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四十二話目 怪しいメイド
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アイミーは、屋台を見てはヨダレを垂らしているし、レムちゃんとシュナちゃんは人の多さに驚いているのか口数も少ない。この緊張してる感じがお登り感。多分、僕も緊張している。王都初めてだし、ずっと村にいるつもりだったからね……。
というわけで、お登り感満載なのを見破られてしまったのか、通りすがりの優しい方に困っていることはないかと声を掛けられてしまった。王都ってフレンドリーな人が多いのかもしれない。さて、少しでも情報収集しなきゃね。
「安くて朝夕の食事付き宿屋なら、ギルド近くにある山猫亭がおすすめだよ。大部屋なら一泊一人、百イシスぐらいだし、飯も美味いぜ」
「に、二食も付いて百イシスですか! あっ、でも四人だから四百イシス……」
「レックス殿、さすがに大部屋は不味いのではないか。気軽に話も出来ないであろう」
「あっ、そうか……」
「四人で中部屋を一つ確保するなら一泊六百イシスだな。もちろん、二食付きだ。ただし、ベッドは三つしかないんだけどな」
「よ、よし、そこに決めます!」
「私は構わないのだが、その、レックス殿は私たちと同じ部屋で構わないのか? ベッドも三つしかないと……」
「あっ……」
シュナちゃんの言う通りである。どうしようか……。
「お金が無いからしょうがないにゃ。アイミーが主様と一緒に寝るから、みんな気にしないで寝ていいにゃ」
「いや、アイミーは寝相が悪いから、俺がレックスと寝よう。俺は普段から棺で寝ているからほぼ動かないと有名だ」
「なら、アイミーとレムリアが一緒に寝れば良いだろう。二人とも小さいから一つのベッドで何も問題ない」
「シュナちゃん、余計なことを……」
「空気の読めないエルフめ」
「な、何で私が怒られているんだ……」
「そうしたら、中部屋を確保出来るか宿屋さんに聞いてみますね。情報ありがとうございます!」
「いいってことよ。それで、珍しい組み合わせだが、王都にはどんな用で来たんだい?」
確かに珍しい組み合わせだろう。いくら人の多い王都とはいえ、エルフも獣人も珍しいのは間違いない。しかも一緒に行動しているのだから余計に目立ってしまっている気がする。今後、アイミーとシュナちゃんの耳は隠した方がいいのかもしれないね。
「こう見えて僕たちは冒険者なんですよ。街から街へ移動しながらお金を稼いでるってとこです。それにしても、王都は人が多いですね」
「いつもより多いかもしれないな。何しろ、勇者様のお披露目があるんじゃないかって噂されてるんだ」
「勇者様のお披露目ですか。それは良いタイミングで王都に来れました。楽しみですね」
「何か困ったことがあれば宿屋の女将さんに相談するといいよ。面倒見がいいからさ」
「助かりました。本当にありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「俺はライナス、こう見えてB級の冒険者だ。実は、俺が駆け出しの頃にお世話になった宿屋なんだ」
身なりから冒険者であることはわかっていたんだけど、B級というからにはギルドでも上位に位置する方なのだろう。そんな方が親切にしてくれるというのは、元々のライナスさんの面倒見の良さと人柄なのだろう。
「僕はレックスです。それで、隣の方は?」
「ん、隣?」
実は、宿屋の話をしている時からライナスさんの隣で仲間であるかのように話を聞いているメイドさんがいたのだ。
「お前は誰だ?」
「わ、私は、ブリューナク男爵家の使用人でございます。決して怪しい者ではございません」
「確かにその衣装は男爵家のもので間違いなさそうだが、何故、話を盗み聞きするような真似をしていた」
「そ、その、すみません、すみません、失礼致します」
怪しいメイドさんは、そそくさと走り去っていってしまった。
すぐに僕は、ウサ吉に繋がっているドレインを通じて指示を送る。この街には、取り憑かれている人が結構な数いるかもしれないんだもんね。
「変なメイドだな。どうする、追い掛けるか?」
「いえ、それよりも日が暮れてしまいそうなので、先に宿屋を押さえたいと思います」
「そりゃ確かにそうだな。明日以降、ギルドで会ったら気軽に声を掛けてくれ。お金以外なら相談に乗るからよ。じゃあな、レックス」
「はい。こちらこそ、ありがとうございましたライナスさん」
「レックス殿、あのメイドはよかったのか?」
「ウサ吉に後を追わせてる。そのまま、情報を集めるように指示を出しておいた」
「さすがは主様にゃ」
ちなみに、ウサ吉はパワーアップした時点で二足歩行の半獣人のような形態になっており、頭から深くフードを被れば、ただのムキムキの獣人、いや人族の子供に見えないこともない。
屋根の上を警戒にジャンプしていくウサギ達がメイドさんをしっかり追い掛けている。あとで情報をもらおう。
「あいつ、ブリューナク男爵家と言ってたな。自ら素性をバラすとは、頭の弱いゴーストだ。明日の予定は二組に分かれて行動するか」
「男爵家を探るチームと金策チームだね」
「す、すまぬ。私がもう少しお金を持ってきていれば……」
「シュナちゃん、それは言わない約束にゃ」
というわけで、お登り感満載なのを見破られてしまったのか、通りすがりの優しい方に困っていることはないかと声を掛けられてしまった。王都ってフレンドリーな人が多いのかもしれない。さて、少しでも情報収集しなきゃね。
「安くて朝夕の食事付き宿屋なら、ギルド近くにある山猫亭がおすすめだよ。大部屋なら一泊一人、百イシスぐらいだし、飯も美味いぜ」
「に、二食も付いて百イシスですか! あっ、でも四人だから四百イシス……」
「レックス殿、さすがに大部屋は不味いのではないか。気軽に話も出来ないであろう」
「あっ、そうか……」
「四人で中部屋を一つ確保するなら一泊六百イシスだな。もちろん、二食付きだ。ただし、ベッドは三つしかないんだけどな」
「よ、よし、そこに決めます!」
「私は構わないのだが、その、レックス殿は私たちと同じ部屋で構わないのか? ベッドも三つしかないと……」
「あっ……」
シュナちゃんの言う通りである。どうしようか……。
「お金が無いからしょうがないにゃ。アイミーが主様と一緒に寝るから、みんな気にしないで寝ていいにゃ」
「いや、アイミーは寝相が悪いから、俺がレックスと寝よう。俺は普段から棺で寝ているからほぼ動かないと有名だ」
「なら、アイミーとレムリアが一緒に寝れば良いだろう。二人とも小さいから一つのベッドで何も問題ない」
「シュナちゃん、余計なことを……」
「空気の読めないエルフめ」
「な、何で私が怒られているんだ……」
「そうしたら、中部屋を確保出来るか宿屋さんに聞いてみますね。情報ありがとうございます!」
「いいってことよ。それで、珍しい組み合わせだが、王都にはどんな用で来たんだい?」
確かに珍しい組み合わせだろう。いくら人の多い王都とはいえ、エルフも獣人も珍しいのは間違いない。しかも一緒に行動しているのだから余計に目立ってしまっている気がする。今後、アイミーとシュナちゃんの耳は隠した方がいいのかもしれないね。
「こう見えて僕たちは冒険者なんですよ。街から街へ移動しながらお金を稼いでるってとこです。それにしても、王都は人が多いですね」
「いつもより多いかもしれないな。何しろ、勇者様のお披露目があるんじゃないかって噂されてるんだ」
「勇者様のお披露目ですか。それは良いタイミングで王都に来れました。楽しみですね」
「何か困ったことがあれば宿屋の女将さんに相談するといいよ。面倒見がいいからさ」
「助かりました。本当にありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「俺はライナス、こう見えてB級の冒険者だ。実は、俺が駆け出しの頃にお世話になった宿屋なんだ」
身なりから冒険者であることはわかっていたんだけど、B級というからにはギルドでも上位に位置する方なのだろう。そんな方が親切にしてくれるというのは、元々のライナスさんの面倒見の良さと人柄なのだろう。
「僕はレックスです。それで、隣の方は?」
「ん、隣?」
実は、宿屋の話をしている時からライナスさんの隣で仲間であるかのように話を聞いているメイドさんがいたのだ。
「お前は誰だ?」
「わ、私は、ブリューナク男爵家の使用人でございます。決して怪しい者ではございません」
「確かにその衣装は男爵家のもので間違いなさそうだが、何故、話を盗み聞きするような真似をしていた」
「そ、その、すみません、すみません、失礼致します」
怪しいメイドさんは、そそくさと走り去っていってしまった。
すぐに僕は、ウサ吉に繋がっているドレインを通じて指示を送る。この街には、取り憑かれている人が結構な数いるかもしれないんだもんね。
「変なメイドだな。どうする、追い掛けるか?」
「いえ、それよりも日が暮れてしまいそうなので、先に宿屋を押さえたいと思います」
「そりゃ確かにそうだな。明日以降、ギルドで会ったら気軽に声を掛けてくれ。お金以外なら相談に乗るからよ。じゃあな、レックス」
「はい。こちらこそ、ありがとうございましたライナスさん」
「レックス殿、あのメイドはよかったのか?」
「ウサ吉に後を追わせてる。そのまま、情報を集めるように指示を出しておいた」
「さすがは主様にゃ」
ちなみに、ウサ吉はパワーアップした時点で二足歩行の半獣人のような形態になっており、頭から深くフードを被れば、ただのムキムキの獣人、いや人族の子供に見えないこともない。
屋根の上を警戒にジャンプしていくウサギ達がメイドさんをしっかり追い掛けている。あとで情報をもらおう。
「あいつ、ブリューナク男爵家と言ってたな。自ら素性をバラすとは、頭の弱いゴーストだ。明日の予定は二組に分かれて行動するか」
「男爵家を探るチームと金策チームだね」
「す、すまぬ。私がもう少しお金を持ってきていれば……」
「シュナちゃん、それは言わない約束にゃ」
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