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四十話目 アンデッド対策
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川沿いを王都に向けて進んでいくと、幾つかの支流に別れていて、人の手によって川幅が調整されているらしい。農業用だったり、飲料用だったりと様々な用途に分けられているのだろう。また、支流を増やすことで川の氾濫等にも備えているのかもしれない。
「あそこに見えているのが水門にゃ。当たり前だけど鉄の柵で囲われていて入れないにゃ。主様、どうするにゃ?」
ゴーストなら問題なくすり抜けられるんだろうけど、僕たちにそんなことは出来ない。
「面倒くせぇから壊しちまうか? すぐに元通りに直すぞ」
「レムリア、音で気づかれたらどうする。王都に入る前に全員捕まってしまうぞ」
どうしたものか……。
少し近づいて鉄柵を見ていると、端っこの方が少しだけ壊れているように見える。
「ねぇ、端っこのところだけど壊れてない? というか、何か挟まってない?」
「おっ、何か見つけたのか、レックス」
鉄柵を少し持ち上げるようにして何か白い物が挟まっているというか、柵を少し持ち上げている感じだ。
「ほらっ、これこれ」
「お、おいっ! そ、それは……」
「骨にゃ」
「骨だな」
僕が持ち上げたのは、おそらく元は人族っぽい頭がい骨。えっ、死体?
頭がい骨がとれたことで、柵の棒が外れたらしく、何とか人一人ぐらいであれば抜けられそうなスペースが生まれた。
「これなら、水路に入れそうだね」
「レックスもそういうの平気なタイプなのだな。というか、その骨、動いてないか?」
シュナちゃんが、魔剣で僕の持つ頭がい骨をツンツンしていると、まるでダメージでも受けたかのように消滅してしまった。
「消えたにゃ」
「死んだ者まで魔剣で滅するとは、慈悲も無い」
「い、いや、あれ、動いていたのだよ。どう見てもスケルトンであろう。ゴーストを配下にする奴なのだから、スケルトンがいてもおかしくはないはずだ」
確かに、十分に考えられる。この水路の先にはゴーストやスケルトンがいるということか……。暗い水路の先が、それっぽさを感じさせる。
「とりあえずは、ここから入れそうだから進もうか。アンデッド系モンスターには気をつけようね」
水門を抜けて地下水路に入ると、照明などあるわけも無く、ただ水の流れる音だけが聞こえてくる。こういう時に頼りになるのはレムちゃんだ。
「エナジーボール」
レムちゃんの頭の上を漂うように、ピカピカの球が浮び上がる。
「さすが、レムちゃんにゃ」
暗黒魔法では、こういう便利な魔法はなさそうなので、残念だ。
「レムちゃん、その魔法を使いながら魔力探知も出来る?」
「ああ、それぐらい造作もない。任せとけ……あっ、ゴースト発見! 逝けっ!」
いきなりゴーストを発見したレムちゃんは速攻でゴーストを消滅させていた。
「やっぱり、ゴーストいたかー」
僕もレムちゃん程ではないけど、魔力の探知を感じることが出来る。でも、あっちに何かがいるとか、大きい魔力を感じる! といった程度なので、そこまで重宝出来ない。
ちなみに、レムちゃんクラスになると、モンスターの種類から、その強さまである程度把握出来るらしい。アイミーも似たような嗅覚があるらしく、食材の確保や狩りではこの二人には勝てる気がしない。
「もっといるかと思っていたけど、拍子抜けするぐらいに静かにゃ……」
「全くだ。魔力探知にも何も引っ掛からないな。もう地下水路にはいないということか」
「そうなると、既に街の中にゴーストに取り憑かれている人がうじゃうじゃいるってことになるんだけど!? こ、困ったね……何か見分ける方法ってあるのかな」
「聖水をぶっかけるか、光魔法のターンアンデッドを唱えれば体からゴーストが離れるはずだ」
「おー、さすがレムちゃん。それで、その光魔法というのは、誰か使えるのかな?」
「残念ながら、このパーティに光魔法を操る者はいない」
ダメだったか……。となると、残る選択肢は一つ、聖水か。
「ちなみに、聖水はとても値段が高い。一本五百イシスもする」
「ご、五百イシス!? ブンボッパ村では確かその半額以下だったと思うんだけど……」
五百イシスもあれば、全員で美味しい夕食が食べられるぐらいのいい価格だ。ちょっと信じられない。王都はとても物価が高いらしい。そうなると、寝泊りするのも結構なお金が掛かりそうだ。
「人の街のことはよくわからねぇけど、あれだろ、教会が儲かるように上手く出来てるんじゃねぇか」
需要のある所では、高く販売しているということなのかもしれない。そういえば、ブンボッパ村で聖水買ってる人を見たことないしね。
「シュナちゃん、お金ってどれぐらい持ってきてるんだっけ?」
「そんな使わないと思っていたので、二万イシスしかないのだ……不味かったか?」
しばらく王都で寝泊りしなければならないので、無駄遣い出来ない。食事付きの安い宿をおさえて、残り数千イシスで聖水を買ったところで焼石に水だろう。
「とりあえず、そろそろ上にあがって宿屋でも探そうか。今後のことは落ち着ける場所を見つけてから考えようよ」
「お、俺は、夜はレストランで食事をしたいからな。急ぐぞレックス」
「アイミーはふかふかのベッドがいいにゃ」
「も、もう少しお金を持ってくればよかったな……。スリーザーとはもう連絡もとれないし……。な、何か金策を練らねばならないか」
うーん、お金を稼ぎながら情報収集かな。となると、やっぱり冒険者ギルドとかがいいのだろう。でも、身分証とかないし、不法入国してるしな。何を考えるにしろ、先ずは情報収集か……。
「あそこに見えているのが水門にゃ。当たり前だけど鉄の柵で囲われていて入れないにゃ。主様、どうするにゃ?」
ゴーストなら問題なくすり抜けられるんだろうけど、僕たちにそんなことは出来ない。
「面倒くせぇから壊しちまうか? すぐに元通りに直すぞ」
「レムリア、音で気づかれたらどうする。王都に入る前に全員捕まってしまうぞ」
どうしたものか……。
少し近づいて鉄柵を見ていると、端っこの方が少しだけ壊れているように見える。
「ねぇ、端っこのところだけど壊れてない? というか、何か挟まってない?」
「おっ、何か見つけたのか、レックス」
鉄柵を少し持ち上げるようにして何か白い物が挟まっているというか、柵を少し持ち上げている感じだ。
「ほらっ、これこれ」
「お、おいっ! そ、それは……」
「骨にゃ」
「骨だな」
僕が持ち上げたのは、おそらく元は人族っぽい頭がい骨。えっ、死体?
頭がい骨がとれたことで、柵の棒が外れたらしく、何とか人一人ぐらいであれば抜けられそうなスペースが生まれた。
「これなら、水路に入れそうだね」
「レックスもそういうの平気なタイプなのだな。というか、その骨、動いてないか?」
シュナちゃんが、魔剣で僕の持つ頭がい骨をツンツンしていると、まるでダメージでも受けたかのように消滅してしまった。
「消えたにゃ」
「死んだ者まで魔剣で滅するとは、慈悲も無い」
「い、いや、あれ、動いていたのだよ。どう見てもスケルトンであろう。ゴーストを配下にする奴なのだから、スケルトンがいてもおかしくはないはずだ」
確かに、十分に考えられる。この水路の先にはゴーストやスケルトンがいるということか……。暗い水路の先が、それっぽさを感じさせる。
「とりあえずは、ここから入れそうだから進もうか。アンデッド系モンスターには気をつけようね」
水門を抜けて地下水路に入ると、照明などあるわけも無く、ただ水の流れる音だけが聞こえてくる。こういう時に頼りになるのはレムちゃんだ。
「エナジーボール」
レムちゃんの頭の上を漂うように、ピカピカの球が浮び上がる。
「さすが、レムちゃんにゃ」
暗黒魔法では、こういう便利な魔法はなさそうなので、残念だ。
「レムちゃん、その魔法を使いながら魔力探知も出来る?」
「ああ、それぐらい造作もない。任せとけ……あっ、ゴースト発見! 逝けっ!」
いきなりゴーストを発見したレムちゃんは速攻でゴーストを消滅させていた。
「やっぱり、ゴーストいたかー」
僕もレムちゃん程ではないけど、魔力の探知を感じることが出来る。でも、あっちに何かがいるとか、大きい魔力を感じる! といった程度なので、そこまで重宝出来ない。
ちなみに、レムちゃんクラスになると、モンスターの種類から、その強さまである程度把握出来るらしい。アイミーも似たような嗅覚があるらしく、食材の確保や狩りではこの二人には勝てる気がしない。
「もっといるかと思っていたけど、拍子抜けするぐらいに静かにゃ……」
「全くだ。魔力探知にも何も引っ掛からないな。もう地下水路にはいないということか」
「そうなると、既に街の中にゴーストに取り憑かれている人がうじゃうじゃいるってことになるんだけど!? こ、困ったね……何か見分ける方法ってあるのかな」
「聖水をぶっかけるか、光魔法のターンアンデッドを唱えれば体からゴーストが離れるはずだ」
「おー、さすがレムちゃん。それで、その光魔法というのは、誰か使えるのかな?」
「残念ながら、このパーティに光魔法を操る者はいない」
ダメだったか……。となると、残る選択肢は一つ、聖水か。
「ちなみに、聖水はとても値段が高い。一本五百イシスもする」
「ご、五百イシス!? ブンボッパ村では確かその半額以下だったと思うんだけど……」
五百イシスもあれば、全員で美味しい夕食が食べられるぐらいのいい価格だ。ちょっと信じられない。王都はとても物価が高いらしい。そうなると、寝泊りするのも結構なお金が掛かりそうだ。
「人の街のことはよくわからねぇけど、あれだろ、教会が儲かるように上手く出来てるんじゃねぇか」
需要のある所では、高く販売しているということなのかもしれない。そういえば、ブンボッパ村で聖水買ってる人を見たことないしね。
「シュナちゃん、お金ってどれぐらい持ってきてるんだっけ?」
「そんな使わないと思っていたので、二万イシスしかないのだ……不味かったか?」
しばらく王都で寝泊りしなければならないので、無駄遣い出来ない。食事付きの安い宿をおさえて、残り数千イシスで聖水を買ったところで焼石に水だろう。
「とりあえず、そろそろ上にあがって宿屋でも探そうか。今後のことは落ち着ける場所を見つけてから考えようよ」
「お、俺は、夜はレストランで食事をしたいからな。急ぐぞレックス」
「アイミーはふかふかのベッドがいいにゃ」
「も、もう少しお金を持ってくればよかったな……。スリーザーとはもう連絡もとれないし……。な、何か金策を練らねばならないか」
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