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四十三話目 ブリューナク男爵家
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僕とレムちゃんは二人でブリューナク男爵家の屋根の上にいた。ウサ吉より、天井からのルートを確保したと報告を受けている。ちなみに、このブリューナク男爵家であるが、お屋敷にいる全ての人が憑りつかれているらしく、しかもボスである死霊レイスがいることまでわかってしまった。いきなりビンゴとか、ウサ吉素晴らしすぎる。
「と、ところで、何でこのチーム分けにしたんだ。やっぱり俺が一番頼りになるからか」
「うーん、もちろんそれもあるんだけど、アイミーに潜入捜査とか無理じゃない?」
「あ、あぁ。確かに決定的に向いてないな……。あいつ、玄関あっても関係なく窓を突き破って入ってくるタイプだからな」
「そうなると、ギルドに行くことになるでしょ。でも、ギルドでも一応冒険者登録とか必要になると思うと、シュナちゃんがついてないと不味そうだなって……」
「そ、そういうことか、というか、それなら俺がギルドに行ってもいいだろ。お、俺だって結構しっかりしていると思うんだけどな」
「そこは、見た目というか……。ほら、アイミーもレムちゃんも小さいから見た目には子供にしか見えないじゃない。さすがに子供二人でギルドに行くというのはちょっとね……」
「むぅ……。そういうことか」
納得がいっていないのか、自分の胸を見たり触ったりしているレムちゃんは何か盛大な勘違いしているような気もしないでもない。
「で、でもシュナイダーも胸はぺったんこだぞ。お、俺とそう変わらないからな」
このあたりの話題はあまり深く突っ込まない方がいいというのは僕も知っている。種族的なものなのかもしれないけどエルフ族というのもスレンダー体型が多く、シュナちゃんの胸も薄い。いや薄いとかいう表現が、かなり失礼だと思うんだけど、その分スラっとした身長に合っているんだと思うんだよね。
「そ、そうだね……。あ、あそこから入るみたいだよ」
ウサ吉が、手を振りながらこちらですと言っている。
「……ん、どうしたのウサ吉?」
「何かあったのかレックス!?」
「ま、マジか……。そ、それがね、お屋敷に来客が来ているらしいんだけど、どうやら勇者様と聖女様が来ているらしいんだ」
「ゆ、勇者って、レックスの幼馴染とかいう女のことか」
「う、うん。何でも呪いの治療をお願いされて聖光魔法を使える勇者様と光魔法のスペシャリストである聖女様が呼ばれたらしいんだ」
「まんまと騙されて来ちゃったのかよ……。それって、結構不味いんじゃねぇか?」
「治療は無事に終えて、お礼にお食事をということで睡眠剤入りの食事を提供されているところだって……」
「勇者、いきなり憑りつかれて終わっちゃうじゃねぇかよ!?」
「ちょ、ちょっと、声が大きいってレムちゃん」
「ど、どうするんだよ」
「魔王を倒すまではエリオと会うつもりはない。僕がエリオの近くにいることで迷惑を掛けるかもしれないからね。ということで、二人が憑りつかれてからが僕たちの出番だ。ウサ吉たちは屋敷から誰も出ないように、そして誰も入って来ないように見張りを頼むよ」
ということで、しばらく時間を置いてからの作戦開始となった。といっても、ゴーストやスケルトン程度は僕たち二人の敵ではない。
「光属性なくても何とかなるみたいだな」
「物理攻撃は無効だけど、魔法攻撃なら取り憑かれている人にも効果あるね」
「でも本体の人族もダメージも受けてるから、やり過ぎには気をつけろよ」
「了解!」
天井から降りて、三階に侵入した僕らは、使用人に憑りついたゴーストと溢れ出るスケルトンを沈黙させながら歩いていく。
あっ、アンデッドだから最初から沈黙しているのか。はははははっ。
「な、何、ニヤついてるんだよ。余裕ぶっこいてると足元すくわれるからな」
「あっ、うん、ごめん」
二階に降りる頃になると、敵にも気づかれたようで、スケルトンが最早バリケードに使われているのは敵ながら何とも忍びないのだけど、固まっているならそれはそれで片付けやすい。
「ドレイン!」
「ソニックブーム!」
「気づかれたなら、もう一気にやってしまうか」
「そうだね、レムちゃん。それじゃあ、僕はひと足先に行ってくるよ。身体強化!」
「油断するなよー」
ドレインから戻ってきたエネルギーを身体強化に変換して、スケルトンを倒しながら一階の食堂らしき場所までたどり着いた。
スケルトンの数がやたら多いので、この部屋が食堂でエリオや聖女様がいるのだろう。
「よしっ、獣王撃……何だっけ?」
名前を忘れてしまったけど、右手に集中したパワーを扉の前で固まっていたスケルトン達にぶつけると、扉ごと吹き飛んでいって消滅していった。
「あ、あれっ?」
「き、貴様、ここに何しに来たのだ! こ、こ、ここが、ブリューナク男爵家と知っての狼藉か」
顔色の悪い執事っぽい人が、額に汗を浮かべながらとても怒っている。おそらくは、あれがボスと見ていいだろう。
問題は、エリオと聖女様が既に取り憑かれていて、僕に向かって聖剣を構えていることだろう。隣で白いロッドを持っているのが聖女様ということか。取り憑いたまま、攻撃に参加させるつもりらしい。
「エリオ達に攻撃させるつもりなんだ。許さないよ」
「何故、勇者の名前を知っているのだ!? ええい、勇者、聖女よ、早くこの者を打ち倒しなさい!」
エリオは僕に向かって走り出すと、切っ先を下から斜め上に一気に振り切る。このスピード、なかなかに鋭い。取り憑いた者が、ここまで戦えちゃうものだったのか……。
バックステップでかわしながら、次の動きを見ていると、急激に魔力を高めている気配を感じた。
「と、ところで、何でこのチーム分けにしたんだ。やっぱり俺が一番頼りになるからか」
「うーん、もちろんそれもあるんだけど、アイミーに潜入捜査とか無理じゃない?」
「あ、あぁ。確かに決定的に向いてないな……。あいつ、玄関あっても関係なく窓を突き破って入ってくるタイプだからな」
「そうなると、ギルドに行くことになるでしょ。でも、ギルドでも一応冒険者登録とか必要になると思うと、シュナちゃんがついてないと不味そうだなって……」
「そ、そういうことか、というか、それなら俺がギルドに行ってもいいだろ。お、俺だって結構しっかりしていると思うんだけどな」
「そこは、見た目というか……。ほら、アイミーもレムちゃんも小さいから見た目には子供にしか見えないじゃない。さすがに子供二人でギルドに行くというのはちょっとね……」
「むぅ……。そういうことか」
納得がいっていないのか、自分の胸を見たり触ったりしているレムちゃんは何か盛大な勘違いしているような気もしないでもない。
「で、でもシュナイダーも胸はぺったんこだぞ。お、俺とそう変わらないからな」
このあたりの話題はあまり深く突っ込まない方がいいというのは僕も知っている。種族的なものなのかもしれないけどエルフ族というのもスレンダー体型が多く、シュナちゃんの胸も薄い。いや薄いとかいう表現が、かなり失礼だと思うんだけど、その分スラっとした身長に合っているんだと思うんだよね。
「そ、そうだね……。あ、あそこから入るみたいだよ」
ウサ吉が、手を振りながらこちらですと言っている。
「……ん、どうしたのウサ吉?」
「何かあったのかレックス!?」
「ま、マジか……。そ、それがね、お屋敷に来客が来ているらしいんだけど、どうやら勇者様と聖女様が来ているらしいんだ」
「ゆ、勇者って、レックスの幼馴染とかいう女のことか」
「う、うん。何でも呪いの治療をお願いされて聖光魔法を使える勇者様と光魔法のスペシャリストである聖女様が呼ばれたらしいんだ」
「まんまと騙されて来ちゃったのかよ……。それって、結構不味いんじゃねぇか?」
「治療は無事に終えて、お礼にお食事をということで睡眠剤入りの食事を提供されているところだって……」
「勇者、いきなり憑りつかれて終わっちゃうじゃねぇかよ!?」
「ちょ、ちょっと、声が大きいってレムちゃん」
「ど、どうするんだよ」
「魔王を倒すまではエリオと会うつもりはない。僕がエリオの近くにいることで迷惑を掛けるかもしれないからね。ということで、二人が憑りつかれてからが僕たちの出番だ。ウサ吉たちは屋敷から誰も出ないように、そして誰も入って来ないように見張りを頼むよ」
ということで、しばらく時間を置いてからの作戦開始となった。といっても、ゴーストやスケルトン程度は僕たち二人の敵ではない。
「光属性なくても何とかなるみたいだな」
「物理攻撃は無効だけど、魔法攻撃なら取り憑かれている人にも効果あるね」
「でも本体の人族もダメージも受けてるから、やり過ぎには気をつけろよ」
「了解!」
天井から降りて、三階に侵入した僕らは、使用人に憑りついたゴーストと溢れ出るスケルトンを沈黙させながら歩いていく。
あっ、アンデッドだから最初から沈黙しているのか。はははははっ。
「な、何、ニヤついてるんだよ。余裕ぶっこいてると足元すくわれるからな」
「あっ、うん、ごめん」
二階に降りる頃になると、敵にも気づかれたようで、スケルトンが最早バリケードに使われているのは敵ながら何とも忍びないのだけど、固まっているならそれはそれで片付けやすい。
「ドレイン!」
「ソニックブーム!」
「気づかれたなら、もう一気にやってしまうか」
「そうだね、レムちゃん。それじゃあ、僕はひと足先に行ってくるよ。身体強化!」
「油断するなよー」
ドレインから戻ってきたエネルギーを身体強化に変換して、スケルトンを倒しながら一階の食堂らしき場所までたどり着いた。
スケルトンの数がやたら多いので、この部屋が食堂でエリオや聖女様がいるのだろう。
「よしっ、獣王撃……何だっけ?」
名前を忘れてしまったけど、右手に集中したパワーを扉の前で固まっていたスケルトン達にぶつけると、扉ごと吹き飛んでいって消滅していった。
「あ、あれっ?」
「き、貴様、ここに何しに来たのだ! こ、こ、ここが、ブリューナク男爵家と知っての狼藉か」
顔色の悪い執事っぽい人が、額に汗を浮かべながらとても怒っている。おそらくは、あれがボスと見ていいだろう。
問題は、エリオと聖女様が既に取り憑かれていて、僕に向かって聖剣を構えていることだろう。隣で白いロッドを持っているのが聖女様ということか。取り憑いたまま、攻撃に参加させるつもりらしい。
「エリオ達に攻撃させるつもりなんだ。許さないよ」
「何故、勇者の名前を知っているのだ!? ええい、勇者、聖女よ、早くこの者を打ち倒しなさい!」
エリオは僕に向かって走り出すと、切っ先を下から斜め上に一気に振り切る。このスピード、なかなかに鋭い。取り憑いた者が、ここまで戦えちゃうものだったのか……。
バックステップでかわしながら、次の動きを見ていると、急激に魔力を高めている気配を感じた。
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