応、確認なんだけどさ、カリスマ性のスキルってユニークスキルのはずだよね?」

「はっ、おっしゃられる通りでございます」

 つまり、今世のわしにカリスマ性のスキルはないということだ。それどころか、元四天王の内、既に二名が敵にまわっている。これは、勇者を相手にしている場合ではない。戦力をどうにかして増やさなければ元部下たちに殺される……。

「魔剣シュナイダーはどうなっているのだ。エルフの民を人質にとれば、奴もわしに従うほかあるまい。奴らは獣人族と違ってあの場所を離れたがらない」

「し、しかしながら、魔剣シュナイダーもあの二人と交流を持っているはずでして、既に情報は回っている可能性が高く、難しいかと……」

「そんなことはわかっておる。しかし、シュナイダーまで敵にまわってしまうとなると正直厳しいだろう。何でもいいから、とにかく邪魔をしてくるのだ。シュナイダーを四天王にさせてはならぬ」

「か、かしこまりました」

 とは言っても、これも難しいのはわしも知っている。確かあの三人は幼馴染だと言っていた。わしが復活するまでの間も交流を続けていただろう。基礎ステータスの高い種族の長だけに、カリスマ性のスキルと合わせることで一騎当千の力を発揮してくれたわけだが、今世では味方に引き込むことは絶望的となってしまった。

 こうなってしまっては、気が進まぬがゴブリン族とオーク族を傘下にし、数の暴力で圧倒するしかあるまい。あいつら頭が弱いから、勝手な行動するし作戦とか実行に移すの無理だろうしで、あんまり好きじゃないんだよね。しかしながら、他に手段が思い浮かばない。

 あとは気が進まぬが……。いや、待てよ。その人族の少年をさらってしまえば、全部片付いちゃうんじゃない? 何で暗黒魔法使えるのかなわからないけど、今はまだそこまでレベルも上がっていないはず。

「リュカスよ、その人族の少年をさらっては来れぬのか?」

「今はレムリアも獣王も少年の側を離れないでしょうから難しいと思われます。そもそも魔王様、私の腕を消滅させたのはその少年の力であると報告したように、その少年も既にヤバそうな成長を遂げているのです」

「そ、そうか。そういえば、不思議なドレインを使ったと言ってたな。ドレインって、そんな使い方できたっけ?」

「い、いえ、私はわかりませぬが、魔王様はどうなのでしょうか?」

 ドレインを影のように潜ませながら敵の目の前まで進ませ、突如、一気に食らいつくように……いや無理っ!

「なんでそんな生き物みたいなドレイン撃てるの? 天才なの? それともわしがダメなの?」

「れ、練習してみてはいかがでしょうか……」

「そ、そうね……。とりあえず、お前はエルフの里へ向かうのだ。最悪、情報だけでも集めてこい。わしはレベル上げがてら、ガジュマズル王と話をつけてくる」

「ガジュマズル……。ゴブリン王でございますか。そ、その、魔王様、お嫌いだったのではと思うのですが……」

「まあ、他に手もないし、贅沢を言っている状況でもないだろ。あれはあれで、使い道はあるのだよ」

「私は他にどのようなことを」

「オークキングのところを頼む。今のレベルのわしが行っても相手にされないと思うから」

「オズワルドピグマンですか……。多少強引に行ってもいいですか? あいつら話通じないじゃないですか」

「うむ、そのあたりは任せる」

「それでは、先にエルフの里を探ってまいります。その後、オークキングの所へ」



 あとは、ドラゴンだよな……。リュカスが飛んでいった空を見ながら考える。竜王リュカス、その名の通り、奴はドラゴンの王である。といっても竜族というのは特殊で、お互いに関心が薄いというか、それぞれが独立していて頼ることもない。リュカスの一族がたまたま王を名乗っていただけで、認められて王を名乗っているわけではない。そもそも縄張り意識が過剰なほどに強く、少しでも破ろうものなら世界戦争級の衝撃がどちらかが死ぬまで続くとか言われている。

「普通に考えて、無理っぽいよね。わしのレベルが上がってから考えよっか」

 さて、モンスター狩りをしながらゴブリンどもの集落へ向かうとするか。

 四天王にするって言えばアホみたいに喜ぶとは思うんだけど。あー、憂鬱だ。あいつらとにかく臭いしなー。まさか、ゴブリン族にお願いしに行くことになるとは思わなかったわー。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...